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村長は大変だ

ロナルディです。


 僕は何でもソツなくこなしてきた、エルフの代名詞でもある弓術、植物操作、森の加護、様々な属性の魔法。


 祖父母から教えられた経済学、帝王学、人心掌握術、父母から教えられた様々な植物の知識。


 何をしても双子の姉と比べたら習熟も早く、周りのエルフ達から見たら完璧な子供だったのかも知れない。


 だから常に期待され続けてた……それがとにかく重かったんだ。


「エルフ種を背負うなんて気負わずに、若いんだから自分のやりたい事、自分の見たい物を優先しにゃいとにゃ」


 小さい頃から近所に住んでた、僕の父母と同じ冒険者パーティーに所属していた白猫さんに何時も言われてた事が出来てるのかな?


「種族を超えて小さな村を経営するのが、こんなに大変なんて……爆釣は良くやってたな……」


「たぶんだがな、アイツは何も考えて無かっただけだ、やりたいようにやれば良い」


 色々とアドバイスをくれる海皇様だけど、偶にとんでもない事を言うんだ。


「世界樹を少しだけお裾分けしても良いと言う許可が出た。金には出来んが、アイツらの事が心配なら出荷しても大丈夫だぞ」


「それは……少しだけ心配だったので、常備薬程度に渡せたら安心ですね」


 コレなんかは、有難かったけど……


「鮭の刺身が殊更人気が出てな。時期になったら日に2tくらい生鮭を出荷してくれないか?」


「ああ、それは……出来るだけで良いでしょうか? 一応こちらにも日々の仕事があるので」


 コレなんかは、ちょっとした無茶ぶり。


「海底に竜宮城を作ろう、美しい人魚達を雇って、女日照りが続いている神々から、しこたまぼったくろうじゃないか」


「そこまで手を回せません。一応植生管理が本職なので」


 これは少し面倒臭い無茶ぶり。


「これを読め、そしてこの書に出てくる酒池肉林をアレンジして、エデン風酒池肉林を作ろう」


「嫌です。日々の癒しを求めるのは良いですが、堕落はいけません」


 困る無茶ぶり……


 ちょくちょく関係している世界の神々を視察に連れて来る海皇様は有難いけど、たまに本気でサッサと帰って欲しくなる。


 だけど……


「このまま、あの世界に置いておくと種が絶滅してしまう。エデンで保護してくれ、それなりの謝礼は出すつもりだ」


 頻繁に連れて来る様々な海の生き物達。

僕の故郷だけじゃ無い、ここの海を地獄として使っている様々な世界から連れて来るんだ……


 海皇様は、いったい何個の世界の海を守護しているのだろう……


「しかし、こんな大きい海牛だと食料となる魚が……」


 連れて来られた海牛達はステラーと言う種族名らしい。

大きい者だと全長10mにも届こうかと言うくらいで、こんなのが島の近くで暴れたら……


「大丈夫だ、少しだけ遠浅の海にワカメを増やしてくれ。ダークエルフが海藻を育てるのは得意だっただろ? コイツらは草食だし、温和な種族だからな」


 僕も見習わないとと思う反面、色々な事に手が回らない方が辛くて……


「村長、金ピカみかんが足りてません。早く果樹園に行って仕事してください」


 これは僕の責任だな。変な物をその場の勢いで作っちゃダメだって良い教訓になってる。


「村長、ダークエルフさん達が砂浜で全裸なんです! 子供の教育に悪いので止めさせてください」


 それは種族的な伝統だからな……

ちゃんと全身日焼けして、健康的な小麦色の肌を維持する事に文句は言えないし、期間と時間を決めて対応するしか無いか……


「獣人さん達がアッチコッチでオシッコするのは、どうにか出来ませんか?」


「アレはオシッコじゃ無くて、匂いを付けるための体液なんだよ。対策を考えるからもう少し我慢して」


 こんな時に爆釣はどうしてたんだろ? 多種族で共に暮らすって事はホントに大変だ。



 有難いのは人間の家族。


「村長、あまり無理はなさらずに。手が足りない時は私たちが居ますから」


「ええ、ホントに辛い時は頼らせて頂きます」


 爆釣は人間を増やすのを嫌がった、僕も爆釣から話を聞いて、色々な事を調べて、その意見には賛成してる。


