ちぎれた絆
長かった
■を助けたかった
■の支えになりたかった
でもそれは、かなわず。命は絶えた。
『かなえてやるよ、その願い。』
誰かはそういった。■の■を持ちながら。
『お前の■■を渡してくれるならなー。よく言うだろ悪魔の契約には代償が必要だって。お前たちはいい方だと思うよー?■■■と比べたら『■■』が残るのが■■しているんだから。ぎゃはは☆それで?返答はなんです?白■■■■ラ』
了解の意味でうなずく、そして。そして、、
ーこの決断は、正しかったのだろうか。
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「うっ............。」
上半身を起き上がらす。軽くめまいがする。
なんだか長い夢を見ていたようで頭がボーとする。何を見ていたのかは......思い出せない。
「ここは......。」
あたりを見渡せば、木の幹の焦げ茶色で視界が埋まる。
「私が無意識に能力で作り出したもののようです...ああ、思い出したです。」
意識がはっきりとしだす。
自分は、サリエルという神人と一騎打ちで戦い。殺されかけ逃げ出したのだ。
「逃げ出したというか、落ちただけですが、です。」
苦笑いしながら、立ち上がる。
ふと、思い出し、手を見る。
両断された手を、再生した手を。
「左腕の再生は…ものを握れるぐらいか...。」
切られた左腕、ー肉の腕ではなく植物で作られた腕ー、はもとより細くなっており、まるで骨のようだった。
「再生具合から見て1時間ぐらいたってるようですです。…こんなに細いのはちょっと気持ち悪くていやですが…まあ、物が握ることさえできれば何でもいいや、です。てい!」
手のひらを下に向け、武器を意識する。
足元から、木製のハンマーとノコギリが創られる。
ハンマーを右手に。左手にノコギリをそれぞれ掴み。
「第二ラウンドです。」
自分を囲む『木』をハンマーで砕き、外に出る。
まるで、さなぎから蝶が出るように。
戦場へ、化け物が舞い戻った。
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痛い。腸を掴まれ、引きちぎられる。
痛い。足をつかまれ、投げ飛ばされる。
痛い。頭をつかまれ、引きずられる。
痛い。腕をつかまれ、奪われる。
白い少女が赤く染まる、己の返り血で赤く染まる。
しかしそれと同時に、破壊が起こる。
「邪..魔だ。雑魚ど..も!」
痛い。腸を引きちぎった腕を両手で掴み、へし折る。
痛い。足をつかんだ奴の頭を殴りたたき割る。
痛い。頭をつかんだ奴の手をつかみ、砕く。
痛い。腕を奪ったやつを、鎌で握り真っ二つに両断する。
木のマネキンが手を伸ばして、少女の体を引き裂き血をまき散らさせ、少女の報復によって木片と変わる。ずっとこの繰り返しだ。
一時間ずっと応戦したため、倒した数は万を超えるはずなのに、木のマネキンは減る様子がない。
体は血にまみれ、痛みのせいで今自分に何が残り、何があり何を持っているのかしっかりと意識できない。視界がぼやけ、立っているのさえ辛いそんな痛みの中、気絶した方が、死んだほうがましの状況の中、神人の再生能力が気絶を許させず戦うことを強要させる。
「くそ..がああ」
足を血の水たまりに浸らせ、鎌を振り、四方八方からくる木のマネキンを蹴散らし傷を負う。
苦しい、痛い、投げ出したい。
それでも、意識はあり、死にたくない。
死なせたくない。
「こ…ぐっれえええ」
血に濡れた瞼の裏に浮かぶのはあの少年。
こんなに苦しく、投げ出したく、死にたい。
そんな状況一つも解決できない少年の姿が、頭をかすめるのだ。
あの過ちとともに。
「くそが…...」
相も変わらず、己の血と肉と木片がまき散らされていく。
赤い花が咲き続ける。
十分に地獄絵図と化した場所を
「楽しそうにしてるんじゃねえかです!!」
「ッ!」
やばい、やばいやばいやばい!!
