セバスチャンと少女なオセロ
「……セバス、てぬきでしょ」
「いいえ、お嬢様がお強いのですよ」
「もういっかい」
「かしこまりました」
「……つぎはてぬきなし、ほんきでね」
「勿論でございます」
「ぜったいだよ?」
疑われておりますね。
賢いお嬢様には奥の手です。
「では、こういうのはいかがでしょう」
「あ!あめ!」
「はい、私めの好物でございます」
「こうぶつ?」
「好き、ということです」
「わたくしも!セバスのあめはとくべつこうぶつ」
「それはありがとうございます。そこで、次に勝った者がこの飴を貰える、というのはいかがですか」
「なるほど!てぬかないのね!」
「左様でございます。飴が欲しいですから」
「もっかいはじめから!」
「はい」
〜〜〜〜〜
「むむむ……」
「……おじょ「しーっ」……畏ま「しずかにっ」……はい」
このままでは大差で勝ってしまいます。
序盤、僅差で負けようとしたのが裏目に出てしまいました。
調整が非常に難しいのです。
お嬢様の手は予想外すぎて……ほら。
「ここっ!」
さて、どうしましょうかね。
残りは二手、負けが失くなってしまいました。
双方、泣き決定……
いいえ、泣かせませんとも。
奥の奥の手、最後の手段です。
問題はタイミング。
「セバス、まだー?」
「もう少々考える時間をくださ「はやく!」……畏まりました、こちらに」
「あ!あああぁぁ」
ここです!
さぁクロ、やっておしまいなさい!!
「わんわんわんわんっ」
「きゃーっ!!」
「おやおや、仕方ありませんね、クロは」
助かりました。
「もー、クロってば!きらい!!」
「きゃうん!?」
……この借りは高くつきそうですね。
致し方ありません。
「クロ、あっちいってて!セバス、もっかいだよ!」
「……畏まりました、お嬢様」
次が勝負です。
一手も誤らないようにしないといけません。
しかし……脳が疲れを訴えています。
脳の食事、ブドウ糖の補給……飴……
「わんっ」
分かってますよ。
あれは後で用意しますとも。
「わんわふぅ」
違う?
飴が?
……賭け?
その様なつもりは……はっ
い、いいえ?誤ってなどおりませんよ。
大丈夫です、大丈夫。
お嬢様は大変賢いですから……
…………。
「わふぅ」
……そうですね、しっかりフォローしなくては。
クロには大きな借りをつくってしまいましたね。
「わんっ」
あぁ、本当に高くつきそうです。
「セバス?」
……おっと……そこですか。
自由な発想が素晴らしいです、お嬢様。