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陽炎の夜  作者: 戸坂
18/24

正義は復讐する 2

 女性乗組員が指示通りに他のスタッフへ連絡を入れたのを確認して、ウォルターは部屋を出た。

 ウォルターの存在をジリアンに報告しようとしていたスタッフを止め、ウォルターへの協力を呼び掛けさせた後、ジリアンの部屋番号を確認。警備隊権限を直に目の当たりにした女性乗組員は、従順に全てを行った。

 部屋番号は最上階の2号室。最上階への階段には鍵がかかっているらしいので、階段前まで届けさせる事になっている。

 デンバー船長の持っていた船内用通信石を手に取り、部屋を出る前にウォルターは女性乗組員へ釘を刺しておいた。

「協力感謝する。捜査が終了するまで状況は内密に頼む。俺も余計な手間は増やしたくない。この後も非協力的なスタッフには実力行使で対応するが、抗議する場合は後ほど、治安管理局の方へ」

 淡々とした事務的な口調に、返事はなかった。あの様子では、恐らくこの船が着岸するまで騒ぎ立てはしないだろう。

 従業員用通路にある階段は四階までで途切れており、上階に上るには乗船客達と同じエントランスのものを使うしかない。

 カーラ・ニーセットの情報は分かり次第連絡を入れるように言ってある。まずはこの女を捕まえ、尋問して、ジリアンとの関係の有無を確認しなければならない。

 しかし取り敢えず上階への鍵は受け取りにいこう、とエントランスへ足を向けた時、警備隊用の通信石から連絡が入った。

『隊長、ちょっといいっすか』

 ラットだ。相変わらずの疲れを感じさせない軽快な口調に、若干の苛立ちと羨ましさをウォルターは抱く。

「何だ」

『カーラ・ニーセットの方ですけど、ルーレットの景品交換窓口へ顔を出してました』

「それで」

『それが……カーラはそこで、景品交換プレートと間違えて、別のプレートを出したようです。受付嬢の話だと、どこかの倉庫の鍵に見えたとか』

「何?」

 思わず大きくなった声を抑えて、ウォルターは周囲に注意を向ける。近くにいた数人はウォルターの声に反応して顔を向けたが、すぐに興味を無くして自分達の会話を再開した。

 念の為人の少ない方へ移動するウォルターに、ラットの困惑気味な声が返ってくる。

「ロッディの所持品じゃないっすかこれ……この女、ロッディの持つ取り引き用の証拠品をルーレットの当たりと間違えてスったんじゃないすか」

 あ、とミゲルが声を上げた。

「ロッディは二時過ぎに、ボルボンドルーレットの賞品を当てています。女と口論していたのはその直前です」

 ウォルターは言葉を失い、愕然とその場に立ち尽くした。

 真実を理解しようと努めれば努める程、その行為自体が馬鹿馬鹿しく思えてくる。単純すぎて、誰もが最初から選択肢に入れなかった可能性。

 警備隊全体通信石は輝きを潜め、誰かが何かを発言するのを待っているが、この奇妙な沈黙は少しの間続いた。

あのラットでさえ、次の言葉を躊躇っている。誰もが警備隊長の言葉を待っていた。

「……じゃあこの女は、ただのスリという事か?警備隊から逃げ回っているのは……」

 途轍もなく言い辛そうな部下の返事。

「スリの現行犯逮捕を、恐れて……」

 何度目かの眩暈がウォルターを襲う。この女がもし本当にただの窃盗犯なら、それを真正面から取り逃し、指名手配した中央区警備隊の滑稽さは目も当てられない。

『間抜けな奴だなあこいつ。ロッディ以外なら今日は見逃してもらえただろうに』

 ウォルターの苦悩を我関せずとばかりに明るいラットの口調に、八つ当たりに近い怒りが湧く。

「お前、こんな情報なんでもっと早く報告しないんだ」

『む、無茶っすよおっ。受付は三交代制で、この受付嬢はカーラの写真が出来た時にはもう帰ってたんです。監視映像洗い直して、俺がフロアマネージャーに頼み込んで何とか戻ってきてもらったんすから』

 ラットの釈明を上回るだけの指摘はウォルターにはない。隊の中で誰よりカジノ関係者と良好な関係を築けているラットでこのタイムラグだ。恐らく他の者であれば、今の情報が手に入るのは今日の内ではなかっただろう。

 口を閉じてウォルターは冷静を心がける。カーラ・ニーセットがただのスリなら、ジリアンの関係者である可能性は低い。階下で二つの死体を作る必要はなかったという事か。

 いや、とウォルターは首を振る。デンバーがジリアンに買収されているのはほぼ間違いなく、彼らが警備隊に致命的な程非協力的であったのは確かだ。メリッサのみを唯一の行動指針とする時、彼等の死にいちいち後ろ髪を引かれる必要はない。

