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じゃがいものがたり

作者: 偽の妹

芋フェスを知ったのが〆切過ぎてたので、こっそりと。

私の作る世界で芋はどんなポジションになるのかな、というのをテーマに書いてみました。

今まで書いてきた中で最も短いです。

これは何という物だ? ジャガイモらしい


ここはラスティアという名前の世界。

その世界の領の一つ、ジャヤ領は農業が盛んな領だった。

この物語は、そんなジャヤ領が初めてジャガイモと出会い、販売するまでの話である。


 その日、ジャヤ領の人たちは集まって会議をしていた。

 見たこともない形の何かをゲートの側で発見したからだ。

 ゲートとは、異世界と通ずる穴みたいなもので、現在はWP、ワープポータルと呼ばれる移動機器として使われているが、時折昔みたいに突然知らないものが転がっていることがある。今回の何かもそれが原因で転がっていたのだ。

「しかし、これは一体何なのでしょうな?」

「まあ待ちましょう。困った時は領主様が持っている植物大辞典に載っているでしょうし」

 領民たちはそう話すと、領主が帰ってくるのを待った。


「ただいま戻ったぞ」

「あ、領主様。お待ちしていました」

 領主は大きな本、植物大辞典を開くと、何かによく似た物を発見する。

「ジャガイモ、というそうな。他にもポタト? とかばれいしょ? といった呼び方もあるようだぞ」

「これはジャガイモというのか。確かに少し前にあったサツマイモに似ているな」

 ジャヤ領は今回のジャガイモ同様に過去にサツマイモが落ちていたことがあった。こちらも植物大辞典で調べて育て始めたのだ。

「よし、さっそく育ててみようか」

「少し待たれよ」

 領主が領民を止める。

「領主様、何か問題があるのですか?」

「このジャガイモ、芽に毒があるみたいだぞ」

「なんだって!? それじゃあすぐに焼いちまった方が……」

「落ち着くんだ。問題なのは芽だけだからそこに注意すれば食すことは可能だ」

「だが毒がある芽ってことは育てている最中にやられてしまうのでは……」

「それも大丈夫だ。芽を食した時に問題があるのだから育てる分には大丈夫だ」

領主の説明に納得がいったのか、領民たちは安堵の表情を浮かべる。

「よし、さくっと育てちゃいましょうか」

 領民の一人がそう声をかけ、ジャガイモ育成計画が始まった。


 ジャガイモの育成は領主の指導の下で行われた。

そして、五か月が過ぎた頃。

「よし。では、掘り起こしてみよう」

 領主の言葉を合図に収穫が始まった。

「おお、こんなにたくさん採れるのか」

「これだけあれば、次回の育てる物以外に販売もできるのでは?」

 領民の喜びの声が次々と湧き上がってくる。

「本来は病害や虫の被害が多いらしいが、この地はそれらとはほぼ無縁だからほかの作物と同様にある程度注意するくらいで大丈夫だろう」

 領主は植物大辞典で調べた情報を領民に伝える。

 領民は一様に頷いた。

「早速仕分けといきましょうか!」



 アングリア領にあるジャヤ産野菜店。

 そこに初めてとなるジャガイモが陳列された。

アングリア領はラスティアの中でも最も交易が発達した領で、各地のWPが収束する地帯でもある。ジャヤ領の野菜はこのアングリア領で販売することで全領に行き渡る。

「売れるかどうか心配ですね」

「そうだな。何よりこの注意書きを読んで買いたいと思う者がいるのだろうか?」

「でも、これがないと信用に関わりますし……」

 彼らが懸念しているのは、芽は毒があるので取り除くように、という注意書きだ。

 確かにジャガイモが何かを知らない人にとっては毒がある物をわざわざ買おうとする人はあまりいないだろう。

 だが、それも杞憂に終わった。

「あら、これってジャガイモ?」

「お、知ってるんですかい?」

「知ってるも何も、私が昔住んでいたところではとてもメジャーな野菜よ」

「め、めじゃあ?」

「よく知られている、ということよ。しかし、この世界でジャガイモが見られるなんて」

「この前転がってたのをうちらで栽培してみたんでさあ。芽に毒があるから売れるか心配してんだが」

「なら、私が安全なのを証明してあげましょうか? ちょっと一手間と一工夫すれば、とっても美味しく出来上がるんですよ」

「おお、そうしてくれるとありがてえ。何個買っていくかい?」

「半分いただこうかしら。その半分を使って、美味しいジャガイモ料理を宣伝してあげる」

「出来上がったらうちらにも食べさせてくれませんか?」

「もちろん! 少し待っててくださいな」

こうして半分のジャガイモが売れた。

 そして、この人が作った料理、肉じゃがはとても美味しい料理で試食したジャヤの領民はもちろん買い物しに来た人にも大人気であっという間にジャガイモは売り切れた。

「すごいな、ジャガイモ」

「今後増えることを考えると、また利益が上がりそうですね」

 ジャヤの領民はジャガイモの可能性を感じながら帰路につくのであった。



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