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Re:verse-Re:birth  作者: あーる
序章『プロローグ編』
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序-4.『通学路』

「おはよう、(とおる)くん! 今日から中学生か!」


 (とおる)に話しかけたのは、瑠夏(るか)と同じ町に暮らしている中年くらいの男性であった。瑠夏(るか)には見たことある人物だが、顔見知り程度である。当然、(とき)(あかり)は面識が無く、(とおる)だけは相手の名前もわかっている。


崎野(さきの)さん、おはようございます。そうですね、本日より中学生となります」

「入学おめでとう! 中学でも頑張ってね!」

「はい。ありがとうございます」


 (とおる)が挨拶を終えると、(とき)たちも続いて挨拶をした。そして、(とおる)にかかる声はまだ終わりではなかった。


「まぁ、(とおる)くん! 制服姿ってことは……もう中学生!?」

「はい。本日でついに中学生となります」


 今度は二十代くらいの女性が(とおる)に話しかけてきた。


「そうだったの! もうそんな時期になるのね……中学は大変だろうけど、お勉強頑張ってね!」

「はい。ありがとうございます」

(とおる)くん、おはようございます!!」

(とおる)くんや、どうもおはよう」


 次から次へと挨拶が殺到してくる(とおる)(とおる)がたくさんの住民たちに挨拶される光景に、(とき)たちは唖然としていた。


(とおる)、この町に住んでるあたしより挨拶されてるな~」

(とおる)くんは本当に顔が広いよね……町内だけでなく、隣町でもこんなに認識されてるなんて」

「ふふん。そんな有名人な(とおる)と一緒に歩けるなんて、光栄ですな~!」

「朝から本当に元気だな。お前」


 油断している瑠夏(るか)の目の前に、(とおる)が突然現れる。


「わぁ!? びっくりした……というか、むしろこの元気を(とおる)に分けたくらいなんだけど……」

「あはは……」


 (あかり)が苦笑いする。(とおる)たちが話しながら通学路を進んでいると、自分たちと同学年くらいで同じ学校の制服を着ている人を多数見かけた。


「皆、私たちと同じ新入生かもしれないね」

「ほんと、学校までまだ先なのに、既に凄い人の数だな~」

「先輩方も混ざってるのかもしれないけど……もし皆が新入生なら、あの中にこれから私たちのクラスメイトになるかもしれない人たちだよね」

「可能なら挨拶くらいはしておきたいけど、流石にこの人数じゃキリがないな~。せめて顔くらいは覚えていきたいけど、名前もわからないとほぼ意味無いし。ね、(とおる)?」


 まるで、石像のように固まって考え事をしている(とおる)


「……」

「……あの~。(とおる)くーん。もしかして、あんまり中学にワクワクしていらっしゃらない?」

「……」

「そ、そうだよね~、あの(とおる)なら中学以上にもっと凄い経験、たくさんしてそうだもんね~……」


 瑠夏(るか)があたふた喋っているのに対し、(とおる)は何一つ表情を変えずに前だけを見つめていた。(とき)(あかり)が、(とおる)の顔を覗きこむようにして様子を伺っても変化が無い。間を置いて、ようやく(とおる)瑠夏(るか)が何かを話していたことに気がつく。


「ん? 悪い。聞いてなかった」

「ええーーー!? も~、あんなに喋ったのに!!」

「悪い。で、何を話してたんだ?」

(とおる)、これから中学生になるのに全然楽しみじゃなさそうだな~って」

「まさか。これからどんな人と出会い、どんな生活を送れるのか俺だって楽しみだ。」

「そ、そっか。それならいいんだけど……」


 (とおる)の話を聞いても腑に落ちない(とき)たち。ここ最近、(とおる)の冷静さや落ち着いた話し方に慣れているからこそ、表情を変えずに普通のように接してくることが逆に不安で仕方が無かった。接し方の割にはやけに考え事が長すぎる。一同でそう思っていたのである。