 問題は、この事実でどのような障害が生まれるのかだ。

『カリカリしないで下さいよ、むしろこれってチャンスじゃないっすか!』

 皆の反応を意外と感じているのか、ラットの声には怪訝そうな響きがある。

「チャンス?」

『だってこの女……カーラはただのスリな訳でしょ。だったら証拠品をまだ持ってる可能性ありますよ。少なくとも他の誰かに渡して裏取り引きが完了してるって事はない。でしょ?』

 その通りだ。カーラ・ニーセットが今夜の取引と無関係であれば、今も所持しているにせよ、興味を失ってどこかに捨てたにせよ、この鍵はまだ追える。

「ああ、そうだな。可能性は高い」

『ならカーラを捕まえれば、裏取り引きは押さえられますよ。それで、カーラは船に乗ってたんですか?』

「ああ、いる」

 足元に力が戻るのをウォルターは感じた。カーラ・ニーセットが乗船済みなのは名簿で確認している。彼女さえ確保出来れば、ジリアンへそのまま鍵を届けられる。

『良かった。手配しときましたよ、隊長』

「何?」

 ウォルターには自慢気なラットの言葉の意味が分からなかった。

『その遊覧船、橋の下通りますよね。湖一周するんすから』

 ウォルターは窓際へ行って、既に暗くなった人造湖を見た。進行方向の遥か前方の空中に、市街地の明かりを延長するように小さな光の列が中央の管理塔の方へ伸びている。

 円状の人造湖を三等分する形で南西、北、南東と三本架けられている橋の南西部分だ。

「ああ、それがどうした」

『俺達橋から降下して乗り込みますよ。交通管理局の方にはもう言ってあります』

「は!?」

 全く予想外の提案だった。

『船借りて追いついて停船してもらうよりこっちの方がかっこいいっしょ~』

「か……」

 かっこいいっしょ~、の部分が何度もウォルターの頭の中を跳ね回った。一瞬の後、我に返った時にはラットは既に参加者を募っていた。

「ふざけた事を言うな。危険だろうが」

『降下作戦くらい、俺達なら出来るでしょ!』

「乗船客がだ!それに遊覧船の方が……」

 言いかけてウォルターは忌々し気に口を噤む。それを拒否出来るような立場の男は先程殴り殺してしまった。それ自体は後で、船長の汚職も含めて警備隊権限を盾に正当化する算段もあるが、ならばウォルターの指揮下にある筈の現在の遊覧船スタッフが反対して、降下を拒否するという状況も有り得ない。

『客の方は隊長が言い含めて避難させといて下さいよ。デッキを短時間空けてくれればいいんですから』

「市内の警備も疎かに出来んだろう。もう一人の、男の方の行方はまだ分かっていないんだ。また通り魔を再開せんとも限らん」

『全員で乗り込もうって訳じゃないっすよ。十人位なら大丈夫でしょ』

「船の上で逃げ場はないんだ。港で待ち構える方が確実だろう」

『向こうもそれを見越して作戦練ってるかもですよ。ボートで途中で逃げ出すとか……岸に近付いた時に飛び降りるとか。安全だと思ってる船の上で仕掛ければ不意は突けますよ』

 ウォルターは歯噛みする。恐らくこの部下は大立ち回りを楽しみたいだけだ。ただそれだけの為に、今必死に上司の説得を試みている。

 駄目だと一蹴する事は出来る。だがウォルター自身、既に取引関係者と断定した船長とその部下一名を実力排除してしまっている。穏やかな解決法を選んだとは言えない。

 しかも、鍵をジリアンに渡せば結果的に捜査は失敗する形になる。部下の提案を跳ね除けた挙句の失敗となれば、責任追及は免れない。隊長職を追われる事にでもなれば、ジリアンが今後もウォルターと関係を続けるのか疑問がある。最善は尽くした、という体で失敗しなければならない。

 部下を待機させる事こそ最善と判断した、と主張する事は出来るだろうが……

『隊長、チャンスっすよ!花火が終わって明日になりゃ旅行客の帰国ラッシュだって始まるんです。明日男の方に集中するには、カーラは出来るだけすぐに確保した方がいいですって!』

