リクとイム
頑張って続けていこうと思います!
大体思いつきで勢いで書いてるので、おかしなところが多々あるかと思われます。もしよければご指摘ください。
−−−
「おい見ろよ.....めっちゃ美人だぞ...」
「黒髪美女....くぅ〜東洋でしかお目にかかれないと思っていたがまさかこんなところで見れるとは...」
「いやぁ〜おれはもう少し背ぇちっちゃくて子供っぽい方が好みだなぁ...」
「「お前は黙ってろ」」
雑多なギルドの中で、あいつはひときわ目立っていた。
冒険者...もとい、迷宮探索者なんてのは職業柄、どうしてもむさ苦しい野郎共が多くなってしまう。
女性冒険者というだけで貴重だし....ましてや美人、それも東洋由来の黒髪美人と来ては普段女っ気の無い野郎どもが歓喜するのも当然のことだ。
いや、まぁ、俺もね?役得だなぁ...って時々思いかけるけどね?
結局それは幻想だったなぁ....って思うからもはや諦めてるよ...。
「ようこそ、冒険者ギルドへ!何か御用でしょうか...?」
受付カウンターの前で、あいつは立ち止まった。
そして腰に下げていた布袋から包めた書物を取り出すと、封を剥がしカウンターの上に広げた。
「移転推薦状....アトラシアから」
「移転推薦状!?....しばらくお待ち下さい、ただ今マスターに確認を取ってきますので...」
移転推薦状というもの自体が珍しいものであるからか、その連絡書の書かれていたことが衝撃的だったのか。
忙しなさはあの受付嬢ちゃんがそういう性格だからか。
推薦状を受け取った受付嬢はかなり驚き、あわてた様子でカウンターの奥の扉へ入っていってしまった。
男どもは依然として(一部を除いて)歓喜に湧き、受付嬢たちもこころなしか目を輝かせているように見えた。
見た目だけは良いんだよなぁ....あいつ。
...って、そんなことを考えてる場合じゃない。
予定ではあと一日遅れで来る筈だ。なのにどうしてあいつがここに居る...?
...畜生、今すぐにでも外に逃げたいがかえって目立って見つかっては元も子もないな...。
ここはもう少し様子を見るべきか。
10分ほどすると、奥の扉から再び受付嬢が出てきた。
出ていったときは推薦状一枚しか持っていなかったが、今度は大量の資料を持って帰ってきたみたいだ。
やはり、事務的な作業はあいつに押し付けるに限る...今回は意図せずだったけど。
少々落ち着きの無い受付嬢は資料を手に取り説明を始めた。
「はい、えと、では、まずこの街の基本的な概要や、お貸しする部屋についての説明を−−−」
手元の資料を見ながら、たどたどしく説明を行う受付嬢。
説明の折に、彼女は律儀に
「...うん」
「...わかった」
「...なるほど」
と相槌を打っていた。
あいつの特徴の一つ....相変わらず、無口ではないけれど、片言みたいな喋り方だ。
「−−−あの、以上で説明は終わりになるんですが...そのぉ...」
「どうしたの?」
「その、推薦状には二名と書かれていて.....お連れ様は遅れての合流になるのですか?」
「連れ.....?あぁ、リクならもう来てる」
(ギクっ)
「リク様...?.....そんな方来てましたっけ...」
「私を置いて先に行った。来てるはず」
そう言うと、あいつは周囲をキョロキョロ見渡し始めた。
(......ヤバイな〜)
俺はそそくさと広げていた荷物をまとめ始めると、酒場のテーブルからそ〜っと抜け出した。
(サーっと...さり気なくだ....さり気な〜く出るぞ...)
出入り口を行き交う人々の列に紛れて、ギルドからの脱出を試みる。
あいつにだけは.....見つかってはならないッ!!
あと3歩。
で出口だというちょうどその時。
肩を掴まれる嫌〜な感触がした。
ヤバイ。
「...やっと見つけた」
「うわぁあイ、イムさん離してっ....リクさん死んじゃいますよ!?」
「.....死んじゃダメ」
そう言うとこいつ....イムは肩から手を話した。
常識という常識が欠落してるこいつを説得するのはそう難しいことじゃない。
「死ぬ〜」だとか「殺される〜」だとか....止めてほしいなら大げさにそういったことを言えばいいし、逆に脅しならそれこそ子供を脅すくらいの嘘をついてやればいいんだ。
「あのなぁっ!何回も言うがな....俺はお前に面倒を持ち込まれるのがクソ迷惑なんだよっ」
「.....持ち込む?荷物はこれだけ」
そういうと背中に背負っていたリュックを手に取り、
「....これだよ?」
とでも言うかのように持ち上げた。
「畜生ッ!言葉って難しいなオイ.....いや違えよ理解能力だよイムさん欠落しすぎだよっ」
「.....リクが何言ってるかよくわかんない」
「もう!いい!よっ!」
無理だ....もうこいつと意思疎通を図るのは無理だ.........うん。ずっと前から知ってた。
思えば何年前だっけか...こいつと会ったのは....
