アイドルって何?
ポム=魚釣 ポローニャ
アイドル活動を始めた私、なんでそんな事を始めたのか? それは愛する人がアイドルと結婚したいらしいから。
「それじゃ爆釣は私の事をお嫁さんとして扱ってくれてなかったって事?」
「まさかポムちゃんが嫁ぐ体で地獄に来ていたなんてな……」
爆釣の地元の人間達には色々と結婚する前に手続きがあるらしい。
私の一族だと群れを離れて雄の所に行く=結婚なんだけどな……
なんやかんやあって、子供を産んであげられなくてゴメンねって思いながら消滅したはずの私は、愛する旦那様に与えられた時間を得て復活を遂げた。
「しかし兄ちゃんも気が利くのか心配性なのか分からんな、自分の手が届く範囲で修行させないと心配だとか……」
しかも人間になって……
「ゴメンね大変だったでしょ?」
私の直接の上司でもある九尾の猫神様や、更にその飼い主の最高神様がポセどんのお兄ちゃんと相当な勢いで揉めたらしい……
「大変なんてもんじゃないさ、消滅したはずのポムちゃん成分をえげつない数の神々が全宇宙の隅々まで探し回ったんだからな、頼むから今度は天寿を全うしてくれよ」
全ては地獄の管理をしてるポセどんのお兄ちゃんの責任だって、管理人を置いただけで放置してたのが悪いって……
「それは……ホントに申し訳ないとしか言えない」
私の魂は1度生者のソレになって、死んでから猫神に戻るらしいんだけど、それまでは人間として、爆釣と同じ世界で修行しなくちゃいけなくなった。
「で、爆釣の所には何時になったら連れてってくれるの?」
「それはポムちゃん……」
ポセどんが言うには、爆釣はアイドルと結婚出来るなんて言われて飛び跳ねんばかりに喜んだらしい。
「んで、アイドルって何?」
「そこからか……」
アイドル活動は大変だった。
毎日ちゃんと化粧しなきゃだし、常に笑顔じゃなきゃダメだし、ヨレヨレのジャージを着てると怒られるし……
魚を頭からバリバリ食べちゃダメだし……
お腹いっぱいになって、地面に寝そべって日向ぼっこしちゃダメだし……
それに1番辛かったのが……
「ねえポローニャちゃん、今夜どう?」
「ごめんなさい。どうしても無理です」
沢山の男の人に誘われる事。
はっきり言って、どの男も顔だけで生活力皆無だし、私が伴侶に選ぶ基準を1つも満たしてない相手ばっかり。
小さな虫で悲鳴を上げる奴とか居て、本気で引っ掻いてやりたくなる。
「うちの所属タレントに手を出そうなんて勇気あるな、どうせなら俺とどうだ? 美味い鼻血を飲ませてやるぞ、整形して形の整ってるお前の蛇口を捻り潰してな」
「あっ! 保生さん……いえ……その……」
芸能事務所ってのの社長の時のポセどんは、なんと言うか悪そうな感じ。
私の地元でも悪人って言われてた感じの人達みたいに見える。
奴隷とか売り買いしてたり、盗賊団の元締めだったり、そんな感じのオーラが漂ってるんだ。
「ねえホセどん、もう1年だよ、まだ会っちゃダメなの?」
「う〜む……すまんな、付けている監視の話によると、今1番大切な時期らしいんだ」
爆釣は生きる為の術を学んでる所で、毎日必死に美味しい料理を作る勉強をしてるんだって……
私は週に3日、ポセどんと一緒に堤防に行ったり、筏に乗ったり、船に乗ったり、釣り堀に行ったりして魚釣りしてるだけ。
でもそれをテレビに流したら、なんでか知らないけどお金が貰える。
「ポムちゃん。握手会はしたくないよな?」
「うん、したくない」
1度だけ握手会ってのをやった事がある……
沢山の男の人の手の匂いを付けられて、数日気分が悪かったんだ……
「ねえポセどん、本当にアイドルじゃないとダメなの? 普段の私じゃダメなの?」
「すまん、俺が約束してしまったんだ。あと数ヶ月、あと数ヶ月だけ頑張ってくれ」
まあ約束なら仕方ない。だって住む所とか食べる物とか色々お世話になってるし……
1年半くらいだったかな、色んな釣り道具を貰って、色んな釣り用の服を着せられて、笑顔で釣りして、釣った魚を食べて、アイドル活動を無理して頑張って、やっとの事で会えた爆釣は、私を見ても私と分かってくれなかった。
「ゔゔゔゔ……」「ごめんポム……」
とりあえず許してやる、他の雌の匂いもしないし、何時もの爆釣の匂いだし。
それに爆釣の口から「俺とずっと一緒に暮らそう、俺の嫁になってくれ」なんて言われたからさ。
許してあげないと可哀想だし……
目元にシワが出来て、前より少しお腹が出て、加齢臭が少しキツくなった爆釣だったけど、ずっと料理は上手になってて……
まあ、色々と恥ずかしい事はあったけど、私と爆釣は本当の番いになった。
結婚式は2回したよ、私の地元と日本で1回ずつ。
日本で挙げた式は白無垢ってのを着て、いつの間にか訳もわからず終わってた。
印象に残ってるのは……
「ポローニャさん! お兄ちゃんの収入がクソだったら何時でも逃げて来てね、苦労なんかしちゃダメだよ」
口の悪い爆釣の妹と……
「爆笑の癖に元アイドルの嫁だと! 俺には彼女すら居ないのに……」
爆釣の事を爆笑って呼ぶ、爆釣のすぐ上のお兄さんと……
「ポローニャさん、爆釣は色々と足りない所があるかも知れないけど、助けてあげて下さい。あと家族全員分のサイン下さい」
私の出てた釣り番組を毎週欠かさず家族で見てくれてた家族全員釣り好きな上のお兄さん。
何となく感じるのは、兄弟全員仲良しだって事。
私の地元で開いた結婚式は……
豪華過ぎるとでも言えばいいんだろうか?
