1-59.『選択』
「明日花ー! どこにいるの~!」
「直輝! 出て来い!」
今、一緒にいないメンバーを大きな声で呼ぶ瑠夏たち。
「……待った。その捜し方はリスクがあるかもしれない。ここがどこなのかわからない以上、声の影響で危険な生き物を呼び寄せてしまうリスクがある」
「あ、そうだね……ごめん、透」
「それにしても……ここは一体なんだ? ここからでは人間の集落が見受けられないはずだが、なぜ深夜の自然でしかないこの森はこんなに明るい?」
「俺も呂威と同じ疑問を抱いていた。月光だけでも、こんなに明るくなるとは思えない。それなのに、肉眼で見えるくらい数メートルどころか数キロメートル先の景色も見える。灯りどころか、建物自体がどこにも見当たらないのにな」
「さっき、真っ暗闇の町の景色を見たから違いが尚更わかりやすいよね。普段は世界に誇るレベルの町の夜景だから、それに見慣れていることを考慮してもどこに何の建物があるのか全然見えなかったし」
「なんだか……まるで、人工的に作ったかのような森だよね。どこから、こんな神秘的で綺麗な灯りが……」
「あっ、燈が灯りって言った」
「いや、今それを気にしてる場合じゃないよね!?」
思わず瑠夏にツッコミを入れる燈。
「おれらの目がおかしくなったとか、そんなんじゃねえよな?」
「暗さに慣れて、視界が鮮明になることはあるけれど、この森の場合は最初に見た時から明るかった……」
「つまり、俺らの目の問題とは考えにくいってことになるのか……? なぁ、透はどう思う?」
「……」
透は、何か考え事をしている様子だった。それでも、遠慮無く話しかける颯空と呂威。
「透。何かを考えているのか?」
「……まぁな。なんというか……妙に身体が軽い気がする。どうも地球上を歩いているような感じがしない」
「え……?」
透の発言に、ドキッとして一瞬だけ心臓の鼓動が速くなる周り。刻だけが、透の言葉に納得していた。
「うん。私も、ここが地球上とは正直考えにくいかな」
「と、トップレベルに賢い二人が揃ってとんでもないことを言ってる……!」
「いや、突拍子もないことを言っている自覚は勿論ある。言い出した俺でさえ、正直なところ信じられないからな。ただ、色々な根拠をかき集めて、それらを頭の中で組み立てていくと……どう考えても、ここが地球上ではないという結論に辿り着いてしまうんだ」
「なんだよ、それ……じゃあ、俺らはいつの間に宇宙を越えて来たのかよ?」
「そういうことになるかもしれない、とだけ言っておく。俺もまだ不確定な要素が多いからな」
「でもさ……もし、あたしらだけで宇宙を越えて違う星に来ちゃったんなら、それは罪にあたらない?」
「正直……その可能性を0とは言い切れないからまずいね。中学生だけで別の惑星に行った前例が無いからなんとも言えないけど……ここに来た方法や経緯を、私たち自身が知らないから、説明することも出来ないし証拠を提示することも出来ない」
「ど、どうしよう……ありのまま起こったことを説明しても、非現実的すぎて信じてもらえなさそうだよね……」
すると、透の一声で皆が落ち着く。
「皆、落ち着こう。後のことは無事地球に帰った後で考えよう。現状、帰れる保証があるのかどうかもわからないけど……今のこの状況をどうにかして打開しないと、どうしようも無いからな」
「たしかに……透くんの言う通り……」
「とは言っても……あの世界が闇落ちしたかのような現象は何だったんだ? まるで、おれらがどこかに隔離されちまったかのような感覚で、今でも変な気分」
「それらの真相を知り得ることが出来るとも限らないであろうが……とりあえず、ここから移動して今一緒にいない奴らを捜しに向かうしかあるまい」
「そうだね。まずは明日花ちゃんたちを捜さないと……」
「一応、透お兄ちゃんと私が全世界の言語を話せるから、もし誰かと出会ってもそこは心配しなくていいよ。まぁ……ここの惑星で出会う人が地球人であることが前提だけど。そもそも、私たち以外の人間がいるのかどうかもまだわからないし」
