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Re:verse-Re:birth  作者: あーる
序章『プロローグ編』
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序-5.『中学校』

「うわー!? 凄すぎ!! 見てみて、下も人が沢山!!」

「なんとなくイメージ通りだけど……いざ実際に自分の目で見るとやっぱり感覚が違うね」

「……くそ。一階道路の人たちが羨ましい」

「あ……三階道路だと高い所だもんね」

(とおる)お兄ちゃんは高所恐怖症だから、慣れるまで毎日登校が大変になりそうだね」

「じゃあ、このあたしがおんぶして差し上げましょう!」

「アホか。余計に高くなるだろ」

「てへっ、やっぱり?」

(とおる)お兄ちゃんをおんぶしたいだけでしょ」

「あは~、バレてたか」


 (とき)瑠夏(るか)に呆れた表情と口調で話す。反応に困る(あかり)(とおる)たちは再び足を動かしに校庭へと向かって行った。しかし、奥には何やら生徒たちが固まっていた。


「あの人集りは……もしかして、クラス表があるのかな?」

「あー。たしかにそれっぽいかも」


 瑠夏(るか)が手の横を瞼の上辺りに置いて、背伸びをしながら人集りの奥を確認している。しかし、長身の瑠夏(るか)でもクラス表の存在を確認出来るか出来ないかというギリギリの線であり、何の文字が書かれているかどうかはそれ以前の問題であった。つまり、クラス表というのも確定しているわけではなく、あくまでクラス表の可能性が高いというだけなのである。


「いや~、ごめん。あたしもはっきり何も見えないや」

「そうか、仕方ない」

「ていうかさ……もしあれがクラス表なんだとしたら、今の時代にあんなアナログ的な発表のしかたする? もうちょっと気の利いた便利な確認のさせ方とか無いの? あの闇の時代でも、もっとマシな方法とってるんじゃ……」

「まぁ、たしかに新入生が何千人もいるんだから、こうなることくらいは予想出来そうだよね。ただでさえ、学校が広すぎて移動するのも教室を探すのも大変なのに、あんなに多く生徒の人数の中から、自分の名前を見つけ出すなんて率直に言って正気とは思えないね」

「しかも、生徒たちの状況がこれじゃ確認自体が困難だよね……」

「ほら! やっぱり、おんぶした方がいいんだよ! いや、この場合、肩車か。(とおる)、ほら乗って乗って」

「それは別に俺じゃなくてもいいだろ」


 (とおる)たちと同様に、どの教室へ向かえばいいのかわからずに困っている生徒が多いのか、周囲の生徒たちも足が止まって固まっていた。時間が経つにつれてどんどん生徒たちが貯まっていき渋滞しかけている。


「とりあえず進もうか、他の人の邪魔になってしまうから」

「そうだな」


 (とおる)たちが前に進もうとしたその時、何者かの男性の声が(とおる)の背中にぶつかった。(とおる)が反応して振り返ると、(とき)たち3人もそれに気づいて振り返る。


「おはようございます、松本透(とおる)さん」

「はい? おはようございます」


 (とおる)が不思議に思いながらも挨拶を返す。挨拶だけなら知らない人であっても別に不思議に思わない。しかし、突然見ず知らずの人物から名前を呼ばれることに違和感を覚える。星の数のように沢山いるこの生徒の中から、彼は(とおる)を正確に探し出し見つけ出したのである。そもそも、なぜ自分の顔と名前を知っているのか、(とおる)は疑問だった。(とおる)自身は彼とは何の面識も無く記憶に無い初対面同然の人物なのである。(とおる)が警戒体勢に入るか否か判断する前に、彼は丁寧な口調で挨拶を続けた。


「わたくし、この学校の副学長を務めます、佐賀井(さがい)と申します」


 佐賀井(さがい)と名乗る人物は背が高く、腕と脚が細長く、髪や身だしなみが整っており、第一印象はかなり良い男性であった。多くの女性が魅了され、同性からも多くの人から憧れをもたれそうな、そんな感じの人物である。若さを保つことで三百年も長生きすることが出来る現代において、外見で人の年齢を判断することは当てにならないのだが、佐賀井(さがい)と名乗る人物は二十代半ばくらいの明るく好青年な雰囲気のある人物だった。単刀直入に言うと、若執事のような。


