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Re:verse-Re:birth  作者: あーる
序章『プロローグ編』
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序-1.『夢』

 ──少年は目が覚める。


「……」


 少年の名前は松本(まつもと) (とおる)。濃い群青色髪ショートのクールな美男子。小学校を卒業したばかりで直に中学生になろうとしている。


 そんな彼がいた場所は見た事も無く、深く、まるで肝試しにでも来ているかのような、暗い森だった。簡潔に「迷いの森」とでも言えば誰もが納得するような。まさにそんな風景だった──。


 (とおる)は、一体何が起きているのか、今の状況を理解出来ないまま、とりあえず道のある方向へと進んだ。


「……」


 ──暫く進んだ所で空を見上げてみると、真っ黒な空の中心に何かが光っているのが見えた。しかも、明らかにもの凄い速さでこちらに向かって来ている。


「……!」


 その光の正体が隕石だと言う事実に(とおる)は秒で理解出来た。しかし、(とおる)が理解した頃には降ってくる隕石の数が増えており、まるで透を狙っているかのように暗闇の森を襲いかかってきた。


 (とおる)は命の危機を感じ、全力で無数の隕石から逃げようと走り出す。たまたま発見した洞窟の中へと身を隠した。洞窟の中は思ったよりも深く、まるでゲームの世界でよく見かけるダンジョンとでも呼べるような風景だった。進んでいくと、奥部から何かが光って見えてきた。光の正体は、なんと不気味に光る特殊な形をした宝石のような物体だったのである。(とおる)は見た目通り、それを宝か何かと思った。


 宝のような"それ"に思わず触れると、突然辺りが歪み始めた──。


「え」


 (とおる)が咄嗟に出た一言。その歪みはどんどん激しくなり、一気に洞窟の中ではない別の何かの空間へと変わった。

 (とおる)は、これ以上声を出す間も無く、訳が分からぬまま気持ち悪くなり意識を失う──────。


「…………………………あれ?」


 (とおる)が目を覚ますと、そこは洞窟でも森でもなく、見慣れた部屋の光景が視界に映った。先ほど、自分の身に起きた事が夢だったという事に、透は(とおる)ようやく理解し、認識する。


 デジタルの目覚まし時計で現在の日付と時刻を確認してみる。


『3XXX年04月07日(金) AM07:00』


 今日は本年度から通うこととなる中学校の入学式当日であり、同時に(とおる)の誕生日でもあった。(とおる)が起き上がろうとしたその時、親しみ深い女の子達が(とおる)のいる部屋に丁度訪れる。


「あ、(とおる)お兄ちゃん。おはよう」


 彼女の名前は松本(まつもと) (とき)。黒髪ショートボブの美少女で(とおる)の義妹である。(とおる)と同い年なので、彼女も今日から中学生となる。


「あぁ、(とき)……おはよう」

「……どうしたの? あまり顔色が良くないけど……」

「悪い夢を見たような……」


 そして、(とき)の隣にもう一人親しみ深い女の子がやってくる。


「あ、起きたんだ~?」


 彼女の名前は松本(まつもと) (こころ)(とおる)とは誕生日が半年ちょっとしか離れていない同い年の実妹である。髪型は、色は(とおる)と同じでショートカットの美少女である。(とき)とも同い年だが、(とき)から見れば義妹にあたる。


「あれ~? (とおる)おにーちゃん、もしかしてお目覚め悪い~?」

「……あぁ。見ての通りな」

「だ、大丈夫? (とおる)お兄ちゃんがそんな顔するなんて……相当凄い夢だったんだ」

「どんな夢だったの?」


 透は、夢の内容を全て二人に話してあげたい気持ちは山々だったが、どうも頭の整理がつかない。というよりかは、そもそも頭が上手く回らないような。そんな感覚で、頭が酷く重かった。


「それが、あまり上手く思い出せないんだ。思い出せたとしても、言葉で上手く説明できる自信も無いような気がしてな……なんというか、普通の夢とは何かが違ったような……」

「わ、忘れよう! わたしたち、もう中学生だよ~? おかーさんも、もう朝御飯作り終わってて待ってるよー」

「……あぁ」


 (とおる)は、やけにリアルだった夢に頭を抑えながらベッドから身を降ろし、そのままリビングへと向かった。そんな(とおる)の後ろ姿を、(とき)(こころ)は見守った。


(とおる)お兄ちゃん、大丈夫かな……」

「心配だね〜……」



【リビング】


 (とおる)がリビングに足を運ぶと、既に多数の弟や妹達が朝食を取っていた。中には食器を片付けている子もいた。

 いつもなら、規則正しい生活をしている(とおる)が下の兄弟達より朝食を取り終える時間が遅くなることは無いのだが、今日に限っては兄弟全体で見てもかなり遅い方だった。(とおる)は、そんな周りを気にする余裕も無く、自分の朝御飯が用意されている席に腰を降ろす。


