1-15.『議論』
「さ、行こっか。透お兄ちゃん」
「あぁ……」
透は、刻によって腕を組まれて秘密基地へと進んでいった。それについてく幼馴染みたち。刻は両手で透の片腕にしがみ着いていた為、今日限りは話さない勢いだった。しかし、乃之と明日花、そして心はまだその場に留まっていた。
「わ、わりーな、乃之……さっきみてーに庇ってやりてー気持ちは山々なんだけどよ……流石にこればかりはどうしようもねーや。だって、これは……乃之がわりーことなんだからな」
直輝すらも、流石に乃之を守ることは出来ないと察していた状況だった。そして、直輝は気まずそうに急いで透たちの所へと走って行った。
「…………」
「…………」
明日花と乃之は、お互い目を合わせてこそいないが、どちらも青ざめた暗い表情をしたまま固まっており、放心状態だった。そして、そんな状態の二人に心は言葉をかける。
「ま、人ってどうしても合う人合わない人いるから仕方無いかもねー。無理に仲良くする必要も、仲直りする必要も無いんじゃない? ただ、ずっとその状態だと今後、透おにーちゃんと一緒にいられる時間も限られてくるだろうねー」
「!」
「!」
明日花と乃之は、心の言葉にハッとするように目が覚める。目の焦点が、正面に定まる。
「ま、精々出禁にされないように頑張ってくださーい。それじゃあねー」
心は、透たちを追いかける。明日花と乃之の二人は、暫くその場に留まって固まり続けて動かなかった。というよりは、動けずにいた。
「…………」
秘密基地
心が秘密基地に辿り着いた頃には、透たちが囲うようにして何か話し合っている様子だった。心は慌てて透の元へ駆けつける。刻は相変わらず、透と腕を組んだまま離さずにいた。
「心。油でも売ってたのか?」
「ごめんごめん、お待たせー! 囲うように真剣な顔して、何を話してたの? やっぱり、あの二人のこと?」
「いや、違う。昼寝でもするかって話し合ってた」
「え……? さっきの空気から今の状態の流れ的に、もっと真面目な話をしてると思ってたんだけど……ギャップが凄すぎない?」
「真面目な話だぞ。俺も皆も、暑さのせいで疲れてるからな。でも、俺が寝るのはまずいんじゃないかって流れになって」
「あ……たしかに、そう言われると真面目な話だね」
「やっぱりさ……透が魘されていたら、直ぐに起こすってことでいいと俺は思うぞ」
「待て。透が夢の中で物体を探している最中に、起こすとどういったリスクを抱えるか、わかったものじゃないだろう? もし、無限ループに陥ってしまい起きることが出来なくなってしまったらどうするつもりだ?」
「特殊な夢だっつーのはわかるんだけどよ……流石に夢は夢なことには変わりねえんじゃねーのか? ま、透に少しでもリスクがあんのも事実か」
「そもそも、そういう夢を見てる時の透って簡単に起こせるものなの? あの変な物体を見つけない限りは起きれないシステムとかだったりしない?」
颯空たちが、想像以上に真面目に議論し合っていることに心は唖然とする。
「わ。わぁ……思ったより本格的に話し合ってて、会議らしい会議だ……え、何。皆どういう風に寝るつもりなの?」
「交代で寝る感じだよ。その為に、先に寝る組と後から寝る組の二つに別れる感じで……ただ、透くんが寝る時は少ない人数の方が良さそうかな」
「なるほどね……起こすってなったら、起こすの大変になるかもだし?」
「それに、透お兄ちゃんが寝ている間に誰に何をされるかわかったものじゃないし。だから、厳重に護衛する為にも、私はこのままでいるつもりだよ」
「うんうん、刻おねーちゃんとわたしは、透おにーちゃんと別のタイミングの方が良さそうだねー。で、寝るグループは決まってんの?」
「それを今話し合っているところ……」
「どう分けるのが理想なのかなー?」
「個人的な意見だけど……私が透くんと同じタイミングで寝られればいいんじゃないかなって思うの」
「へー、燈ちゃんが自分から言うのちょっと珍しくない?」
「あ、いや、その……私って、皆に比べて力が弱いから。私に透くんを起こせる力があるのかどうか、自信が無くて……」
「なーるほどな。それはたしかに一理あるかもしんねーな」
「燈が一生懸命になって透を起こしてる姿は容易に想像つくよね~」
「たしかに……大変そうな気はしてくるよな」
「あ。あの、皆……恥ずかしいからあんまり想像しないで貰えると、嬉しいかな……」
「うん、たしかにそれが良いかもしれないな。燈の言う通り、俺が燈と同じタイミングで寝るのが良さそうな気がする」
「であれば、透側にまず燈を入れるとしよう。あと一人くらい、いると丁度いいのではないか?」
「え……?」
燈は、戸惑う。例の誰かの気配について話し合う為、透と二人きりになれる時間を作りたかったのだ。皆が寝ている間なら、透と二人きりで話し合えると思ったのである。しかし、言われてみるとたしかに透と燈だけが寝るのに対して、見張りをする人物が明らかに多すぎてバランスが悪い。
それに、いくら透がついているからとはいえ、透と燈自身の二人だけじゃ寝ている皆を見守るのにはキャパシティが足りない可能性が高い。もし、足りたとしても透に相当の負担をかけさせることになってしまうだろう。燈は、ここは冷静になって皆の意見に従うことにした。
「どうかしたのか? 燈」
「ううん……なんでもないよ。あと何人くらい決めよっか?」
「うーん……そういえば、あいつらって結局秘密基地に来るのか? 透を怪我させた件で、あれからまだ入り口の所で止まってたりするのか?」
「それが一番わかんないんだよね~。あの二人が今、どういう心理なのかもよくわかんないしさ」
「あいつらが、途中でこちらを訪れる可能性も全然考えられるであろう。そういう時の説明役も必要になるので、決めておく必要がありそうではある」
「とりあえず、透と同じタイミングで寝るヤツを決めよーぜ。あと何人決めりゃいいんだ?」
「んー。あの二人がこっちに来ることを考慮して、あと二人くらい一緒で丁度良いんじゃないー? 透おにーちゃん側が少ない人数になるってことだから……んー…………」
「それなら、わたしが一緒に寝るよー!」
「え、星名が?」
「わたし……まだ、他の誰かに見つかったらまずいから。だから、人数多いグループに見守って貰った方が安全かなって思って!」
「あー、なるほどね。それはたしかにそうだ。じゃあ、月葉もじゃない?」
「わたしも、そう思っていた……皆が良ければ、透くんと同じタイミングが良い……」
「じゃあ、決まりか? 俺と同じタイミングで寝るのは、燈と星名と月葉。それ以外のメンバーが同じタイミングということで大丈夫そうか」
「うん。私はそれでいいよ。多分……透お兄ちゃんのことが心配で眠れないかもしれないけどね」
「それはそれで……しょうがないよね~。全員、寝たいとは言っても寝られるとは限らないしね~」
「どっちのグループが先に寝るんだ? 透たちが先でいいのか? それとも俺らが先か?」
「私たちが先で良いんじゃない? 透お兄ちゃんが魘された時に助けるのなら、私たちが先に寝て身体を十分に回復させておく必要があるだろうから」
「だな。んじゃ、刻の言う通りオレらが先に寝よーぜ」
「透たちも、それでいいか?」
「あぁ。もちろん」
「うん。それでお願い」
呂威の問いに、透たちが答えた。そして、透・燈・星名・月葉の4人以外のメンバーが先に昼寝をすることに決定した。刻たちは、それぞれ好きな場所で横になり、眠りに就いた。




