zirconio memorie
-アジト- そこは隠れ家的なBAR
いい年をして初めてそんなところに入った。
びびりでぼっちでやや雰囲気オタクなおっさんが何食わぬ顔で入っていける空間じゃない。
いつもなら
若い金髪のお兄ちゃんが平然と入っていくのだ。まあ、見た目的にはいいのかもしれないが年齢的にはどうなのかな?いい人っぽいし、ちょっとつついてみるか?
「一応見てくれはBARだけど、あくまでうちのトップの趣味だから、酒は出してないぜおっさんには悪いけどな」
「いや、別に気にしないでくれ、俺もそこまで飲む方じゃない」
機先を制されてしまった。
しかし、どう見ても10歳以上は離れている相手と何を話したらいいのだろうか?
しかし、年上が話をリードするのも甲斐性と言うものではなかろうか?
しかし、最近はラノベを書くのに夢中でアニメもゲームも絶っている
しかし、最近の若者は進んでるしそんなものには興味ないか?いっそ読んでるラノベについて聞いてみるか?意外とそこから盛り上がって・・・・
バーの奥のブース席に一人女の子が座っている。
紛れも無く女の子としか呼べないような年齢の子だ。横にランドセル置いてあるし間違いないだろう。
声をかけたほうがいいのだろうが、もっと何を話せばいいのか分からない。
『学校は楽しいかい?』とかか?お父さんじゃあるまい。それは無いな、却下だ。
「よう、ララ今日も学校は楽しかったか?」
機先を制されてしまった。
「いや、こんな夜もいい時間に学校って、むしろ寝る時間じゃないの?」
「眠れないの、紅茶入れて」
「ああ~紅茶は俺はあまり得意じゃないからな~おっさんはどうだ?」
「紅茶に得意も不得意もあるのか知らないが、帰りに買って来たカモミールのティーバッグでよければあるぞ」
「それでいい」
「おっさんの割りに洒落たもん持ってるんだな」
「別にティーバッグのお茶くらい誰でも飲むだろうよ。おっさん差別止めろ」
「後甘いものが欲しいの」
「寝る前に歯を磨くなら、コンビニで買ったシュークリームがあるけど」
「それでいい」
「おっさんの割りにそんなもの食うんだな」
「おっさんだってシュークリームくらい食べるって」
「おっさん気に入った。[spirito ornamento]作ってあげる」
「そりゃあいいや、頼もうと思ったんだがなかなか切り出せ無くてな。
このおっさん【Vulcānus】の[arma]を何の[arma]もなしで勝ち取ってきた猛者だからよ。
うちにスカウトしたわけだが、何せおっさんだろ?[arma]は使えないからよ」
「何だか、よく分からんけどさっきの[arma]返してあげた方が良いんじゃないのか?あの子泣いちゃうぞ」
「いや、むしろ何もしないで返した方が屈辱だろ?勝負の末奪われたもんなんだから」
「なにそのルール、そもそもそういうのってお互いに平等に賭け合う物があって成り立つんじゃないの?」
「だから、おっさんは財布の中身を賭けてたんだろ?」
「82円だけどな?」
「何で!そんな!金額で突っ張ったんだよ!いくらなんでも[arma]が危ないもんだって分かってんだろ?」
「ちょっと財布の中身見せるのが恥ずかしかっただけなのに『時間切れだ』とかやられちゃっただけだし」
「そんな事よりここに手をかざして欲しいの、目をつぶってゆっくり深呼吸するのよ」
と言われて目の前に出された箱は、なにやら小さく区切られて中に小さい石が一個づつ入ってる。
言われたとおり目をつぶって深呼吸をしながら手をかざす。
「分かったの、おっさんの相性のいい金属はジルコニウム、ここにお試し品があるの付けてみて」
渡された銀色のリングを普通に右手の人差し指にはめる。
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池を覗いている。
池の向こうには子供?いや昔の自分がやはりこちらを覗いてる。
何を話しかけているんだろう。怒っている訳でも笑っているわけでもない。
池の中にいる子供の頃の自分、むしろ池の中にいるのはこっちの自分か?
そろそろと向こうから手を伸ばしてきたのでこちらも同じように手を伸ばす。
手と手が合ったと思った瞬間
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元のBARに座っていた。
「俺今寝てたかな?」
「ううん、寝てない。何が見えた?」
「池の向こうに子供の頃の自分が見えたな」
「じゃあ、その池がおっさんの心の窓、やっぱりジルコニウムで正解だったみたい、折角だから発色させたおっさん専用の[spirito ornamento]作ってあげる。また明日来て」
「そのスピリト着けるとどうなるの?」
「そりゃあ[arma]が使える様になるぜ」
「さっきおっさんは使えないって言ってたじゃんよ」
「だから、そのための補助器具みたいなもんだって、補助器具つけてるから[arma]を使える許容量はその分減るぞ特に[spirito]はかなりキャパ食うぞ」
「補助器具じゃない、心の窓。逆に私達子供では開くことの出来ない本当の自分の居場所」
「本当の自分の居場所ね。子供の内は何で開けないんだろうね?」
「分からない。おっさんがもし分かったら教えて」
「いいよ。分かったらね」
その日帰って見た夢は、何だか楽しくて嬉しくてとても良いものだった。