1-11.『相談』
「なるほどね……流石は透くんだね。本当に色々な案が思いつくよね」
「他にも何か思いつくかもしれないから、その都度行動する。もし、皆の力が必要になりそうなことが思いついたら、よかったら力を貸して貰えるか?」
「もちろんだ。いつでも俺に相談してくれよ」
「ちょっと知るのが怖い気もするけど……透だけが苦しむのは癇に障るしね~」
「へへ、任せろってんだ! なんかワクワクもするし、ハラハラもするから変な気分だけど、すげーことがわかりそうな予感がするしな!」
「どんな些細な変化であろうとも、この俺になんでも打ち明けるがいい。気軽にしてくれて構わんぞ?」
「わたしも、もちろん協力するよー! 透くんからのご指名、いつでも待ってるよー!」
「私も、出来ることなら透くんの力に精一杯なる……」
「皆、ありがとう。助かる」
「何言ってんだよ。お互い様だろ? 俺らは、昔からずっと透に助けて貰って来たんだから」
「むしろ、恩返しする良い機会じゃねーか? 内容がイレギュラーすぎて、今はまだ何したら良いかわかんねーけどよ!」
「今の俺たちが存在しているのは透、お前のおかげと言っても過言ではあるまい。ここ最近は、お前一人で抱え込む傾向にあったが……よくぞ、直ぐに呼んでくれた。この調子で、早い情報を頼む。その方が、俺たちも動きやすいのだからな」
「お前らが幼馴染みで本当に良かった。俺は周りに恵まれているとつくづく思う」
「えへへ、それほどでもー?」
心は透に抱きつくと、刻がすかさず注意する。
「ちょっと! 透お兄ちゃんが体調不安定だってこと、忘れてない?」
「ほんと、ブラコンだなー」
瑠夏が再び心をイジる。そして、周囲は今の雰囲気が微笑ましくなり笑った。
「というわけで……話は以上だ。結局、この物体の主は今集まってる人たちの中にはいないってことで大丈夫そうだな」
「まー、少なくともあたしの趣味じゃないねー。透や刻、呂威とか星名とか、世界の事情を知ってる人でもわからないんだから、一般人のあたしには知り得ないな~?」
「ま、そうだろーな。広い世界を知ってるオメーらがわからねーんじゃ正直お手上げだ。ま、似たようなもん見つけたら報告出来るくれーかもな!」
「そういうのでも構わない。とにかく何か感じたりしたら、その都度俺に連絡して貰えると助かる」
「じゃあ……透くんも私たちに小まめに連絡お願い……」
「わかった」
そして、透はそう言いながら突然後ろに倒れた。
「と、透!?」
「透くん!! 大丈夫?」
「あ。大丈夫だ。自分から横になったんだ。誤解させて悪いな」
「本当に……びっくりしたぞ。正直、今のオマエはいつ倒れてもおかしくないって今でもヒヤヒヤしてるんだからな」
「大袈裟だな……って言いたいところだけど、昨日本当に倒れてしまったから何も返す言葉が無い」
「シャレにならないよね~」
透が仰向けのまま、全身を大の字にして伸ばす。すると、透が静止していた。
「……透お兄ちゃん?」
刻は、透が何かを見つめているように見えた。便乗して真上を見てみる。しかし、あるのは特に変化の無い見慣れた木々だった。
「……空が綺麗だな。さっきまで暑いって思ってたけど、綺麗な青空を見つめてると涼しく感じる。まぁ、木の下にいるんだから、日陰にいるってことだし涼しく感じるのは当たり前なんだが」
「やっぱ、ここって落ち着くよなー! 安心感があるっつーか。昔からいるとこだから、めっちゃ安らぐぜ」
「あたしも横になろっと~」
透が横になっているのを見て、自分も横になろうと便乗する幼馴染みたち。リラックスして、清々しい気持ちになる。とても涼しく、心地よい風もあった。今が、まだ4月上旬であることを忘れてしまうくらいに。すると、燈がふと疑問になり皆に問う。
「……ねえ」
