第2章 第41話(第87話) ~再出発へ向けて・・・~
今回のお話しで第2章は終了です。
次回からは数回にわたり、人物紹介や時系列整理などの設定部分のまとめを掲載します。
とりあえず今回もギリギリの執筆になってしまいましたが、なんとか第2章まで書き終えることが出来てとりあえずはホッっとしています。
魔導砲の暴走(?)事故から早くも5日が経とうとしていた。
あの日、移動の足でもあるレガシィが魔導砲発射の影響によってフロントが融解したことで、俺たちは試射ポイントで一晩を過ごすことになった。
そのレガシィだが、女神リーゼが与えてくれた〝状態復元の加護〟によって、深夜0時に破損したフロントがほぼ一瞬で元の姿に修復されていった様子はなかなか衝撃的だった。
状態復元の加護の事を知識として知っていた俺やレガ子ですら、初めて目にしたその復元の様子にかなり神秘的なものを感じてしまい、しばらくの間は声が出なかったほどだった。
さらにクリスやアリシアにいたっては、二人とも魔術についての知識をある程度持っていただけに、魔術の常識の枠を遥かに超えた出来事を目の当たりにして、完全に目が点になっていた。
ただミャウだけは、「よく分からないけど、凄かったのにゃ♪」と純粋にはしゃいでいたのが面白かった。
翌日の朝・・・具体的は9時ごろだったが、コリーゼがリーゼを連れて戻ってきた。
不眠不休の貫徹作業でレガシィや俺の身体に組み込まれた進化プログロムラムの総チェックをしてきた二人の目の下には見事な隈ができており、そのチェック作業がいかに大変だったかを物語っていた。
コリーゼからの報告では、魔導砲の出力は安全性を考慮してリーゼが当初予定していた出力の90%ほどのパワーに書き換えたそうだ。
山を吹き飛ばした時の出力が当初予定の10倍・・・1000%になっていたことを思えば大幅な出力ダウンになる。
この報告に対しては、〝力こそ正義〟的なところが思想にあるレガ子がやたらと文句を言っていたが、安全性を第一とする俺としては50%に落としてもらっても構わなかったところだ。
とりあえず俺やレガシィに施されている全プログラムをチェックし、危険そうな因子は全て修正したということだったので、今後は安心してレベルアップや装備取得が出来そうだ。
その報告を受けて、その日の昼頃に再度魔導砲の試射を実行することとなった。
理由は、たとえ90%に出力が落ちたとはいえ、実際の威力を見ておかないと怖くて使用することが出来ないからだ。
今度は地形を極端に変えるほどの破壊力は生まなかったが、それでも目標地点に半径300メートルほどのクレーターと、その中心部に岩石などが溶解してできたガラス状物質などを生じさせるくらいの威力はあった。
やはり通常の攻撃に比べると一撃での破壊力がありすぎるので、使いどころはかなり限定されそうだ。
さらに翌日、俺たちは遺跡に作った拠点施設へと帰還したわけだが、ここからの仕事が大変だった。
なにせ山がひとつ丸ごと消し飛ぶような天変地異が起きたことになっているわけだ。
直接現場を見てきているのが俺たちしかいないため、ジョニーさんらへの報告だけでは済まず、騎士団本部や王国へ提出する報告書の山が俺を待ち構えていて、クリスやリーゼの助けを借りてそれら全てを片付け終えたのがつい先ほどの事だったりもする。
「もうしばらくは書類仕事はしたくありませ~~ん・・・(ばたり)」
つい今しがた書き終えたばかりの最後の提出書類を封書に入れたリーゼが、封書を握った姿勢のまま机にうつぶせるように倒れ込んだ。
なにせ俺はこの世界の文字は読めても、文章を書くことが出来ないため、書類作成のほぼすべてをリーゼにお願いしていた。
まぁ、自分で「ばたり」などと擬音を言う余裕があるようなので、まだ精神的にも体力的にも大丈夫だとは思うがこの4日間かなり頑張ってくれたのは間違いないので、あとで慰労のお酒でも差し入れしてあげようと思っている。
そのリーゼからクリスが封書を受け取ると、封書に封蝋を垂らし、彼女が持っていた王家の紋章が入ったシーリングスタンプで封印を押して、扉の所で待っていた騎士にその封書を手渡した。
