炭鉱へ 3
視点ずれまくりで読みづらくてすいません...
がんばって精進します...
−−−
「あんたがリクか!よく噂に聞くよ!俺はライオット。このパーティーのリーダーだ」
「その噂がどんな噂なのかかなり気になるところだけど、まぁよろしく」
家の物置の奥深くに眠っていた装備を身につけて、ギルドに戻ってきた。
昔使っていたものだが、修理に出すこともしなかったのでところどころボロボロだ。
「私はシルヴィア。魔術師をやらせてもらってるわ。後方支援は任せてね」
「俺はダイス。ライオットと共に前衛で戦う。盾は任せてくれ」
「以上、この三人が現状のこのパーティーのメンバーだ。もう二人、風邪で寝込んでるラッジョと看病してるジールってのがいるんだけど....この三人に君が加わればまぁ炭鉱といえども二層なら大丈夫だろう」
「....まぁ、何が起こるかわからないっちゃあわかんないけどな」
炭鉱は人の手が加わった迷宮....いわば異端だ....。ただ鉱石を採取してるだけならまだしも、迷宮に刺激を与え続ければ異変が起きてもおかしくはない....。
「そう心配すんなって。五人中三人がEランクなんだ。君はまだFランクで知らないことも多いだろうから、道中色々教えてあげるよ」
「あぁ....うん、まぁありがとう」
人の好意は無下に扱うものじゃない、ってのはまぁ常識だとして...それに現状俺も目立ちたい願望があるわけでもない。ここは後方支援に徹させてもらうか。幸い、エナと違って向こうも俺のことをただのニートだと思ってるようだし。
「じゃあ、行こうか。ミッション『炭鉱の秘密を解明せよ』ってところかな」
そう言うと三人らは肩を組み、丸く円になった。
「ほら、リクも入って!」
「お、おう...」
「「「「えい、えい、おー!!!」」」」
「.......えいえいおー」
.....なんでこいつらこんなに働くことに意欲的なんだ...?
なんか....純粋な奴ら見ててなんかむなしくなってきた...
「どうしたんだリク、胸を抑えて...」
「こ、これから始まる冒険にワクワクしすぎて胸がときめいちゃったんだよ...」
「おぉ、だよな!迷宮探索は楽しいぞ!何があったかは知らんが働く喜びは覚えたほうが良いぜ!」
「あぁ...うん、がんばる...」
噂ってそういう噂か。
...まぁ働く意欲がわかないのは否定しない。
適当にやって帰るか....
気乗りしないまま、俺は無駄に意欲的なパーティと共に炭鉱へと向かうのだった。
俺らは、ダンジョンへの入り口のある中央広場にやってきた。
都市の南にある建物がこの街のギルドの本部だが、ダンジョンの入口にも窓口代わりの支部が存在する。
本部とは趣向が変わった施設で、こちらでは依頼の場所への説明を受けたり、各階層に出現するモンスターの情報などを教えてもらったりすることができる他、回復薬等を販売する雑貨店や武具屋などの店も連ねている。
ダンジョンの近くに建ててあるだけあり、より迷宮攻略用に関わる施設が詰め込めれている感じだ。
「みんな、買い忘れとかはないかな?二層なら最悪戻ってこれるけど、より下層の攻略も想定してあんまり地上へは戻ってきたくないね。忘れ物ないならもう行くけど」
ライオットの呼びかけに、他の三人は忘れ物は無いことを告げた。
「リクは?」
「俺も大丈夫だ。手っ取り早く終わらせよう」
「自信たっぷりだね!よし、じゃあ行こうか!」
.....ランクFのランクEに対する発言としてはなんか間違えた気もするけど、まぁライオットもいい感じに捉えてくれたし、気にしない気にしない。
ダンジョンへの入り口には、ギルドが通行人を確認するため関所を設けている。
依頼を受けた冒険者たちは依頼書を受付人に見せ、行く予定の場所を伝える。
依頼ではなく個人的な修行等で来た場合も同様だ。
管轄している範囲内でのダンジョンにいる人数の把握や、犯罪者のダンジョンへの逃亡を抑制するためだとか。
....流石に犯罪者でもわざわざモンスターの巣窟に逃げ込む奴はいないと思うけど....。
今回は依頼を受けてきたから、受付には依頼書を提出する。
受付の人に、ライオットが依頼書を見せた。
「依頼を受けてきました、鷹の鉤爪です。二層の炭鉱の調査です」
「あ〜あの崩落した所。気をつけてね、くずれた岩とかが落ちてくるかもしれないから。ほい、いってらっしゃい」
受け取った依頼書にハンコを押すと、受付の爺さんは依頼書をライオットに戻した。
「了解です!じゃあみんな、行くぞ」
「「「おー」」」
「.....おー」
ライオットらは意気揚々と入り口に向かっていった....だが少し聞かなくちゃあならないことがある。
少し待っててくれ、と伝えて受付へ引き返した。
「おい、爺さん」
「なんだい......あんまり見ない顔だねぇ。迷宮は初めてかい?」
「初めてじゃねぇよ。それより爺さん、今日イムはどこに行くって言ってたか知ってるか?」
「イム....ってあのSSランクの黒髪の娘かい?いやぁ、そういった情報は守秘義務があるから、当人に関係無い人には教えられないんだよ」
「関係者だっ!それに俺は実質あいつの保護者みたいなもんだ。どこにいるか把握できねぇと困るんだよ」
...主に、降り掛かってくるトラブル的に。
「そうはいってもなぁ...お前さんが同居でもしてるならまだしも...」
「同居ならしてるぞ。ほれ。なんならこの写真も付け合わせてやる」
