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Re:verse-Re:birth  作者: あーる
第1章『夢と現実の狭間と謎編』
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1-33.『気配』

「また転ぶと危ないとはいえ……本当にこのままで大丈夫なのか? なんだか、やけに熱い気が」

「ほ、本当に大丈夫だよ! そ、その方が、あ、安心するから……! ただ、私が慣れればいいだけの、ことだから……」

「だいぶ時間がかかりそうだ」

「が、頑張ります…………」


 燈は、透の手の温もりを感じているのもそうだが、自身の身体の熱さを透に知られて茹で上がりそうになる。

 燈も、なぜか無意識に透に便乗して何をもう片方の手を透の背中に回した。


「え?」

「あ、ごめん……つ、つい……」

「……本題に移れそうか?」

「だ、大丈夫です! というか、今のうちに絶対話さないと……」

「……わかった」


 燈は、心を落ち着かせてコホンと息を整える。


「えっと……今から話すね。あの……透くんの誕生日パーティの時、私が知らない人が見えたような気がしたって話はしたよね?」

「そうだな。気になる話だ」

「それなんだけど……さっき、明日花ちゃんが私たちを秘密基地の前で待ち伏せしてたでしょ? それについて、気になることがあって透くんと共有したくて……」

「……なるほど。もしかして、誕生日パーティの時と気配が違ったってことか?」


 燈は、透のあまりの察しの良さに驚きを隠せずにいた。話が早く、スムーズすぎて燈としても助かっていた。


「よ、よくわかったね!? 凄いよ、本当に……そうだよ、正しく私が今これから話そうとしたことだよ。それでね、透くんも……昨日の下校時に誰かの気配を感じていたでしょ? 私はその時、何も感じなかったからわからないけど……きっと、透くんがその時に感じた気配と私が感じた気配は、同一なんじゃないかなって思うの」

「…………」


 透は暫くの間、相変わらず表情を1ミリも変えずに考える。燈は、思わず透を表情が変わらないかとじっと見続ける。

 透が何を考えているのか、あまりにもわかりにくい為、燈は自身が的外れなことを言ってしまっているんじゃないかと段々不安になってくる。

 焦りと緊張も出てきて、透と片手で背中を支え合っているにも関わらずそわそわしてきていた。

 まるで、目を開けたまま眠ってしまっているんじゃないかとさえ疑うレベルにずっと硬直していた。もし、本当に眠ってしまっているのなら入浴中の睡眠は死に直結してしまう。燈は、透に限ってそんなことをわからないわけ無いとは思っているが、それだけは絶対に阻止しなければならないと思った。



 透の名前を呼んで、もう一度反応を伺おうとした丁度そのタイミングで、ようやく透が口を開いた。

 タイミングが噛み合いかけた燈は、出そうとした声を慌てて息を止めるように喉を抑えた。


「……そうだな。現状では根拠は何も無いが、きっと燈の感じた気配と近い気がする。でも……なんとなく、知らない人の気配じゃない気がするんだ」

「え?」

「燈も……そいつと会ったことあるかもしれない。だからこそ、この独特な気配を感じられるのかもな」


 燈は、透の発言に激しく唾液を飲み込むような感覚になる。入浴中で出る汗とは異なる、冷たい変な汗が流れてきた。自身の背中を支えている透の手に当たれば、燈は透に怖がっているのがバレてしまうだろう。


 透が冗談を言う性格では無いと承知の上で、燈は透に普段絶対言わないことを言う。


「え、えっと、透くん……? たしかに、今は暑いけど……カレンダー上はまだ4月だよ? 怪談話は、まだ早いんじゃ……」

「怪談話で済めばいいんだけどな。話よりも、実際に起きることの方が恐ろしいからな。事実は小説より奇なり、に近いことだ」

「…………」


 燈は、透が本気で言っていることがわかっていたが、改めて透の口から出てくる言葉でそれを直接耳にすると説得力を感じて恐ろしくなる。


 入浴中にも関わらず、恐怖で寒気がしてくる燈。入浴中のお湯が冷たく感じる。透の手の温もりだけが、唯一温かく感じていた。


「……燈には先に話しておくか」

「え……?」

「俺がさっき秘密基地で昼寝している間。どんな夢を見たか、気にならないか?」

「……!!」


 燈は、目を見開く。昼寝の時、透がどんな夢を見ていたか。そもそも、透が昼寝中どんな様子だったかすらも知らない。透に言われて、もう透が昼寝で見た夢についてしか頭がいっぱいになってしまった燈。気になりすぎて心臓の鼓動が不自然に早まる。


