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妹ストーカーシリーズ

妹がストーカーになっていたんですけどぉ!

「お兄ちゃん、あのね、相談があるの」


 家のソファーで寝転んでいる俺、夜拘零季(やこう れいき)に、妹の響菜子ひなこがクッションから身を乗り出し話しかける。


「響菜子、どうした? 悩み事か?」


「うん。お兄ちゃんに聞くのが一番早いと思ってさ」


 響菜子はそのまま手を伸ばし、テーブルの上に置かれたリモコンを取る。

 そしてそのままテレビを切った。


「あぁ! 見てたのに!」


「大事な話だから、よそ見されると困るの!」


 大事な話と言っても、番組の録画を忘れ泣き叫んでいたヤツのことだ、テレビを諦めてまで聞くことではない。


「悪い悪い。俺、今は忙しいから」


「さっきまでテレビ見てた癖に。いいから聞いてよぉ」


 と、響菜子はポケットからスマホを取り出す。

 画面には地図と共に人のようなマークが写っている。


「なんだそれは? 友達の居場所がわかるというちょっとヤバめなアプリか?」


「そんな危ないアプリ入れてないよ。これは気になる人のことなんだけど……」


 顔を赤くし、言葉を濁しはじめる。

 あれか? ラブコメであるデレとかいうヤツか?


「あの……その、GPSとかをその人のカバンにこっそり入れたから、いつでも居場所がわかるからだけど、男子が友達と一緒にカラオケ行くってことはそういうことなの?」


 お前、アプリより危ない。

 ツッコミ所が数多くあるが、とりあえず置いておこう。


「そういうことって?」


「その、男色みたいな……」


「ならねぇよ」


 だれだけBLの影響受けてんだよ。

 というかそれだけじゃない。


「待てお前、気になる人にGPS入れたって……」


「だって心配なんだもん! 男子もさぁそういうことしたりとか」


「いや無いわ!」


 あれだ。いつの間にか妹がストーカー化してたパターンだ。

 そんなパターン聞いたことないけどな。


 さらっと緊急事態に突入したな。

 妹が現代に入ってから追加されたような、新しい法律に違反している。


「ちょおい、お前それストーカー行為だぞ! 急いで警察に連絡しないと」


「待ってよお兄ちゃん、ストーカー好意こういって何!?」


好意こういじゃなくて行為こうい!」


 そんなこと言っている場合ではない。

 妹が犯罪者予備軍なのだ。


 スマホを取り出し110に通報しようとしたら、響菜子は俺の腕を必死で掴みかかり、妨害する。


「警察に連絡って、お兄ちゃんは一途な妹を可哀想かわいそうだと思わないの!」


「一途じゃない、執着だ! 被害者の方が可哀想かわいそうだろ!」


 く、離せ! 俺までが共犯になる!


 俺は家族が犯罪を侵した時でも、即効で通報できる善人だ!

 というか、いつの間にこんな拗らせ方したんだよ!


「しょうがないじゃん、だって好きになった人のことは全て知りたいと思うのが乙女心なんだよ!」


「お前の場合は、相手の全てを掌握したい、サイコ心だろ!」


「お兄ちゃんのバカー!」


 スマホを取られ、遠くにポイ。

 通報する手段を失った。


「もういい。自分で彼に、何しているのか聞くから」


 再びポケットから取り出してスマホを操作しつつ、階段の方向へ。


「ストップ。そもそもお前はその人の何なんだ? 恋人でもない人に居場所がバレていることを知ったら、その子怖くて家から出られなくなるかもしれないぞ?」


 振り返り、さも当たり前のように響菜子は、


「そうしたら、私の部屋でお世話してあげる。私の部屋に匿ってあげれば、何も怖くないでしょ?」


「それは監禁って言うんだよ! まさに根っからのサイコパス!」


 妹の目が澄んでいる。これはマジなヤツだ。


「と、とりあえずお母さん達に言っておくからな」


「えぇ、何で! もしも見つかったら、彼が追い出されるかも知れないんだよ! そんなことになったらどれだけ危ないか……」


「お前の部屋から出た方が、むしろ安全だ!」


 妹の手からスマホを奪う。そして、GPSとのリンクを遮断した。


「はぁ、これは預かっておくからな。不本意だが、この件は秘密にしとく。――今度会ったら、こっそりGPSを外しとけ」


「えー、何かあったらどうするの!」


「既に何かあったんだよ。というか、お前が何かをしたんだよ」


 俺から奪い返そうとするが、途中で諦めたようだ。

 ソファーに座って、ポケットからイヤホンを取り出し、着けていた。


 時間が経てば忘れるだろう。


 自分の部屋に妹のスマホを隠して、リビングに戻った。

 響菜子は忘れてしまったのか、ソファーに寝転んでいる。


「オラオラどけどけ、テレビ見ないといけないんだよ」


「何その使命感。まぁ、お兄ちゃんだからね」


 どういう意味だ。てか、ストーカーに言われたくは無い。


「そういえばそれ、何聞いているんだ?」


 ソファーの裏からは気付かなかったが、響菜子はイヤホンをして、何かを聞いている。


「ん? あっ、これだめ」


 逃げようとする。凄く怪しいな。


「止まれ。警察に突き出すぞ」


「えぇ! でも、これは……!」


 絶対ヤバいヤツだ。

 捕まった響菜子は必死に抵抗するが、俺の力に敵うはずが無い。


 イヤホンを奪い、ティッシュで拭き、耳につける。


 ――と、イヤホンからは案の定、人の声がした。

 GPSと一緒に盗聴機も入れていたのだろう。

 というか、ソイツ隙がありすぎだろ!


「お前、盗聴もしてやがったのかよ!」


「だって! 場所だけわかっても、中で何が起こっているかわからないじゃん!」


「そこじゃねぇ! 場所もわかったらいけないんだよ!」


 ということで、イヤホンと受信機も没収。


「なんでこんなことに……それ、いったい幾らしたと思ってるの……」


「お前はストーキングに、いったい幾らかけたんだよ」


「お願いお兄ちゃん! 彼がカラオケ出るまでは心配なの!『やりますねぇ』みたいになってたらどうするの!」


「○夢のにわかかよ。ダメだダメだ、プライバシーを侵すわけにはいかない」


 受信機の電源を落とし、部屋に持っていこうとする俺の服の袖を響菜子が引っ張って止めようとする。

 そのウルウルした上目遣い、やめろ。


「うっうっ……!」


 あぁもう! 仕方ないなぁ!


「出るまでだぞ。俺がご丁寧に状況を実況してあげるが、終わったら完全に没収だからな」


 テーブルに受信機を置き、電源を入れてイヤホンをつける。


 音量が小さいので上げてみると、ようやく聞こえてきた。


『やりますねぇ』


 なってる。

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