表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Re:verse-Re:birth  作者: あーる
第1章『夢と現実の狭間と謎編』
98/150

1-74.『愛の形』

「やっぱり……部屋を出て皆の所に戻った方がいい気がする」

「いや、ダメだよ。透お兄ちゃんはここで休んでた方が絶対にいいよ。あ、この部屋じゃ不満なら他の部屋でも……」

「そういうのは特に無いけど……ただ、やっぱり皆のことが心配でな。俺と一緒だった人は今でこそ理性を保てているけど……そのうち、徐々に壊されていって直輝たちみたいになると思うと怖くてな」

「たしかに……そうだよね。皆を信じていないわけじゃないけど、それだけ海崎さんという人は悪い意味で破壊力が凄いから……」

「うん……皆の言う通りにした方がいいよ、トオくん。絶対に近づいちゃダメ。拘束されてても、何らかの手でトオくんに何かしそうで怖いもん……あの人は」


 皆の説得により、透はこのまま部屋に残ることにする。それを聞いてホッと安心する刻たち。燈は自身の胸を撫で下ろした。



「ただ……あいつをあの格好のままにさせるのは流石にまずいんじゃないか? 風邪をひかせてしまうんじゃ」

「何か服を着せてるだけで怖いからね、あの手の人物は。何を隠し持ってるかわかったものじゃない。なんなら……生まれたままの姿でも恐ろしいよ。大昔には、お尻の穴の中に何かを隠し持ってた人もいたみたいだから」

「そ、それは別の意味でも恐ろしいけど……たしかに、怖いね」

「あの人ならどんな手を使ってでもやり兼ねない……」

「狡猾だもんねー……」


 透たちの間で、彰人について議論を重ねる。皮肉にも、話し合っている意見からしてターゲットである透が最も彰人を心配しているような意見が散見された。

 しかし、透のことを想う刻たちはそれだけは絶対に許さなかった。


「あいつは……何があってああなってしまったんだろうな」

「え? どうしたの、トオくん……」

「ああいう人間を見る度に思うんだ。あいつがああなる前に、俺がもっと早い段階で出会って話をしていればまた違ったのだろうかって」

「と、透くん……」

「…………過去がどうであれ、もうしてしまったことは許されることじゃないよ。勿論、人間は誰しもが必ず一度は過ちを犯すけど……あの人は故意に人として一番やってはいけないことをしたんだから。いくら透お兄ちゃん本人が許していても、家族である私にはどうしても許せない。真っ当に生きている普通の人間ならまずやらないことだし、ああいうことするまで狂ってしまった人に手を差し伸べて救う必要も無いと私は正直思ってるよ」

「刻……」

「どんなに同情する過去だろうと、他者を不幸に巻き込もうと道連れにしようとした時点でろくでも無いんだ。まぁ……あの殺人未遂犯が透お兄ちゃんにあんなことをした動機はまだわからないけど」


 刻は、身体が少し震えているのが透にはわかった。ついさっき、彰人の話はしないようにしたばかりなのに、ここに来てから彰人とも再び会ってしまったことでうっかり話が続いてしまった。

 そして、刻に我慢させていることにも透は気がついた。本当なら、さっきの直輝たち以上に爆発して理性が吹っ飛んでしまいかねない様子だった。透の目の前だから、なんとか暴走しないで堪えていたのである。まるで、噴火直前の火山のように刻は血が騒ぐ思いだったのである。

 透に対する強い愛情と、将来は警察官を目指している強い意志が現在の刻を形成したのである。


 このまま彰人の話を続けてしまっては堂々巡りになる。透は、早急にこの話を切ろうと判断した。


「刻に言われると……言葉や重み、説得力がとても違うな。刻だって……松本家に迎えられる前は大変でもの凄く苦労させられて壮絶な過去だった。当時の幼い年齢を考えたら、よく乗り越えられたしとても強い。大人だとしても難しいことなのに。でも、そんな刻が今は社会へ貢献する意欲がとても高くて真っ当に生きてる。それだけ刻は、出来の良い人だってことだ」

「え? と、透お兄ちゃん……?」


 刻は頬を桜色に染めながら困惑する。透の言葉で照れている事実には周囲全員が気づいていた。


「ごめん。皆の前だというのに、触れたくない過去の話をしてしまったな。でも、そんな過去があるにも拘わらず真っ当な人間に育ってるのは本当に凄いし、偉いことだと思う。よくグレなかったなと感心する」

