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Re:verse-Re:birth  作者: あーる
第1章『夢と現実の狭間と謎編』
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1-87.『共有可能の恐怖と不可の恐怖』

「いやぁ……本当に驚いたよ。まさか、ここまでだったとはね。てっきり、透君だけが凄いとばかり思っていたから、油断してしまったよ。もっと本気出せばよかったな」

「何それ? トオくんたちによって完敗させられた後にそんな台詞吐くなんて、はっきり言って凄くかっこ悪いよ? わたしが幼い頃に見たことある漫画やアニメに出てくる悪役でも、そんな情けない台詞言ってるのを見たこと無いよ!」

「まぁ、そうだね。認めるよ。僕の完敗さ。まぁ、透君と勝負しようだなんて無謀なことは最初から考えちゃいないんだけどね!」

「へえ、そうなの? ま、どちらにせよ透お兄ちゃんに用があるならまずは私を通してからね。私にすら勝てないようなレベルで、透お兄ちゃんと対等になれるとは思わないように」

「まぁ、君に勝つだなんてそれこそ犯罪に手を染めないといけないレベルまで行かないと張り合うことすらもままならないだろうね!」

「ふうん。殺人未遂犯のくせに、なかなか面白いこと言うね」

「お、面白いの……?」


 燈が怖がりながら疑問符でつけて言う。

 そして、乃之も刻に怒られた時に反抗しなくて良かったと心から思った。もし逆らっていたらどうなっていたかと思うと……考えるだけでも恐ろしかった。絶対に敵に回してはいけない人物だと直感で理解する。


「結局、お前の思惑は俺たちの推理通りだったってわけか」

「そうだよ。お見事なくらいにね。まぁ、弁解させてもらうと完全な工作では無いんだけどね! それでも、透君になら見破られていただろうけど。さぁ、ここにはもう用は無いんだし、次に進んで行くとしようか!」

「どうして貴方が仕切ってるのかな? まぁ、私もそのつもりだったからいいけど」

「こ、今度は……何も仕掛けていないんだよね? 多分……時間に余裕が無かったみたいだし」

「どうだろうね。油断は出来ないよ」

「……」


 燈は、怖くなってくる。もしかしたら、また透が学校の時のように嵌められてしまう恐れがあるのかもしれない。そう思うと、安心して移動することは出来なかった。

 自身も、周りを注意しながら行動していこうと思った燈と乃之。いくら透がターゲットとはいえ、他の誰かも巻き込まれてしまう可能性がある。決して他人事では無いのだと。

 自分の身は勿論、透のことも守りたいという意味でも刻たち三人は細心の注意を心がけていたのである。また、透も皆を巻き込まないようにと同じ思いだった。



「そういえば、皆は今頃何してるのかな? 話し声も全然聞こえないし、ここに来る様子も無かったけど……」

「ここが、僕がさっき言ってた中央階段からしか行けない場所だよ」

「え? そうなの?」

「あはは、僕なんかの話を聞いていなくても無理は無いか。どうせ、信用が無いのは当然だしね!」

「あぁ、もう、うるさいよ! 余計なこと言うなら黙ってて!」


 彰人の言葉に煩わしそうに振る舞う乃之。


「中央階段でしかあと見れないところと言えば……この建物の外部正面から見えるバルコニー、更に上へ上った屋上、そして雰囲気が怪しげな扉くらいか」

「怪しげな扉……なんだか、あそこの扉だけは雰囲気が違うよね。なんというか、その……厳かな感じがするよ」

「如何にも、『開けちゃ駄目』って雰囲気の扉だね。何か、重要な物でも保管されていそう。まぁ、地球生まれの一個人の価値観でしかないけど」

「あそこを一番最後に見てみることにしよう。まぁ、俺個人としては……残りの二つどちらも行きづらいから、正直あの怪しげな扉が最も入りやすそうだが」

「そうだよね……高所恐怖症って、こういう時に不便……! トオくんの分も、きっちり調査頑張るからね!」

「とは言っても、バルコニーや屋上なんて外の情報くらいしか得られなさそうだけどね」


 刻が、彰人を相変わらず鎖のリードを掴んだまま一緒にバルコニーへ向かう。そのままついて行く乃之。

 透は、バルコニーに出るドアの前で刻たちの帰りを待つことにした。燈は、どうしようかとキョロキョロ迷っていた。透一人を置いていくのは気が退けたのである。


「燈。行かないのか?」

「あっ……」


 とうとう、透に訊かれる燈。燈は、最初こそ戸惑うが二人きりの状況になった途端に何故か安心して落ち着いた。


「……う、うん。私も……そんなに高い所は好きじゃないから」

「……」


 透は天井を見ながら燈に返事をした。


「……そうか。たしかに、燈も昔から遊園地行く時は絶叫系のアトラクションとか積極的に乗りに行ったりしなかったもんな」

「そ、そうなんだよね……なんなら、寧ろ苦手なくらいだよ。透くんと同じで……」

「燈の妹たちもそうだと思うけど、俺の兄弟姉妹の奴らは喜んで進んで乗りに行くんだよな。あいつら、怖いもの知らずすぎるなっていつも思う」

「あはは……そうだね」


 燈は、思わず小さく笑う。それは、愛想笑いでもなんでも無く、心から同意出来る笑いだった。透との二人きりでのかけがえのないやり取りだからなのか、尚更明るく笑っているような自覚があった。


