第2章 第37話(第83話) ~新たなイベントリづくりとレベルアップ・その2~
今回のお話しは、サブタイトル的には前回からの続きとなります。
そして、久しぶりのレベルアップネタですね。
あまりにも久しぶりすぎて、作者の自分も前回の時の取得スキルや持ち点がどうなっていたかをすっかりと忘れてしまっていました(汗。
「とりあえずは溜まっているポイントを全部使って、限界までレベルアップ処理をしてしまおう。
スキルポイントの割り振りについて考えるのはその後だ」
「らじゃーなのっ♪」
俺の提案に元気よく返事を返してきたレガ子は、車内に勢いよく飛び込むと、ナビ代わりに設置してあるタブレットPCの画面を操作してレベルアップの操作画面を呼び出すと、その勢いのまま実行ボタンを押した。
すると、直後に俺やレガ子の身体、そしてレガシィの車体が薄っすらと光りだし、自分の身体の中にある異物が大きくなるような、奇妙な感覚に襲われた。
このレベルアップシステムの生みの親で、俺の身体にそれを組み込んでくれた張本人であるリーゼによれば、この感覚はレベルアップに合わせて俺の体内にある魔力回路が補強され、マナを魔力に変換しする役割を担う魔法因子が成長したことの証らしい。
「ほんと・・・この瞬間だけは、人体改造されて人間から遠ざかったことを実感せざる得ないよ・・・」
人間を辞めさせられた元凶のリーゼの姿を睨みながら、少しだけ彼女に対する恨み節を思い浮かべていると、俺の視線に気が付いたリーゼがニコニコと笑いながら手を振ってきた。
うん。
ちょっとだけイラッとしたから、後でリーゼにはチョップでも入れることにしよう。
やがて体を包んでいた光が収まり、レベルアップ作業が終了したのを確認すると、俺はズボンのポケットからスマホを取り出し、自分のレベル状態と、獲得したスキルポイント、取得可能なスキルの確認画面を開いた。
レガシィの車内に目を向けると、レガ子の奴もタブレットPCの画面を操作して、同じように自身の確認画面を見ているようだ。
スマホの画面に表示されていた、現在のレベルは17。
最後にレベルアップ操作をしたのは、ミロス平原で行ったレベル13へのアップグレードだったはずなので、一気に4段階もレベルが上がったことになる。
まぁ、ミロス平原を出発してからイロイロ退治したからね・・・。
特にガレドラゴンの大量駆除がポイントの貯金にかなり貢献していたようだ。
入手したスキル獲得用のポイントは1レベルあたり3ポイントで、それが4レベル分なので12ポイント。
それに未使用のまま保管していて1ポイントを加えた13ポイントが、俺がスキル獲得に使用できる持ち点だ。
所有ポイント表示の下にある【獲得可能スキル一覧】のボタンをタップし、現時点のレベルで取得できるスキルをスマホに表示させる。
【危険予知・レベル2:2ポイント】
【視野強化・レベル3:3ポイント】
【反応速度強化・レベル3:3ポイント】
【肉体強化・レベル3:3ポイント】
【全身防御フィールド・レベル2:3ポイント】
【アイテム複製・レベル2:3ポイント】
【アイテム強化・レベル2:3ポイント】
【アイテム合成:3ポイント】
【アイテム創造:3ポイント】
【魔力強化・レベル1:4ポイント】
とりあえずアドバイスどおりに【アイテム複製・レベル2】【アイテム強化・レベル2】【アイテム合成】【アイテム創造】の4つのスキルを選択し、12ポイントを支払う。
残った1ポイントは使い道が無いので、また貯金だな。
