1-91.『宇宙を越えた新たな出会い』
「君が、この建物にいた人たちのリーダーか?」
「自分で言うのもなんだけど……たしかに、一応皆を引っ張ることは多いかも」
「ははは、そうか。なんとなく、そんな気がしたから。俺も、ここに一緒に来たメンバーたちを引っ張っているリーダーなんだ」
「なるほど。実は、言葉がまだ通じなかった時の段階で馬が合いそうな気はしていた」
「おお、そうか! 実は俺もなんだ。直感で、悪い人たちでは無さそうだと思っていたからな。何故、君たちがこんな所にいるのかはまだ疑問だが……恐らく、悪い目的では無いことだけはわかる」
「よかった。この建物に誰かが訪問して来たことがわかった時、この建物の関係者だろうかと思って直接謝りに行こうとしてたところだったから、殺伐とした空気にならなくてよかった」
「なるほどな。その言い方だと……君もこの建物の関係者では無さそうか」
「俺たちはただ……この世界に迷い込んで、今後どうしたらいいのかわからないまま、流れるように寝床を探してここに辿り着いただけなんだ。だから……勝手に泊まらせて貰った身の者なんだ」
「この世界に迷い込んだ……?」
透と会話をしている人物は、疑問的な形相に変わって考え込む。
「もし、問題なら今すぐにでも出て行こうとは思ってるけど……」
「いや、そんなことはしなくて構わない。寝床が無くて困っていたなら尚のことだ。それより、君たちの身に一体何が起こったのか、よければ詳しく教えて貰えるか?」
「え? ただ、あまりにも馬鹿げているから信じて貰えるかは怪しい内容になるけど……それに、俺も正直漠然としていて」
「いや。君の言うことが確実に真実だという前提でまずは話を伺いたい。根拠は無いのだが……なんとなく、只事では無さそうな気がしているのでな」
「……それなら、覚えている限りの全てを話しても大丈夫かな」
「あぁ、宜しく頼む。あ、そうだ。申し遅れたが……俺の名前はグレオ・ヴァイザー。グレオで構わない。君の名前も、差し支えなければ教えて貰えないだろうか?」
「あぁ。よろしく、グレオ。俺は松本透だ。今、妹も一緒にいて松本だと妹も共通だから、透の方で呼んで貰えるとわかりやすいかな」
「なるほど、透か。良い名前だ。ということは、松本というのが苗字にあたるのだな。俺はヴァイザーの方が苗字なんだ」
「そういうことになるな。俺たちの故郷は、苗字じゃない方で呼ぶと親密感が増すんだ」
「ふむ。案外、こっちと共通していて驚いた。一応、仲間には俺とは違う星出身の者もいるんだが、そいつも同じく苗字じゃない方で呼ぶと親しい間柄に近いそうだ。だから、人間はどの星でも似たような感じかもしれん」
「……今、さらっと凄いことを聞いた。違う星出身だって?」
「あぁ、そうだが……ひょっとして、透の住んでいる星はそうでは無いのか?」
「…………まぁ、そうだな。少なくとも、俺は故郷の星以外に友人はいない」
目を見開いて驚く表情をするグレオ。
「そうか……では、俺たちが透たちにとって初めて見る宇宙人ということになるのか」
「まぁ……一応、そういうことにはなるかな。だから、正直まだ頭の整理がついていなくて」
「ふむ。透たちにとっては、宇宙人自体が珍しいことというわけか」
「そうなる。故郷の星の近くは生命体が確認出来る自体が少なくてな。だから、他の星に人間がいること自体が珍しいことなんだ」
「ほう……であれば、俺たちのような宇宙人は存在自体が恐ろしかったのではないか? 突然訪れてさぞ怖い思いをしたんじゃ」
「いや、そんなことは無いな」
「え?」
透の言葉に不思議そうな声を出すグレオ。
「なんか……思ってたより、俺たちと近い雰囲気だなって感じた。人体構造も、見た感じ俺たちとそんなに変わらなさそうな気がする。こっちの星でイメージされてる宇宙人の姿って、もっと化け物みたいな感じだから」
「化け物……か」
化け物という言葉を聞いて、明らかに表情を変えるグレオ。これまでの優しい表情とは違い、真剣で何らかの強い意志を感じさせるような。そんな表情をしていた。
「……グレオ? もし、気に障ったことを言ったなら申し訳無い」
「……いやいや、こっちの事情さ。透は何も悪く無い。気にしないでほしい」
「それならよかったけど。まぁ、確かなのはグレオたちが怖い人たちじゃないということだ。そもそも実在するのかどうかもわからなかったけど、宇宙人という存在の印象が、俺の中でだいぶ変わったよ」
「ははは、そうか。それはよかった。俺たちの故郷の星はな、近くに他の人種が住む星があるんだ。だから、星同士の交流も多くて星と星間の行き来も昔から多い。宇宙人という存在は当たり前の環境で育って来た」
「へえ……凄いな。それはまるで、国と国みたいな関係だな」
「実際、そうかもしれん。星と星のプライドをかけた運動大会も定期的に開催されていたりとそういった競争も存在する。その星の世界でトップに君臨した選手が星の代表となり、宇宙を渡って大会に臨むといった文化交流だ」
「スケールが違うな……」
「今度、もしいつか機会があれば見せよう。なかなか見応えはあるはずだ」
「あぁ……楽しみにしてる。そうか。やっぱり、俺たちはいつの間にか宇宙を越えて違う星に来ていたんだな」
「おっと、そうだ。透たちがここに来た経緯を聞かなければならんかったな。すまない、ただでさえ大変だというのに話が逸れる方向に膨らませてしまって」