「ただ……その反面、羨ましいとも思う。制限が無いと、色んなことにチャレンジ出来たりして世界が変わって見えるんだろうなってな」

「……そうだよね。透くんは高所恐怖症で行きたくても行けないのに、私はそうじゃなくても行けないから……贅沢だし、損してるよね」

「いや、そこまで言うつもりは無いけど……良く言えば、危険をわかってるっていう自衛的な安全意識が高いってことだから。あまりにも危険がわからなすぎると、気づかない内に死んでて手遅れになったりするからな」

「時すでに遅し……だね」


 燈は、透の言葉に共感しかなかった。というのも、今この世界に足を踏み入れてしまっていること自体、危険の可能性が大いにある。でも、来るしかない状況だったのもまた事実だった。危険の有無を判断する権利も無かったように、ほぼ強制的にこの謎の世界に来させられたのである。

 こういったどうしようも無い状況に直面した時、どう打開していけばいいのかを今、正に皆と協力し合って試みている最中である。

 見つかるかどうかもわからない答えを見つけるまで、受け入れるしかない。なんとあまりにも残酷で不条理なことだろうと燈は思った。


「まぁ……燈も、無理だと思ったら無理って判断してその行動を取るのを辞めた方がいい。取り返しがつかなくなってからじゃ手遅れだからな。俺が高所恐怖症だからといって、『自分は頑張ろう』というような考えも出来ればしない方がいい。勿論、気遣いの気持ちは嬉しいけどな。自分自身が見失ってしまえば、元も子も無いから」

「……その通りだね。肝に銘じておきます」


 燈はそう言って、透に深く頷いた。その時、刻たちが戻って来た。


「ただいま」

「お帰り」

「あれ? 燈ちゃん……見かけないと思ったら、トオくんと一緒にいたんだ?」

「あ、ごめんなさい……サボっちゃってごめんね」

「構わないよ。どうせ、バルコニーには何の発見も無いからね! 地球上では見かけないような、あらゆる生命体があちこち見えただけで!」

「貴方には言って無いでしょ」

「……」


 何故か速くなる燈の心臓の鼓動。まるで、気まずい空気に心臓が圧迫されているかのようだった。透と二人きりになる時のドキドキとは、また別の意味での感覚があった。


「悪いな、調べてくれて。用が済んだら、一応屋上もお願いしてもらってもいいか?」

「勿論だよ。そもそも、そんなに人数はいらないような所だしね。屋上に行ってわかるのはこの建物の上からの構造くらいじゃないかな」

「そもそも、情報を置くような所じゃないからね!」

「あなたが変な工作をしてたら別だけどね?」


 乃之は、不機嫌そうな声で言う。こうして、刻たちは今度は屋上へ向かう。


「ねえ、燈ちゃん」

「え?」


 突然、乃之に話しかけられて驚く燈。


「今度は、わたしがトオくんと一緒にいてもいい?」

「え……? い、いいけど……」

「ありがとう。それじゃ、屋上の調査をわたしの分までお願いね」


 すると、話が聞こえてた刻が言う。


「待った。何を勝手なことを言ってるの?」

「あ……」


 乃之は終わりを察したように力の入らない声が出る。


「貴方にそういった決定権は無いよ。理由は、言わなくてもわかるよね?」

「…………はい」

「かと言って、透お兄ちゃんを一人にさせるのも不安だし、この殺人未遂犯は私が常に見張ってないといけないからな……。燈ちゃん」

「は、はい……!」


 刻に呼ばれて、思わず不自然に畏まるようにビシッとする燈。


「透お兄ちゃんの傍にいてくれる?」

「え、あ……わ、私でよければ……」

「ありがとう。まぁ、燈ちゃんならわかってると思うけど。透お兄ちゃんに変なことはしないようにね」

「へ、変なことって……ま、まぁ、とりあえず、わかったよ」

「それじゃ、行って来るから」

「行ってらっしゃい。刻も無理しないようにな。そいつの面倒見るのは大変だろうから」

「うん。ありがとう、透お兄ちゃん」


 刻たち三人は、再び同じメンバーで屋上を調査しに向かった。

 一方で、燈の速い心臓の鼓動はまだ収まっていなかった。理由は、燈には直ぐにわかった。


(もしかして……あのこと、刻ちゃんにバレていないのかな? いや……結局バレてて敢えて気づかないフリをしている可能性もあるって思ったらそれまでだよね。現状は変わらずかな……敢えて、私を泳がせている可能性もある。だから……もっと気をつけないと。私が気をつけたところで、刻ちゃんに敵うかどうかはともかく……あの海崎さんの一連の行動も、全て見破る推理力だから。とても難易度が高いことだけど……)


 燈は、焦らず落ち着いてなんとか平常心を保とうと一先ずは呼吸を安定させようと思った。何よりも、透の前で滑稽に乱れる様子を晒したくなかった。


 再び、燈は透と二人きりで他愛も無い話を続けた。

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