1-24.『露呈』
「み、皆……」
「乃之ちゃんも、来てたんだね」
「う、うん……トオくんに言われて」
乃之は、気まずそうに刻や明日花の方をチラチラ見て様子を伺う。無表情の刻と、同じく気まずそうにしている明日花。あからさまに目線が下になってしまう乃之。
「……よかったね。透のお爺さんお婆さんのお家に入れて」
「うん……」
乃之は、まるで人が変わったように元気無く返事をした。瑠夏は、とある乃之がとある物を持っていることに気がつく。上着だった。瑠夏は、閃いて提案する。
「乃之、その上着を心に貸してやってくれない?」
「え? い、いいけど……濡れてるよ? って、心ちゃん? どうしたの、その格好……」
「あー、はいはい、それについては訊かないであげて!」
瑠夏は、話を逸らさせる。心は元気無く呟く。
「もっと早く借りたかったけど……」
「はいはい、文句言わない。心が悪いんだから」
瑠夏が、心の剥き出しの脇腹を障っておちょくる。
「ちょ、やめて……!」
心は瑠夏の手を嫌がり、思いきり払い除ける。乃之の濡れた上着を借りても更に濡れるだけだと判断した心。何より、家に到着から身に付けても遅かった。そう思い、全身を少しでも早く乾かす為にそのままの格好でいた。
家の中に入る前に、心以外の女子たちは乃之と同じように濡れた服を絞って水気を取る。当然、靴の中もびしょ濡れである。元々靴下を履いていなかった者もいるが、靴下を履いてきた者は悲惨で気持ち悪い感覚だった。既に足が痒かった。今すぐ脱いでしまいたかった。刻が靴下を脱ぎ始めて、靴を再度履いて素足履きをする。それを見た燈たちも、刻に習うように同じ行動を取った。
ある程度の服の水気が落ちたら、刻が勝手口の扉を開ける。刻たちは家の中に入って行った。
【透たちの祖父母宅 勝手口】
なんとか、家の内部に入れた刻たち。しかし、まだ頭がびしょ濡れだった。拭くタオルが無い為、まだ玄関より先へは進めない刻たち。 その時、誰かが勝手口の玄関に向かってきた。そこで、心は再び最悪な悲劇に出会してしまう。心を守っている刻たちも警戒していた、最も起きてはならない最悪な事態が起きてしまった。
勝手口の玄関へと訪れたのは……透たちの祖母と、それについて来た透たちではない同年代の男子二人組だった。
「え……!?」
心は、顔を真っ赤にしてしゃがみ女子たちの後ろに隠れた。男子二人組に全てを晒した姿を見られてしまった心。透たちの祖母は目を見開いて驚いた様子のまま心を怒った。
「こ、心!? あんた、なんて格好をしているの!! あぁ、恥ずかしい……!!」
透たちの祖母の名は松本永和世。透と心の祖母であり、刻の養祖母であり、樹の母である。
現在は心の格好の影響により激昂して取り乱している状態であり、普段はとても優しく温厚な性格である。その為、そんな永和世の今の様子を見て、燈たちも珍しく思ったのか驚いているくらいである。
家族や人と人との繋がりを大切にしている。何事にも和を大切としており、伝統や風習も必ず尊重して重んじる。
透たちとは50歳近く離れており、60代となってまだ数年である。
しかし、西暦3000年代の医療技術により、18歳となった頃から身体の老化の早さを3分の1くらいに減速させている為、外見が20代前半の姿に見える程に若い。
つまり、西暦3000年代を生きている60代の人間は、西暦2000年前後を生きている人間でいう所の20代前半と同じくらいである為、西暦3000年代においては年齢相応の容姿ということになる。若く見えるのではなく、本当に西暦2000年前後でいうところの20代前半の姿とも言える。
永和世は瑠夏や呂威よりも背が高く、身長が180cmを越えている。同年代の人間には、まだ現役のスポーツのプロ選手として大活躍している者も世界に多数存在している。
そんな永和世が心の現在の姿に気づいてしまい、恥ずかしそうに頭を抱えて身体が崩れるように膝をついた。まるでトラウマになっているかのように、顔を青ざめてパニック状態となっていた。
そして、心は現在の姿を祖母に見つかって怒られる上に、透以外の男子にはまだ見せたくなかった他の男子二人に真の姿を見られてしまったのである。
心は恥ずかしすぎて、いても立ってもいられなかった。
「ちょ……何がどうなってんだ?」
「お、お婆さん!! 大丈夫ですか!」
男子二人組も心の姿にパニック状態だったが、永和世を支えてなんとか立たせる。
男子二人組のことは、乃之以外の女子たちは知っていた。何故なら、彼らも透たちの幼馴染みで秘密基地の存在も知っている仲だからである。
永和世を真っ先に支えたのは、西村行悟。茶髪のストレートヘアが特徴的な、明るい外見をした美男子である。
容姿通り、明るい性格でお茶目なところがある。漁や海運の仕事をている家柄、海を渡るのは日常的なので海を渡る旅に飽きており、もっとスケールの大きい旅でもしてみたいという願望があるチャレンジャーな精神を持っている。
もう一人の男子が蛯子 瞬。黒髪のショートヘアで、中性的な容姿が特徴的の逆に暗い外見をした美男子である。
普段はクールで大人しい性格だが、中性的な容姿のせいで女子と間違われることが多い。性別を間違えられると強い不快感を示し、そういう時だけあからさまに口数が多くなって反発するというトークのモードに切り替えがある。
行悟と瞬が女子たちに反射の速さで気遣い、女子たちの濡れた姿を、そして特に心の姿を視界に入れないように直ぐ様に背を向ける体勢となる。その体勢のまま、永和世をなんとか立たせた。
燈と瑠夏が、それぞれ二人を認識して名前を呼ぶ。
「い、行悟!?」
「しゅ、瞬くん!!」
永和世が立ち上がると、再び心を叱りに詰め寄ろうとした。
「あんた、人様にそんな姿を晒して外を歩いていたの!? 松本家の人間だって知られてそういう目で見られるようになったら、どうするつもりなの? 大体、風邪引くでしょ!」
すると、なんとあの刻が心を庇うようにして心の盾となって代弁した。刻は自身の責任も感じており、反射で行動に出たのである。
「お、お婆ちゃん、待って!! 心がこうなったのは、私の責任なの! だから、叱るなら先に私を叱って……!」
「と、刻が……? ど、どうして、刻が!? 刻が何をやからせば、心がそうなっちゃうの!?」
永和世は、刻が心を生まれたままの姿にさせてしまう程のことのミスをしたことが、信じられずにいた。彼女たちの日頃の行いから、どうしても心が自ら招いたこととしか思えなかった。
永和世のパニックになった声があまりにも大きすぎたのか、なんと心にとって更に最悪な事態が連続して起こる。
「婆ちゃん。皆がいる前で、さっきから何を騒いでるんだ……って、は?」
「あ……」
刻は、血の気が引いて思わず呟いてしまう。なんと、透を含んだ他の男子4人まで来てしまったのだ。
とうとう、自分の不手際を透に見られてしまったのである。また、心に至っては追加で新たに男子三人に全てを見られてしまった。心は、羞恥心が爆発して更に顔を真っ赤にしながら震え、目に涙が溜まる。




