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五月五日--最強の武器、それは--

「つらら、鼻血は止まった?」

「桂さん、頬を冷やしてるタオルも変えようか」

「……止まった……ありがとうございます……」


 結果として二人の戦いは止まり、みんなで話し合いをする場を設けることが出来ました。しかし、その犠牲はとても大きなものでした。ではその過程を振り返ってみるとしましょう。


 ……


 ほんの少しの勇気を拳に、私は雄叫びを上げながら二人の元へ走り出しました。


「うゃー!」


 声が裏返りました、恥ずかしい。そして拳を握ってみたもののどうしたものかとわからず、無我夢中で両手をぐるぐる振り回している体たらく。あまつさえには10歩も走らないうちに足がもつれて地面に顔を強打してそのまま顔面スライディングへとしゃれこみました。


 私が最初に上げた奇声は楓ちゃんたちの注目を集めていました。つまりは私の無様な姿は全部見られてしまっていたわけで。ああ、とても恥ずかしい。


 しかし! 二人は思わず戦いを止めて、私を心配して駆け寄ってきてくれたのです!


「つらら!」

「桂さん!」


 私は転んでうつ伏せのまま、両手で地面を支えて上半身だけ起こし、二人に向かって心の限り叫びました。


「げんがじないでよー!」


 鼻血はダラダラ、おでこは擦りむき、涙もボロボロ流してしまっていました。とても華の女子高生が人様に見せられる顔はしていなかったでしょう。


 しかしそれが功を制したのか、二人は私の手当てを始めることで戦うことを止めたのでした。


 ……


「それにしても、さっきのあなたの様はひどいものがあったわね」

 楓ちゃんは顔を背け、笑いをこらえながらそう言いました。


「ひどいのはそれを笑ってる楓ちゃんだよ!」

 私はふくれっ面になりながら訴えます。小宮山君のほうへと顔を向けると、なんと彼まで顔を背けて笑いをこらえています。


「小宮山君まで……むー」


 まったく! 二人とも、まったく!


 しかしこうして争いは中断し、みんなが笑っているのだからまあ良しとしてあげるとしましょう。そして気づいたこともあります。私には鉄拳以外の武器が備わっていたということがわかりました。


 それはそう、女の涙……ですかね。



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