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夜伽訓練

翌朝、すずは朝早くから八神姫の朝食の準備に取り掛かかっていた。

八十神に仕える侍女たちと談笑しながら作り終えると、それを盛り付けて八神姫の社へと向かう。

道中、すずは老婆に呼び止められた。額に入れ墨を施し、歯はギザ歯になってたのに驚くすず。まじない師らしい。後で伺うので、社で待つようにという言伝を言い渡され、再びすずは社へ進む。


朝食も終えた八神姫とすずは、社の中で老婆を待った。

八神姫の髪を梳いているときに、社の戸が開かれ、老婆が入ってくる。


「よっこいしょ」老婆は、八神姫の前に座ると、風呂敷をドサッと置いた。

髪を梳いていたすずも手を止めて、八神姫の側に控えた。


老婆が風呂敷の結び目を緩めていく。

何も言わない老婆をすずと八神姫がかたずをのんで見守っていると、結び目がほどけて中身があらわになった。


「むぅ!!」八神姫がとっさに両眼を覆った。

「うわぁ……」すずは、物珍しさについ凝視してしまう。


風呂敷の中身は、2体の土で作られた人形だった。

服を着ている作りでは無く少し誇張された体が、男と女をかたどったものであると証明していた。


「八神姫、そなたは先人の教えを学ばねばならぬ」

「……い、いやじゃ」八神姫は手で顔を覆いながら答えた。

「昨夜オオナムヂ様をお返ししたそうな。サシクニワカ姫様がお嘆きじゃった」

「……あっ、あれは」

八神姫は、耳元まで真っ赤に染め上げて、膝の上に置かれた指先をちょこちょこと合わせだす。

つづけて、たまに閉口しつつも、もごもごと昨夜オオナムヂを返したとされている理由を説明する。


それを聞いたすずも老婆もがっくりと肩を落としたのだった。

「それでは、なおさら八神姫にはお勉強頂かないとじゃ」

「女が先導してはいけないのではないのか……」

八神姫は、しばらく俯いた後、覚悟を決めたように、ゆっくりと頷いた。



八神姫とすずは、真っ赤になりながら説明を聞いていた。

「女の足りない部分を男のそれで挿し塞ぐ」

説明する老婆は、尊い儀式について語っている様に厳かな雰囲気で人形を操る。

また、人形の顔も埴輪の様になっているので怖さと直視出来ない雰囲気とで行為の儀式的要素が伝わってくる。


「こうじゃ」

最後に2体の人形が合わさったときには、すずも八神姫も目を背けてしまった。

二人とも、湯気が体中から沸きでているように熱くなるのを感じていた。


「あとは男の体にイザナギの命の御霊が降ろされ勝手に動き出す。……さて!これで終いじゃ」

そうならさっさと人形をかたずけて欲しい所だが、老婆は良く見なさいと言ってそれを八神姫に持たせようとする。

八神姫がそっぽを向くと、すずに持たせる老婆。

「えっ……」困惑しながらも2体の手のひらほどの人形を受け取る。

「どこに入れたか、しっかり見るんじゃ」

すずは社会人。初めてではなかったが、意識したのは久しぶりだった。

「いや……、えっ?は!?」

困惑するすずに老婆が真剣な視線を送る。

「遊びじゃないぞ」

「じゃ、じゃあ、ほら。八神姫、ちゃんと見てください」

重要なのはあなたでしょ?と言わんばかりに八神姫の目の前に人形を据えるすず。

「な、なにを言い出す!?わらわはもう分かった!すず!主にもいずれ必要になる知識じゃ!」

八神姫も負けじとすずの前に人形を戻す。


「何してるの?」

噴き出すような笑い交じりに出された声に、すずも八神姫も動きを止める。

「おや、これはオオナムヂ様。いつから」

「少し前からかな。いいよ続けて」

「いや、もう終いじゃ。さて、わしは戻りますぞ」

老婆は、そう言うとゆっくりと立ち上がり、すずの前にあった人形をとって丁寧に風呂敷へと包みなおした。

「それでは」

老婆がそう言うと、社を後にする。


老婆とすれ違いざまにウサギが軽い足取りで入ってくる。

「終わったのか?」

事を知っていたのかオオナムヂに確認するウサギ。オオナムヂもうん。と答える。

「なあ、すず!」ウサギが口を開くが、オオナムヂが被せる様に「あ~あ」と大袈裟に嘆いた。

すずと八神姫は、オオナムヂたちの顔を見ることができずに、互いの指先に視線を落とすばかり。

「私が教えてあげたかったのに」大袈裟に落胆するオオナムヂ。

「どの口が言っておるのじゃ!!歯が当たった程度で逃げ出したくせに!」

バッと顔をあげて息巻く八神姫。

「わ、私だって勉強したさ!!」オオナムヂも応じて息巻く。

「二人まとめてだって相手にできる自信はあるよ!」

「ゲッ」

ウサギが顔をクシャッとゆがめる。

「し、信じられない!!」

すずが怒鳴る。

「あれ?怒らせちゃった?冗談なのに」

当の本人はきょとんとしている。

「よくも奥さんの前でそんな事!」

「ダメな事じゃないだろう?」

「だっ、だめだよ!!」

「わらわは、その様な小さき事、気にはせん!好きで嫁いできたわけでもない!中つ国と我が因幡国との交易の為じゃ!!仕方なく子を産んでやるのじゃ!たわけ!」

すずと八神姫はしっかりと顔をあげてオオナムヂを睨みつける。

「二人ともつれないなあ」

オオナムヂは、バツが悪そうに呟いた。


しばらく睨み続ける二人に、視線を泳がすオオナムヂ。

その沈黙を崩すようにウサギが口を開く。

「あのさー」

「あ、ああ!そうだったね」オオナムヂがホッとしたようにすずを見据える。

「すず、ウサギと一緒に彼の住処を探してやってくれないか?」

R18に悩みます

古事記があれなんだよなぁ……

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