1-71.『恐怖の再会』
「あ……!」
「と、透!?」
「と、トオくん……み、皆も……」
透と月葉、そして拘束されている彰人以外がお互いに青ざめる幼馴染みたち。
やがて……透と一緒にいた幼馴染みたちの何名かは青い顔から赤く噴火しそうな顔になる。
「お、オマエら!! 何やってんだよ!?」
「おい、お前たち! これは一体、どういうつもりだ!? 説明責任を果たせ!」
「しゅ、瞬! 何がどうなって……」
「星名ちゃんが泣いている……」
「あ、明日花! 乃之! あ、あんたら、まさか……やったの?」
「こ、こ、これは……その……え、えっと…………」
透サイドにいた燈を除く幼馴染みたちが、一斉になってはぐれていた幼馴染みたちにそれぞれ詰問をした。月葉以外は興奮状態だった。それに戸惑って言葉が出ない明日花たち。
周りが殺伐としている中で、冷静を維持している数少ない人物の一人である透がとあることに気づく。
「なぁ……怪我をしてないか?」
「え?」
透の言葉に、思わず反応をする燈。颯空も反応して思わず問う。
「な、何言ってるんだよ、透。見ればわかるだろ!? コイツらが、アイツをあそこまでボコボコにしたんだよ!」
「あいつだけとは言ってないぞ。あいつ以外の皆も、怪我してる」
「え……?」
透の言葉で、一気に興奮状態が収まり冷静になる透サイドの幼馴染みたち。やがて、争いが始まりかけていた衝突が沈静化する。
「大丈夫か? お前らも」
透が、明日花たちに歩み寄ろうとしたその時、直輝が声を荒げて透に注意する。
「ま、待て、透!! 近寄るな!! 危ねーぞ!!」
「え?」
すると、痣だらけの姿の彰人が突然高笑いし始める。まるで、怪我を感じさせないくらいに元気だった。まるで怪我が効いていないかのように。
「これはこれは……透君! お久しぶりだね! いやぁ……また会えるなんて嬉しいなぁ!」
「さっき会ったばかりだろ」
すると、明日花が切羽詰まった表情で透の目の前に来る。冷や汗なのか、明日花の全身には水滴が度を越した量で滝のように流れ続いていた。
「やめなさい、透!! そいつとまともに取り合っちゃいけないわ!!」
「そ、それはわかるんだけど……なんで今更? そいつ一人を抑えるのに、かなり苦戦したように見えるんだけど……」
瑠夏が答えを見つけられない疑問を投げると、今度は息を切らしている瞬が続く。
「……実際、苦戦したからな。こいつ、タダ者じゃない。あの透をハメただけあって、とにかくフィジカルが凄かったんだよ」
瞬の言葉に、行悟がまるで信じられないかのように言葉をぶつける。
「だ、だから、そいつ一人になんでそこまでする必要があったんだって! おまえら、そいつと違ってそんなことするようなやつらじゃねえだろ!? どっかの時代の犯罪組織みたいなことしやがって!」
「こ、これがいわゆる、闇の時代で言うところの『イジメ』ってやつですか……? いや、流石に暴行になる……?」
「そんなことは今はどうでもいい問題だろう。いや、こいつらの今後の社会的信用にも関わり兼ねんからある意味問題だが……だが、情に厚いお前たちが何故このような卑劣な真似をした?」
「まさか、彼女の影響じゃないよね?」
刻が明らかに乃之を見て言う。乃之はハッキリと強気で刻に否定した。これまでの刻に対する怯えや弱々しさを思わせないくらいに、歯向かうようにして言って来たのである。
「ち、違います!! なんでもかんでも、偏見でわたしを結びつけないで!!」
「前科があるでしょ? しかも一回や二回じゃない。疑われるようなことを何度もしてきたご自身を恨んでください」
「そ、それは…………」
「大体、私たちは家族のように付き合いの長い幼馴染みだからわかるんですけど、私たちの中に問題を暴力で解決しようとする人はいないし、消去法で貴方しかいないんですよ」
「…………」
乃之は、目に涙を溜めて泣きそうな表情になる。
そして、刻は明日花を見ながらボソッと呟く。
「まぁ……さっきは例外が起こりましたけど」
「ちょ、ちょっと!? なんでアタシを見るのよ!! ていうか、思い出させるんじゃないわよ!!」
明日花は恥ずかしくなり、急激に顔中を赤くしながら反発した。燈は、見ていて耐えられず反射の如く仲裁に入る。
「と、刻ちゃん! 私たちで揉めてる場合じゃないよ……!」
あんなに日和っていて、乗り出しにくくなっていた燈。あまりにも緊迫している状況だからか、刻の目の前で迂闊なことを言えなくなっていたはずの燈が無意識に刻に注意したのである。それだけ、今の状況が緊張事態だったのである。
そして、久しぶりに直輝が乃之を擁護した。
「これに関しては、マジで乃之が発端じゃねーよ……そして、他のヤツらもな。先に始めたのはオレだ。だから、責めるならこのオレだけにしろ!」
「な、直輝……」
直輝を心配そうに見る瑠夏。直輝だって、暴力は大嫌いな人間の一人だ。乃之を除く幼馴染みである全員がそれを一番よく理解している。それだけに、皆は直輝たちのことが心配だった。失望よりも、「どうして?」という疑問や心配の感情の方が遥かに勝っていた。
いつもは明るく元気だが、すっかり弱々しくなって暗くなっている直輝を見て透が訊く。
「じゃあ、悪いけどお前に話をして貰おうか。直輝。お前らに一体何があったんだ? こいつに……海崎に何かされたのか?」
「…………」
直ぐに透の言葉を返さずに黙る直輝。それだけで、今までの直輝とは異質で違和感があった。
そして、直輝は目を瞑って深刻な表情をしていた。今にも、唸り声を出しそうな雰囲気である。透は、再び直輝の名前を呼ぶ。
「直輝、しっかりしてくれ。話せる限りで構わない。何を言われても、俺はお前のことを責めたり幻滅したりしないから。きっと、お前らにここまでさせた何か理由があるんだろ? よかったら、俺たちに何が起きたのか情報を共有してほしい」
「と、透…………」
直輝は、珍しく弱々しい涙声で透の名前を呼ぶ。そして、直輝に優しく語りかける透の姿を見て感動する刻や幼馴染みたち。直輝は、ゆっくりと口を開いた。
「まず……最初の経緯から話すぜ。オレらは、秘密基地みてーな所にあるあの湖を一旦最後にはぐれちまった。目を覚ますと、この建物の近くで倒れてたんだ。んで、オレと近くで倒れてたのは乃之、明日花、星名、瞬。そして、あのイカれヤローだ」
「そうか。俺たちと一緒で、お前らも最初からずっと一緒だったんだな。何故、別々の所に落ちたかはわからないけど……悪い、今は関係無かったな。話を続けてくれ」
「んで……オレらが目を覚まして透たちとはぐれちまってパニくってる中、あのイカれヤローだけ余裕ぶっこいてずっと笑ってやがるんだ。流石に頭に来て、何がおもしれーのか問い詰めたんだ。そしたら、このヤローはよぉ……とんでもねーことを言いやがったんだぜ?」
「何を言われたんだ?」
背筋が凍る思いで顔をこわばらせながら震えた声で、直輝は透の問いに答えた。
「……透のいる場所を知ってるから案内してやるとかほざきやがったんだ」
「……何?」
直輝の言葉に、周囲が静まり返って固まり鳥肌が立つ。




