五月四日--眠れた夜に--
私は、少しばかり自分に失望をしてしまいました。寝られるのだもの。もう朝の十時だもの。なんですかこの体たらくは。
たしか昨日は夕方の五時まで寝ていて、十七時間。深夜の三時半くらいから眠りついて、十時におきて、七……違う六時間半ですね。それに十七を足して、二十……五、いや、えっと……。
うん、重要ではないことをグダグダと考え続けてしまうのは私の悪い癖ですね。たくさん寝てしまったという事実を認識できればいいのです。
『昨日は二十時間も寝てしまった』と悔やむのではありません。具体的な値はどうでもよいのです。『昨日はたくさん寝てしまった』これだけでいいのです。
それはなぜか?
結果として得られる教訓に差異が存在しないから。
二十時間も寝た経験から得られる教訓は、規則正しい生活をしよう。
たくさん寝た経験から得られる教訓も、規則正しい生活をしよう、です。
ほら、同じです。収束する結果が同じならば、過程が楽で早く済むに越したことはないのですから。シンプルなものは美し……二十四時間と三十分だ!
でもやはり数字だって大事ですよね。相手に考えを伝えるに当たって、抽象的な意見よりも具体的な方がよいでしょう。なにせ説得力が違います。
『私はとても足が速い』『私は百メートルを十秒で走れる』。
明確な違いがありますよね。言葉のマジックです。
あっ、ここまでの全部無しにしましょう。よく考えたら私はまだ寝起きじゃないですか。頭が回転しないのは仕方がないことだったのです。わかっていますよ、二十三時間三十分ですよ。普段ならあれくらいの計算なんて朝飯前なのですから。
あれ? いや確かに現状も寝起きで朝食も摂っていないことには変わりはありませんが。ことわざ? 慣用句? とかそういうものはなんというかそういうのではないじゃないですか。
さっきから私は何を言っているのでしょうか。ご飯を食べましょう、服を着替えましょう、外に出ましょう。ゴールデンウィークはまだまだ序盤、過去を振り返るのは止めるべきです。私はこんなところで乾いて逝くわけにはいかないのですから。
「おっ気に入りの、ワンピース」
「ペイズリー!」
ストンと着装。
「スっトールでー」
「ワンポイント!」
ふわりと巻き巻き。
「日差しがー強いからー」
「ストローハット!」
早い話が麦わら帽子。
お着替えをしていると楽しくなってきます。年頃の女の子ですもの。
さあ、扉を開きましょう。世界が私を待っていてくれているかもしれないのですから。




