五月五日--私の親友、桜楓ちゃん--
「楓ちゃーん、どこに、向かってるの……」
「あいつが来ないところよ」
「あいつって、だれー?」
「私は今、貴女とあいつが出会わないようにしているの。だから知る必要はないわ」
「そう、なんだ……?」
そうなのでしょうか? 私としてはとても気になるところなのですが。私に害を為す存在だということでしょうか? はてさて一体何者なのか? 考えてみましょうか……。
だめだっ! 今日は妄想を繰り広げないのだと決心したのでした! 危ない危ない。
ふと、目線を下に向けると楓ちゃんの腰には鞘に納められた刀がカチャカチャと揺れていました。
えっと? これは……何でしょうか? さすがに異常事態ですよね? 女子高生が刀を携帯して町中を走り回るだなんてフィクションでしか見たことがありません。学園都市とか北海道のファミレスにしかそんなものはいないと思っていました。
あー、妄想したい。だけれども決心と酸素不足が私の脳を揺さぶってきてそれどころではないのです。
などなど、私もそろそろ限界かと思われていたその時、楓ちゃんは足を止めました。止めないでください。少し歩いてから止まらないと私の心拍が持ちません。私がへっぽこなことをもう少し考慮してください!
「つらら、貴女はこの前に自分の人生がつまらないって言っていたわよね」
楓ちゃんが問いかけてきました。私は息が上がっているので、コクリと頷きました。
「でも、辛い思いはしたくない。そうでしょう?」
私は、また首を縦に振りました。
息が少し落ち着いてきたので、辺りを少し見回しました。
ここは一体どこでしょうか。
まずは、人気が、ありません。
そして、色が、ありません。
世界がまだ、ない様な空間でした。
ここはどこ?
楓ちゃんは何を問いかけているの?
私に会わせたくない人はだれ?
楓ちゃんは、私の親友で……信じて、いいんだよね?




