表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Re:verse-Re:birth  作者: あーる
第1章『夢と現実の狭間と謎編』
109/150

1-85.『罰と対価の梯子』

「え、あそこ……?」


 燈と乃之は天井を見つめる。しかし、普通の白い天井で何も見受けられなかった。強いて言えば……よく見てみると、他の天井の部分と比べて細い線が入っていて違和感があった。天井だからわかりにくいが、微妙に窪みがあるような気がしてきた二人。


「……まさか」

「そう、そのまさかだ。あの中にも、きっと何かがあるはずだ」

「でも、どうやってあの中を調べるの? だって、天井だからわたしたちの身長じゃ全然届かないし……それに、かなり高い天井だよね? 十メートル弱くらいあるような……」

「……あれだよ」


 刻が指を差した方向には、なんと長い木製の梯子があった。


「まさか……あれを使って、天井の中を調べるの?」

「そうだよ。それしか方法は無さそうだし」

「悪いけど……情けないお願いになるが、これは俺以外の誰かにお願いしてもらえるか?」

「勿論、そのつもりだよ。透お兄ちゃんに高い所へ行かせるわけにはいかないから」

「え? じゃ、じゃあ、わたしたちの中の誰かが行かないといけないの!?」


 燈と乃之は恐怖で青ざめる。透よりは高い所に恐怖心は無いものの、それでも十メートル弱の高さはあまりにも高く怖い。高所恐怖症じゃなくても、木製の梯子でそんな高さの天井へ辿り着くのは至難の業のように燈たちは思ったのだ。


 そして、刻が言葉を続ける。


「あ、燈ちゃんや乃之ちゃんが行く必要は無いよ。もっと適任者がいるから」

「え? 適任者って?」


 刻が、とある人物の方向を見る。それを見て察する燈。


「ま、まさか……」


 刻は、とある人物の所へ向かって見下ろすように立ち止まる。


「ねえ」

「……」


 刻は、悪意混じりに黒く微笑みながらその人物に告げた。


「勿論、行って来てくれるよね?」

「……」


 その人物は、ゆっくりと立ちあがった。


「……あれ、結構登るのが面倒なんだ。まぁ、透君の為なら断る理由は無いけどね!」

「じゃあ、頼んだよ。貴方が登りきったら、私も見に行くから」

「え?」

「え? じゃないよね。貴方のことは全くと言っていい程に信用出来ないんだから、一応は私の目でも確認しておく必要があるでしょ?」

「それなら……上にある本をここに持ってくればいいんじゃないかな?」

「何言ってるの? どうせ、念の為に全て調べないといけないんだから本を元の場所に戻すのが手間でしょ? それに、貴方が何かを隠す可能性だってある。どのみち、私も行かない理由は無い」

「あはは……徹底してるなぁ。流石は未来の警察官志望さんだね。日本の未来も明るいね!」

「その日本に無事帰れればの話だけどね」


 刻が鎖のリードを引っ張って彰人を透たちの所に連れて来る。


「ごめん。お待たせ」

「大丈夫だよ。どうせ、その人が余計な話でもしたんでしょ?」

「……」


 彰人は無言を貫く。


「じゃあ、登るよ。殺人未遂犯さん」

「うん、そうだね」


 すると、刻も彰人も沈黙したまま足を動かさなかった。


「あれ? 僕は行かなくてもいいのかな?」

「え? もう行っていいよ?」

「え……? だって、僕は手錠で手が塞がれているから……だから、これを解いてくれないと上には……」


 その後、刻が衝撃的な言葉を発する。


「解かないよ。どうして、私が解いてくれると思ったの?」

「え……!? じゃ、じゃあ、どうやってこの梯子を登るって……」


 その時、彰人は刻の恐ろしい意図に気がつく。


「…………ま、まさか」

「あぁ、気がついたみたいだね。そうだよ。足だけでこの梯子を登ってもらうんだ」

「え……!?」


 刻の言葉に、燈と乃之が驚いて宣告された彰人本人以上に驚く。流石の彰人も、血の気が走ったような青ざめた引き攣り笑いの表情をする。


「あは、あはははは……じょ、冗談だよね? ほ、本当に上半身は自由が利かない状態で、足だけでこの高さの梯子を上れって?」

「この私が冗談なんか言うとでも思ったの? 私は笑える冗談以外は基本大嫌いなんだ。いや、そもそも笑えない冗談は冗談とは言わないけど。出来ないなら未来永劫、貴方を透お兄ちゃんと会わせないようにしてもいいよ?」

「そ、そんな……!」


 彰人は刻の言葉に動揺する。それが本気なのか、演技なのかは第三者にはわからない。燈も乃之も、刻の恐ろしさに震えていた。


「というかさ……貴方は、学校で透お兄ちゃんを階段から落とすように仕向けた工作をしたでしょ? しかも、不意打ちで。それに比べたら、こんなの大したこと無いんじゃない? まさか、自分は出来ないことを透お兄ちゃんに試したわけじゃないよね?」

