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セバスチャンと幼女なサプライズ

 


「あんどー」

「アンサビニファルクロニネルエディー様、お邪魔いたします」

「おお、お嬢。今日はアニーと一緒か。昼飯ならお嬢の好きな卵サンドだぞ」

「やったー!」

「ふふっ、良かったですね、お嬢様」

「うん、あんどーのたまごだーいすき!」

「お嬢様は料理長にご用があったのですよね?」

「お?何だ?」

「あ、そうだった!あのねー、ないしょなの!」

「がっはっは!内緒のお願いか」

「おみみこっちよ、あのね、こしょこしょこしょ……」

「……そりゃ喜ぶだろうな。よし、やるか!」

「やったー!」

「あいつ、どんな顔をするか楽しみだ。泣くかな?」

「なく?ないちゃうの?」

「嬉し泣きってやつだ。うわー、楽しみだ!」




「セバスチャン様、旦那様がこちらを、と。あとこちらは女官長から、そして……」


 なぜ今日に限って、こんなに机仕事が多いのでしょうか。

 お嬢様との時間が無くなってしまう……

 はぁ、頑張って早く終わらせましょう。




「あのね、はわととね……」

「はわと?ってなんだ?」

「もー、はわとははわとなの!」

「ハートですね、お嬢様」

「おお、ハートか!」

「こっちはこうしたいのよ」

「ぶふっ、なるほどな。んじゃ焼いてからアイシングのがいいかもしれん」

「あいししん?」

「ははっ、色んな色の甘ーい砂糖のやつだよ」

「さっすがあんどー!いいねぇ!」

「んじゃ準備して、これも焼いてくるから待ってろよ」

「わたしがつくるの!」

「アイシングをか?」

「もちろん!びっくりなんだもん」

「……そうか。こりゃ手がかかるこって」




「セバスチャン様、もう少し薔薇を植えたいと思うんすが」

「薔薇ですか」

「大きな薔薇が咲く新種が出まして。ちょっとこっちの開いたとこに植えたら綺麗だと思うんすよ。見てもらえませんかね?」


 やっと終わったと思ったら、トムめ……ふぅ。


「どのくらいかかるのですか?」

「あぇ?!いや……」

「?どのくらいの予算が必要なのですか」

「あぁ!ちょっと高いんすが……」


 指三本。


「却下します」

「えぇえ?そりゃちょっと値段は張るけど」

「ですが、それ、一本のお値段ですよね?何本購入するつもりですか?」

「ぎくっ」

「却下で」

「そんなぁ」

「当然です」

「……そりゃ大きい花が咲くぞ?お嬢様喜ぶだろうなぁ。新種で珍しいから、旦那様も見せびらかすのにうってつけだって」


 ……。


「二本だけですよ?あとはあなたが増やしなさい」

「よっしゃ!」


 ガッツポーズ。

 若いですねぇ。

 さて、やっとお嬢様のところへ向かえます。





「お嬢様」

「わわっ、せばす!みちゃだめ!」

「……失礼いたしました」


 ぱたん


 ……ふぅ。

 仕事、しましょうか。





 こんこん


「どうぞ」

「セバスチャン様、お嬢様がお呼びです」

「……わかりました、すぐ参ります」




 こんこん


「どうぞ」

「お嬢様、お呼びでしょうか」

「せばす、おたんじょうびおめでとう!はい、ぷれれんと!」

「……お嬢様……」

「あ、しっぱい!おたんじょうびおめでとうございます。うふふ」


 見事な淑女の礼です。

 立派になられて……

 ……こういうことでしたか。

 さすがに想定していませんでした。


「あり、がとう、ございます、お嬢様」

「あけてあけて!」

「これは……」


 クッキーです。

 ピンクのハートと……


「せばすなの!あまくておいしいんだよ。あんどーとあにーとつくったの」


 手作りクッキー。

 嬉しいわですね。

 本当に嬉しいです。

 歳をとると涙もろくなりますが、絶対泣きませんよ。


「セバスチャン、良かったなー。おめでとう」

「おめでとうございます」

「「おめでとうございます!」」

「料理長もアニーも、皆さんもありがとうございます」


 料理長の顔を見たらわかりますよ、だらしのない表情で。

 全員の期待?

 知るもんか。

 祝っていただけるのは嬉しいですが、

 絶対

 ぜったいに

 泣いてなんかやりません。


「せばす?」

「お嬢様、本当にありがとうございます」

「うふふ、せばすだーいすき!」


 涙ではありません、汗ですからね。

 ちくせう。







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