 興奮したラットの主張は実際的を得ている。

「……その花火の鑑賞がこの船の目的だぞ。客はデッキで食事を取りながら花火を観る」

『降下は花火が終わった後になる筈です。今からだと南西の橋は間に合わないっすから、北の橋からになります。通るのは十時前、花火はもう終わってますよ』

 いつもだらしなくちゃらついた頭の痛い新人、ラット。言葉遣いも直らず、体力も戦闘もいまいちのこの部下は、妙な所で優秀だ。

 ラットに理詰めで追い詰められている事に、本当に頭が痛くなってくる。

『市内大通りの夜市は問題ありません。二、三人なら人数を割けると思います』

『飲み屋街の方も、問題なしです。出せます』

『サンルダン前も大丈夫です』

 遂に同調した他の部下達が次々に市内警備の飽和を訴えだした。

『ラグステップは数人で囲むのが一番の対処法なんでしょ、隊長。万全の状態でカーラを確保しましょうよ。市内警備を船が戻るまで永遠と続けるより絶対良いですって!』

「……そうだな……」

 ラットの言葉に、最早反論も指摘もせずウォルターは頷いた。この部下が言葉を間違えるのは日常茶飯事であるし、もしかしたらウォルターの聞き間違いだったのかも知れないし、主張の内容自体は間違っていないし、何よりそんな事を気にしている場合ではないからだ。

「分かった、十時前だな。市内警備に支障をきたさないよう、そちらで降下人員を調整しろ。船員達に話は通しておく」

『了解っ!』

 ラットの声が威勢良く弾けた。

「くれぐれも、市内警備を怠るなよ、それと、ラット」

『はい?』

 ウォルターはこの物理的に頭の痛くなる部下に、何か一言言い返さなければ気が済まなかった。

 本来この船は午前零時に港に戻る筈で、それが事態解決の為にウォルターに残された時間だった。その刻限はラットのせいで二時間も早まり、隠蔽も工作も後処理も、増々難しくなってしまった。何と余計な機転、何と無駄な優秀さ。何と目障りな対応力。

「……よくやった」

 溜め息の後には、その言葉しか出てこなかった。この部下は今、正に悪を追い詰めている。ウォルターを。

 ウォルターの労いが余程意外だったのか、暫く返事はなかった。元々返事を期待していた訳でもないウォルターは、通信を切り上げて行動を起こそうとした。

『……いえいえ。メリちゃんの為っすからね。さっさと片付けないと一緒に飯も食えないっしょ』

 優秀な部下の言葉は警備隊長の胸に深く突き刺さった。

 どの道もう引き返せはしない。ウォルターはエントランスへ向かう。時間は少ない。ジリアンがカーラと繋がっていないのであれば、彼女と協力するのがベストだ。確証がある訳ではないが、もう疑っている余裕もない。

 ラットに教えた通り、ラグステップは脅威だ。ジリアンが船長を抱き込んでいたのなら、彼女の手駒を船内に連れ込んでいる可能性はある。現在時刻は七時四十五分。カーラを探し出し、捕まえて鍵を取り返し、存在を抹消するのに協力者は多い程良い。

 エントランスの大階段を四階から五階、更に六階へと上る。五階の時にはなかった中二階で、透明な壁に阻まれた。一見何もないが、それ以上進めない事は、時折向こう側の景色に薄い青線が漂う事で分かる。

 魔術防壁だ。ウォルターが以前見たのは、サウインの防衛軍に居た時の前線基地司令部でだったが、十五年の月日は軍用技術を民間業のサービスに変えたらしい。防壁の四隅には青いクリスタルの埋め込まれた魔力場発生装置が取り付けられている。これを力押しで進むのは不可能だが、ウォルターの指示通り、中二階には既に船内スタッフが居た。

「ここを開けてくれ」

 ウォルターの視線を避けるように体を背けるスタッフへ呼び掛けると、素っ頓狂な声が返ってきた。

「へっ、お、俺がですか?」

 スタッフの男はまるで予想外だったようで、ビクリと肩を上下させておそるおそるウォルターへ振り返る。

「当たり前だろう」

 スタッフの態度を非協力的、と捉えてウォルターの眉間に皺が寄る。

 しかしその男にとって、驚きは本物であり妨害の意図は微塵もなかった。何故なら、そこにいたのはロッカールームから制服を拝借しただけのアドレイだったからだ。

 ロッカールームを見つけてスタッフに成りすましたはいいものの、カーラの居場所が分からず、適当に三、四階を歩き回ったが見つからなかったので、取り敢えず上から順に個室を調べようと階段を上ったら防壁に阻まれ、立ち往生していた所に丁度折り悪くウォルターがやってきたのだった。

「そう言われても……あなたは開けられないんです?」

 アドレイの困惑を読み取ったウォルターは、そこで自分が警備隊の上着を脱いでいる事を思い出し、バッジを取り出して見せた。

「先程通信で聞いている筈だ。この先に用がある。開けて貰おう」

 ウォルターとしてはこれで全ての意は伝わったと思っているのだが、勿論乗組員でないアドレイには分からない。しかし遊覧船の中に警備隊がいて、スタッフ達に協力を求めている事は察しがついた。

