セバスチャンと幼女なかくれんぼ
「せばす、いっしょにあそぼ」
「はい、お嬢様。何をしましょうか」
「かくれんぼ!せばすがおにねー」
「それはいいな」
「それじゃ、せばすはじゅうだよ、ある、いこう」
「ああ」
手を繋いでいますね……
そんなにお急ぎになられると転びますよ。
ほら。あぁ……
……中々やりますね、アルフレッド様。
「せーばーすー、こっちみちゃだめ!かぞえるの!」
「かしこまりました。いーち……にーい……」
「きゃーっ!ある、はやく!」
「ああ」
ゆっくり数えましょう。
十じゃ隠れられないでしょうし。
「きゅーう……じゅう!」
さて、行きましょうかね。
「どこにいくのだ」
「こっちこっち!」
「せばすがきたぞ」
「きゃーっ、はやーい」
「そこにかくれられるのではないか?」
「そうしよう!くすくす」
「しーっ、だぞ」
「お嬢様はどこにいますかねぇ、ここかな?」
頭隠して尻隠さず。
ぴょこぴょこしています。
こんなに早く見つけてしまうと面白くないでしょう。
素通りです。
「いったぞ」
「うふふ、ある、つぎあっちにかくれよう!」
「わかった」
「セバスチャン様。お嬢様は?」
「ああ、ミリー。かくれんぼをしておりまして」
「まぁ!それは楽しそうですね」
「何かありましたか?少しなら構いませんよ」
女官ミリーですね。
大方あのことでしょう。
「お客様が夕食を召し上がっていかれると。お嬢様の衣装はいかがいたしましょうか」
「やはりそうですか。全く……」
突然のことには慣れてはいますが、本当に困ったものです。
「お嬢様は薄水色のドレスで」
「アルフレッド様のお色ですね」
「袖が細めのシンプルで動きやすいものがよろしいかと。メニューに関しては料理長にお任せします」
「かしこまりました、伝えておきます」
「よろしくお願いします。では」
「ふふっ、大変ですね」
「楽しんでおりますから」
「ある、こっちこっち!」
「ちょっとまってくれ」
「もー、あるはおそいんだからー。もっときたえないと」
「いや、おまえがはやすぎるんだ。どこにいくのだ?」
「ごほんのへや!」
「しょこか」
「うん!せばすみつけられるかなぁ?うふふ」
そろそろ良い時間ですね。
お迎え……じゃなく、見つけに行きましょうかね。
「どこでしょうかね、ここかな?」
大変静かですね。
あぁ、居ました。
「お嬢様、アルフレッド様、見つけました」
「しーっ」
お嬢様が寝てしまいましたか。
少し遅すぎたようです。
「遅くなって申し訳ございません」
「うむ、よいのだ。じょうずにかくれていただろう」
「はい、流石でございます。探すのに苦労しました」
大人びていても、やはり子どもですね。
表情が分かりやすくて可愛らしい。
「ねてしまったから、かってにほんをかりた」
「それは申し訳ございませんでした」
「して、せばす、これはおもしろいのか?」
……あんのクソ……失礼しました。
はい、平常心平常心。
しかし何と答えれば良いのか……
「そうですね……ええ、お好みによりますかね」
「せばすは?」
「いいえ、好んでみりことはないかと」
「ちちうえのところにもたくさんあるのだ」
「そうでございますか」
「なぜかかくすからきになってな」
なんという……いいえ、平常心です。
「……こちらはおおっぴら、えぇと、一人でこっそりと見るものでございます」
「何故だ?」
何故?
何故でしょうね……流石に困りました。
そうだ、そうしましょう。
「私めには解りかねます。お父様に直接お聞きになられてはいかがでしょうか」
「せばすにもわからないことがあるのだな」
解りませんとも。
解ってたまるものですか。
お子様の手の届く場所にこのような本を置くなど。
せいぜいお困りになればいいのです。
願わくば、あの方々が少しは懲りてくださいますように。