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Re:verse-Re:birth  作者: あーる
第1章『夢と現実の狭間と謎編』
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1-62.『お宝より大切なもの』

 とりあえず下山を終えた透たち。こうして見上げると、自分たちのいた所はそれなりに高い所だったのだと意外性を感じていた。そして、下山した先には綺麗な湖が広がっていた。


「うわ、凄い!!」

「なんだこれ……こんなの見たこと無いぞ? 地球にあったら間違いなく絶景スポットじゃないか」

「ふむ……諸事情により、今まで沢山の外国を見て回って来たがこのような湖は見たことは無い」

「おれもねえな。ここがどこなのか、益々わかんねえや。透や刻の言う通り、こりゃあ真面目に地球じゃねえ可能性の方が高いぞ。いや、二人の言ってることを疑ってるわけじゃねえけど」

「わかってる。俺だって、正直なところここが地球外である可能性にまだ信じきれていないからな」


 財閥の息子で外国に出張することも多い呂威や、造船会社の社長の息子ということで船で海を渡って世界中を移動することも多い行悟(いくご)。諸外国と縁の多いそんな二人が、見覚えの無い土地であることを話したことで透や刻の言葉に信憑性が高まったのである。


「そ、そうなんだ……じゃあ、あたしら、本気で凄い所に来ちゃったんじゃない!?」

「だから、透を始めとしてさっきから皆言ってるだろ……」

「る、瑠夏ちゃんはこういう状況でも相変わらずポジティブだね……」

「ん~? だって、せっかく誰も体験出来なさそうな貴重な体験をしてるんだし、もっと新鮮味を味わいたいじゃん~? あたし、家が貧乏だから旅行とか今まで別に興味湧いたこと無かったけど、今なら行悟(いくご)の気持ちめっちゃわかるもん!」

「お~、そりゃよかった! おまえもわかっただろ、この感覚?」

「うん! 今日から仲間だ~!」

「それは元からのような……」


 不思議な現象が起き、不思議な場所に来て不安になっていたはずの透たち。しかし、今では一部のメンバーは楽しそうにはしゃいでいた。暗い雰囲気を明るくする。それが瑠夏の良さだろうと透たちは再認識した。ここに直輝もいれば、瑠夏と一緒に中心になって盛り上がったはずである。そうして、物足りなさや寂しさを透たちは感じた。いつも傍にいる当たり前のような存在がどれだけありがたいことか改めて感じさせられたのである。


「早く、あいつらを捜し出さないとな」

「人間関係も体調も何もかもが心配……私たちのように、他の皆が一緒にいるとは限らないけれど……」

「…………」


 咄嗟に、刻のいる前で彰人という名前をつい出してしまいそうになる透たち。彰人の話題が出て以来、刻はずっと無言で負の感情のオーラが漏れていた。そう考えると、彰人まで捜し出すのはなかなかのハイリスクなことだと燈たちは思った。刻の機嫌は、全て透にかかっている。燈たちは、どうか刻の機嫌を取ってほしいと透に心の中で祈った。暴走する刻は、誰も見たくなかったのである。


「……湖が本当に綺麗だな。景色もそうだったけど、あまりにも明るい。まるで、蛍が沢山飛び交っているみたいに」

「そういえば……ここに来てから、植物以外の生き物は何も見当たらないね? 動物どころか、虫一匹見当たらないような……」

「たしかに、おかしいよな。ここに動物がいるのは俺ら人間くらいじゃないか? これだけ自然が多いと何かしらいそうな気がするのに」

「……未知の領域だ。俺たちの知らんような、地球上の一般常識では考えられない何かがあるのかもしれぬ」

「え~? 地球とは逆で、建物が並ぶ集落に動物がいて、自然界に人間がいるとか?」

「立場逆転……」

「ちっとシャレにならねえな、それ……」

「もしその通りだとしたら、この辺りにもっと人がいてもおかしくなさそうだけど……」

「……悪い。湖を眺めている場合じゃなかったな。早くあいつらを捜しに行こう」

「う、うん……そうだね……」

「………」


 燈が透に同意すると、刻は静かにゆっくりと頷く。



 透たちが山登りを再開すると、不思議と疲労は感じなかった。普段よりも、やけに身体が軽く感じたのである。


「なんか……身体がふんわりってする。登山が苦じゃない!! こんなに楽だったっけ!?」

「やはり……推測通り、重力が地球と異なるのだろう。それで、俺たちは身体を普段よりも軽く動かせるのかもしれぬな」

「やっぱり、そうだったのか。どうりで、身体が軽いなって思ったよ。まるでこう、身体能力が向上したみたいに感じるぞ」

「まるでドーピング……」

「いや、もっとマシな表現があるだろ!?」


 月葉(つきは)にツッコミを入れる行悟(いくご)。こんな時でも、彰人のせいで情緒不安定になっている刻を除いた全員は普段の調子でホッとする燈。やっぱり、家族のような幼馴染みたちの存在はかけがえのない存在だと改めて再認識する燈。長年の付き合いで構築した信頼関係によって居場所と思わせる安心感があったのである。