 そして今自分に求められている協力が不可能だという事も。

「いや、あの、俺には無理です……開けられないですね……」

「協力しないという事か」

 落ち着き払ったウォルターの一言の中に、握り潰されるような圧力を感じて、アドレイは半歩後ずさる。

「いや、しないんじゃなくて、出来ないっていうか……俺じゃ開けられないです。鍵、持ってないし」

 今日は鍵について運がないな、とアドレイは声に出さず嘆いた。

「ならお前は何故ここにいた。通信を聞いたからじゃないのか」

 当然ながら、ウォルターはその言葉を信じなかった。上階への鍵を階段まで持ってくるよう指示を出させた後、現場に来てみれば待機していた船内スタッフが鍵を持っていないから開けられない、では納得出来よう筈もない。そもそも鍵を持たないスタッフが防壁前で立っている理由がない。

「いやっそれがですね~、俺は、あの~」

 そしてアドレイにも碌な言い訳がない。元々遊覧船になど興味がなかった為船内構造を知らず、VIP用の上階を一昔前の軍事技術が守っているとは知らなかったのだ。

 なので誰か客でも通りがかって防壁を解いてくれたらな、位の気持ちで少し留まっていたらこの様である。

「俺はその、新人で……」

 言いかけた所で階下から本物の乗組員がやってきた。自然二人はそちらに目をやり、上ってきたスタッフの男も防壁前に立つ二人の男を見比べて戸惑っていた。

「六階への扉をお開けするように、と言われて来たのですが」

 スタッフは怪訝な顔でアドレイを見る。

「君は?」

 ウォルターもアドレイに顔を戻す。

 その時アドレイは、二人の男が自分を疑い始める気配を感じ取った。アドレイの汚れ人生活の賜で、まだ疑ってはいないが、あと一瞬で疑われる、というギリギリの境界を肌で感じ取る事が出来るのだ。一度疑われると、余程整合性の高い嘘を吐かない限り疑われ続ける。無色透明の空気のような扱いを受けてきた経験が豊富なアドレイは、その匂いを嗅ぎ取るのが常人より遥かに上手い。今すぐに何かを言わなければならなかった。二人のどちらかが口を開くより先に。

「船長に、頼まれまして」

「何?」

 ウォルターが眉を顰める。

「船長がお前に、通信したのか?ここにいろと」

 アドレイはその匂いを感じ取る。この質問は罠だ。

「いえ、通路ですれ違った時に。上階のお客様が用事があるそうだから、待っていろと」

 アドレイは察知した危険な香りを避ける為だけの返事をする。

 ウォルターは無言で偽船員を見つめ続けた。アドレイが自身への疑念や注目に病的なまでの直感を誇るのと同じく、ウォルターにも警備隊長として培ってきた確かな経験がある。

 アドレイが嘘をついている、という事は看破していた。だがこの時、ウォルターは嘘の箇所を見誤った。

 アドレイがそもそもスタッフではなく、船長に命令もされていない、のではなく、ジリアンへの伝言を言い渡され、それを隠している、と読み違えたのだ。

 しかしそうなると別の疑問も出てくる。何故この防壁の鍵を持ってこなかったのか、という事だ。ウォルターの疑問は、本物のスタッフが口にした。

「船長が君に?鍵も持たずに扉前で?君、どこのスタッフだ」

 アドレイは内心で舌打ちをする。なんてツイてない日なんだ、という思いが膨らんでいく。いつもいつも、向かい風に吹かれている感覚だった。船内での担当箇所など言える訳がない。階段に防壁が取り付けられている事すら知らなかったのだ。アドレイはこの遊覧船について、殆ど知識がない。

 だが何かを言わなければ。今すぐに。

「いえ、実は俺は船のスタッフじゃないんです。出航直前に海に落ちた人がいて、救助の為に中まで運んでたら、もう出航してて……どうしようかと通路をウロウロしてたら、船長が通りがかって……それで、俺新人で、外のスタッフだと言い出せなくて……ここに居れば誰か通るかなと」

 完全な、口から出任せの、その場凌ぎの嘘だった。喋っている途中で何度も新しく思いつき、どうにか言い切っただけの不格好な言い訳だ。だがアドレイには知る由もないが、これは奇跡的に一切の矛盾が生まれない嘘だった。

 船長が既に死んでいる事、アドレイが船長に命令されたのに鍵を持たず上階への防壁前にいた事、船内スタッフでない事、ついでにいうなら先程からオドオドと言葉を詰まらせながら話す事も、何もかもに矛盾のない完璧な言い訳だった。

 そしてアドレイ以外の二人の男には急ぐ理由があった。ウォルターは一刻も早く事態を解決したかったし、本物のスタッフは八時からの花火鑑賞会の最終準備をしている最中の呼び出しだった。

