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プロローグ
悪夢は目が覚めても見るものだ。
それが唐突に人々の頭上に降ってくる。
降り止むことのない豪雨のように日常も未来も叩きつぶす。
見えない手で口を塞ぎ、目を引っ張り開け、悪夢は目の前で笑う。
目を背けない僕らはそれを目に焼き付けられ、口をきけない僕らは黙ってそれを受け止めるほかなかった。
悪夢は目を覚めたまま唐突に訪れ、不幸は目を盗んで背後から見舞って、そして人は唐突に命を落とすのを僕は知ることになる。
例えどれだけ大切な人だとしても。
例えだれだけ目の前でついさっきまで笑っていても。
そして、気づくと、僕の世界はもう崩れ滅んでいた。