「た、頼もしすぎるって思わせた矢先に不安に蹴り落とすの、新手のサディスティックプレイ……!?」
「オマエは何言ってるんだよ……」
透たちは、再び足を動かした。
「なぁ、透。夢の中では隕石が降って来たんだろ? こんなにのんびり歩いてて大丈夫かよ? 森の状態を見るに、まだ隕石が落ちた形跡は見受けられないし、もし正夢か予知夢だったりでもしたら……」
「ちょ、ちょっと颯空!? なんで急に怖いこと言うの!?」
「……待て。たしかに同じ森とは言ったけど、夢が現実になるとも言いきれない。いや、たしかに似たようなことは起きたけど」
「あ、透くん……それって、もしかして……」
「ん……燈ちゃん、何かわかるの……」
「え!? あ、いや、その……」
燈は、月葉の問いについわかりやすく戸惑ってしまう。
「そもそも、透の見た夢が正夢や予知夢であれば、どの夢もタダ事では済まんぞ?」
「……所詮は夢だし、根拠も何も無いけどそこは大丈夫な気がする。上手く言葉にするのが難しいけど……今は俺を信じてくれ」
「いやぁ、あの透を疑うだなんてとんでも無いよ~。透だって人間なんだから、何かしら間違うこともあるでしょ!」
「たとえ、透が間違っていたとしても俺は後悔は無い。俺は自分の意思でお前について行った。お前の過ちが原因で、俺のこの身がどうなろうと俺に後悔は無い」
「まぁ、俺もオマエのことが心配でオマエについて行ったからな。自分で決めたことだ。これから何が起こるかはわからないのは透だって同じはず。だから、」
「いつからそんなに重い奴になったんだ、お前ら……でも、ありがとう。ただ、俺がきっかけで皆を巻き込んでいるのは事実だ。責任持って、皆を必ず安全に引っ張って導いていく」
「透お兄ちゃん……」
「と、透くん…………」
透は言葉を続けた。
「でも、俺を闇雲に信じすぎず時には自分で考えて動いたりもするようにな。俺の選択が毎回必ず正しいとは限らない。ただ、不確定要素は安易に決めないようにはするつもりだ。頼り無いことを言うかもしれないが、俺一人だけで考えることに不安なこともある。俺だって一人で考えるより、皆と一緒に考えて決めて行動したい。今の状況に限らず、どんなことも皆と一緒に考えて、一緒に決めて、そして俺たち全員が納得した上で選んでいきたい。だから、皆も何か感じたことがあれば、その都度どんどん俺に意見してほしいんだ」
「透……!」
透の言葉に周囲は感銘を受ける。
「素晴らしく素敵な考え方……透くんの意見を全面的に支持……」
「おれも……透と同じ考えだぜ。透や皆の役に立てることがあるんだったら、おれもどんどん力になりてえからな!」
「私たちの長年の付き合いによる絆は強固だからね。今は、そんな透お兄ちゃんを危険な目に遭わせた最低な人がついて来てるけど……そんな人に乱されても負けないくらい、気をしっかりしないとね」
「あぁ、そうだな。というわけで、皆。これからもお互い助け合いながら一緒に進んで行こう」
「は~い! ラジャ~!」
透の言葉を聞いて、全てのやる気がみなぎる刻や幼馴染みたち。幼馴染み間における、透の昔からのリーダーシップの高さから、このような得体の知れない場面でも皆が感動と勇気を貰っていた。
透を筆頭とする皆と一緒なら、どんな困難も乗り越えられる。今までも、そうやって何度も乗り越えて来た。今の状況の恐怖心や困難は、これまでと比べると過去最高レベルで比にならないが、それでも透がいれば不思議と本当に何も怖くなるのである。それは、透と対等の頭脳や能力を持つ刻すらも感じるのである。
透たちは、今一緒にいる8人だけでもこれ以上はぐれないようにする為に、この場にいる全員が目を離さないよう各自、誰か一人をずっと見ておくように担当して決めた。そうすれば、誰かを見失うことはなくなるからである。