「なら、この壁はお前が開けてくれるんだな」

 ウォルターが視線を移すと、スタッフは頷いてポケットからカードを取り出した。

「これを扉にかざせば十秒間通行が可能です」

 いちいち訂正する辺り、何が何でも壁ではなく扉だと言いたいらしい。ウォルターに手渡すと、男はアドレイに顔を向けた。

「では私は準備に忙しいので……後は君が、この方のサポートをしてくれるか」

「えっ、俺ですか」

「今船内スタッフは鑑賞会の準備で忙しいんだ。君は船外スタッフならフリーだろう。手伝ってくれ」

「おい待て」

 そのまま足早に階段を下りようとするスタッフをウォルターが呼び止める。

「乗船客の捜索の方はどうなった。カーラ・ニーセットを見つけるように言ってある筈だ」

 警備隊長の口からカーラの名前が出た時、アドレイの心臓が跳ねた。アドレイはそこで、ウォルターがここにいる意味を理解した。カーラを捕まえる気なのだ、と。

 苛立ちを抑えています、と言いたげなぎこちない笑顔でスタッフが振り返る。

「そちらも勿論、行っています……ですが、今は本当に時間がなく……そのお客様が名簿にある方でしたら、どの道鑑賞会の際にデッキへおいでになるでしょう。確か放送での呼び出しは駄目なのですよね」

「当たり前だ。指名手配犯だぞ」

「でしたら、やはり名簿でご自分で捜されるのが一番かと思います……船長が襲われたと聞いて、皆動揺しています。お客様の安全の為に鑑賞会を中止にするべきでは、という意見も出ていましたが、手配犯に逃げられないように、というそちらの意向で続行するのです。我々は我々の仕事で手一杯です」

 船長が襲われた、という初耳の情報にアドレイはぎくりとする。船長に口頭で命令された、という自分の主張が、今の情報と矛盾していないのかが、アドレイには分からない。

 そんなアドレイの動揺を余所に、警備隊長は船内スタッフに厳めしい視線を返す。

「デッキに出てくる客全てを俺一人で見張れると思うのか」

「ご存知ないのかも知れませんが、鑑賞会のディナー席は予め割り振られております。名簿上の名前が判明しているのであれば、座席表と照らし合わせるだけですぐに見つかる筈です」

 ウォルターは手に持つ名簿へ一瞬目を落とした。

「それは知らなかった。なら、手配犯がディナーに現れれば見つける事は出来そうだ。その後、もしもの事態が起きれば何か協力を要請する場合もあるが、その時はこいつに言えばいいのか?俺が今持っている船内通信石は船長のものだ。指紋認証式で聞く事は出来るが喋る事は出来ん」

「船内各所にある通話機をお使い下さい。上階であれば各部屋、各通路にあります。その他緊急の人手は彼に」

 アドレイはウォルターとスタッフを交互に見比べて狼狽える。

「俺はでも、元々ここのスタッフじゃないですし」

「協力してくれ」

 スタッフが念を押すように言い

「警備隊が協力を要請する。分かったな」

 ウォルターが有無を言わさず決定する。

 ウォルターがカードを翳して防壁を解除するのを見て、スタッフは階段を下りて行った。

 警備隊への協力義務など本来のアドレイにはないが、アドレイが騙った立場にはある、という事は二人の態度で理解した。

「あの、俺はどうすれば」

 断る事は出来ないのだ、と諦めて、仕方なくアドレイはウォルターへ尋ねる。ウォルターはもう彼に興味がないかのように、手の中の解錠カードをしげしげと眺めている。

「ここで待っておけ。取り敢えずはな」

 いつも通りの扱いだった。アドレイは自分がいつも通り、空気になった事を認識した。複雑な心境ではあるが、その存在の希薄さは、やはりいざという場面では心強い。

「壁は超えておいた方がいいんですよね」

「好きにしろ」

 存在を無視するように階段を上りだすウォルターの背中を見て、アドレイは自分が今何をするべきか考えた。

 目の前で背を曝している男は、カーラを捕まえる気だ。しかもそれは自分の仕事を横取りしたせいで、捕まればまず碌なことにならない。ヴェスティア警備隊の容赦の無さは、ドットガルのスラム街にまで轟いている。

 ブラックドレスの彼女、カーラが何者であれ――例えアドレイの期待から全く逸れた同類だとしても――捕まって欲しくはない。

 ならば、何をすべきなのか。無防備に背を向けて階段を上る警備隊長に?

