セバスチャンと幼女な算数
「お嬢様」
「いや!」
「お嬢様」
「きらい!」
「……お嬢様」
「……せばすはきらいじゃない」
「それはありがとうございます」
「でもおべんきょうはいや。きらい」
「かしこまりました」
「……いいの?」
「嫌いなものは誰でもあります」
「……せばすは?」
「そうですね、ネズミが嫌いです」
「かわいいよ?」
「それと人参も苦手です」
「……ほんとう?わたしも」
「同じ、でございますね」
「うふふ」
「頭を使うと甘いものが欲しくなります。そこで……はい」
「あめだ!いいの?」
「はい、どうぞ。どちらにしますか?」
「こっち!おおいもん」
「おや、そうですかね」
「うん、こっちがひとっつふたっつ、ふたっつ!こっちひとっつふたっつみっつ、みっつ!」
「いくつ多いですか?」
「えっと……ええと……ひとっつ!」
「素晴らしいです、お嬢様」
「えへへー」
「引き算ができましたね」
「え?」
「では、ひとっつ多い方をどうぞ」
「すくないほうは?」
「私のです」
「……」
「どうなさいました、お嬢様」
「せなすすくないのかわいそう」
「おや、かわいそうではありませんよ」
「ふへーへー、なんだって」
「不公平、ですね。では、こうしましょう。どちらにしますか」
「ぐーしたらみえないからわかんない」
「見えない状態で選ぶと公平では?」
「……」
「では、どうしたらよろしいでしょうか」
「ぱーする」
「このままパーで」
「くるってしてぱーってする」
「こうですか」
「そうそう」
「成る程、そのままだと床に落ちてしまいますからね、流石お嬢様」
「うふふー」
「見えないときは裏返して開いてみればいいんですね」
「……」
「どうなさいましたか」
「ふこーこーのまま」
「不公平、ですね。ではもう一度握って返して開くと」
「……おんなじになってる」
「はい、みっつづつ、ですね。これで公平です」
「せばす、すごーい!どうやったの?」
「お嬢様、見えないときは一度閉じて裏返して開く、それでも見えなければ謎のままでいいんです」
「おいしいねー」
「それはようございました。お嬢様が数を知っていたため公平になりましたね、ありがとうございます」
「……おべんきょう、する」
「嫌いでは」
「こーへー、したい」
「成る程、かしこまりました。流石お嬢様でございます」
「ふふん」