リーゼにアドバイスしてもらったイベントリ製作に必要なスキルを取ると、自分の意思で選べるスキルポイントが残らないのが悲しいところ。
個人的には、今後の戦闘での安全マージンを稼ぐためにも、肉体強化や反応速度強化のレベルを上げておきたかったのだが、今回は諦めるしかないだろう。
次回のレベルアップで自分の戦闘能力が上がるよりも前に、デルバートのような強敵と出会わないことを祈ることにしよう。
自分のスキル獲得操作がサクッと終わってしまったため、何やら画面を見て悩んでいるレガ子の様子を見るために、レガシィの運転席へと入ることにした。
運転席のシートに腰を落とし、レガ子が眺めているタブレットPCの画面を覗いてみる。
【スタンフレア:3ポイント】
【ファイヤーウォール:3ポイント】
【エアカッター:3ポイント】
【ホーリィアロー:3ポイント】
【ウォーターカッター:3ポイント】
【アイス・シールド:3ポイント】
【アースウォール:3ポイント】
【ロック・シールド:3ポイント】
【アシッドミスト:4ポイント】
【エアリアルランサー:4ポイント】
【ゴーレムクリエイト:5ポイント】
【グランド・ドラゴン:5ポイント】
【グラビティ:5ポイント】
【ハイプレッシャー:5ポイント】
【トールハンマー:5ポイント】
【サンダー・シャワー:5ポイント】
【エクスプロージョン:8ポイント】
【フリージング:8ポイント】
「あ、相変わらずすごいリストだな・・・」
攻撃系魔法しか表示されていないレガ子のスキル一覧を見て唖然となりながら、素直な感想を漏らしてしまう。
「こんなにいっぱい攻撃手段を提示されても選ぶのが大変だし、使うのも面倒なのっ」
ちなみにレガ子が保有しているスキルポイントは、レベルアップで得た16ポイントに貯金の5ポイントを加えた21ポイントだ。
どんな選び方をしても、攻撃魔法を4~5個は獲得できそうだ。
う・・・羨ましくなんかないんだからねっ!
「レガ子はどんな戦闘スタイルが得意・・・というか好みなんだ?
自分のスタイルに合ったモノを選べばいいんじゃないかと思うんだが」
「敵さんを派手に吹っ飛ばしたり、切り刻んだり、焼いたりするのが大好きなのっ♪」
「そ・・・そうなのか・・・」
可愛い外見とは裏腹に、その口から飛び出してきた過激な意見に自然と冷や汗が出でしまう。
俺の愛車に憑りついた精霊は、どうしてこんなにも攻撃的なんだろうか・・・。
「敵が集団で攻めてきた時にまとめて数を減らすことが出来るから、【サンダー・シャワー】と【エクスプロージョン】の範囲攻撃系は取ろうと思っているのっ」
また派手なものを・・・。
しかし、となると残りは8ポイントか・・・。
「先日のオーク戦みたく接近戦に持ち込まれた時のために、防御のシールド系は持っていた方がいいんじゃないか?」
「先日のって・・・あの頭のいい豚野郎の事なのねっ」
そして俺の愛車に憑りついた精霊は、あいかわらず口が悪い・・・。
出会ったばかりの頃の、お嬢様風を装っていた、丁寧な口調のレガ子が懐かしいよ。
「たしかに接近されると戦い辛いのっ。
豚とは体格差がありすぎるから、レガ子近接戦闘は苦手なのっ」
「アイス・シールドとかを展開して攻撃を受け止めても、レガ子のサイズだとシールドごと吹き飛ばされるだけか」
「でもソレを利用して豚との距離を取り直すことはできるような気がするのっ」
「というか・・・敵の前提がオークに固定されてるのはどうかと思うのだが」
あの時の戦いでオークに押し込まれたのがそんなにも悔しかったのか?