 妹たちから良い扱いを受けていない燈にとっては、実家以上の安心感と温かさを感じていたのである。透に対してのみは恋愛感情が含まれるが、そんな皆のことが燈は大好きだった。

 また、幼馴染みの存在を大切に想っているのは透たちも同様である。どんなお宝よりも大切な存在。そして、自分の全てとも呼べるほどに大きく強固な絆は誰にも邪魔されたくなく壊されたくなかった。


 女子に関しては、燈と同様に透に対する恋愛感情がある。刻は勿論、瑠夏や月葉(つきは)もそれは同じだった。強いて言えば、それが最も亀裂の入りやすい要因だろうと燈は懸念した。それだけに、透に対するアプローチやスキンシップが特に激しい乃之は燈たち女子にとって、彰人とは別の意味で警戒せねばならない対象だったのである。そうしないと……皆が現在の刻のようになり兼ねない。

 燈は、いつかはそんな乃之と向き合って話してみたいと思っていた。私情で自分たちが勝手に揉めることで、皆に迷惑をかけたくなかったのである。皆で積み上げて来てずっと大切にして来た和を自ら壊して乱したくない。それは透を始めとする皆への裏切り行為になり兼ねないのである。

 そして、燈にとっては何よりも……家族よりも愛する存在である透を困らせたくなかった。余計な問題を作り出して、ただでさえ忙しい透に余計なリソースを割かせたて負担や苦痛を与えたくなかったのだった。


 瑠夏たちが楽しそうに会話をしているのを、燈はいつの間にか透の直ぐ隣で一緒に見守っていた。


「俺たちが一緒だと、どんな困難も乗り越えられそうだな」

「と、透くん……! そ、そうだよね……!」


 燈は、透の目を見ようとするが、恥ずかしくてつい逸らしてしまった。先程、二人きりで混浴したり、暗闇での事故とはいえ濃厚接触をしてしまったからなのか、透を見る度にそれを思い出して羞恥心がこみ上げてくる為、ろくに目を合わせられずにいた。

 あまり露骨に目を逸らしすぎると、透に変に思われたり不快な気持ちにさせてしまうんじゃないかと燈は不安だったが透は気にする素振りを見せることなく話を続けた。


 いや、気にする素振りを見せることないというよりかは、燈がそうしてしまっている理由をまるで察しているように燈は見えた。自身が恥ずかしそうに透から目を逸らす理由をわかった上で、気遣って接してくれているような。根拠は無いがそんな気がしたのである。幼馴染みという長い付き合いだからこそ感じ取れる独特の空気を燈は感じ取っていた。


 透は、そんな燈に話を続けたのである。


「この山を登ってみて、もしあの建物の中身が空いていたり管理者がいないようなら緊急で一晩だけ借りて寝床を探そう。まずは、本当に入っていい場所なのかどうかを判断しないとな」

「出来れば……誰か人がいると望ましいよね? この世界について何か知っている人だったら……」

「マフィアみたいな人でなければだな」

「あ……た、たしかにそうだね!」


 燈としても、自身の羞恥心に負けている原因で透の顔を見れなくなるのは嫌だった。相談の場を浴室と提案したのも、事故で濃厚接触をしてしまったのも、全て自分が原因で透に全く罪は無いと責任を感じていた燈。これは自分と自分との戦いであると思い、赤面を隠せずにいられないまま、ぎこちない様子でそーっと透の顔を見た。

 それに、このままでは自身の透に対する露骨な反応に周囲が異変を感じ取るのも時間の問題だろうと燈は思った。特に、女子は透のことが好きな人しかいないだけに鋭いだろう。全てにおいて鋭い刻に限らず、恋愛感情面では今この場にいる瑠夏や月葉(つきは)も鋭い。決して油断は出来なかった。


 自身のぎこちなさを気にせず、いつも通り接してくれる透には罪悪感と同時に感謝していた。



 そして、燈は透との何気ない会話がどれだけ年月日が経っても楽しかった。こういう困難な状況でも、透との会話は安心感があり自身を満たしてくれた。透との会話でしか得られない栄養素があったのである。寧ろ、今のようなこういう状況だからこそ得られるのだろうと燈は理解する。困っている時、大切な人が傍にいることがどれだけ救われた気分にしてくれるか、燈は改めてしみじみ実感する。透と一緒ならどんなに自信の無い燈自身でも不安が嘘のように一切無くなるのだった。透のことを考えれば考える程、無意識に笑顔になる。


「燈? どうかしたのか?」

「ううん……なんでもないよ」

「そうか」


 微笑みの混じった声で返事をする燈。それにいつも通りのトーンと空気で返事をする透。燈は、そんな透とともに瑠夏たちを見守りながら登山を続けた。


 そして、先程見かけた建物についに到着する。

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