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5.敵か!味方か!リェース家のスペシャルメイド!?

新キャラだよ!みんな大好きメイドさん!

「ソックさん、ごきげんよう」


 昨日はリェース家に所在を知られる事を恐れて、街から出ようと悩んだ。

 しかし、別の街に行こうにも先立つ物が無い。まだここへ調査に赴くと思われる、リェース家の従者が来るのに時間がかかると踏んで、盗賊を無力化した事と財布の品代を受け取る為に再び、東門へやってきた。


「おはようクーナ。今度は素早く渡せる様に用意して待っていたんだ。」


 ソックさんが腰に結えた袋を解いて、私へ差し出した。それを受け取ると中身を確認する。クォーター金貨が2枚。二万カクル、思っていたよりも額が多い大金だ。


「多く無いですか?」

「丁度、リェース家の方が来てな。役立つ情報がわかって…………ん?」


 ソックさんが後ろを向くと、その背後からメイド服を来た女性がスカートが持ち上がることも厭わず、更に大声で叫びながら駆け寄ってきた。


「クゥゥゥゥナァァァァァァおじょぉぉぉぉさまぁぁぁぁぁぁぁ!」

「ピニア……何故こんなところに?」

「クーナお嬢様……よかった……ご無事で何よりです」


 私の専属メイドとして働いていたピニアだ。リェースの屋敷で心を許せる唯一の人だ。生きていると知って、泣いてしまうほどに心配を掛けてしまったのだろう。


「あ?……おい……嘘だろ……?貴族令嬢のお嬢様って言うのは……クーナ……様で?」


 ソックさんが私を見て、顔が真っ青になりながら口をパクパクさせて、何かを呟いている。

 それもそうだ。門番がよその国の貴族とはいえ。名前を呼び捨てにしていたのだから。彼からすれば、罠みたいな物だ。

 もちろん私は、彼の態度が無礼な事だとは思ってもいない。


「心配しないで。別に罰したりする気など微塵も無いの。それに私はリェースを名乗るつもりもないわ」

「お嬢様、何故ですか!?盗賊をごうも……尋問したら、お嬢様を襲撃する依頼を受けていたのですよ!この様な国に居てはなりません!」


 どちらかの国が私を利用して戦争を引き起こそうとでも考えているのかしら。だとしたら……。


「それなら尚更リェースに戻る気は無いわ。私はこのまま死んだ事にしておいて」

「なりません。領主様は悲しまれて、おいででした」

「貴女も私に嘘をつく様になったのね……。お父様……アレが私に愛情を持っているわけないじゃ無い!」


 結局、ピニアも父に雇われている身だ。命令が有れば何としても私をリェースに連れ返すつもりだろう。

 本当はピニアだけは私の味方でいて欲しかった。でも、今の私にはマルが居る。


「もう沢山なのよ!お兄様やお姉様に馬鹿にされ、比べられて!邪魔になったから顔も知らない相手に嫁にやったのでしょう!?」

「確かに、アイツら……従者の陰口とご兄弟の方々はクーナお嬢様へ目に余る行いをしておりました。ですが、領主様と奥様は……」

「お願い。これ以上貴女のことだけは嫌いになりたくは無いの。早くどっかに消えて……私に関わらないで。そうしてもらえなければ、私が別の街に行く」


 馬車を貸し切りで雇う様なお金は無い。徒歩でもマーケットスキルで食事を出せば何とか隣村に行くこともできる。


「わかりました。クーナ様の望む方へ始末をつけさせていただきます。どんな状況にあっても、わたくしはクーナ様の専属メイドです。それだけはお忘れのなき様に」

「ありがとう」


 一度だけピニアの事を信じよう。いえ、信じたい。そうでもしなければ二度と誰も信じられなくなってしまう。


「ここへ来る際に発見したクーナお嬢様のお召し物がございました。こちらを利用して、死を偽装させていただきます。ところで……服があそこにあったという事は……」


 困った、どうやってマーケットスキルの事を話さないで説明すれば良いのだろう。こんな変わったスキルの事を、今のピニアには話せない。彼女の事を信頼していいのか……分からない。


「ごめんなさい……今は言えないの」

「おい、門番!もう一度牢屋に行かせてもらう!クーナお嬢様を辱めた報いを受けさせてやる!!!」


 ピニアが何処かへ行こうとしているのをソックさんが止めようと前に立つ。


「落ち着いてくれ!お嬢様ならここへ来た時には服を着て、綺麗な格好で来たんだ。変な事はされてない。つーか、あれ以上やると本当に死んじまう!」


 私の3つ上で、背丈がすこしたかいくらいのピニアがソックさんに掴みかかった。


「貴様ぁぁぁ!邪魔をする!!!というかお嬢様が変な目に遭う想像をするな!」

「するわけねぇだろ!おい……何でスカート中に手を入れる。待て、その光物を仕舞え!」


 一体ピニアは、あの盗賊の人に何をしたのだろう。それにしても何で怒っているの?私が本当の事を言わないから?