 そんな彼は、懐から名刺ととある物を取り出し、それらを丁寧に(とおる)に手渡す。(とおる)は、佐賀井から綺麗に折り畳まれた綺麗な紙を受け取った。(とおる)は、そっと紙を開いて内容を確認する。中身はなんと、予想外の内容が記されていた。


「これは……クラス表?」

「ええ、左様でございます。こちらを松本透(とおる)さんにお渡しするよう、学長より指示を受けておりました。クラス表の他に、弊校の校内図も重ねてお渡しさせていただきますので、そちらもお役に立てられましたら幸いです。松本刻(とき)さんの分は、(とおる)さんにお渡しした物で確認していただくように、とのことでございます。それでは、失礼いたします」


「あの、ちょっと……」


 佐賀井(さがい)が深々と頭を下げてお辞儀をした後、(とおる)佐賀井(さがい)を呼び止めようとしたが、手遅れで(とおる)たちのもとを姿を消すようにして、生徒たちの人混みの中に混ざって去って行った。


「しまった……受け取ってしまった」

「な、なんで!? なんで(とおる)だけ!?」

(とおる)くん……今の人とお知り合いなの?」

「いや、初対面だな。少なくとも、俺は全く記憶に無い人だ。顔だけじゃなく、名前も」


 (とおる)たちは佐賀井(さがい)から受け取った名刺を確認する。どの情報も身に覚えが無い。昨日の夢のこともあり、(とおる)は混乱に混乱が重なる。


「しかもさ、学長より指示って言ってたよね。ということは、この学校の学長も(とおる)のことを特別に認識してるってこと? こんな数多い生徒たちの中から?」

「凄いね……(とおる)くん」

「別に嬉しくないんだけどな……それに、こんな物を受け取ってしまったら学校側が俺に忖度してるって疑われ兼ねないし、俺も何か色々言われてしまう可能性が高い。捨てようにも、校則の関係とかあるから生徒個人で勝手な処分は出来ないし、困った」

「そのクラス表や校内図には、在庫に限りがあるかもしれないしね……って、(とき)ちゃん? どうしたの?」

「いや……さっき、佐賀井(さがい)副学長は私の分は(とおる)お兄ちゃんの物があるからそれで確認するように言ってきたでしょ? それって、どういう思惑で言ってきたのかなって。しかも、(あかり)ちゃんや瑠夏(るか)ちゃんには何も言わなかったのに、どうして私だけなんだろうって思ったんだよ」

「あ、たしかに! なんで、(あかり)とあたしは呼ばれなかったわけ!? (とおる)(とき)は上級国民ならぬ上級生徒ってこと!? こんなの不公平だー! 闇の時代再来だあああ」

「る、瑠夏(るか)ちゃん落ち着いて……」

「あはは、冗談だって(あかり)。それよりクラス表もらえたの超ラッキーじゃん! 早く確認して教室へ向かおうよ」

「前向きな奴だ」

「えへへ……」


 瑠夏(るか)がふざけ混じりで照れている仕草を見せる。(とおる)がクラス表に再び目をやると、(とき)たちが(とおる)を後ろから覗き込むようにして一緒にクラス表を見てみる。


「とにかく、クラス表をもらえて助かったね」

「どうせくれるなら、登校前日に渡せばいいのに」

「それは人数的に用意するのが凄く大変なんじゃないかな……それに、前日時点でクラスが決まりきってるとも限らないし」

「俺は……一年C組の出席番号八十五番みたいだな。(あかり)も同じクラスだ。出席番号が俺のすぐ手前で八十四番」

「あ、本当だ! (とおる)くんと一緒でよかった……嬉しいな。安心するよ」

「えー、あたしは……あ、いた! あたしも(とおる)(あかり)と同じクラスじゃん!」

瑠夏(るか)ちゃんも一緒でよかった! でも、(とき)ちゃんは……」

「人数が多いから一クラスだけ集中して確認するのも大変だ。一クラス百人もいるからな」


 (とおる)たちが(とき)の名前を探していると、(とおる)たちのクラスの思ったよりも近くに記されていた。


「あ、あったあった。私は一年B組の八十五番だね。出席番号が(とおる)お兄ちゃんとお揃いで嬉しいし、わかりやすいな。C組とB組だったら、(とおる)お兄ちゃんたちと隣の教室のクラスの可能性が高いね」

