1-3.『出発』
透の誕生日パーティに参加してくれた幼馴染み全員に連絡をし終える透。今日、予定が空いていて来られそうな人は燈と乃之も含めて全部で9人だった。透たちは、連絡に応えてくれた7人と待ち合わせの場所を決めて今日会う約束をした。
「さて。ひとまず、やることは終わったな」
「凄い人の数の連絡量だったね、トオくん。たしかに、昨日のトオくんの誕生日パーティ、凄い人の数だったもんね」
「そうだな。7人の回答があったと言っても、参加してくれた幼馴染み全体の3分の1くらいなんだけどな」
「そんなに沢山来てたんだ!? じゃあ、7人でも少ない方になるの?」
「まぁ、そうだね。家のお仕事を手伝ったりしてる人も多いから、こういう時なかなか予定が合わなくて全員揃うことって最近は困難なんだよね」
「中学生になると……皆も私たちも、これからもっと忙しくなるもんね」
「なんか寂しくなるねー。皆、よく集まって一緒に遊んでたから」
「そうなんだ……わたしも、仲間に入って一緒に遊びたかったよ……」
乃之は、羨ましそうに寂しい表情をする。日本から出て行かなければ、自分も輪に入って一緒に仲良く遊んでいたと思うと切なくなってきた。
「何言ってる。これから乃之も一緒だろ。別に、全員集まれない日が無いわけではないからな」
「そうだよ。だから、そんな顔しないで……乃之ちゃん」
燈が、乃之を慰めるように乃之の肩にそっと手を添える。
「うん……ありがと、トオくん。燈ちゃん」
「今日みたいに集まれない日が増えてくれば、幼馴染みたちもきっと同じ気持ちになるはずだよ」
「そうだよね……わたし、これからの時間をもっと大切に過ごすよ。絶対に後悔しないように……」
「うんうんー、それがいいね。とは言っても……昨日の透おにーちゃんの誕生日パーティですら、幼馴染み全員来られなかったのに今後全員が集まる日はやってくるのかな」
「正直……不安なところはあるよね。何名かは、連絡が取れなくなって今どこに住んでるのかすらもわからない人もいるし」
「幼馴染みのメンバーは、基本は透くんが中心となって皆集まってくるからね。だから、そんな透くんの誕生日パーティなのに、来られなかったってことは……よっぽどの事情がある可能性が高いよ」
「え、そうなんだ……心配だね。わたし、まだ会っていないトオくんの幼馴染み全員と会ってみたいよ」
「また会えるかもしれないし、最悪二度と会えないかもしれないけど……いつか、そのうち会いに来てくれることを信じよう。居場所がわかってる人なら、こっちからも会いに行けるからな」
「そうだね……トオくん、その時はまた昨日の学校みたいに立ち会いよろしくね?」
「あぁ。お安い御用だ。さて、昼飯の準備をしようか」
「はーい」
透たちは昼食の準備をする。下の兄弟たちの分のご飯や、両親の分のご飯も用意した。
時刻が12時になる頃、透たちはそのタイミングで昼食を取る。その後、歯を磨くなりシャワーを浴びるなりして着替えて、出かける支度をした。
「なんか……今日やたら暑く感じるな。いくら天気が良いとはいえ」
「まだ4月上旬なのに、たしかに暑いね。例年なら平均で10℃前後、最高でも15℃行くか行かないかくらいなのに。」
「今は明らかに……もっと気温が高いよね。上着が必要無さそうな温かさのような……」
「今の気温を調べてみるか」
透が、現在の気温を調べてみると驚きの数字が出た。なんと、20℃を優に越しており25℃に迫る勢いの暑さだった。
「な、何これ……噓でしょ? 夏じゃん!」
「例年の平均の倍くらいの気温だね……」
「4月の日本って、こんなに暑かったっけ!? わたしが少し前まで住んでた所の4月よりも、気温が高そうだよ!」
「これは……流石に異常気象だな。間違いなく、今までの人生の中で今年が一番暑い」
「半袖と半ズボンでも良さそうだね? 流石にまだ衣替えしてないから直ぐには出せないけど」
「じゃあ、涼しめの格好にして、上着を持って行く形で良いかもね。いくら暑いくらい温かいといっても、まだ4月の初めだし。寒くなってもおかしくないから」
