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Re:verse-Re:birth  作者: あーる
第1章『夢と現実の狭間と謎編』
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1-20.『白黒』

 一方、透の目の前は真っ暗で黒色に染まりきっていた。透の視界は徐々にはっきりしてくる。しかし、その割にはやけに明るくならない。まるで、自身の目は本当に開けているのかどうかわからなくなるくらいにしばらくの間、周囲の状況がわからずにいた。


「…………」


 そして、目がようやく慣れて来た頃、透は自身の目を疑った。自分がおかしくなったのか、それとも周りがおかしくなったのか、わからない程に。見えている範囲の世界がなんと、まるで幕末や明治時代の写真の中に入り込んでしまったかのように白黒となっていた。


 透は、時間が経てば経つほど意識もはっきりとしてきた。今は、夢なのかと疑問に思うことが出来た。

 しかし、夢の中で夢と認識することはそう容易なことではないのではと透は思った。だとすれば、「ここは夢の中ではないのか?」と訊かれれば悩ましい。


 現在の得体の知れない状況に、透は周囲をよく観察するように眺めながら歩きだしてみる。

 すると、透は驚くべき事実に気がつく。


「ここは……秘密基地か?」


 透は思わず声に出してしまう。透の言う通り、なんと現在いる場所は色が白黒だけになってしまっている秘密基地と同じ構造の場所だった。ここが秘密基地なのか、それとも秘密基地にとてもよく似ている場所なのか。透には現時点ではわからなかった。


 そもそも、現在は何時なのか。透の記憶が定かであれば……たしか、皆とともに秘密基地で昼寝をしていたはず。空は暗いというよりも、黒いと表現した方が適切のように思えた。


 現在は夜なのだろうかと、空の色でぱっと見でそう思った透。しかし、何か違和感があった。自分の知っている夜とは何かが違う。それに、夜特有の冷たい風を感じない。昼間は暑かった為に、涼しめの恰好で来た透。それなら、普段より寒く感じてもおかしくないはずである。それなのに、まるで密閉された空間の中にいるように外らしい空気も感じられなかったのである。


 黒い空をじっと見ていると、透はまた驚く光景を目の当たりにする。なんと、雲が定位置で止まっていた。つまり、本当に風が無いという事実に透は気づいてしまったのである。もし、現在が本当に夜ならば……月が見えるはずだと透は思った。早速、空を360℃の角度から見回してみる。しかし、晴れているにも関わらず月は見当たらなかった。


「どうなってる……?」


 透は、皆の姿も気になった。なぜ、自分一人しかいないのか。得体の知れない今の状況で、自分一人しかいないというのは恐怖と不安でしかなかった。自分だけを置いて帰ったりでもしたのだろうか。刻や心、そして幼馴染みたちに限ってそんなはずは無い。透はそう信じていた。だとすれば、皆はどこにいるのだろうか。透は、正直望みは薄かったが、秘密基地と思われる場所中を探してみることにした。


 秘密基地と思われる場所を歩き回ってみて、透はまた新たなことに気づく。秘密基地でいつも感じていた茂みの匂いが無いということに。透は、考えれば考えるほど新たな疑問が次々へと浮上してきて頭がパンクしそうになる。


 そして、透は歩き続けているとまるで時間が止まっているかのような感覚に陥った。風が無かったり、雲が動いてないのがまず根拠の一つである。二つ目の根拠は……なんというか、秘密基地そのものが生きているような感じがしなかった。まるで、秘密基地そのものが石化してしまったかのような。そんな感覚である。


 透がさっきから覚えていた言語化の難しい最も大きな違和感の正体が判明した。それも、透にとって大きく重要な事実である。

 それは、これまでに見た隕石や火山の夢とは大きく雰囲気が異なるという点。周囲が時間が止まっているように感じているからなのか、自然による災い的な嫌な予感がしなかったのである。ここ最近見た悪夢とは、何かが異なっていたのだった。



 透は、秘密基地と思われる場所を出てみた。ぱっと見る限り、秘密基地の出入り口周辺も、色合いが白黒であること以外は変わりなかった。ここがもし、秘密基地と同じ場所なら自分が生まれ育った町の今の様子が気になった。