ロナやリティも来てくれて、一族の殆ども出席してくれて、私が一緒にパーティーを組んでたロナの両親や最高神様や……
「お前達を祝福してやろう。結婚祝いだとっておけ」
なんて言って、私と爆釣に猫アバターをプレゼントしてくれたポセどんのお兄さん。
「何時でも実家に帰って来ても良いように、私が送り迎えしますからね」
なんて言ってくれる、日本でも仕事してる私の地元の動物神で1番偉い兎神様に言われて……
「金銭的な負担なんかさせられないから、これを持って行きなさい。何時でも換金して使ってくれて良いからね」
爆釣に内緒で最高神様から貰った東京ドーム何杯分? ってくらいの大量の金塊……
猫になった爆釣は、ボス猫に相応しい体格と見た目、強そうな匂いと、余裕のある仕草で、さすが私の旦那様って感じ。
でも誰かにアバター操作して貰わないと変化出来ないんだよ……アバターって高いのに勿体ない。
「ポムちゃん、その金塊を一度に換金されると地球の金相場が崩壊するから、少量ずつ頼む。換金する時は俺に相談してくれ」
私が受け取った様々な結婚祝いを、わざわざ新しいスマホにインベントリ機能を付けて入れてくれたポセどん……使う為の神様の力はポセどんが毎日補充してくれるんだって。
「ポローニャ、丈夫な子を産まにゃいとにゃ。だんにゃ様とにゃか良くするにゃ」
ママからは、色々と子育てのアドバイスを貰って……
結婚式の最後に……爆釣と私のアノ動画が流れて……
「うわあ……爆釣って全身火だるまになったんだ……」
「ポムなんて濡れてホッソリしてんじゃん……」
私が消滅した後の爆釣は本当に可哀想で……
私が復活出来ると聞いて、一瞬も躊躇わず考えることも無く全てを差し出すって……
ちょっとこれは愛され過ぎな気もするけど……
私と爆釣に2人の子供が出来て、その子達も独立して、それぞれに相手を見付けて結婚して……
いつの間にかひ孫まで出来て……ひ孫の結婚式も1組は見れたし……
「たぶん明日の朝には目が覚めないと思うけど、エデンで待ってるね」
「おう。こっちの事、全部整理して終わらせたら俺も逝くから、あんまり無理はするなよ」
爆釣は97歳を超えてヨボヨボのお爺ちゃんになっちゃって、私は94歳で寿命を迎えた。
「ふにゃ、ポセどん。政島の反対に作った島はちゃんと猫草が生えてるのかにゃ?」
「そこはちゃんと、猫草花壇があるから心配するな。猫が住むにはかなり良い環境を整えてあると言える」
爆釣が来る前に、ちゃんと縄張りにしとこう。
「いまだにポムには理解出来にゃい事があるにゃ」
「ん? 何がだ?」
それは……
「にゃんでおんにゃの子が魚釣りしてるだけでアイドルって言う職業ににゃるにゃ?」
「俺にも分からんな。しかしそれで給料が発生するのが地球の不思議な所さ」
ファンタジーか……それなら納得するしか無いのかな?
バッチリ化粧したら、CGか? なんて聞きたくなるくらい整った顔立ちの美人さんって設定でした。
ニーアオ〇トマタに出てくるアレっぽい感じと思って下さい。
初期プロットではメイド服にしようと思っていたのですが、ジャージにしました。
爆釣が「地味目な女の子が好み」と言うシーンを出したかったのと、爆釣の好みに合わせていたと言う設定を盛り込みたかったので。
猫型だと、フワフワの毛とシュッとした顔立ちの美猫ってイメージです。
種族的な所は、同シリーズ おっさん家! の、にゃん族パートを参照してください。
読んで貰えて感謝です。