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ある大学内でこのような噂がまことしやかにされていた。
『この大学には反政府運動をしている団体が存在している。かなりの人数が在籍しているらしい。教授ら職員も中にはいるらしい。』というものであった。
この話を馬鹿にするものや一蹴するものがいる一方で、その集団に恋焦がれ入りたいと思う人もいたのだった。
「なあ、俺もこの集団に入ってみたいな。何かいい方法はないのか。」
「さあな、それはこっちも知りたいものだ。」とまあ、このような会話がどこかしらでされていたのだった。
大学内のとある場所で寛ぎながらいる二人の青年がいた。片方は武士のような雰囲気を醸し出している人で、もう片方は、軍人のように筋骨隆々の人であった。
「この集団も大きくなったものだな。最初はただの不満を言えるような小さな集団だったのにな。」
「そうだな、今ではお前がリーダーなんて御恐れたものになるなんて考えもしなかったもんな。そうそう、知っているか、巷じゃあ、俺らのことを正義の軍団なんて呼ばれているらしいぞ、笑えるよな、軍隊はほとんど解散したというのにそれでも人の心にはそういったものを象徴する言葉がそれだなんてな。」
「俺が、総監でお前が、副総監だったか。」
「そうなんだよ。そこの認識から新たにしないとな。」
話し終わったのか置いてあった紅茶を啜っていた。部屋の中にはカップの音しかないほぼ静寂の空気が漂ったいた。そのような穏やかな空気は長くは続かなかった。静寂を破る音がした。
ガチャガチャと音を響かせながら一人の男性が大慌てで入ってきた。彼は、額に汗を流しながら息を切らしながら何とか息を整えるかのように深呼吸を数回して話始めた。
「ようやく、見つけましたよ。さあ来てください。」そう言って彼は、二人の内の一人の腕を掴んだ。
「何も事情の説明なしに人の腕を掴んで何処かに行かせようとするのは如何なものかと思うが。」
「そうだぜ、焦ってやるべき順序を違えるのはお前の悪い癖だとさんざん言ってきただろ。でだ、何が起きたんだ。それを聞かせてもらう時間もないだろうから目的地に着くまでに説明しろよ。」
「あ、ハイ。分かりました。では、先ほどの無礼申し訳ございませんでした。ですが非常時故、このような簡潔な謝罪で許してください。では、今度こそついてきてください。」
彼らは彼の後について歩きだした。
「では、概要ですが、今回の問題は簡潔に言えば、我々の集団に入りたいものが騒動を起こしています。それにより、現在はそれほど被害はないのですが、これ以上時間がかかるようですと被害が出てもおかしくないようです。」
「それで、何故俺たちが呼ばれたんだ。その程度ならお前らでも十分制圧できるだろ。」
「それはそうなのですが、彼らの主張に思う節がございまして。」
「それは、大方騒ぎでも起こしたらいずれ上層部に位置している奴の耳にでも話が入ると踏んだからだろ。だからといって被害を出すなんて浅ましいな。」
「そうですね。ですが、このような事態は今の体制のままなら必ずやってきた問題だと思うので、それなら何かしらしなければと思いましたので、どうせならお二方に出てきてもらうのはどうかなという考えから呼びました。」
「まあ、そりゃ俺たちが悪いかもしれないな。このような事態がまた出ないようにしないとな。これは俺らが責任をもって何とかしよう。」
「言ったはいいが、どうせ、何も考えてないんだろ。仕方ないから考えてやる。おい、場所はそろそろか。」
「そうですね、このペースだと後ニ、三分ってところですかね。」
「そうか、ならペースを上げて早く行くぞ。」
「おいおい、大丈夫かよ。そんなんで戦略を思いつくのかよ。」
「はっ、余裕だ。」
「なら、ここから道を変えます。こっちの道のほうが人通りが少ないので、走れます。」
「おう、分かった。」
彼らは、話を中断して走り出した。目的地へと向かって。