――そういうのって、長生きできないのよ。

 ほんの数時間前まで相棒だった女性の声が意識に浮かび上がる。

 これは思い付きの、場当たり的な判断なのだろうか。今すぐにこの男の頚椎を外して、カーラへの包囲網を緩める事は。

 状況から、この男が死ねばアドレイが疑われるのは間違いない。階段を下りて行った船内スタッフはアドレイの顔を確かに見ているし、上階への階段を上った先での殺しとなれば候補者は限界まで絞られる。逃げ場のない船の上で、そんなリスクを冒して乗り切れるのか。

 仮に乗り切った所で、船の外にはアドレイを追うならず者達がそこらじゅうにうろついている。ただでさえ困難なヴェスティア脱出が、更に難易度を上げてしまう。

 だがこの男を始末すれば、間違いなくカーラの助けになる。諦めてはいけない。それだけはしないと誓った。しみったれた人生で、それでも幸せを掴む為に彼女は必要なのだ。

 アドレイはウォルターの後ろをついて行く。階段に敷かれた絨毯が足音を消す。上り階段を後ろからついて行っているので、アドレイより上背のあるウォルターの首の位置には手が届かない。

 やるなら上り切った後。一撃で。彼女の為に。彼女と出会う、自分の未来の為に。

「おい」

 突然、ウォルターが振り返らずに声をかけてきた。

「お前、何故俺に殺意を向けている」

「え」

 ウォルターは階段を上り切った直後にピタリと足を止め、ゆっくりと肩越しにアドレイへ振り向く。

「何故俺に殺意を向けた、と聞いているんだ」

 その目を見た瞬間に、アドレイの中から闘争心は消えた。

 この男には勝てない。

 ぐらりと船が傾いた気がする程の緊張感がアドレイを包み込んだ。

 汚れた人生で身に着いた直感だ。アドレイはウォルターに勝てない。少なくとも完全な不意打ちでもない限りは。つまり、今は勝てない。アドレイのようなならず者と対峙し続けてきたウォルターの経験は、

アドレイ自身も気付かないような敵意を敏感に感じ取り、今やはっきりと彼を敵対人物と認識していた。

「あ、いえ。殺気だなんてそんな、勘違いですよ」

 アドレイは大袈裟な仕草で手を振って誤魔化す。実力差は確かめるまでもなく歴然。階段の位置関係はこちらが下。おまけに武装も、ウォルターがロッドを持っているのに対してアドレイには何も無し。どう転んでも勝ち目は無い。諦めるとかの話ではなく、無理だ。

 ウォルターは少しの間アドレイを睨み続け、目の前の男がデンバー船長と同じくジリアンに関係している可能性を考えた。

 ほんの一瞬揺らぐように立ち上った敵意の気配は、今はもう跡形も無く霧散して感じ取る事が出来ない。神経が過敏になっている自覚はあった。ウォルターの目には、アドレイは何処にでもいる冴えない従業員で、粗を探そうと思えばいくらでも可能だし、それを言いがかりと判断するのも同じ位簡単だった。何よりアドレイはウォルターに心底怯え切っている。わざとらしい手振りの奥には、隠し切れない負け犬根性が見えていた。

「お前はそこで待っていろ」

 下らないやり取りで時間を浪費している暇は無い。言い捨ててウォルターは2号室へと向かう。アドレイはぶんぶんと頭を何度も上下に振り、暫くして当然のようにウォルターが歩いて行った先へと足を向けた。

 自分には何一つ自慢出来る所のないアドレイではあるが、その何一つない中に無理矢理捻じ込めるものがあるとすれば、存在感の無さだ。僅かな殺気も逃さない警備隊の実力は今し方思い知ったが、それでもこっそりと動く自分に気付く事は出来ないだろう、という確信がある。生涯で一度も、主役はおろか脇役にも端役にもなれなかった実績は伊達では無い。

 斯くして、遠くから尾けてくるアドレイに気付かないまま、ウォルターは2号室の扉を叩いた。少しの間が空いて、ウォルターが再度ノックしようと拳を上げた時、扉の鍵が外れる音が聞こえた。

「……ここで何をしているの」

 ドアの隙間から顔を半分覗かせたジリアンが、不審げな半眼でウォルターを見上げる。

 問答無用で押し入ろうとしたウォルターだが、ドアチェーンを見て諦めた。中二階に魔術防壁を張る上階の安全意識を見るに、このチェーンにも何か術式を施していると考えた方がいい。

「話がある。入れろ」

「何をしているのか聞いているのよ」

「話をしにきたと言っているだろう。このままここでやり取りするのは上手くないと思うがな」

 ウォルターは通路を軽く見回してみせた。六階は四室しかない上客専用階層なので人通りは殆どないが、誰も通りがからないと約束されている訳でもない。

 ウォルターが視線を振った時、アドレイは曲がり角の先に身を潜めていたが、当然勘付かれることは無かった。

 胡乱な眼差しのままジリアンは小さく溜息をついて一旦ドアを閉め、チェーンを外してウォルターを招き入れた。

「どうして貴方が船に乗っているのか聞いてもいいかしら?」

 無言でリビングルームへ進んでいくウォルターに、ジリアンが詰問する。昼間とは違う、鈍い光沢を放つ灰色のイブニングドレスを纏い、指や耳に装飾品を飾り付けたその姿は正に上流階級だ。それらはこの女の本質を見事に隠し切って、どこから見ても完璧な淑女を演出している。冷たい冬の内海を思わせる瞳を除けば。