俺のアドバイス(?)で何かを思いついたのか、ブツブツと小声で何を呟きながら考え込むレガ子。
やがて何らかの結論に達したらしく、勢いよく顔をあげると、その勢いのままタブレットPCを操作して【アイス・シールド】と【ゴーレムクリエイト】のスキルを選択した。
すでに選んでいた【サンダー・シャワー】と【エクスプロージョン】のスキルと合わせて、これで21ポイントすべてを使ったことになる。
「自分で接近戦ができないなら、できる操り人形に代わってもらえばいいと思ったのっ」
「それでゴーレムクリエイトなのか?」
「これで撲殺天使を創るのっ♪」
「撲殺って・・・」
レガ子の発言を聞いて、岩でできた巨大なゴーレムが〝撲殺バット・エス〇リ〇ルグ(ニッケル合金製)〟を振り上げている姿を思いうかべてしまったぞ。
「ふっふっふっ・・・今度あの豚野郎に出会ったら、ミンチになるまで防御フィールドごと叩き潰してあげるのっ」
「いやいやいや、あのオークはすでに死んだから。
ちび竜の奴が頭を吹き飛ばして倒しただろうが」
やはりレガ子にとっては、後退しながら防御に徹するしかなかったあの時の戦いがかなり屈辱だったようだ。
こうなってはレガ子の鬱憤は、同じような相手に快勝するまで晴れることはないだろう。
そう遠くはない未来、レガ子の八つ当たりの標的となるであろう不幸なオークの末路を思うと、相手がモンスターとはいえ不憫に感じるのだった。
「俺とレガ子の取得スキルは決まったが、レガシィの分はどうするんだ?」
まぁ、聞くだけ無駄なことは分かっているんだけどね。
それでも、一縷の望みみたいな可能性に縋りたくなる時ってあるよね。
「そんなことは聞かれるまでもないのっ。
魔導砲一択しかありえないのっ♪」
「ですよね~~」
一切の迷いもなく満面の笑顔で〝魔導砲〟と言ってきたレガ子を見て、俺は引きつった笑顔を浮かべながら大きなため息をついた。
「おぃっ、リーゼ。
あの装備って、本当に安全なんだろうな?」
先ほどから俺たちの方をニコニコしながら見ているだけで、何もサジェスチョンをしてこないリーゼを捕まえて、魔導砲とかいう装備の内容を問いただしてみる。
「もちろん、薫さん達に危険が及ぶことは無いですよぉ~」
「そうじゃなくて、威力とか破壊力的な意味でだよっ!」
「何を言っているんですか?
安全な威力じゃ、武器にならないじゃないですか~」
イラッ。
あぁ、今すぐにリーゼのこめかみを鷲掴みにして締め上げてぇ・・・。
「そういう意味じゃねぇよ!
威力が高すぎて、使った俺たちがお尋ね者になるような危険性は無いかって聞いているんだっ」
極端な話し、アレの所為でこの大陸が消し飛んだりしたらシャレにならない。
「そんなに警戒しなくても大丈夫ですよぉ~。
薫さんの世界の核に比べれば、可愛い威力しかありませんからぁ~」
そんな俺の心配を、ケタケタと笑い飛ばすリーゼ。
第一、比較対象が俺の世界の核兵器ってあたりがすでに心配の種にしかなっていないのだが。
「本当だな?
とりあえずリーゼを信用するからなっ」
リーゼにそう念押しをしてから、レガ子が表示させて待っていたタブレットPCの画面を覗き込む。
そこには、今回獲得した16ポイントに貯金の18ポイントを加えて、34ポイントに達したスキルポイントが表示されていた。
そして問題の〝魔導砲〟の獲得に必要なポイント数は30ポイント・・・。
余裕で足りちゃっているんだよね・・・。
その数字をを見て、ご機嫌な様子のレガ子。
完全に〝魔導砲〟を選ぶ気満々なのが見ていてわかるほどだ。
「薫さま、残りの4ポイントはどうします?」
「あははは・・・やっぱ30ポイントはソレに使うのね・・・」
レガ子にポイント残高の使い道を聞かれ、改めてタブレットPCに表示されている取得可能スキル(装備)の一覧に目を向ける。
【車体変形(車高リフトアップ・レベル2):3ポイント】
【車体変形(ビッグタイヤ化・レベル2):3ポイント】
【車体変形(オーバーフェンダー化・レベル2):3ポイント】
【追加装備:2ポイント】
【追加装備:3ポイント】
【車体強化(サスペンション強化・レベル2):4ポイント】
【車体強化(ガラス硬質化・レベル1):4ポイント】
【車体強化(アンダーガード硬質化・レベル1):4ポイント】
【車体強化(ボディ硬質化・レベル2):5ポイント】
【タイヤ強化(防弾・防刃化・レベル2):5ポイント】
【防衛補助(ダミー射出):2ポイント】
【防衛補助(射出型ワイヤーアンカー):3ポイント】
【防衛補助(魔力ジャマー):4ポイント】
【武装補助(射程延長):8ポイント】
【武装補助(索敵強化):8ポイント】