「たしかに! (とき)も近くのクラスそうでよかった~! 帰る時もすぐ迎えに行けそうだね!」

「そうだね、よかったよ。これなら行きも帰りも不安が無いね」

「貰ったクラス表や校内図をもとに、教室へ向かおう」

「はーい!」


 (とおる)たちは、校庭にてクラス表を見ようと集まっている生徒たちを後にして3階道路から繋がっている学校の玄関へと入っていく。電光看板が、各学年と各組の下駄箱の列を差し示していた。(とおる)たちは1年C組およびB組の列を見つけ出し、外靴から上履きへと履き替える。


 名前と出席番号が指定されている各ロッカーを開けてみると、それぞれ(とおる)たちの足のサイズにぴったり合う上履きが予め収納されていた。盗難や破損防止の為、本人確認認証システムで各ロッカーの使用主および上履きの持ち主を識別する。どういった基準で対象の人間を判定しているのかは、媒体によって異なる為、学校関係者以外にはわからないようになっている。


 (とおる)たち四人が上履きに履き替えると、広大な学校内を移動して教室へ向かう。(とおる)たちが入った玄関は、一階道路の玄関から数えて約二十階に相当する高さの玄関である。エレベーターやエスカレーターなども多く、たくさんの生徒たちや教員たちが行き来している。(とおる)たちは、校内図を見ながら現在位置と照らし合わせ、自分たちが向かうべき教室の場所と進むべき方向の道を把握する。


「あそこを降りれば、一年生の階層フロアになるみたいだよ」

「うひゃー。距離も長いのに、上り下りもあってなかなか大変だ」

「はぁ……はぁ……ま、待って、三人とも……」


 運動に慣れている(とおる)(とき)瑠夏(るか)の三人がピンピンしている中、(あかり)は教室に着く前に息を切らして疲れていた。(とおる)たちの早歩きの速さと体力の高さについていけず、登校中の疲労も重なってスタミナに限界を迎えていたのである。(あかり)の運動神経は、中学1年生の女子としては平均的なのだが、そんな(あかり)が息を切らすほど疲れるということは、大半の生徒が自分たちの教室まで行くのに疲れる可能性が高いということになる。また、それだけこの学校が広いという表れであった。


(あかり)。大丈夫か?」

「たしかに、学校内だけでも結構な距離だよね。これを今日から毎日繰り返さないといけなくなるんだ」

「うーん、普通にだるいなー。慣れたらそうでもなくなったりするのかなぁ?」

「しょ、正直……まだ…………これに慣れていける自信が無い、かな…………」

「でも、あと少しだから頑張ろう。なんとか遅刻はしないで済みそうだから、(あかり)の為にゆっくり行ってもいいんじゃないか?」

「そうだね。(あかり)ちゃん、息整って大丈夫になったら教えてね」

「あ、もう大丈夫だよ……このまま行こう? ごめんね、私に合わせてくれて……」

「無理はしないようにな」

「うん、ありがとう。(とおる)くん」

「もしあれなら、あたしが(あかり)をおんぶしよっか? (あかり)って、めっちゃ軽そうだし」

「あ、いや、恥ずかしいから遠慮します……」

「振られたー!?」

「ご、誤解されること言わないで!!」

「誤解されるってどういう意味で? (あかり)とあたしの関係を? それとも、(あかり)は本当はあたしのことを……」

「いや、だからその…………もう~!」


 (あかり)が赤面して、疲労も重なって頭の中を滅茶苦茶にされた気分になる。


「疲れてる(あかり)をそれ以上疲れさせてどうするんだ」

「うぅ……(とおる)くん…………」

「てへ、ごめんごめん」

「早く行こうよ……」


 (とき)が呆れた声で呟く。(とおる)たちが再び足を動かし、ようやく自分たちの教室の前に辿り着く。


「うん。校内図通り一年C組とB組の教室は隣同士だね」

「それじゃあ、(とき)。また後でな」

「うん、また後でね。(とおる)お兄ちゃん。(あかり)ちゃんと瑠夏(るか)ちゃんも」

「ありがとう、(とき)ちゃん」

「寂しくなったらいつでも飛んでくるんだよ~?」

「うるさいな……」


 (とき)が一年B組の教室に入ると同時に、残りの三人の(とおる)たちも一年C組の教室へと入り足を踏み入れた。しかし、その瞬間に突然の出来事が起こる。

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