「いやいや。随分と興味深い話を聞けたよ。なんだか、新しい人生を歩み始めたような気分だ」
「その表現は倫理的に適切なのかどうか疑問だが……まぁ、今はそんな星があってそういう宇宙人がいるということを頭に入れておいて貰いたい」
「あぁ。確実に一生忘れないと思うけどな」
「ははは」
透との会話を楽しむグレオ。そんな二人の様子を、刻たちは見守っていた。なんだか、刻たちやグレオの仲間たちも無意識に微笑んでいた。
透は最初に隕石が降り注ぐ夢から始まり、そして色々な事象が続いて、この建物に辿り着くまでの経緯をグレオに細かく話した。「うんうん」と相槌を打って親身になって聞くグレオ。グレオの周りには、いつの間にか仲間であろう女性三人、透の周りにも刻、燈、乃之が寄って集まっていた。
話の内容が内容の為、夢中になっていた透とグレオ。そんな状況で、透がようやく全て話し終えた。
「なるほど……大変だったな。本当に何も知らぬ状態で、ここに来てしまったと」
「あぁ。元の世界での家のことや学業の生活もあるから、出来れば今すぐに帰りたいと思っていてな。でも、帰る術が全くわからなくて困っていたんだ。もう、既に一日は経っているから俺たちの家族に心配させている可能性があって」
「……そうか。透たちの故郷の星の場合、どうだろうな」
「え?」
「いや、なんでもない。確実な情報では無いし、透たちの故郷の星について詳しくはわからないから何も言えんからな。混乱させる可能性が高いから、今はこの話は置いておくさ。ただ、もしかしたら透たちの心配していることが起こらない可能性もあるということだけ言っておこう」
「……そうならないといいけど」
透は、グレオの言っていることが理解出来なかった。しかし、今は心配していても埒が明かないのもまた事実だった。今抱えている心配は後回しにして、まずはとにかく地球に帰ることだけを念頭に入れておこうと集中することにした透。
透たちの話を聞いていたのか、グレオの仲間であろう女性三人が会話に混ざって来た。
「どうも~初めまして。きみはここの建物の持ち主では無さそうなんだね?」
「どうも。まぁ、一応」
「ロール。今、重大な話をしているんだから、そんなことで割り込んでくるな」
「あはは、ごめんごめん」
ロール。恐らく、今グレオに注意された女性の名前であろうと透は思った。
透がそう思った時、まるで透の心の中でも読んだのか、それともたまたまなのか、女性が自己紹介をし始めた。
「あ、そうそう。あたしはロール・ネミーって言うんだ~以後、お見知りおきを!」
「あ、あぁ……よろしく」
「お前たち。紹介する。彼の名前は、松本透だ。透と呼んでほしい」
「はーい! よろしくね~、透! あたしのことは呼び捨てでロールって呼んでくれていいよ~! タメ口も大歓迎!」
「わかった。よろしく、ロール」
流れで、刻たち三人も自己紹介した。
「私は松本刻と申します」
「ふむ、つまり君が透がさっき言ってた妹さんか」
「そうですね。義妹で血の繋がりは無いんですけど、同じ歳で長年ずっと一緒に育って来ました」
「ふむふむ。よろしくね~! 刻!」
「私は……ま、前田燈です」
「わたしは、雲母乃之です!」
「今、紹介してくれた二人は俺の幼馴染みで、あそこいいる他のメンバーも、あの銀髪で拘束されている男子一人を除いて全員俺の幼馴染みなんだ」
「え~、凄い! 幼馴染み多いね!? ていうか……どうして、あの子だけ縛られてる?」
何かを察したグレオが呟く。
「あ……ひょっとして、さっき透が話してくれた謎の人物が彼か?」
「そういうことです。あの殺人未遂犯は、兄に命の危機を晒した超危険人物なので、私たちで協力し合ってああせざるを得なかったんです」
「さ、殺人未遂犯……相当のことを仕出かしたみたいだね~、彼は……」
「しかも、本人は全然反省している様子は無いし……トオくんを怪我させたの、本っ当に許せない!」
「相当、憎まれているようだな……」
「まぁ……私含め、皆の大切な透くんを酷い目に遭わせたので、必然的にそうなるのかなって……」
「……なんだか、この感じ。透って昔のグレオみたいだね!」
「やめろ。昔話はもういいだろ? ただでさえ、混乱している透たちに余計な話はするな」
「正直……俺は気になるかな。グレオの昔話」
「……え?」
「ほら~! やっぱり、気になるんだよグレオ~! 透もグレオと同じような境遇みたいだし!」
「…………き、気が向いたら、な……」
グレオは、恥ずかしそうに顔を赤らめて透たちから目を逸らす。
「……意外と繊細なんだな。グレオって」
「ふふふ、楽しい人でしょ~!」
「だ、黙れ! 暇なら、他のメンバーたちにも透のことを紹介しろ! あと、透の仲間たちにも挨拶しておけ」
「はいは~い。んじゃ、行くよ。バニラ、ルイス」
「おっけー」
「は、はい……!」
ロールはそう言って、一旦透たちから離れた。バニラと呼ばれた女性とルイスと呼ばれた女性も、ロールとともに一旦去って仲間たちと話し合っていた。
「さて……これから、どういった方法で故郷の星に帰るか一緒に考えようか。透」
「本当に申し訳ない。何もわからなくて」
「構わない。困っている人間を助けるのが、俺たちの仕事でもあるから」
すると、先程妖精を自称した蝶のような生き物が透たちの元へとやって来た。そして、話に割り込む。
「は~い、お話してるところすみません!」
「え?」