「おはよう、(とおる)


 (とおる)に最初に挨拶を交わしたのは、(とおる)(こころ)の実の父親である松本(まつもと) (たつる)だった。(とき)にとっては養父にあたる。



 (とおる)は、まるで今日が中学校入学式であり、自分の誕生日であることを忘れているみたいにお世辞にも活気に満ちているとは言えない声量で樹に挨拶を返した。


「……おはよう」


 続いて、(とおる)とは正反対の元気で明るい声の挨拶が(とおる)にかかる。


「あ、来た来た! (とおる)、おはよう! 朝御飯もう出来てるから食べて行ってね~!」


 声の主は(とおる)達の実の母親であり、刻の養母にあたる松本麗美(まつもとれみ)だった。沢山の子どもを産んでも、尚元気に満ちていて明るく陽気な性格をしている。

 麗美(れみ)とは反対に、(たつる)は落ち着いた性格をしている。(とおる)はそんな二人の間に生まれた三男であり、第5子である。(とき)は養女、(こころ)は三女で第6子である。


「……あぁ。いただきます」


 (とおる)は腕をゆっくりと伸ばして朝食を取り始めた。

 すると、(たつる)麗美(れみ)が透の顔を覗き込みながら、透を気にかける。


(とおる)、どうしたんだ? 今日に限って、お前が皆よりこんなに朝食が遅れるなんて珍しいじゃないか。しかも、今日はめでたいことが沢山ある日だというのに」

「……」

「具合でも悪いの? ま、まさか! 今日の私の作った朝御飯、あまり美味しくなかったんじゃ……!?」


 両親からの気遣いに返事する気力さえも失いかけていた(とおる)だったが、流石に中学校の入学式早々に余計な心配をさせるわけにはいかないと思い、なるべく普段の対応に近づけようとした。


「……悪い、静かにしてくれ。今日から中学生となることに少し緊張してるだけだから」

「お前が緊張するのも、それはそれで珍しいぞ……まぁ、とにかく無理だけはするんじゃないぞ? それにしても……早いもんだ。(とおる)(とき)(こころ)も。今日から中学生になるんだもんな。他の子もそうだが、皆本当に大きくなったもんだ」

「そうなのか? 他の皆はともかく、俺自身は別にそんな感じしないけどな」

「親から見れば、子どもの成長というのはハッキリわかるものなのよ~? それは皆だけじゃなくて(とおる)も同じ!」


 (たつる)麗美(れみ)は、(とおる)を挟んでの会話に微笑む。団欒としているリビング。すると、小学生である(とおる)の下の兄弟達が次から次へと学校へ向かう為にリビングに挨拶しに来る。


「おとうさーん! おかあさーん! 行ってきまーす!」

「わたしも行ってくるねー!」

「あぁ、行ってっしゃい」

「皆、気をつけて行ってくるのよ~?」

「はーい!!」


 子ども達の健気で元気な挨拶に、(たつる)麗美(れみ)は心が満たされていった。子ども達の存在が二人の全てのエネルギーの源となっていた。二人が子ども達の様子にほのぼのしているうちに、(とおる)は朝食を取り終えた。


「ご馳走様」

「は~い!」


 (とおる)が食器類を片付けてテーブルを拭くと、制服に着替えようと自分達の部屋へと戻りに行く。


(とおる)。お前は大丈夫だとは思うが、もう今日から中学生だから、早めに小学生気分を卒業するようにな」

「わかった」


 (とおる)(たつる)の忠告を聞き流すようにして、さっさとリビングを出る。


「あなたも、そろそろ時間よ~」

「あぁ、そうだな。行ってくるよ」

「気をつけて行ってきてね~?」

「うん。ありがとう」


 (たつる)が玄関へ向かおうとしたところで、丁度インターフォンが鳴る。誰かが松本家を訪ねて来たのだった。


「あら? どなたかしら」


 麗美(れみ)が行こうとするが、(たつる)麗美(れみ)を止める。


「いい。俺がついでに出るから」

「あなた……ありがとう~」


 (たつる)が松本家への訪問者に応答した。


「はい、もしもし」 

「おはようございます!」

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