「……気になる。ものすごく。体調は大丈夫だったの?」

「……少し頭が重くなった。まるで脳が硬まってしまったかのように。そのせいで、颯空に何度も俺に呼び掛けさせてしまってな。今はもう大丈夫だ。大丈夫じゃなかったら、今こうして平然と入浴出来ていない」

「た、たしかに……でも、今は大丈夫ならよかったよ」


 燈は安堵して、全身の力が抜ける。


「ただ……昨日の朝と昼寝に見た自然災害の夢とは、傾向が違った気がするんだ。それに……それらと違って上手く思い出せない」

「え……つまり、イレギュラーってことなんだ? それはそれで……上手く思い出せないのは夢らしい夢だね」

「そうだな。明らかに前者の二つとは異なる。でも、似た共通点もあった。それを燈に今から先に話しておこうと思ってな」

「……透くんさえよければ、お願いします」


 透が自分にだけ先に話を聞かせてくれることに、燈は特別な気分になって素直に嬉しかった。

 しかし、「浮かれている場合では無い」と燈は直ぐに気持ちを切り替える。


 燈が、再び真剣になって透の話を聞く。起きたら世界が白黒だったこと、周りには透以外に誰にもいなかったこと、町にも誰もいなくて様子がおかしかったこと、秘密基地の方から不快な音が聞こえてきたこと……透が、それらを順を追って覚えている範囲で燈に話した。


「……怖いね。ゾッとしたよ。最初は秘密基地みたいな所が静かだったのに、後で来てみたら変な音が鳴るなんて……」

「……不思議だ」

「え?」

「話す前は上手く思い出せなかったんだけど、燈に話しているとその時の状況がスムーズに思い出してきて、すらすらと話せてしまう。颯空たちに話そうとした時は、完全に頭の中がリセットされてしまったかのように思い出すきっかけすら見当たらなかったんだけどな。あいつらと話す時は0、燈に話す時は1からスタートしたみたいに」

「そ、それは一体どういうことなの…………」


 燈は、話を聞く限りまるで透にとって特別な存在みたいで、それに関しては嬉しくあったが、透の身に起こりうる災いが自身も強く関係しているんじゃないかという不安が出てきた。

 正直、怖い気持ちも強かった。自身への危険は勿論だが、何よりも自分の存在が原因で、透の身に危険が及ぶことになるかもしれないことが最も怖かった。


 透は、たくさんの人から期待や信頼、そして愛情を得ているこの世で大きく必要とされている人物の一人であると燈は考えていた。自身も、透の存在を大切にし、愛している一人である。そんな透を、自分が好き勝手な判断で気軽に動かしてしまっていいのだろうかと怖くなる。それを言ってしまえば、透と二人きりで浴室で話し合うことはどうなんだと自分にツッコミを入れてしまう燈。改めて、現在は凄い状況だと実感して恥ずかしくて考えれば考えるほど精神がおかしくなりそうである。

 そんな燈の気持ちを見透かすように、透は燈に言葉をかける。


「燈」

「は、はい……!」

「俺が夢の話をしているのは、俺の自己判断だから。これから、如何なることが起きようとも燈が責任を感じる必要は無い。勿論、他の皆も同じだ。寧ろ、俺が皆を巻き込んでしまっていることなんだ。だから、俺に何が起きようとも、俺は絶対に皆の責任にはさせない」

「透くん……」


 燈は、透の思いやりの強さに胸が熱くなってくる。


「逆に、皆に何か起きてしまったらそれは俺の責任だけどな。俺が夢の話をしてしまっている時点で、俺含め誰かが命の危機に直面する引き金を既に引いてしまっているかもしれない。絶対にそうならないように、俺は皆を守る責務がある」

「……」


 しかし、燈は透が抱えている悩みから逃げる気自体は全く無かった。透だけが苦しむくらいなら自分も一緒に苦しんで透と不安を共有したい思いだった。寧ろ、自身が透と話を共有することで、何か手掛かりや鍵に繋がるのなら喜んで当事者になりたい気持ちだった。

 

 透の役に立ちたい、透が見えているものを一緒に見たい、透と一緒にどこまでも行ってついていきたい。などといったそれらの強い気持ちが、燈を透に協力したい気持ちを加速させていた。


「……透くん。私は、これからどんなことがあっても……透くんの考えと行動に従うよ。透くんに頼りきりなのは申し訳無いけど、現状は透くんのお話からしか情報を判断出来ないから……だから、私を好きなように導いてほしいよ。いつも、誰よりも頑張って努力してる透くんが、こんなに苦しまなきゃいけないなんてフェアじゃ無さすぎるよ……」

「燈……」

「だから、透くんさえよければ透くんの身に起きたことを遠慮無く気軽に話してほしいんだ」

「……」


 透が、考え込むようにさっきと同じくらいの時間の長さで沈黙して再び話す。

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