悪寒が走り、木のマネキンを無視して、がむしゃらに駆け出す。
腕が捕まれ、髪が捕まれ、足が捕まれその場に固定されそうになる。それでも足を止めずその場を離れようとして
その2秒後
さっきまでいた場所が消滅した。
体を掴んでいた。木のマネキンは腕を残し消えていた
「あーあ、外したです…」
「最悪だ」
振り向いた視界の先には、半分だけ木の幼女。
ガオケレナがいた。
ビルとビルの間に無数に張り巡らされた木の枝の上に、立っていた。
「ガオケレナ。完全復活です。」
その木の枝に花が咲く。
光を放つあの花が
サリエルは地面にいて、ガオケレナはビルとビルの間に張り巡らした蜘蛛の巣のような枝の上にいる。
今この瞬間、空中を彼女は征した。
「あれだけの大軍を相手にして立って死なないってどんな弱い能力なんです?」
「お前の言う通り、クソみたいな弱い能力だよ。」
「ふーん。」
にやにやと、笑いながら聞く。
勝敗はほとんど決まった。
もう、サリエルに勝てる要素はない。
だから、これからの戦いはただの蛇足。
ネズミをいたぶる猫のように、嗜虐心を満たすための時間だ。
「さて?どうしますか?勝てる見込みはあるんですか?」
「ねえよ。」
ない。もうないのだ。
周りにはマネキンども。
上には、触れただけで消し飛ぶ光を放つ花。
それらをかいくぐって、あいつに近づけるはもう残されていない。
『鏡』があれば、まだいくつか可能性ができたかもしれない。でも、もう使えない。
使えるほど回復していない。使えば…消滅させてしまう。
「...」
下を向く。
今、心を染めるのは絶望一色、光も希望も可能性も見えない絶望という黒だけだ。
「ごめん、小暮」
少女は
「はあ。」
ガオケレナの目に映ったのは
涙をこらえて、鎌を握り、前を向くサリエルだった。
「諦めないですか。まあ、そっちの方が面白いしいいです!」
楽しくて、気分が高揚する。
負けぎりぎりの相手が、足搔き、少しづつ壊れていく、それを見るのは最も見ていて面白い無様な姿だからだ。
舌なめずり、をして
「じゃあ!第二ラウンドおお!はっじめえええ!!です!」
花が咲く。
光が放たれた。
「あああああああああ!!」
走る。
背を向けて走った。
光は、サリエルが突っ込んでくると予想したため一歩前に打たれたため、当たり前だが外れた。
「はああああああ!!!??なあにやってんです!?」
予想外の行動に、びっくりする。
サリエルは、ガオケレナから見ればプライドがある程度高そうに見えた。負けだとわかっていても勝利をつかもうと戦う。そんな、決断をするほどには。
それが逃げ出した。
「殺せ!残影!追うんです!」
木のマネキンが少女に向けて走り出す。
「本当に何を考えてるんです!」
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勝つことをあきらめたのではない。
「ごめん、小暮。お前が頼りだ...!」
時間稼ぎに徹する。
小暮が勝つその時まで、それしかないのだ。
走る走る
人のいない街をかけていく。
カーブを回り、走り、飛び乗り、しっちゃかめっちゃかに、右往左往に、走る。
前に来る、マネキンを鎌で切り。足を止めず走る。
身体能力だけはあるのだから。
いくつもの角を曲がり、道を走り
走って走って走って走って走って走って走って
どれだけ走ったのだろう
気づけば
「はあ、はあ、はあ、」
「撒いたぜ...」
地下の駅のホームで座り込んでいた。
撒いたといっても、せいぜい数秒で見つかるだろう。
それでもあれが見つかればい。
いくらでも、どこにでもあるあれが。
今では誰でも持っているあれが。
だからここ、地下の駅のここに来れたのはよかった。
昔は人が多く使っていただろう、切符売り場は壊れ、コンビニの窓は割れ。カフェはコーヒー豆などが散乱し、緑色の椅子は砕け、から薬きょうが散らばっていた。
電気は通っておらず、暗い。それが、本来なら明るいはずの昔と比べてしまうのか、寂しいふいんきを醸し出していた。
「いや、たぶんそれだけじゃねえな。」
「死体がいっぱいあるからかだな」
駅のホームにはいくつも、テントがあった。
その中には空になった薬品や袋の残骸があったため、医療を目的とされたはずのテントだと思われたが。
「安楽死か...」
腕が、足がもがれた死体があった。
たくさんたくさん、普通なら吐くレベルの量があった。
死体の状態は悪く、ハエが何匹も何匹もまとわりついていた。小暮が見てきた地獄の一部があった。
地上に死体が少ない理由は、化け物が食らうからだ。
いや、肥やしにしているといううのが正解か...
「...」
立ち上がり、そのテントをくぐる
そして、
「これは、思っていたよりいいものがあった。...これもらっていくぞ。」
バッグを背負いその中に小さな小包を入れて、そして
「見つけたあああああああああああああ!!」
ズ!!ドンッ!
