1-81.『信頼の班分け』
「じゃあ、グループ分けをしようか。俺と海崎はセットでいいか? 男子たちには、昨日こいつの面倒を見てもらう負担をかけてしまったからな」
「い、いや、別に大したことじゃねえよ? おれはまた引き受ける用意があるぞ!」
「顔が引きつってるよ~行悟。透もああ言ってるんだし、ここは正直に甘えたら?」
「流石に疲れたはず……透くん以外の男子は、あまり良く眠れていた感じもしない……」
「そうだね。これ以上、男子の皆に負荷をかけるのは申し訳無いし。私たちも、覚悟を決めないとね」
「は……? 本気なの? アンタたち……」
「トオくんの為なら別にお安い御用でしょ?」
「いや、その……」
明日花は言葉に詰まる。
「かと言って、皆の反応を見るに海崎と一緒に探索したい人はいないだろうから。俺が指名してもいいか?」
「いいよー!」
星名がそう言うと、周囲も頷く。明日花も、嫌々ながら渋々とイエスを出した。
「刻。よかったら、一緒にどうだ?」
「勿論だよ。私もそのつもりだったから。それに、犯罪者思考の者を見張るのは私の役割に最適解だし」
「ありがとう。全部で十四人だから、あと一人か二人くらいこっちに欲しいな。四~五人ずつで分けてグループを合計三つ作るのが丁度良いだろう」
「人数少なすぎても危険だし、多すぎても探索場所が分散しなくて効率悪いもんな」
「そういうことだ。刻は引き受けてくれそうだと信じて俺から指名したけど、あとは誰かいないか? 海崎と一緒ってなると指名しづらくてな」
目と目を見合わせる幼馴染みたち。困りながら遠慮し合うような表情をしていた。
先程の話の流れからすると、男子ではなく女子が透と一緒になるのが無難そうではあった。女子たちとしても、透と一緒に行動できるのはとても喜ばしいことではあった。
しかし、透とセットで彰人も一緒となるとまた抵抗があった。宇宙一大好きな透と、宇宙一大嫌いな彰人。好感度が天と地の差の二人がセットとなると究極の選択とならなざるを得なかった。
女子たちが悩んでいたその時、燈が乗り出す。
「私で良ければ……透くんたちにお供するよ」
「あっ……」
先を越されたようなトーンで呟く女子たち。透は快く燈を歓迎した。
「ありがとう。あと一人……」
透が言いかけたその時、乃之が挙手した。
「はい! はい! わたしも!」
「ありがとう。じゃあ、乃之も一緒について来てくれ」
「はーい!」
「……」
刻の表情の様子を伺う燈。二人が一緒で大丈夫なのかと、心配で不安になっていた。昨日の二人のやり取りを見ている限り、どんどん関係が悪化していたようで一緒に近くの空気を吸うのが怖かった。それに加え、彰人もいる。戦場と化しそうで怖かった。いくら透が一緒とはいえ、自身が乗り出したことを後悔するレベルである。
燈は、何を血迷ったのかそれを恐る恐る刻に耳元で囁いて訊く。
「……大丈夫なの? 刻ちゃん」
「ん? 何が?」
「え? えっと……彼女と一緒で……」
すると、燈の質問の意図を察した刻が答える。
「あぁ、そういうこと。それなら大丈夫だよ。気にしないで」
「え……? そ、そっか……それなら、いいんだけど……」
刻の予想外の言葉に思わず驚く燈。一体、昨日の一夜で何があったのか……。純粋に気になっていた。透の影響なのだろうか。そうだとしたら、透の影響力がどれだけ凄いのか恐るべしといった気分だった。
刻も乃之も、どちらも燈にとっては怖くて強く出られない存在である。自身には全くもって真似出来ないことだった。しかし、そんな二人を変える力が透にならあってもおかしくはない。根拠は無いが、燈はきっとそんな気がしていたのである。
「俺たちの班はこれで決まりだな」
「ほ、本当に大丈夫なのかよ……? 透」
「あぁ。心配するな。お前らはゆっくり休みつつ調査してくれ」
「……なんかあったら、直ぐオレらを呼べよ。タダでさえ、テメーは他にやることが沢山あるんだからよ」
「その通りだ。お前の有意義な時間を効率良くする為にも、俺たちに何か出来ることがあれば力になりたい。いつでも助けを呼ぶがいい、透」
「あぁ。ありがとう。今はいる場所がいる場所な以上、気持ちだけで十分だ。やりたかったことも出来ない状況だしな」
「それは……そうだけど……」
すると、刻が話を切り出す。
「皆、透お兄ちゃんの時間の為にも急いで調査を済ませようね。男子はこの殺人未遂犯の面倒を見てくれてたから、もし疲れていれば無理しなくても大丈夫だけど。透お兄ちゃんの時間もそうだし、ご家族たちにも間違い無く心配してるだろうから」
「だね! さっさとやること済ませちゃお~!」
「おー!」
透たちは、心が一つになって一致団結する。
班を決めた結果、透は先程に話した通り、刻、燈、乃之、彰人のメンバーである。
二つ目の班は瑠夏、明日花、行悟、瞬の四人のメンバー。
