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9.A.決闘しなさい!(Rさん 12歳)

女の子の喧嘩ってレベルじゃない……!


「私、見たんだから!あんたがメイドの女の人と、お父さんを取り合ってるのを!」


 メイド……メイドといえば、一番記憶に新しいのはピニアの事しか思いつかないわ。この市場とコストルの往来でメイドの方が歩いている所は見た事があるけれど、ピニア以外のメイドをされている方と会話はしていないはず。

 その時、近くに居た男性はソックさん。確かあの方には、私よりも少し大きい娘が居ると言っていた。


「何かの勘違いね。ソックさんと私がそんな事あり得るはずが無いでしょう?」

「嘘を付かないで!最近お父さんが私に何か隠し事をしているみたいだから、こっそりついて行ったら。あんたとメイドがいたのよ!」

「あの時ね。確かにアレは私が原因ではあるけれど……」


 あれはピニアに本当の事を言わなかったから、私が悪かった。娘さんである彼女にも、謝罪する必要があるのかもしれない。


「お父さんにメイドが刃物で襲いかかって、無理心中しようとしていたじゃない!その後あんたがメイドを止めて帰らせ、あんたがお父さんを勝ち取ったんでしょ!」


 何なんだ、この子は。初対面で、挨拶もなしにいきなり、荒唐無稽な話で非難してくるとは。不躾にも程がある。

 でも、私が冷静を欠いてしまうと、話に収取が付けられなくなってしまうわ。落ち着いて会話をすれば理解してくれるはず……。


「良い、貴女のお父様とはそういった関係になる事はあり得ないわ。年齢差を考えて頂戴?」

「言い訳しないで!このふしだら女!」

「ちょっ、ルレ!?」

「あ?」


 今、何て言ったのかしら?事もあろうか、人の目がある往来で、未婚の淑女に対してふしだら呼ばわり?

 駄目だわ……これは駄目だわ。許されないのだわ。


「貴女、勘違いから起こした言動とは言え、許されない発言をしたわね」

「あんたが悪いんでしょ!私のお父さんを取るから!」

「ああ……もう!違うって言っているでしょう!?貴女、ほん聞き分けのない面倒くさい方ね!何、何なの?どうしろって言いたいの!?えーっと……この愚民!」

「っこの!決闘よ!私が勝ったらお父さんに二度と近づかないで」


 そんな事を受け入れたら、東門から出入りが出来なくなってしまうじゃない!

 街の外に出る予定は、今のところ無いけれど!


「手袋が無いわね……貴女から手袋を投げなさい」

「何?ビビってるの!?チビなだけあって根性なしで、口だけは達者なのね!」

「チビ?チビとはどういった意味ですか!?」


 意味はわからないけれど、なんだか腹が立ってくる。人を罵倒する様な悪い言葉であることは間違いない。


「背が小さいという事よ!あんたいくつよ!お店をやっているってことは、12歳以上でしょ?同じ年の私よりもチビじゃない!」


 私は……背が低い?


「ハイラさん?貴女……今、御年齢はおいくつかしら?」

「えっと……その……じゅっ〜ごさい?」

「お願い……本当の事を……言って」


 私に真実を告げようとする、ハイラさんの瞳はとても悲しそうだった。


「12……歳……だよ」

「はいチビー!チビけってーーーい!チビクーーーーナ!」


 あ、わかったのだわ!私を指さしながら、憎たらしい笑い顔を晒している、ルレとか言う女の事が嫌いなのだわ!もう言葉なんか選んでいられないのだわ!