「う、うぐっ……! そ、そ、それは……!」


 彰人は、冷や汗が出始めていた。相変わらず口角だけは上がったままだが、顔の上半分は切羽詰まっていて、追い込まれているような表情をしていた。

 そんな彰人に乃之は一切同情しなかったが、燈は少し同情する。しかし、それは直ぐに薙ぎ払われる。


(い、いや……駄目だ。この人は、透くんを危険に晒した酷い相手なんだ。この人に少しでも同情したら私は……透くんを裏切るも同然だよね……)


 燈は、自身の性格から来るお人好しで純粋な優しさと、下手すると透を殺しかけた許せない気持ちが自分の中で僅かながら葛藤していた。

 大好きで大切な透のことを想うと……やはり、いくら燈でも海崎彰人という人物のことを簡単に許すことは改めて出来なかった。

 もし、被害に遭うのが透じゃなかったら自分は何を考えていたんだろうか……とふと疑問になる燈。当然、透じゃなかったらいいというわけは全く無いが、怒りや悲しみ、憎しみの度合いは確実に違う自信があった。そこで、燈は自身の本質に気づく。


(結局……私も偽善者なんだ)


 燈は、溜め息を小さく吐きながら刻が適切な処置をすること、そして彰人が罪を償うことを心の中で祈っていた。



「透お兄ちゃんと違って貴方は事前に告知されてるし、仮に落ちても受け止めてもらえるし、何よりここは地球上じゃない可能性が高い上に重力も小さそうだから落ちても無事かもよ?」

「…………あはっ。狂ってるね……まったく、とんでもなく恐ろしい人物だよ」

「そんな台詞、貴方にだけは言われたくないんだけど? それより、早くしたら? 大体、透お兄ちゃんに知って貰いたい情報があるって言い出したのも貴方だよね?」

「……わかったよ。君の言う通りだね。それじゃあ、行かせてもらおうかな! 透君の為に動いて死んだなら僕としても悔いは無いし!」

「おい。その言い方だと、まるで俺がお前を犠牲にさせたみたいになるからやめろ」


 透が木製の長い梯子を天井に引っかけると、刻は着物姿でサンダルなのにも拘わらず、梯子を直ぐに登りきって軽々と天井の大きな扉を開けた。刻の恐るべし運動神経の良さに、燈と乃之は口を開けたまま驚いて見入っていた。

 すると、天井裏には大量の本があるのが見受けられた。下にいる透たちからの位置でも、本の多さはわかりやすかった。


「え……!?」

「ま、まだあんなにあったんだ……」

「奥行きがあるみたいだから、あんなもんの数ではなさそうだな。ここのフロア程では無さそうだけど」

「それじゃあ……僕は罰を噛み締めて登って行くよ!」


 彰人は首輪に繋がっている鎖のリードを下にぶらりと垂らしながら、張り切って刻について行くように梯子を登って行った。


「一応……リードに足を引っかけないように気をつけてね」


 燈は、口が勝手に動くように彰人に小さく告げた。

 燈の声が小さくて届かなかったのか、彰人は返事をすること無く足だけでそのまま梯子をひたすら登り続けた。

 いくら彰人とはいえ、足を滑らせて落ちてしまわないかと怖かった燈と乃之。しかし、二人は彰人の動きにもまた驚かされることとなる。

 恐ろしいことに、両手を使えない不自由なはずの彰人も軽々と直ぐに梯子を登りきったのだ。

 燈と乃之は、今いる世界の存在そのものと同等に刻に続いて彰人のフィジカルのに開いた口が塞がらずにいた。


「わ、わたしたちが見ている人たちって……本当に、人間なのかな?」

「刻ちゃんに関しては……将来警察官を目指してることもあって、昔から身体能力を磨いて特訓してきてるから……」

「そ、それでも……人間の身体って、あそこまで器用になれるようなものなのかな……」


 あまりにも衝撃的な光景が、短時間で一連となって続いてきたせいでそわそわが収まらない乃之。刻の努力や苦労を知っていても、尚驚きを隠せない燈。そして、何事も無かったように相変わらず無表情のまま二人を見守り続ける透。


 透たちの感覚的には、地球上で言うところの三十分程が経過した頃。刻が何か分厚めの本を持って下りて来た。

 彰人も、相変わらず両手が塞がったままの状態で梯子から落ちることなく器用に下りて来た。


 刻が梯子を下りきったそのタイミングで、透は刻に話しかけた。


「刻。気になった物が見つかったみたいだな」

「うん。今まで見た中でも……最も驚いた内容だったよ」

「え……?」

「百聞は一見に如かずかな。これを見てほしいんだ」


 刻は、早速それを透たちに見せた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