「ふぅ、これで今回の騒動の後始末もとりあえず完了じゃな」
封書を手にした騎士が部屋から退出したのを確認したクリスが、両手を組んだ状態のまま頭上に上げて身体全体で伸びの動作をしながら、書類仕事が片付いたことを確認するようにそう呟いた。
「クリスも、リーゼもお疲れさま。
二人のおかげでかなり助かったよ」
そう言いながら、腰の部分にぶら下げていた携帯用イベントリから炭酸系グレープジュースの缶を取り出しクリスに渡して、そのままリーゼの所に移動し彼女がうつぶせている机の上にカシス&オレンジの缶チューハイを置いた。
頭を使って疲れている時は、甘い系統の飲み物がいいだろう。
「特にクリスにはご両親や伯父さんに嘘の報告をさせるような真似をさせてしまった。
本当にすまない」
「まっ、しかたないじゃろ・・・。
さすがに本当のことは言えんしの」
缶ジュースに口をつけながらそう答えるクリスは、俺の隣で缶チューハイを幸せそうに飲んでいるリーゼを見て苦笑いを浮かべている。
「しかし、神様のチカラとはすごいものじゃのぅ・・・まさか、地形までも操作してつじつまを合わせるとは思わなんだぞ」
「証拠隠滅・・・というか、状況の捏造についてはコリーゼ達に感謝しないといけないな」
実はコリーゼがリーゼを連れ帰ってきたあの日、魔導砲の暴走によって山を消し飛ばしってしまった事実を隠し、火山の噴火に偽装するために、シスターズの娘っ子らが総出で魔導砲の痕跡の除去や、着弾点で山があった場所に火山の火口を本当に創るなど、かなり大掛かりな地形改変を行ってくれた。
あの作業が無ければ、おそらくその後に現調査へ向かった竜騎兵の観測で、俺たちの報告が嘘であったことがバレていたことだろう。
「そう思っているのであれば、私たちにも労いの褒美が欲しいところです」
部屋に中に突然コリーゼの声が聞こえたと思うと、俺の目の前の空間が光りながら湾曲し、その中から彼女が現れた。
そして俺のすぐ前に降り立つと俺の胸に顔を摺り寄せ、上目づかいの視線でこちらを見つめてきた。
その様子を近くで見いたクリスは、ジュースの入った缶を握りしめながら「むぅぅ・・」と唸り声をあげている。
「お前・・・その視線は反則だろ・・・」
そう言葉を返しながら目の前にあるコリーゼの頭を撫でてあげる。
するとコリーゼは気持ちよさそうに目を閉じ、しばらくの間俺に頭を撫で続けられた後に「私ばかりがご褒美をいただいては、他の姉妹らに恨まれてしまいます」と言って俺から離れていった。
そしてこちらに振り向きながら「なので、姉妹らにも同じように労っていただけますか?」と提案してきた。
「えっと・・・リーゼが創った姉妹らって何人いるだっけ?」
「オリジナル様が創ったのは1号から10号までですが、その後人手不足から増員が行われ現在は25号までの姉妹らが活動しています」
う~ん・・・25人も頭を撫でるのは結構大変な作業になりそうだ。
それにこの場に25人ものコリーゼと同じ姿の女の子らが集まっているところを騎士の誰かに見られたりしたら誤魔化しがきかないような気がするぞ。
「それじゃ姉妹らへのお礼は、近いうち・・・ここを出発して旅を再開した後に、野営地で俺がみんなに夕食を振舞ってもてなすとかでいいかな?」
コリーゼは少し考えこむ仕草をした後「わかりました、私たちはキャンプとかをした事が無いので楽しみにしています」と笑みを浮かべながら返事をくれた。
「だいたいいつもオリジナル様ばかりが美味しそうな食事をしていて羨ましかったんですよ」
楽しそうに笑うコリーゼは「まだ仕事が残っているので帰ります」と言い残し、空間のゆがみの中へと戻っていた。
今のうちから、コリーゼ達をもてなすためのメニューや遊びを考えておくとしよう。
嬉しそうな笑顔を浮かべて消えていたコリーゼの姿を思い出し、そんな事を思うのだった。
「はぁ・・・これはカオル殿の妻の座席数を増やす必要があるやもしれんな・・・」
俺と同じようにコリーゼが消えた空間を見つめていたクリスが、ため息をつきながら不穏なことを言いだした。
「なんでだ?」
「本当に気が付いておらんのか?」
クリスが俺を見る視線が若干冷たいものへと変わった。