 

 秘密基地と思わる場所を出て正面の角を曲がると、いつもなら壮大な町並みが見えるはずである。そして、夜にもなれば世界に誇るほどの綺麗な夜景を見せてくれるという長年の歴史を持つ町でもあった。そんな町の今の状態を確認すれば、透は現在の自身にどれ程の異変が起きているのか、わかるかもしれないと思ったのである。


 やがて、普段なら町の景色が見える位置にあたる地点に来ると、透はまたも驚くべき光景を目の当たりにした。


「え」


 町の形自体は、透がよく知っている馴染んだ故郷の町だった。しかし、唯一とも呼べるほどの、普段と大きく異なる点は……なんと、見慣れた広大な町には光一つすら見受けられなかったのである。


 透たちの住む町の大きさの規模を考えれば、いくら夜中だとしてもどこかしら明かりは点いているはずである。つまり、一日24時間のうち、町内で明かりが点いていない場所は一つも存在しないはずなのだ。それなのに、まるで町が死んでしまったかのように白い道路と黒い建物しか見受けられなかった。そして、人の姿も一人も見えない。

 世界に誇る夜景を持つ町とは思えないほどに、酷く哀愁漂う寂しさを感じさせる町の景色となっていた。住人が全員この町を離れて町全体が廃れてしまったとしても、どこかしら一つくらいは明かりが灯っていそうである。


 もし、住人全員がこの町を出て行ったとするならば、町の人口の多さの規模からして、全員がいっぺんに同時に移動することはほぼ不可能な為、先に移住先を確保していることを考慮せざるを得ない。その上で、全員がこの町を出る頃にはそれなりの時間も経っているはずなので、町は既に廃墟となっており、どこかしらは植物に浸食され始めていてもおかしくないはずである。それも見受けられ無かったので、透は更に不可解に思えた。


「……おかしい」


 透は、隕石や火山の時とはまた違ったベクトルの気味の悪さを感じていた。それらの夢を思い出してみると、またもう一つ忘れていた点を思い出す。誕生日プレゼントの中に紛れていた、前述の2つの夢にも出てきたあの奇妙な物体である。ここでも、それを見つければこの不可解な状態から元に戻ることが出来るのだろうかと透は思った。


 しかし、透はこんなに広い町の中からその奇妙な物体を見つけ出すのは気が遠くなった。隕石や火山の時は、見知らぬ土地とはいえ限られたエリア内ではあったし、何より何かに追われることで命の危機を感じていてそれどころでは無かったのでたまたま見つけ出すことが出来た。

 知っているエリアの方が色々な所を探し回れる為、逆に難易度が高そうだった。命の危機が無い分、じっくりと探し回れてしまうのでどれだけ時間を要するかわからない。現在は、ここ自体の時間が動いていない疑惑があるが、透の精神的な意味での時間がもつかどうかがわからなかった。



 透が、気が退けつつも町へ向かおうとしたその時、何か音が聞こえたような気がした。


「なんだ?」


 透が音を感じ取った方向は、明らかに町からではなかった。確実に秘密基地に似た場所のある白黒の山の方向、つまり本来なら緑色で溢れかえっているであろう自然溢れる場所である。

 透は、恐る恐る来た方向を再び戻ってみた。



 秘密基地とよく似た場所である出入り口に来た透。透の記憶通りなら先程、乃之が明日花に襲いかかったところを止め、事故で自身が怪我をした所でもある。自分の手を見ても、絆創膏が貼ってあることがその証明である。絆創膏には、透の血であろう赤い色が付着していた。今更ながら、そこでようやく気づく。今いる場所では、自分の身だけが唯一白黒ではなく他の色があるということに。


 明日花と乃之の件に限らず、隕石のことや火山のことの記憶を引き継げている時点で、今見ている世界が夢なのかどうか益々怪しくなり、疑わしくなってくる透。ここは一体、何なのか。今、何が起きているのか。考えれば考える程、具合が悪くなりそうである。

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