確か俺がまだ師匠の所にいた頃....こいつが....確か....
「.....説明一緒に受けないとだよ。行くよ」
「ああっ、もう、人が回想入ろうとしてんのに邪魔すんじゃねえっ!」
「....かいそう?」
「説明受けに行くんでもう勘弁してください」
「....わかった」
ああ...僕はもう疲れたよバトラッシュ.....
ーーー
あの後、あいつが聞いていた説明を俺も受けて、その日はギルドを後にした。
移転推薦状というのは、その名の通り活動場所の移転の際に書いてもらえる推薦状なのだが...新活動拠点での行動保障、移転にかかる費用の一部負担、移転後の活動支援(今回ではギルドから家を支給されたり)等々......冒険者活動の支援を最高レベルで保障してくれる代物だ。
当然、そのような代物をそんじょそこらの冒険者が書いてもらえる訳がなく....書いてもらうには元々の活動拠点で功績を残し、そのギルドマスターに認められなくてはならない。
そしてうちのイムさんは、前のギルドのマスターに認められたというわけだ。
まあ別に俺はそこまですごくないんだけど.....ラッキーだったというか偶然だったというべきか。
こいつと一緒に行動してることで受けられる、数少ない恩恵の一つだ。...持ち込まれるトラブルで差し引きゼロ...どころかマイナスまで行ってる気もするが。
「イムさーん、ごはん食べる〜?」
「....じゅるり」
「あ、バリエーション増えてる。前まで『....たべる』か『....ごはん』だったのに」
「....はやく」
「....はいはい」
....うちの家計はイムが支えている。
イムが稼いだ金で俺が食う。
イムが稼いだ金で俺は飲む。
イムが稼いだ金で俺は遊ぶ。
イムが面倒を持ってきて俺が巻き込まれる。
うん、まぁ割に合わねぇな。
畜生イムの野郎....俺は自堕落に過ごしたいとほぼ毎日のように言い聞かせているのに....
進歩したことといえば返事が「....じだらく?」から「...自堕落ってなに?」になったことじゃねぇか...
お腹を空かせて今こっちを見つめてらっしゃる、あちらの不思議片言黒髪美人なお姉さんことイムは。
ギルドが決めた9つの等級の上から二番目...
「SS」ランクの探索者だったりする、超一流の探索者だ。
意思疎通できないのに不思議だな...
ギルドも目が腐ったんじゃないのかなぁ...!?(泣)
「....なんで睨むの」
「....別になんでも無いっすよ」
危ない危ない要らぬ悪感情を....最高のオムレツを作るのに雑念など要らぬ....。
まぁ、冒険者経歴は凄いからなぁ....無駄に。そりゃ推薦状もらえるわ。
「....あのね」
「イムさんリクさんは今ちょ〜っと集中してるからあとにして....ってうわ焦げたァァァぁぁあ」
「...いっつも迷惑かけて、ごめんね」
「....これからは、気をつけるから」
「.......」
イムのやつ...そんなこと考えてくれてたのか...。
「へへっ...漸く俺の自堕落に過ごしたいという願いが伝わったようで何よりだぜ...イムさんよぉ」
やべぇ、涙出てきた....
あれほど憧れた安寧の日々が今.....
「.....リク」
「なんだいイムさん、今ならイムさんの大好きなハンバーグ作ってあげてもいいよぉ...」
「.....自堕落ってなにそれおいしいの?」
あ、あんまり伝わってなかったんですねそうですかそうですね。
ーーー
....とまぁこれから開幕するのは
不思議ちゃん美人イムさんとこの俺リクの冒険物語ッ
果たして安寧生活を望む俺に平和は訪れるのか?
あ、ご心配なさらずとも、この私。
リクさんの等級は最低級の「F」なのであしからず。
イムは不思議ちゃんというか、無表情・カタコトキャラととらえていただいて大丈夫です。
リクは....仕事のやる気が皆無です。ほぼイムに任せてるんで逆に主婦業が洗練されつつあります。
そのうち掘り下げていこうかな、とも思っています!