「うっ・・・まぁコリーゼには懐かれているような気がしてはいるが・・・。
でもさすがに妻候補になるような感情とは違うと思うぞ」
「そうだと良いがのう・・・」
そう言ってクリスは再度盛大にため息をつく。
そんな俺たちの様子をながめていたリーゼは、缶チューハイを飲みながら苦笑いを浮かべていた。
翌日、この遺跡の周辺を開発するためにロイドを出発していた工兵部隊が到着した。
工兵部隊の人たちは遺跡の上に立派な建物が出来上がっていたことに驚いていたが、そのことが逆に彼らの職人魂に火をつけたらしく、「あの建物に見劣りしない施設を建てるぞ!」と各々が声を上げて士気を高め合っていた。
今回到着した工兵部隊の総数は約200人。
そのうちの半数が大工で、残りが農地開拓や道路整備、治水工事の専門家だそうだ。
人間の数が一気に増えたため、まずは人員らの仮宿舎を遺跡の西側地区に建築することになり、到着して休む間もなくすぐに部隊総出で作業に取り掛かり始めていた。
そして俺とクリス、工兵部隊の指揮官と副官、第6騎士団隊長のジョニーさん、竜騎兵を代表してハンスさんが拠点施設に集まり、この遺跡の場所に作る町の青写真を相談することとなった。
「おそらくじゃが、竜騎兵は最低でも半数がこの町に駐留することになると思う。
なので騎士団の建物とは別に竜騎兵用の宿舎も立てた方が良いと思うのじゃ」
さっそくクリスが意見を出す。
「そうなのか?
もしかしてマロウさんから竜騎兵の扱いについて何か聞いているのか?」
「先日の捕獲戦で鹵獲したワイバーンの数が一気に増えてしまったじゃろ。
さすがにロイドだとな、13匹ものワイバーンを置けるような厩舎を建てる土地が無いんじゃよ」
「ロイドは建築に向かない斜面が多いですからね」
クリスの説明に工兵部隊の指揮官が頷き返す。
たしかこの人はアヴァロさんで、ハーフエルフだそうだ。
ちなみに副官は奥さんで、彼女もハーフエルフで名前はキスニルさんというらしい。
二人ともエルフの祖先にあたる天使族ゆかりの遺跡が解放されたことを知って、今回の任務に自ら立候補したそうだ。
「となると・・・全てのワイバーンをこの地で面倒を見る可能性もあるのではないでしょうか?」
「その可能性は高いな。
こちら本拠地になって、ロイドの方が駐屯地になるやもしれん」
キスニルさんの疑問にクリスがすかさず答える。
「となると・・・我々騎士団の駐屯施設とは別に、やや離れた場所に竜騎兵用の施設を作ってみてはいかがでしょうか?」
それまで静かに意見を聞いていたジョニーさんが提案を出し、それに対しアヴァロさんが聞き返す。
「場所を離す理由をお聞きしても?」
「万が一敵性勢力に襲撃された場合、戦力の駐屯場所を分散しておけば全滅を防げると考えたからです。
特にこの場所が竜騎兵の本拠地になった場合、虎の子の竜騎兵を潰すためにココが真っ先に狙われる可能性もあるでしょうし」
「なるほど・・・竜騎兵用の施設について、実際に使うことになるハンスさんの要望などはありますか?」
アヴァロさんから突然話を振られたハンスさんは少し考えたのち、自身の要望を口にした。
「ワイバーンの厩舎前に、運動させるための広いグランドが欲しいですね。
あと兵舎と厩舎は極力一体型にして、緊急時に少しでも早く出撃できるような工夫が欲しいです」
「わかりました。
竜騎兵用の施設はわが国では初めての経験になるため、施設の図面については少し考える時間をください。
騎士団の駐屯施設については何か要望はありますか?」
今度はジョニーさんが少し考えこむ仕草を見せる。
「これはマロウ騎士団長から言われていたことですが、いずれ魔法師部隊も1部隊ほど駐屯させるそうです。
なのでその分のゆとりをもって兵舎を作っていただけると助かります」
「了解いたしました。
あとは外縁部に作る町の区画分けとかを決めていきましょう」
遺跡を中心とした新しい町づくりの話し合いは深夜まで続き、その日のうちにほぼすべての概要を決めることが出来た。
町の一番奥に建つのが、遺跡を隠すように作った魔導研究施設となるこの建物。
