五月五日--私がたどり着いた、たった一つの真実--
「桂さん、連休前日の放課後を覚えてるかい?」
連休前日というと、私は確か教室で寝こけてしまっていて、ピアノの音に誘われて音楽室に向かって、なんだか怖くなって逃げだしていたら突然窓ガラスが割れて。……あっ。
「その節はどうもご迷惑をおかけしまして……ごめんなさい小宮山君。あなたの後頭部はご無事でしょうか」
「いやまあ、それは別にいいんだけど」
何をやっていたのあなたたちは、と楓ちゃんは呆れています。小宮山君は咳ばらいを一つ入れて続けます。
「とにかく、放課後の学校に現れた『怪異ピアノ弾き』と桜さんが戦ってた時のことなんだけど……」
「思いのほか手ごわい相手だったわ。ああいう類とやりあうのは初めてだったし」
「そう、だから僕も増援に向かっていた時だったんだ。戦いの余波で割れた窓ガラスと桂さんにそれは阻まれてしまったのだけれど」
「ちょっと待って」
……聞きなれない単語だけど覚えのある単語がごく自然に会話に登場してきます。何ですか『怪異ピアノ弾き』って。いや私も確かにそんな存在がいるとその時妄想していたわけですけれども。
「そうだった、桂さんには聞き馴染みがないことなんだよね」
小宮山君は一人納得した様子です。
「私にもよくわかる説明をお願いします」
「簡単に言ってしまえば僕たちは学校でゴーストバスターやってるんだよ」
「ええ……っと」
困ってしまって楓ちゃんの方へ目を向けます。うんうんと頷いています。
「ふざけては、ないんだよね?」
「僕はそんなに変なこと言ってるかな」
小宮山君が困った表情を浮かべます。困惑しているのは私も同じなのですが。
「もしかしてさ、さっき二人が戦ってるときに言ってた『きりんぐぱすと』とかってのもゴーストバスターの賜物なの?」
とりあえず思いついた疑問を一つぶつけてみます。
「あれはゴールデンウィークに見知らぬ番号からの着信で異世界に召喚されたときに身に付けたのよ」
さもありなんといった感じで楓ちゃんが答えます。まったく! この二人はまったく! さっきから突飛なことばかり言って私をどうするつもりですか! 私の妄想を覗き見でもしてるんですか! 驚きの一致率が起きてますよ!
まるで私の妄想が現実になっているみたいじゃないですか!
--妄想が、現実に?
でもまさかそんな。しかし突飛なことを考えたように思えますが、これならば全て説明がつくように感じるのです。私には『妄想を現実にする力』がある。
私にそのような力がる。そして楓ちゃんはそれを私に気づかせないように画策していたとすれば……? そして、力の存在を私に気づかせようとする小宮山君とは対立している。
どうやら私は、一部の隙も無い完璧な推理をしてしまったようです。
「わかったよ、二人とも」
--答え合わせと行きましょう。
「私が持ち合わせた妄想実現能力『トゥルー・イマジン』が全ての元凶だったんだね……」