「((とおる)くん、どうしたんだろう……本当に大丈夫かな…………)」


 (あかり)が、心の中でそう呟いてるうちに、なんと行列が出来ている道にたどり着いた。それによって、通学路が塞がれてしまっていた。


「うわー!? なにこの人数!!」

「これは……真面目に並んでたら確実に遅刻してしまうね」

「一番土地の価格が高い、三階道路でこの人の数だからな。一階道路、二階道路、地下道路はもっと混み合ってるはずだ」

「人口が増えすぎたからこそ、道路の階層を増やすことで人を分散させて、アクセスしやすくなったけど……それでも、人が多すぎるね。今はもう、若者の方が圧倒的に多い時代から当然と言えば当然だけど」

「うひゃー。分散してるはずなのに、これじゃ三階道路すらも一階道路しかなかった闇の時代より人の行き来というか人口密度濃いね~」

「その頃は少子高齢化だったんだし、一階道路しかなくても人の通りが少なかったのは当たり前なんだけどね……乗り物だって、自動車やバス、電車など色々あった当時と違って、現代の移動手段は空中モノレールくらいしかないから」

「だから、今の時代は徒歩の人が大多数なんだよね。交通事故の無い、安全な社会を目指してきた過程による結果……」

「どれだけ便利な物があっても、命の安全には換えられない……って、真面目な話してる場合じゃないよ、どうしよー!?」

「落ち着け。焦ってもトラブルを引き起こすだけだ」

「いや、(とおる)は落ち着きすぎなんだって!!」

「とりあえず、他の道を探してみようよ。どのみち、この東方向を進んでいかないと学校に行けないことにはかわりないし」

「そうだね。遠回りになるかもしれないけど、ここを待っているよりは近道だと思うから……」


 (とおる)たちは予定の通学路とは方向を変えて、別の道を探して進んでみることにした。それでも、それなりの人数の人々が行き交っていった。


「うぅ~……ここも人多い! なんならさっきより多いような……」

「でも、これ以上南下したら空中モノレール駅周辺の都市部になるから登校が困難になるよ。それに、このまま学校へと真っ直ぐ行ける道もここの通りで最後だから通学路が膨らんで移動距離が長くなっちゃう」

「我慢して進むしかなさそうだね……道は広くなってるから、さっきよりかはまだ移動しやすそうだし」

「そっかぁ、三階道路住みなだけマシだし贅沢も言えないか」


 (とおる)たちは、先を急いだ。多くの人々が行き交う巨大な交差点道路。(とおる)たちは人にぶつかったりはぐれたりしないよう、注意しながら学校に向かって進む。


「それでも、やっぱ3階道路住みは勝ち組だな~って改めて思う。人の行き来が下の階の道路に比べたらまだ少ないのもそうだし、何より閉塞感が無くて開放的だし」

「夏場と冬が地獄だけどね……直射日光や風をもろに喰らうし、雨や雪だって一番当たるから」

「まぁでも、インフラのおかげで直ぐに処理されて下に流されていくじゃん? 下の階

だと雪が貯まりやすい上に溶けにくいから厄介そう。夏はたしかに日陰になるからまだマシかもだけど」

「そうでもないよ。人が多すぎるから密度の影響で蒸気が発生して雲が出来たりすることもあるから。密集された空間で風の通りも悪いし、そんなにマシとも言えないかも」

「ええ~、マジか……下の階の道路は人少ないとこしか行ったこと無いから全然知らなかった」

「見えてきたぞ」

「え、もう?」


 (とおる)の見ている方向に、瑠夏(るか)が目をやると巨大な建物が視界に映った。まだ到着していないのに、既に巨大なのが伝わるレベルの大きさである。


「わぉ……初めて行った時はかなり遠く感じたけど、親に頼らず自分たちの力で来てみると案外近いね」

「これからもっと慣れていくだろうから、もっと近く感じるかもな」

「改めて見ると……本当に大きくて広い学校だよね」

「これから毎日ここに通うことになるんだなぁ……初めて見た時はほんとびっくりしたよねー。下手したら、この学校含めなくても学校の敷地内だけで小さな町一つ分の広さなんじゃない?」

「まぁ、こんな大きな学校を町のど真ん中に建てたらあっという間にスペース無くなるね。海の上に建設にしたからこそ出来たことだよ」


 (とおる)たちがどんどん歩を進めていく。やがて、学校の校門付近に辿り着くと広大で沢山の人々が行き交う光景が(とおる)たちの視界に映った。

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