三つ目の班は颯空、直輝、呂威、星名、月葉の五人のメンバーとなり、それぞれグループが結成された。
透たちは、こうして一旦別れてそれぞれ建物内の探索を開始させる。
「俺たちはこの建物の中央を中心に探索してみようと思う」
「うむ。お前たちの班が中央であれば、俺たち二つの班も直ぐに駆けつけることが可能となるだろう」
「それじゃ~、あたしらは建物の左側でいい?」
「いいぞ。俺らは右側を探索してみるよ」
「よし。これで各自の役割分担は終わったね。さて……あとは、この問題児をどうするかだね。それじゃあ、悪いけど首輪を付けさせてもらうよ。殺人未遂犯さん」
刻は少し強引に彰人に鎖のリード付きの首輪を装着させた。
「あの……結構痛いよ、これ?」
「うるさいな。貴方が透お兄ちゃんにさせた怪我に比べればこんなの大したこと無いでしょ」
刻が、鎖のリードを持った。彰人は、まるで犬のような状態となり刻によって行動を制限される。
しかも、彰人は手を後ろに回した状態で手錠されているので上半身の自由は無い。完全に、刻によって掌握されてしまっている状態なのである。
「さぁ、案内してもらおっか。トオくんを怪我させた代償は大きいんだから! わたしも、償わないといけないからあなたのことは言えないけど……」
すると、彰人が話し始める。
「まぁ、透君を案内出来るというのは悪い気がしないからいいね! こんな僕でも透君の役に立てるのなら……って、ヴウッ!?」
彰人は首輪に繋がられている鎖のリードを、刻によって強く引っ張られる。咳をする彰人は、堪忍するように刻に許しを乞う。
「無駄口叩いてる暇は無いから、早く必要な事項だけ話してもらえないかな? 私たちは、貴方と違って暇じゃないんだよ」
「けほっ、けほっ! わ、わかったから、勘弁してもらえると助かるなぁ……」
彰人が落ち着くと、ようやく話が進む。
「えっとね。君たちは手分けしてグループ分けしたようだけど……それはあまり意味が無いんだよね」
「え? どうして?」
燈が彰人に問う。
「この建物は、上の階に行くと結局ここのエントランスみたいに横に繋がってるんだ。ただ、廊下があるから少々移動は複雑になるんだけどね。でも、中央からしか行くことが出来ない階段も存在するよ。そこが、この建物の最上階かな」
「ふーん……なら、そこら辺は他の皆に任せて私たちはその最上階も見れば良さそうだね」
「まぁ、効率的な話で行くとそういうことにはなるね」
「とりあえず。足を動かして行こうか。現状、何があるのか想像すら不可能だしな」
「そうだね。僕も、最初に来た時はこんな物があるんだって驚いたくらいだからね! まぁ、でも。あの透君にとっては大したことじゃないかもしれないけどね!」
「……また強く引っ張られたいのかな?」
「わ、わかったよ……」
彰人は苦笑いしながら言う。
透たちはエントランスの中央階段を利用して上の階へ上る為にそちらへ向かう。
寝室らしき部屋へ行く際に利用胃した螺旋階段とはまた別の階段であり、こちらは上階へ移動する用の階段のようだった。逆に言えば、螺旋階段は寝室へ向かう時にしか利用しない階段である。
中央階段の場所は、透たちが裏口からこの建物に入って来た廊下を出た先の両端にあった。つまり、正面玄関から見ればその廊下の入り口にあたる場所である。
そして、中央階段はその出入り口を囲うように二つに分かれていた。透たちは、このような構造に違和感を覚える。
「どうして……わざわざこんな構造にしたのかな?」
「俺の予想だと……それだけこの建物は沢山の人が利用する為に建てられた場所だからだと思ってる。部屋の数だけを見て、沢山の人が寝泊まり出来ることを想定しているっぽいしな。だから、階段が渋滞しない為に分散させて上れるようにしたんじゃないか?」
「私も同じ考えだな。それに、この建物の階段はここの階段だけじゃなくこの建物の一番両端にもあるでしょ? だから、その可能性が高いと思うよ」
「流石だね。僕も同じ考えなんだ。これはきっと、何らかの団体が活動拠点とする為の事務所として建てられた場所に違いないよ!」
「…………」
場が沈黙する。燈が気まずくなり謝る。
「ご、ごめんなさい……私が余計なことを言って話を振ったせいで……」
「いや、燈が謝るようなことでも無い。それで、一応確認してみるけどこの廊下は何も無いのか? 俺がチラッと見た限りだと、台所らしき場所といくつかのドアしか見当たらなかったけど」
「ここの廊下にある部屋は、全て食糧等を格納する場所みたいだね。だから、君たちが探し求めているこの世界に関する手がかりがある所は何も無いよ」
「そういえば……お腹空いたよ。何かないかな?」
「この世界が地球上かどうか不明な以上、何が人間の食料に適しているかわからないから何かあっても食べない方がいいだろうね」
「う、うう……そ、そうだよね」
「それじゃあ、上へ行こうか」
透たちは二つに分かれている階段を上った。