「この船にお前の望んだものがあるからだ」

 ウォルターはわざと言葉をぼかして反応を見る。ジリアンはうんざりと眉根を寄せた。

「もうすぐ花火が始まるのよ。話は簡潔にしましょう」

 大きなリビングの中央にある品の良いテーブルの上には、長細い木箱が寝かせて置いてあった。

「ワインを届けてやったのに随分な言い草だな」

「ああ!」

 気難しげなしかめっ面が、ぱっと華やいだ。

「有難う。きっといい夜になるわ。後は貴方が遠慮してくれたなら」

「取り引きは失敗するかも知れないのにか」

「それは貴方が何とかしてくれるのでしょう?」

 ウォルターはジリアンのわざとらしい程屈託ない笑顔を睨み続けるが、真意は見えない。そもそもこの女は嘘や隠し事が多すぎて、最初から怪しい匂いしかしない。大量の西サウイン産コーヒー豆の中から一粒の東サウイン産を探すようなものだ。

 ノックの音が響き、続いて控え目な給仕の声がディナーの準備を始めたいと呼び掛けてきた。壁掛けの時計を見るともう八時前だった。給仕に少し待つよう返事をしながらジリアンはウォルターを一瞥する。

「貴方がここにいるのを見られない方がいいのでは?」

「この船に鍵を盗んだ女が乗っている」

 ジリアンが視線をウォルターに戻した。

「何ですって?」

「カーラ・ニーセットという女だ。乗船名簿にチェックも入っている。こいつが鍵を持っている」

「どうしてその情報をもっと早く伝えないの?何のために石を渡したと思っているのよ」

「こちらにも事情があってな」

 ウォルターは全面硝子張りの窓の向こうに見える、プライベートデッキへ目をやった。

「言い合っている場合ではない。十時前には警備隊が船に乗り込んでくる手筈になっている。それまでにカーラ・ニーセットを捕まえなければならん」

「簡単よね、きっと」

「だったらここには来ていない。お前の手駒は船に何人連れ込んでいるんだ」

「何故私の兵隊を頼ろうとするのよ。貴方に使わせる為の人員じゃないって言った筈だわ」

 ウォルターは一度入り口のドアを気にした後で、ジリアンへ一歩詰め寄った。

「何故なら俺の部下の到着を待てば、警備隊として捕まえなければならんからだ」

 警備隊としてカーラを捕まえる。それはつまり鍵を渡せず取り引きは失敗する、という事だった。

「貴方一人では無理という事?」

 距離を寄せる警備隊長に一歩たりとも引く事無く、白の国の女研究員は腕を交差させて嘲笑を返す。その組み合わせた左手の中指に光る、大きな貴金属。頭上の星々もかくやという程多彩な光彩を放つその石に、一体どのような魔術が組み込まれているのか。少なくとも、ウォルターを脅威と見做さない程度の武装ではあるという事だ。

 或いは最初から自分が攻撃される事はないと高を括っているのか。どちらにせよ、今は手を出せない。

「万全を期したい。このカーラという女は厄介な技を持っている」

「厄介な技?」

「ラグステップという、近接戦闘に特化した技術だ」

「ああ、それで貴方の部下はまんまとしてやられたのね」

 ジリアンの挑発の中に苛立ちが混じっている事に、ウォルターは気付いた。

「出来れば相手に警戒されないように近付いて、即座に確保したい。だが失敗した時には戦闘になる。ラグステップの効果的な対処法は多人数で囲む事と、遠距離攻撃だ。お前に動かせる兵がいるなら、動かせ」

「多人数で囲むって」

 ジリアンは呆れたように噴き出す。

「それは大体の場面で効果的なのではなくて?」

「その大体の場面で効果的なやり方が、ラグステップにも効果的という事だ。無駄口を叩いてないで……」

 ウォルターはもう一度入り口を気にした。どうにも気になる。気配も何もない筈なのだが。

「出せるのなら、出し惜しみせず出せ。この取り引きは流せないんだろう」

 ジリアンが黙り込んだ。その目がちらりと時計へ流れて、大きく溜息をつく。

「私の私設隊は十六人、一つ下の階にいるわ。彼等は私の命令でしか動かない。私も納得できない事には彼等を動かさない。彼等にさせたい事は私に言って。私がそれを、必要かどうか判断する」

 完全な二度手間だが仕方がない。これ以上ジリアンは譲るつもりがなさそうだ。

「乗船客はディナーの為に全員デッキへ出るそうだな。必要な事はデッキ入り口の見張り。そして最悪の場合はカーラへの実力行使だ。カーラは……」

 ウォルターは乗船名簿を開いてカーラの名前を探す。ジリアンが小さく息をついた。

「……老眼は要らないの」

「黙っていろ……あった。一般のソロ席だ。四階となっている。四階デッキの出入り口へ人員を配置してくれ。まずは俺が一人で接触を試みるが、確保に失敗した時には全員でやる」