「あなたの主張が正しいのなら、あなたのお父さんとやらはちっちゃい子に恋愛感情を持つヤバい奴なのだわ!変態がうつるのだわ!向こうへ行って欲しいのだわ!」

「お?おお?」


 首を傾げているけれど、状況が理解できた様だ。大人の男性が小さい子供に恋愛感情を持つのは異常だ。私が約束されていた婚姻も、同年代の男性と行われるものだ。

 貴族とは言え、自分よりも遥かに年下の子供に婚姻する事も出来るが、悪い噂が立つ。

 血族の関係でやむ負えず、背に腹が変えられない状況でもない限りは貴族でも行うことは無い。


「変態ルレさん、ここは色街ではなくいちばでしてよ?東門から色街は遠いけれど、お父様でも誘って、親子水入らずで色街を楽しんできたら?」

「クーナちゃん、ダメだよ!ルレにそれはまずい!」

「ぶっ殺すっっ!」

「返り討ちにしてやるのだわ!」

「待って!ルレは魔物を倒してるからレベルが高いんだって!悪ガキよりも強いから!」


 ルレが左手で、カウンター越しにいる、私の胸元を掴む。空いている片方の手で殴りかかろうとしている。

 もし、ルレのレベルが私よりも高ければ勝つ確率は低くなる。しかし、非力そうな私の見た目で油断しているのか動きが大きい。

 不意打ちで、出来るだけ大きいダメージをルレに与えたい。盗賊を撃退した時にレベルが上がった力を味合わせてやろう。

 拳が顔面にくる前に、弓形で後ろに引いた私の頭を、ルレの顔面に勢い良くぶつける。


「うぎゃっ!」


 頭上から聞こえる。ルレの悶絶する声。

 相手を見据えると、顔面を押さえてながら後ろに引いた。


 前が見えていないルレの隙を見て、私は露天のカウンターから身を出した。


「2人とも!喧嘩はやめて!」


 ハイラさんが心配をしている。でも、ごめんなさい。この子は一度わからせてやらないといけないのだわ!


 人同士の殴り合いは、屋敷の外から見える護衛兵の訓練で見た事がある。眺めたり、1人で兵士の真似事をして遊んだり。良い暇つぶしになったものだ。

 


「ふっ」


 顔面に入った頭突きが相当痛かったのだろう。まだ顔面を両手で押さえている。

 そのまま、側面の脇に蹴りを入れた。


「っ!?」


 私の足がルレの両腕に挟まれ、身動きが取れなくなる。私はルレの痛がっている姿に騙された。

 片足しか地についていない私の足を、ルレに足払いで払われる。支えのない私の体は地面に叩きつけられ。腰から勢い良く後頭部も強打する。

 

「くぅっぅぅっ!!!」


 痛い、とても痛い!ベッドの角に小指をぶつけるのを何回にも凝縮するような痛さなのだわ!


 ルレが泣きながら、私の体の上にまたがってくる。なんてはしたない事をしているのだ。そう思っていると、ルレはそのまま私の顔を殴ってきた。

 顔を守る為に両腕でガードするけれど、一発、二発と繰り返される打撃に、反撃する予定がない。


「嬢ちゃんこれ以上はいけねぇ!」


 私達の喧嘩を止めようと、大人の男性がルレの腕を押さえようとする。


「ふぅぅぅぐぅぅ!!!」 

「ん……なんだ!?強っ!ちから強!おっふぅ!!!」


 泣きじゃくるルレは、男性の腕を勢いよく振り払うと、そのまま男性の股間に打撃が入った。うずくまり、股間を押さえて転がる男性。


「嬢ちゃん!何とかならないのか?」

「無理だよ……ルレがああなったら誰にも止められない。冒険者が子供の喧嘩なんか止めてくれるわけないし。私に出来るのはアレしかないよ」


 私はこの隙を使って、両足を真上へ垂直に立て、勢い良く地面に降ろす。その反動を使い。上半身を起こした。

 姿勢を崩したルレを押し倒す。

 私の様に頭を強打する事は無かったけれど、ルレにまたがると、両腕がハノ字に開いていたお陰で足首で押さえつけ、両腕を封じる事が出来た。


「ひっく!ぅぅぅぅ!」


 私は何でこんな事をしているのか、何が何だか分からなくなっていた。ただ、頭の中にあるのは憎いと思っている、この女を殴る事。

 ルレの顔面に拳を入れる。柔らかい肉の感触が拳に伝わる。


「何をやっている!」

「子供が喧嘩をしてるんだ!止めてくれ!」

「子供の喧嘩?それくらい止められるだろ?」

「この子ら見た目に反して強くて、誰も止められないんだよ!」

「それにしたって、大した事……いや、マウントポジションで顔面を殴るのは普通に駄目だわ」


 何で私……こんなに腹が立ったのかしら?


 体を鍛え、魔物を討伐してレベルを上げた兵士には、私では全く叶わない。脇の下に腕を通され、ズルズルと引きずられる。


「って、兵長の娘さんとクーナちゃんじゃないか……何でこんな事に?」

「何故かしら?」


 はっきりとわかるのは、あのルレとかいう女の事は言いがかりが無くても、嫌いになっていたのは間違いない。

 兵士の詰所まで、ルレと一緒に衛兵に抱えられながらそんな事を考えていた。

人間のベースのスペック+レベル恩恵=強さ

なので、レベルで圧倒しないと大人には簡単に勝てません。

 どんな仕事や作業でも、従事すればそれだけ経験値が入ります。ただし、筋力上昇に乏しくなります。

 クーナとルレは腕力も強いので、一般的な男性よりも強いです。ただし、器用さ特化な上に体重が軽いので兵士には勝てません。

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