「どうしたの? 燈ちゃん」
「いつから……こんなに暑くなったのかな。昨日は、間違いなく普通の気温だったよね。今朝も、そこまで温かくは無かったような気がするんだけど……いや、今朝は透くんのことが心配だったから、怖くて寒気がしてたのもあると思うんだけど……」
「んー。たしかに。あたし、今日は休みなのに久しぶりに早起きしたけど、まぁまぁ冷えてたよ~。その後から透たちと会う前の間、一番下の弟と散歩に行ってたんだけどさ。普通に例年通りの気温だった」
「それって、何時くらいだ?」
透が、何か引っかかったような様子で訊く。
「え? えっと……何時だろ。家に帰ったのが9時前くらいだったかな?」
「9時前……か。俺はその時、まだ気を失ってたはずだからわからないな」
「私は、透お兄ちゃんの容態でそれどころじゃなかったから、全然意識してなかったな……もう、本当に透お兄ちゃんのこと以外を考えられる余裕が無かった」
「わたしも……トオくんのことが心配で、嫌な汗をかいてたよ」
「わたしもそんな感じー。颯空たちは? その時起きてた?」
「俺は8時に起きたけど、特に暑いとは思わなかったな」
「俺も、具体的なことは言えんがその時は少しした仕事をしていた。普段通りだったから、その時はおそらく特には変化が生じていなかっただろう」
「オレは……まだ寝てたな! 10時に起きた!」
「あ、直輝はどうせそんなことだろうなーって思ってたから訊いてませいーん」
「はー!? なんだと! それは偏見っつーんだよ!」
「でも、透おにーちゃんより起きるの遅かったんでしょー?」
「…………」
直輝は固まる。
「あちゃ~。直輝、図星だね~……」
「星名ちゃんと月葉ちゃんは、その……どんな感じだったのかな?」
「わたしは、家でお留守番してたよー! ママもお姉ちゃんもお仕事だから!」
「私も……当時は特に出かける用事が無かったから、家で新作のことでも考えていた……だから、外の気温については詳しくはわからない……」
「なるほどね。じゃあ、透お兄ちゃんが目を覚ました直後は気温は例年通りな感じだね」
「となると……俺たちが、出かける支度をした時刻くらいからか。昼食を取り終えた直後くらい」
「それって、あたしが透たちの家で会う少し前くらい~?」
「あぁ。あの時でたしか、13時直前くらいな気がする。まぁ、帰ったらいつから暑くなり始めたのか、気象情報を調べれば直ぐにわかるんだが」
「それもそうだね。帰ったらやることが多いね」
「早速宿題かー。透おにーちゃんは、大変だよねー」
「心。他人事みたいに言わないの」
「はいはい、わかってまーす。わたしだって、気になるし」
すると、刻と心が透が固まって何かを考えている様子なことに気づく。そして、透が突然呟く。
「……まさかな」
「え?」
刻と心は、同時に咄嗟に声を出してしまう。何か意味深のように感じ、思わず透に訊く。
「と、透お兄ちゃん……どうかしたの?」
「わ、わたし、何か変なこと言ったー? もし、言ってたら本当にわわわ、悪気は無かったんですよー、ごめんなさーい」
「いや、違う。そうじゃなくて……まぁ、帰ったらどうせわかることだから今はいいか。なんでもない。今は気にしないでくれ」
「…………」
刻と心は、透が明らかに何かを察して勘付いたように見受けられた。しかし、それが具体的に何なのかは、知る術は無かった。出来るとすれば、支度時の透の行動から推測することだけである。しかし、シャワーを浴びたりもし、昨日と違って一緒には入らなかった為、その間に透が何をしていたかまではわからない。推測するにも、情報が限られている。
透の言う通り、帰ったらわかりそうなことではありそうなので、透本人が言うのなら、二人はそれ以上は深掘りしないことにした。