 ウォルターはそのままプライベートデッキへ出て、二階下のデッキを見下ろした。蒸し暑い夏の夜の熱気が風に運ばれてくる。デッキは薄暗く、一階下の五階デッキですら、目を凝らしても人相の見分けがつかなかった。

 背後からジリアンが苛立たしげな声を上げる。

「ちょっと――」

 その時、声を遮るように白い光線が一筋空へ打ち上がり、夜を打ち消す光と音を振り撒いた。階下のデッキから拍手の音が聞こえる。八時を回り、花火大会が始まったのだ。

 二人は一度その輝きを見上げ、視線を降ろした。

 改めて口を開くジリアンだが、花火は次々に打ち上がっては爆発してそれを妨げ、仕方がなくウォルターに近付く。

「――私の、ディナーを、デッキに、運ばせ、ないと!」

 この期に及んで食事の心配をするジリアンに、ウォルターは怒りを通り越して呆れてしまう。とはいえ、僅かな明りしか灯していない階下のデッキはここからではまるで見えず、陣取る意味はない。

 ジリアンが手振りで室内を指し、花火の音を避ける為二人共戻る。

「部屋の外に給仕を待たせてあるのよ。いつまでもそのままという訳にはいかないでしょう」

「お前の私設隊に連絡しろ。四階デッキ入り口の監視だ。デッキには入らないように念を押して。今すぐに」

 ウォルターはズボンのポケットから折り畳まれた映像写真を取り出して、ジリアンへ渡した。

「こいつは金目の物をとるつもりでロッディから鍵を盗んだ、ただのスリだ。だからこそまだ鍵を持っている可能性が高い。取り返せば、それで俺達の仕事は成功だ。そうだな?」

「取り引きが完了するまでよ。完了したら成功」

 言い返そうとするウォルターを花火が止める。今は四階へ下りてカーラを確保するのが先だ。

 ウォルターは顎で入り口を指し、ジリアンへ給仕を中にいれるよう合図して、自分はバスルームに隠れた。ジリアンがチェーンを外してドアを開ける。

「いいわ。食事を運びこん……」

 言葉を途中で飲み込んで、少しの後にジリアンはバスルームを開けた。

「今の内にどうぞ」

「何?」

「いないのよ、どういう訳か。ドアの前では待っていなかったみたいね。通路も見たけれど、いなかった」

 ウォルターは通路へ出る。

 色とりどりのチーズを乗せた皿とカラトリーケースが、ワゴンの中に置きっぱなしで放置されている。

 奇妙な違和感が漂っていた。プライドの高い遊覧船スタッフが、VIPへのディナーを放り出して何処かへ行くだろうか。そうやって思い返せば、ジリアンと話している間通路には気配がなかった。

「戻ってくる前に行った方がいいのではなくて」

 ジリアンはリビングへ引き返していった。食事を自分で運び込むという発想は無いらしい。気にはなるが、ここで居なくなった給仕を探す訳にもいかない。

 ウォルターはエントランスの階段へと向かった。ワゴンがある位だから、きっと厨房からエレベータが通っているに違いない。そちらを通る方がデッキには近道だろうが、階段に待たせている男への指示がある。

 階段前には、疲れた様子で壁に背を預けて項垂れるアドレイがいた。アドレイがウォルターに気付いて顔を上げる。表情は曖昧で、感情が読み取れない。

「あ、ええと……」

「誰かここを通ったか?」

「いいえ、誰も……」

 ウォルターはアドレイの表情を探るが、ぼんやりと力ないその目からは何も見出だす事が出来なかった。

「これから、もしかしたら四階で騒ぎが起きるかも知れん。その場合乗客の安全を確保する必要がある。四階には俺がいくからお前は五階に行って、そこで指示を待ってくれ」

「お、俺がですか?でも俺は船内のスタッフじゃ……」

「協力してくれ、分かったな」

 有無を言わせず押し切って、ウォルターは四階へと階段を下る。防壁は外側へ通る者を弾くことは無かった。

 ウォルターが見えなくなった所で、アドレイは大きく息をついた。

 通路の、エントランスとは逆方向の先には、気絶させた給仕が寝転がっている。ウォルターがそちらを確認していたら、まず言い逃れは出来なかった。

 通路で盗み聞きした情報を、アドレイは頭の中で整理する。

「俺に出来る事……俺がやる事……」

 カーラを助ける為に何が出来るのか。カラトリーケースから抜き取った肉用のナイフを握り締めながら、アドレイは決意をもって階段を下った。

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