五月五日--私が導かれた二つの未来--
「つらら、落ち込むのもいい加減にしなさいよ」
「桂さん、そういう時期は誰にでもあるものだから気にしないほうがいいよ」
二人の慰めの言葉が辛いです。結論を言ってしまえば私の推理は全くの的外れでした。あまつさえ私は自信満々でポーズまで取りながらそれを披露したものですから、恥ずかしさはこの上ないものと相成りました。
二人の冷たい目と対照的に、私の顔は熱を持ちながら紅潮しました。そして私は涙目でその場から逃げ出そうとしてすぐに転んで、呆れ顔の二人から声を掛けられる運びとなったのであります。
私は体育座りで二人に向き直り、ふてくされながら口を開きました。
「で? 私は能力なんて何も持ってない平凡な女子高生で? 私の妄想はこの世界では余りにも当たり前なあるあるで、ベタな展開と妄想がたまたま一致していただけなんだっけ?」
「そうよ。そして私はあなたが危ない目に合わないように、色々な出来事に巻き込まれないように守っていただけ。あなたのどんくささと不器用さを昔から知ってるから危ないと思ったの」
大切な親友として、と楓ちゃんは付け加えました。
「そして僕は、桂さんを無理やり温室で過ごさせようとしている桜さんのやり方が良くないと感じたんだ」
だから二人は争っていた、とのことです。なんだかまるで、教育方針でもめている両親を見ているような気分でした。二人とも私のことなんて放っておいてくれればいいものを……。
「この空間は何なんだっけ?」
「私の作った『結界空間』よ。他者の侵入を防ぐためのものなのだけれど、こいつには破られてしまったわ」
「へー……」
楓ちゃんは顎で小宮山君を指して答えました。なんかもう驚きも薄れてきてしまいました。
こういう魔法みたいな不思議能力とか、異世界を救ったりとか、結構みんなありふれた出来事として経験しているそうです。
--なんだ、私の世界って本当は退屈なものではなかったんだなあ。
「そして、桂さん。君はどうしたい?」
小宮山君と楓ちゃんがが私に問いかけます。
「このまま桜さんに守られながら、安全な暮らしを望むのか」
「私が身を引いて、あなたは刺激的ながら危険を伴う世界へ飛び立つのか」
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私の人生には刺激が足りない。
私はゴールデンウィーク前にはそう考えておりました。
私は考えました。なぜ、私の人生には何も起きないのだろう。なぜ、私はこうも平凡な人間なのだろう。
この問答は私の人生に大きな影響を及ぼす、そしていつかは結論を出さねばならぬ課題だ、そんな風に感じてなりません。日ごろから危険を避けよう、ケガしたくないと逃げてばかりの私です。
私が出すべき答えは--
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