イムの関係者、といってちょくちょくお高めの店に融通してもらうために常備していた住民票がこんなところで役立つとは...。やっぱりこれずっと持ってよ。スペアだし。
「うぉぉ、少年、それをもっとよく見せんか!イムちゃんの寝顔写真〜」
「こんのエロオヤジ、そっちか!いいからさっさと吐けって。あいつどこに行くって言ってたんだ?」
「えと....確か18層に行くとか言ってたかな....魚を食べたい気分だ....とかで。ところで少年、その写真いくらで譲ってくれるのかの...?」
「あいつそんな深くまで潜ってたのか.....まぁあいつなら日帰りで行けるだろうが....」
そんなに深いなら鉢合わせることもないだろう....よし、それなら行っても大丈夫だな。
「爺さん、ありがとう。...写真はそうだな、金50なら譲ってやらんこともないぜ」
「金貨50だと!?.......しかし......その写真にはそれだけの価値があるな.....」
「そういうノリは嫌いじゃないぜ、エロオヤジ。返事はいつでも待ってるぜ」
イムは18層。これだけ聞けりゃ充分だ。
俺は待たせていたライオットたちと合流すると、ようやく迷宮へと向かった。
道中。
「そういえばライオット、鷹の鉤爪ってなんだ?」
「あぁ。リクには言ってなかったね。俺達のパーティーの名前だよ。『鷹の鉤爪』」
「ダッサイ名前でしょ?これ、こいつが考えたのよ」
「バッ....シルヴィア!かっこいいからいいだろ!」
「さぁて、どうだか」
迷宮へと至る階段に笑い声がこだまする。
このパーティは、雰囲気が気持ちいい奴らだ。....変にギクシャクしてない、幼馴染同士なのか...?
うちのイムさんはもはや腐れ縁ってレベルだから....こういう仲間感はないんだよな。
うん、うらやましいっす、ライオット先輩。
ーーー
迷宮の入り口は、窓口を抜けたらすぐ、というわけではない。
迷宮の最上層...最も地上に近く、また迷宮内で最も安全、と言われる第一層。ここからが迷宮の始まりだが、その少し上...通称「0.5層」では、まだ人の営みが続いている。
連日迷宮に潜り鍛錬に励む猛者向けの迷宮内宿屋、それに探索者向けの商品を扱う、商魂たくましい商人が経営するよろず屋。
出発直前の再準備を行うスペースとしての0.5層だが、すでに地上で準備をしてきた今回は特に要はなさそうだ。
パーティの他の面々は、いつもお世話になっているという店主さんやらに軽く挨拶をして来ると言った。
ランクEのパーティといえども、それなりの回数を既に潜っているのだろう。顔見知りも多いようで、話も盛り上がっている。しばらく待たなきゃいけなさそうだ。
...別に、ぼっちとかじゃないけどな。
十数分もしたところで、全員が集合した。迷宮入り口の階段は広場の奥...荘厳な扉の奥に続いている。
ーーー
ライオットとシルヴィアが松明を持ち、螺旋階段を下っていく。
この迷宮独自の雰囲気と匂い....幾多の冒険者たちが戦いを繰り広げ、血と、汗と、涙を流した迷宮...。
懐かしい感覚に、少し昔のことを思い出しかけるが....
(うわぁぁぁ黒歴史!忘れろ忘れろ忘れろ!)
ダンジョンにろくな思い出ねぇわ...うん、やっぱ働くのやめようかな。
「そういえば、リクは戦闘の方はどうなんだい?」
なんだいライオット先輩、藪から棒に。
「戦闘って....なんで?」
「いやぁ、リクはニートだっていう噂しか聞かないから....迷宮には潜ってないのだろうけど、どこかで武術を学んだ、とかそういうのはあるのか?戦闘に使えるスキルとか」
「あぁ....戦闘は....まぁあんまり期待しないでくれ。以前、農村の女児に腕相撲で負けた覚えがある。スキルは....実用性に欠けるものがほとんどだ。戦闘の役に立つものはからっきしだ」
「そうか...まぁ二層の敵はFランクのモンスターばかりだし、俺らで殲滅できると思うから安心して大丈夫だ」
「わかった。助かるよ」
...悪いな、ライオット。面倒事は困るから、できるだけ伏せさせてもらう。
もちろん危険がせまれば対処はするし...当たり障りのない範囲で、だ。これから関わることもないだろうし。
ライオットは俺のことを、戦闘経験もろくに無い、本当のクズニートかなんかだと思っているのだろう。
実際俺はそうありたいから別にいいんだが....
一つだけ嘘をつかせてもらおう。ごめんな、ライオット。
この時の謝罪は。
この時、俺がライオットにした謝罪は。
別の形で降り掛かってくるのだが。
それはまた、後のお話。
−−−
「ったくニートくぅん、嘘ついちゃだめ!なのにぃ〜」
迷宮の中で、動く銀の影が一つ。
「な〜にが戦闘はからっきし、ですか!ぷんすかぷん!」
手に持ったペンダントの中の鏡は....彼女の顔ではなく、迷宮の入り口、螺旋階段を映していた。
「ニートくんをニートくんじゃなぁくするのが私の目的!ここまで来たからには、最後まで付き合ってもらうよ...ニート君...」
「いよぅし!」
彼女はペンダントをしまうと、迷宮の中を風のように駆け抜けた。
熟練の斥候が会得する気配遮断のスキル。
隠蔽系スキルと自己の敏捷性に補正をかけ、彼女は駆ける。
元々いた階層....15層を抜けて...
16、17、18層目。
「ここがっ、今日の舞台だよっニート君!」
迷宮18層、通称「滝の広間」。
そこに彼女は降り立った。