 だけどホントに助かってるのも事実で、増やしたい思いに駆られる日々が続いてる。




 僕の癒しの時間は妻と2人でゆっくりと夜を過ごす事。


「リスティどうだい? 苦しく無いかい?」


「ええ、大丈夫ですよ。ドワーフの出産は安全なもんですから、あまり気負わずに。今からそんなだとロナが疲れちゃいますよ」


 もうすぐそれも妻と子供と3人で過ごすに変わるんだろうな……


 僕はエルフで耳が良い、聴力に特化した獣人と変わらないくらい。だから、妻と2人の時間を誰かが邪魔しに来るのもすぐ分かる。


「村長! 中野の婆さんが産気づいた! 早く早く!」


 世界樹の葉を僕が管理してるから、怪我人や病人が出そうな時は何時も僕が呼び出される。


「まあ大変。ロナ、世界樹を2枚用意して下さいな。私は先に行ってますね」


「2枚で足りるのか?」


「病気や怪我じゃ無いんですから大丈夫ですよ」


 毎年若返ってゆく管理人夫妻……元は老人にしか見えなかったのが、今じゃ僕と変わらないくらいの年齢に見える……


「ガハハっ。まさか130を超えて子が出来るとは思わなんだ」


「先を越されてしまいましたね……」


 人間は凄いな……最初に入植して来た家族達以外に新規入植者なんて居ないのに、ここ数十年で数を数倍に増やして……


「それもこれも、お主が住み良い村を維持し続けてくれるおかげじゃ。こんなに裕福な生活が出来る場所を貰えたら、生きる力も湧いてきよるわい」


 様々な生き物が増えていく政島と小政島……


 今では島と呼んで良いのか分からないくらいの大きさになったけど……


「しかしじゃ、総人口も万を超えたんじゃし……そろそろ村と名乗るのは変じゃ無いか?」

 


 そして僕は……


「ほへー、ロナルディが市長……なんと言って良いかわかんねえけど、おめでとうで良いのか?」


「選挙って形を取ってみたんだけど、投票率100%で子供達まで僕に投票してくれてさ……反対票は1票、僕が中野の爺さんに投票しただけで、他は全員僕に入れるとか……」


 ここ数年、毎月恒例になった、お食事処 釣政丸での息抜き……


「それだけロナが信頼されてるって事でしょ?」


「ええ。皆がロナに任せたら、何もかも上手く行くって言ってくれますね」


 友人の妻でもあり、僕の恩人でもある猫神様の今の姿は人間で、僕も僕の妻も人間の見た目に変わってる。


「めんどくさい事はロナルディに任せて、住民は毎日を楽しく生きて行きたいと思ってるんだろうな」


「あぁそりゃ分かる。何時も最後は爆釣に任せるで会議は終わってたもんな」


 この場に居る時は、何一つ気負う事無く過ごせるのが救いで……


「なあ爆釣、早く地獄に落ちてくれよ。そして僕の仕事を半分やってくれよ」


「地獄に落ちろとか酷い事言うなよ、そりゃ地獄行きなのは確定してんだけどさ……」


 いずれは帰って来る事になっている僕の友人。


「ロナルディ、爆釣の行先は政市とは海を隔てた小島だぞ。そっちと交流を持てるようになるまで、それなりに時間が掛かるはずだが」


「え? 小政市に全行政機関を集めて、爆釣を小政市の市長に指名するつもりだったんですが……」


 くそう……まだまだ楽は出来ないみたいだ。




 友人が年老いて店を続ける体力も無くなり、もうすぐ地獄に帰って来るとなって、準備は万端。


「さあ、あと数日で英雄と会えるぞ」


 ダークエルフ達と共に生きて数を増やした海牛に船を引く訓練をして、今では丸1日あれば海を1周出来るようになった。


「海牛達の体力は大丈夫か? 補助のための帆を拡げなくて大丈夫か?」


「なあに市長殿、我々ダークエルフとステラーが居れば何も問題は起きないさ。もっと胸を張ってドンと構えててくれ」


 村長から市長になって……

 次はいったい何になるんだろうな……


「やっぱり慣れない……気持ち悪い」


 とりあえずは、帰って来た友人夫妻を迎えに行くのが先かな。

 

 





トールキンの指輪物語に出てくるような典型的なエルフと思ってください。


 イケメンってだけなら、ちょっと使いづらいので、少しだけ苦労人にしておきました。


 読んで貰えて感謝です。

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