光が見えたかと思うと、天井が溶け崩れ、そこから何かが飛び込んでくる。
「手間とらせやがってです!」
スタッと、ガオケレナが穴から落ちて着地した。
真っ暗な地下の駅に、月明かりが差し込む。
それをすぽっライトの代わりにするように、ガオケレナが立っている。その彼女のコンクリートの周りには草木が生え始めており、とても幻想的に見えた。
「一人で突っ込んでくるなんて、1対1の構図を作ってくれたのか?」
「なめるなです。準備くらいいくらでもする時間はあった、てめえの勝ち筋はねえです。」
その声を聴き終わるや否や、サリエルは走り出す。
その踏み込んだ足元を、木が吹き飛ばした。
「だれが1対1にするかよ、馬鹿ですかです。」
溜息とあきれを見せながらそうつぶやいた。
「グハ!?」
木が足元から生え、地下の天井を吹き飛ばし地下から地上に押し上げられる。
重力が体を貼り付けにしたと思えば、浮遊感を感じぞわっとする。
その次の瞬間、地上に戻されたサリエルにマネキンが殺到した。
準備されていた結果である。
ガオケレナが花を創り上げ。
「さようなら、サリエル。うざいから死ねです。」
地下からサリエルに向けて光を放った。
マネキンにつかまれる、その前に
カチッと、何かが押される音がした。
ドゴンッと。
光を放たれるその一瞬に、爆発音が響いた。
「なんです!?」
いきなりのアクシデントに光を放とうとするのを止める。
「これは、プラスチック爆弾だとです!?」
爆発した音の理由は爆弾。
でもガオケレナは、知っている。
確実に残影どもが、サリエルを取り囲んでいたことを。
寸分の狂いなく、サリエルを残影の集団の中にぶち込んだ。
でもそれらが、サリエルの周りからいくつか吹き飛んだ。それはつまり...
「自滅、いや爆風で逃げた!」
慌てて、木を使い地上に上がる。
でもそこにあったのは
「くそが、スモークも炊きやがったです...」
白くて何も見えない視界だった。
残影の位置がぐちゃぐちゃで不自然に空間があるところがわからない。
「どこだ、どこにいるのです。」
意識をとがらす。
残影の視界を覗くが、自分と同じ白い視界だったため、頭痛を起こしただけの無意味で終わる。
「ちっ!どこだどこです。」
パンッと音がして。
右頬に痛みが走った。
「あ?」
タラっと何かが右頬にたれる。
反射的に拭えば、
「血..」
パンッ
痛みとともに右肩に何かが当たる。
それでやっと理解できた。
自分は何かに打たれている、と。
「ツッッ!?」
ダンっと手を地面に付けて
木が彼女を覆った。
「い”っま”あ”あ”あ”あ!!」
指が二本しか残っていない左手、から銃が落ちたがお構いなしに走る。血だらけの肉塊が走り出した。
爆風の震源地その6メートル先から。
今にも取れそうな右手で、鎌を握りしめて走った。
なぜここにいるのか、それは。
爆風で逃げた。そんなことはサリエルにはできなかったからだ。
回復力はそこまで万能じゃねえ。
一部分が吹き飛ぶぐらいなら、ちまちまとダメージを追うぐらいなら。数秒あればできる。
しかし、何度もやっていればその回復力は衰え始める。
ガオケレナは知る由もないが、マネキンどもに、リンチにされた時から小さい傷は残り始めていた。再生力が、傷に追い付かなくなっていっていたのだ。
そんなところに、全身ズタズタのバラバラになるような爆発。
マネキンでさえ人と認識できないような肉塊になる爆発。
そんなのを、元に戻すなんて無理なのだ。
せいぜい下半身と胴体を一皮一枚でつなぐのが限界だ。
でも、うまくいった。
いま、彼女はいないはずの第三者からの攻撃を警戒した。
再生力がない=攻撃を食らえば致命傷となる。
この街を軍が、見捨てた時点でそんなことはないのに。
安全な場所にこもって事実を見ないあいつらが来ることなんてないのに。
回避もできない殻にこもってくれるなんて。
「これで、!終わりだあああ!」
鎌を木のドームにぶつけ叩き割る。
そのまま、ガオケレナごと真っ二つにしようと...
「騙されてやんのです」
割れたからの先には、花があった。
「あっっ!?」
「もう遅い」
体をひねり逃げようとする
でも、肉塊に近い体がそんな高度な動きができるわけもなく
「ちぇくめいとで...え?」
光が...放たれなかった。
勝負の終わりを示す、ガオケレナの勝ちで終わる勝利のゴングである光が来ない。
あっけにとられ
ゆっくりと振り返れば。
ガオケレナは…
「な!?がは!?おぶえ!?なん..!?おえぶ、痛いで…ずぅなんおええ!!」
血を吐く、ガオケレナがいた。
それだけじゃない。
バタ、バタ、とマネキンが倒れて…消滅していく。
「残影が...どうじ..おげえ!!」
血を吐き続けるガオケレナ。
「ま…ざか?契約?契約が切れだ?しらいしがじんだ?…じがうなら、あえ、わだじは..ぐはっ!..いぎで…」
「aaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
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何かの叫び声が聞こえた。
いや、呻き声。違う。獣の怒りの雄たけび。
いや、違う。いや、違う。いや、違う。
なんとも形容しがたい叫びがとどろいた。
サリエルがその方向を見た。
「は…?」
ぐちゃぐちゃで、黒くてどろりとした何かが、砕けた白い何かの中に入ろうとしていて、だけどその砕けた白い何かはそんな黒いものを受けきれず、ずっとあふれでてきていて、あふれ出てきたものが、つなぎ合い結び合い。
ドラゴンを思い起こさせる姿になっていっていく。
そこは、小暮が向かった方向だった。