「ピニア!やめなさい。ソックさんは私がこの街に来た時に初めて優しくして頂いたの。尊敬に値する方よ」


 ソックさんに襲いかかっていたピニアは、私の声を聞いた瞬間、短刀をスカートの中に仕舞った。


「承りました。ソック殿、お見苦しい所をお見せしてしまいました。お嬢様がお世話になったそうで。お詫びとして、こちらをどうぞ」


 ピニアはスカートの中から金貨を一枚取り出してソックさんに両手で差し出す。

 ……スカートの中にどんな風に収納しているのかしら。一度覗いてみようとして試してみたけれど、一度も成功していないのよね。


「リェース家から……という事で渡されているのか?」

「いえ。あくまで私の懐から、私の一番方に良くしていただいたお礼です」

「子供から銭を貰うほど困窮してない。貰わなくても、お嬢様が困っていたら助ける。治安を守る衛兵としての矜持だ」


 ピニアの手を、ソックさんの大きな手が押し返す。やっぱり尊敬できる立派な方だ。


「なるほど……先程、この様な国と卑下した事を謝罪します。私は一度、リェースへ帰るとします。外交問題も起きる事はないでしょう。盗賊と護衛の死体があったのはリェースの領内……でしたので」

 

 ピニアが指で輪っかを作ると、口に当て、息を思い切り吹いた。

 

「プシュぅ〜〜」

「……」

「……」

「昨日は出来たんですよ?……マッケリー!!!」


 ピニアの愛馬であるマッケリーが門の向こうから歩いてくる。相変わらず口笛は吹けない様だ。


「それではソック殿、お嬢様の事をお願いしますよ!公的な身分は平民とは言え、粗相を働いたらぶち殺しますからね」


 ピニアがそれだけ言い、手綱を握ると、足でマッケリーに合図を出して走らせる。どんどんとマッケリーに乗ったピニアの姿が小さくなっていく。

 彼女と繋がるものが無くなった以上、もう会えなくなると思うと寂しい。


「……いちいち物騒な娘だったな。どんな教育受けてるんだ。まったく……」

「ソックさん、ごめんなさい。ピニアは優しくていい子なの」

「いいえ。分かっています。それだけクーナ様のことが大事だと言うことでしょう」

「もうリェースの名を捨てた私の身分は平民です。その様な畏まる必要ありません」


 なんだか急に距離が遠くなった様な気がして嬉しくない。ソックさんや、この街達と話をしている時、自分の存在感という物を感じる。

 それが無くなってしまうのは、とても嫌だ。


「言葉を選ぶのも大変な物でね。騎士団への誘いを断ったのも、娘との時間は無くなるし。畏まるのが苦手なのもあるから助かるよ」

「ええ、私もそうしてもらえると嬉しいわ」


 カランカランと街の中央から、時刻を知らせる大きな鐘の音が鳴り響いて来た。


「そろそろ御者の検問だな……。金も入ったし、市場でも見て来たらどうだ?」

「そうね……まだ足を運んでいなかったし。そうしてみようかしら」


 マーケットスキルがあるから適正値段で何でも買えるけれど、自分の足で商品を見て何かを買うという経験はまだしていない。

 少し覗きに行ってみよう。


「人が多い分、ならず者が絡む事はないだろうが、スリが増えるから気をつけてくれ」

「ありがとう、気をつけるわ」


 早朝から騒がしかったけれど、今日はまだ始まったばかり。初めての市場への期待に胸を躍らせながら、マルと一緒に向かう。


『メイド……私の存在意義を脅かす存在ですね。私のボディにはマニュピレータが装備されていないので、勝ち目がありません』

「まにゅ……何?」

『ラボにある私のアタッチメントが手に入れば、クーナの助けになるのですが』


 マーケットスキルで買えたりしないかしら?私は市場まで向かう歩みを止めずに、スキルでマルの言っている物を 探してみる。

 結果は、それらしき物はあるにはある。

 しかし、私は値段を見て、スキルを閉じた。


「ごめんなさい。マルがいう物は高すぎて、私には買えないわ」

『問題ありません。余裕がある時に必要な物を検討してください。まずはクーナが充実出来るものを購入しましょう』


 何を売るか、市場を見てヒントを探そう。大丈夫、私にはマルもいるし、マーケットスキルがある。

 一番懸念していた事が解決するのだから、商売に集中出来るのだから

メイドさんと銃の相性って最高です……よね?


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