「そんな……私は、松本家でお世話になってる時期の方が圧倒的に長いんだし。あまり関係無いような……それに、松本家は裕福な家庭なのに世間や他人の事情をよく理解出来る透お兄ちゃんこそよっぽど真っ当で偉いよ。良い家に生まれ育った人は、世間知らずで他者への思いやりが無い傾向の人が多いのに」

「その理屈で言えば……刻も同じじゃないか? 刻だって松本家の人間なんだからな。その上、社会に貢献しようと努力してる」

「そうかな……お父さんたちのコネや世襲で出世することを嫌ってちゃんと見合う能力の人間になろうと日々勉強している透お兄ちゃんに比べたら、大したことはしてないよ」

「まぁ……俺はやりたいことをやってるだけだから。とにかく、刻の言う通りだということで同意する。油断して下手に関わると何を握られるかわかったものじゃないからな」

「うん……そうして貰えると私も安心するよ。あの殺人未遂犯について、何かわかったことがあれば透お兄ちゃんが情報を必要とする時に話すから」

「わかった」

「それじゃ、事情聴取してきます。後で戻ってくるよ。それじゃあ」


 刻は一旦部屋を出る。



「……刻ちゃんは、本当に凄いね。行動力の塊だし……」

「正直……わたしはまだ怖いよ。正義感が強すぎて、些細なことでとても怒られそうな印象で……なんだか、高圧的な感じがして……」

「それは、一度された注意を聞かず明日花ちゃんに暴力を振るった貴方の自業自得……その上、軽傷とはいえ透くんを怪我させられたら当然刻ちゃんも怒る……」

「怪我の程度やその危険度が違っても、あなたが海崎さんに抱いてる気持ちと根本は同じだと思うよ」

「……言われてみるとたしかにそうだね。わたしが全面的に悪いよね……刻ちゃんにしてみれば、裏切られた気持ちだったよね」

「刻ちゃんは将来警察官を目指してるから、正義的な気持ちもあると思うよー。でも、透くんの件は私情も絡んであんなに爆発したんだと思うのー」

「彼女にとってはわたしもトオくんの驚異って考えてると思うけど……それでも、大きな脅威と戦う為に頑張ってくれるんだもんね。そう考えると、苦手でも応援したくなるよ」


 すると、星名(せな)が乃之の手を握る。乃之は突然のことに、変な声を出す。


「……え?」

「乃之ちゃん。何言ってるのかな? わたしたちも戦うんだよー?」

「た、戦う……?」

「だって、透くんが危険な目に遭うのは放っておけないでしょー? だから、透くんを想うなら決して他人事じゃないよねー?」

「……!」


 乃之は、星名(せな)の言葉によって一番大切なことに気づかされる。


(そうだ……わたしは、トオくんが大好き。愛してる。誰にも負けたくない……いや、負けちゃいけない。そういう意味でも負けたくないけど、一番はまずトオくんを守ること。怪我をさせたくせにこんなこと考える資格は無いと思うけど……それなら、贖罪という意味でもトオくんを助けて支えないといけない!)


 乃之は決意が固まる。「そうだ。人任せではいけない」と。自分も参加しなければ、将来は透を支えられる良いお嫁さんになれない。しかも、乃之自身はただでさえ十年も透との時間にブランクがあり周りの女子たちから遅れを取りまくっている状態である。人並み以上に頑張らなければ、ライバルたちと肩を並べられない。乃之は自身の心を燃やすように火を点けた。


 そして、改めて新しい恋敵が現れたことに燈や月葉(つきは)は気づく。


(乃之ちゃんが透くんのことを大好きなのは既に嫌というほど知ってるけど……まだ日が浅いからって油断は出来ないよね。いや、一番重要なのは周りに勝つことじゃなくて、透くんが幸せになってくれることなんだけど……透くんが幸せにならなきゃ、私が勝っても素直に喜べない。だから、私の気持ちを透くんに押し付ける気は一切無い。だって、私だけが幸せになっても……そんなの、寂しいだけだから。何よりも……透くんに負荷がかかるのは嫌だ)


 燈は、自分の想いを透に伝えたい気持ちもあるが、透の気持ちを何よりも最優先したかった。大好きな人が自分のせいで苦しめることになるのは言語道断で嫌だったのである。自分の存在が、透の妨げになるのだけは避けつつ透の役に立ちたい。

 立ち回り次第ではあるが、不器用な自分にそこまで上手くいくのだろうかと不安になる。しかし、だからといって逃げ続けていればいつまで経っても弱いままだと燈は自分に且つ喝を入れる。

 今は現在進行形であらゆる危機が透に降りかかってしまっているので、チャンスと呼ぶには語弊はあるが燈は自身が透にとって安心する存在になろうと寄り添う一心だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