透たちは着替え直してもう少し涼しい恰好にすることにした。心に至っては、靴下を脱いでいる。燈と乃之に関しては、松本家に急遽泊まることになった為、用意されている替えの衣服が複数も存在せず決まった衣服しかなかった。燈の家である前田家は松本家の直ぐ隣に、乃之の家である雲母家は松本家から徒歩1分前後で行ける距離にあって近いので、二人は直ぐに代わりの服に着替えに一旦帰宅した。二人がそれぞれ着替え終えて松本家に再び戻る。
「12時47分……そろそろ良い時間だね」
「もう目的地に向かっても良さそうだな。乃之、これから1時間近く歩くことになるけど大丈夫か?」
「うん、大丈夫! 外国から帰って来たことに比べれば全然へっちゃらだよ! 何より、トオくんと一緒ならどこまでもついて行くよ!」
「……本当に後悔してる」
「何が?」
刻が呟くと、心が反応する。
「いや、別になんでも……私が悪いから」
「えー、何それ。気になる」
「私が、昨日透お兄ちゃん専用の浴室に二人を招き入れたばかりに……」
「あー、そういうこと。別に良いじゃん、透おにーちゃんが春が訪れることは、松本家の繁栄に繋がるんだから」
「それはそうだけど……ほんと、心は透お兄ちゃんと血繋がってるからって他人事だね」
「そりゃ、血繋がってなかったらわたしも透おにーちゃんを独り占めしたでしょうねー。ま、これから色々大変だと思うけど精々頑張ってくださーい」
「……はぁ。最近は、心のせいで余計なストレスを感じるよ」
「え、またわたしのせい?」
「二人とも、何を話してる?」
「わ!?」
「あ、透お兄ちゃん……」
透に声をかけられて、刻と心はびっくりする。透の様子を見る限り、もう準備万端のようだった。
「準備が出来てるなら、もう行こうか」
「う、うん……待たせちゃってごめんね。って、透お兄ちゃん。その、例の物体、見たり持ったりしてて大丈夫なの? 具合悪くならない?」
「不思議なことに、今は大丈夫なんだ。見ても触っても、この通り平気。昨日気を失ったのが嘘みたいだ」
「適応力高すぎっていうか、慣れるの早すぎませんか……」
「まぁ……大丈夫なら大丈夫に越したことは無いから良いんだけどね。よかったよ。でも、本当に無理はしないでね?」
「あぁ。ありがとう。それじゃ、改めて行こうか」
「はーい、れっつごー」
透たちは、松本家を出て目的地に向かう。松本家の門扉を解錠した瞬間、近くで瑠夏が透たちを待ち伏せしていた。
「うわ、びっくりした」
「おっす、おっすー!」
「サングラス…………」
「瑠夏……お前、なんて格好してるんだ」
瑠夏は、半袖どころか肩まで肌を出してるタンクトップ、デニムのハーフパンツ、靴下を履かないスニーカーだった。まるで4月上旬とは思えない服装をしていた。
「あー、これ? 暑すぎるからつい夏用の服装にしちゃった! あたしの家、ワンルームアパートで狭いから他の季節用の服を出そうと思えば直ぐに出せるんだよねー」
「……初めて狭い家を羨ましいと思ったかも」
「あー、心。今、中野家をディスったなー?」
瑠夏は、人差し指で心の頬をぷにぷに突く。
「わっ。悪かったって。もう、やめてよー。ただでさえ暑いのに!」
「でも、まだ4月とはいえこの暑さだったら虫たちも勘違いしてもう地上に出てしまってるかもしれないから。だから、その露出度は刺されるリスクが高いし、念の為に虫除けスプレーでもかけておいた方がいいよ」
「ふっふっふっ。甘いよ、刻」
「え?」
「あたしレベルになると、なんと刺される前に虫を倒しちゃうんです! 先手必勝! ヤられる前に、ヤる!!」
「……はぁ」
「暑さで頭おかしくなっちゃった? これがいわゆる、脳筋ってやつですかー」
「ねえ、辛辣すぎ!! あたしだって、まだ直輝レベルまで落ちたわけじゃないから!!」
「ま、まだって……」
透が話を遮るようにして、皆に合図を送る。
「さて、行くぞ。って、そういえば瑠夏。明日花は一緒じゃないのか?」
「あー、明日花? あたしも知らない。いつも上から目線であたしのとこに来るんだけどな。なぜか今日に限ってはあたしん家に来なかった。だから、あたしから明日花ん家に行ったんだけどさ……もう行ったって言われた」
「えー、何それ。珍しいね」
「あいつ一人で大丈夫なのか?」
「まー、大丈夫じゃない? あたしらの秘密基地の場所がわからないわけじゃないんだし」
瑠夏は適当そうに透たちに話す。