そしてその前に大きな広場を設け、広場の東側に騎士団兵舎、西側に竜騎兵兵舎が向かい合うように建つこととなった。
さらにそれぞれの兵舎の手前に王国の様々な関連施設をつくり、行政区をまとめるようにして建てて、重要施設の警護や監視をしやすくすることにした。
広場から直線で伸びるメインストリートの左右に商用地区を設定し、さらにそれぞれの商用地区の横奥に住宅地区を設定することになった。
そして住宅地区の横・・・つまり町の左右に田畑を開墾する案がこれから作る町の青写真としてまとまった。
ちなみに田畑の一部は実験用として使われることとなり、遺跡内で見つかった新種の作物(絶滅してしまった大昔の作物)を研究のために育てることになっている。
まぁ、実験用農地にまで開発が進むのにはまだまだ時間が必要だ。
今回の旅の本来の目的を再開し、ちびっ子たちを生まれ育った村に送り届け、その後王都に行ってからこの場所へと戻ってきた辺りである程度基礎が出来上がっている感じではないだろうか。
それよりも旅の再開が近づいているという事は、ミャウやアリシア、そしてクリスのご両親に会って、彼女たちを嫁としてもらうための交渉をしないとならない日が近づいていつという事。
あぁ・・・年齢(30歳)イコール彼女いない歴の俺には荷が重いミッションだよ。
今から考えただけでも胃が痛いよ・・・。
******************************************
今回の獲得ポイント(レガシィの経験値基準)
●移動走行距離ポイント:83ポイント
(異世界での走行は1Kmに付き1ポイントが自動的に付与されます)
●撃破ポイント(魔導砲2回目の試射での犠牲生物)
〇ガレドラゴン:1152ポイント(48ポイント×24匹)
〇ガレドラゴンの卵:528ポイント(12ポイント×44個)
〇岩熊:175ポイント(25ポイント×7匹)
〇鬼魔蜘蛛:160ポイント(20ポイント×8匹)
〇火炎蜘蛛:126ポイント(18ポイント×7匹)
〇竜蛇:418ポイント(38ポイント×11匹)
〇熊兎:357ポイント(17ポイント×21匹)
〇ロックゴーレム:1686ポイント(42ポイント×4匹)
〇人食い大樹:431ポイント(31ポイント×14匹)
(合計:5033ポイント)
●消費ポイント(レガシィ)
〇ドローン生成:-4ポイント(-1ポイント×4機)
現時点での総ポイント数:10万2734ポイント
(10万ポイント到達でレベル24→25へ昇格 ※レベル18から未実行)
※レガ子の獲得ポイント:レガシィの経験値基準から+11ポイント
(武器クリエイトによる消費分など)
(10万ポイント到達でレベル24→25へ昇格 ※レベル18から未実行)
※主人公の獲得ポイント:レガシィの経験値基準から-123ポイント
(装備クリエイトによる消費分など)
(10万ポイント到達でレベル24→25へ昇格 ※レベル18から未実行)
レベルアップに必要な獲得経験値の数値。
レベル25 100000ポイント
レベル26 110000ポイント
レベル27 122000ポイント
レベル28 134000ポイント
レベル29 147000ポイント
レベル30 160000ポイント
レガ子「第2章の最後だというのに、メインヒロインのレガ子の出番がないとはどういうことなのっ!」
ミャウ、アリシア「ボク(私)も出番が無かったの・・・」
レガ子「しかも量産型小女神どもがヒロインの枠を狙っている気配を感じるのっ!」
薫「こらこらこら・・・、コリーゼたちの事を悪く言わない」
クリス「じゃがハーレム枠は確実に拡大しそうだがな」
久美「さらに25人もの女の子たちをハーレムに加えようだなんて・・・お兄ちゃんの、変態! ロリコン! 性犯罪者っ!!」
薫「わぁぁぁ、なんで久美の奴がココにいるんだよっ」
コリーゼ「私が連れてきましたが・・・何か?」
薫「で? なんでリーゼは俺の後ろに隠れているんだ?」
リーゼ「ガクガク、ブルブル・・・」
久美「お兄ちゃん、どいて! でないと、そいつ(女神)殺せない!!」
薫「そういう懐かしいネタはやめなさいっ!(汗)」
リーゼ「ガクガク、ブルブル・・・」