【武器艤装(電磁ネット・前方射出型):3ポイント】
【武器艤装(ワイヤーネット・前方射出型):3ポイント】
【武器艤装(高電圧放出):5ポイント】
【武器艤装(高出力レーザー):10ポイント】
【武器艤装(魔導砲):30ポイント】
先ほどのリーゼの発言を疑うわけじゃないが、万が一に備えて車内の安全性を確保しておきたい気持ちになっていた俺は、画面に表示されていたリストの中から【車体強化(ガラス硬質化・レベル1)】を選んだ。
続いてレガ子が【武器艤装(魔導砲)】を選び、実行ボタンを押す。
するとレガシィの車体全体が眩しいくらいに発光しなが細かく振動すると、その現象はものの10秒くらいで治まった。
「特に実行前と変化してるところがあるようには思えないんだが・・・」
装備実行の変化を終えた後のレガシィの周囲をぐるりと回って車体の隅々までチェックした俺は、拍子抜けした気分になりながらそんな事を呟いていた。
なにせ装備したのが〝魔導砲〟とかいう名称の物騒な感じのモノだっただけに、レガシィのどこかに某宇宙戦艦の艦首に付いているようなモノが生えているんじゃないかと疑っていたからだ。
まぁ、ボディ強化は外見的な変化が無くても納得できるんだが・・・。
そんな事を思っていると、レガシィのボンネット先端部にある〝フロントグリル〟というラジエーターへの空気取り入れ口が目に入った。
「まさかねぇ・・・」
なんとなく気になった俺は、フロントグリルに近づき、その中を覗き込んだ。
フロントグリルの奥にはいつもどおりラジエータのコアが見えるだけで、特に変わったところは感じない。
「どこがどうなって、どんなものが飛び出してくるかなんて、後で試射してみればわかる事なのっ」
不安気な俺とは対照的に、機嫌が最高潮状態のレガ子は、自分の本体の変化などまったく気にしていない様子だ。
後日、この〝魔導砲〟の試射でとんでもない事態が発覚し、リーゼを信じたことを思いっきり後悔することになるのだが、今の俺はそんな事を知る由もなかった。
******************************************
レベルアップに必要な獲得経験値の数値ですが、実は下記のようになっています。
(異世界での走行1Kmに付き1ポイントが自動的に付与されます)
レベル17 32000ポイント
レベル18 40000ポイント
レベル19 48000ポイント
レベル20 56000ポイント
レベル21 65000ポイント
レベル22 74000ポイント
レベル23 81000ポイント
レベル24 90000ポイント
--------------------------------
各自の現在レベルや獲得スキル一覧
--------------------------------
■如月 薫 (種族:自動車部品、職業:ドライバー)
レベル17(第83話時点)
○反応速度強化・レベル2
○視野強化・レベル2
○危険予知・レベル1
○肉体強化・レベル2
○全身防御フィールド・レベル1
○パーツ製造
○アイテム複製・レベル2
○アイテム強化・レベル2
○アイテム分解
○アイテム合成
○アイテム創造
(貯金1ポイント)
■レガ子 (種族:八百万の精霊、職業:痛い子)
レベル17(第83話時点)
○武装クリエイト能力
○プラズマアロー
○ファイヤーボール
○防御シールド発現
○アイスアロー
○アイス・シールド
○ゴーレムクリエイト
○サンダー・シャワー
○エクスプロージョン
○疑似人間化
(貯金0ポイント)
■レガシィ
レベル17(第83話時点)
○車体変形・車高リフトアップ・レベル1
○車体変形・ビッグタイヤ化・レベル1
○車体強化・ボディ硬質化・レベル1
○車体強化・ガラス硬質化・レベル1
○タイヤ強化・防弾・防刃化・レベル1
○オーバーフェンダー化・レベル1
○サスペンション強化・レベル1
○追加装備・ラリー用ボンネットライト
○追加装備・ダブルチューブバンパーガード・フロント
○レガ子用シート
○武器艤装・垂直発射式噴進弾
○オプションユニット・偵察用無人ドローン
○武装補助(電磁ネット・噴進弾用)
○武装補助(ワイヤーネット・噴進弾用)
○武器艤装・魔導砲
(貯金0ポイント)
レガ子「魔導砲、キタぁーーっ!」
薫「俺・・・これを撃ったらいけないような悪寒がして、震えが止まらないんだが・・・」
リーゼ「そんなに怖い兵装じゃないので、心配しないでくださいよ~~」
コリーゼ「オリジナル様がその装備の威力や範囲の設定を間違えていないといいのですが・・・」
薫「マテマテマテ、なんだその不吉なフラグはっ」
コリーゼ「私たちが霊脈の掃除に使っているこの清掃装置ですが、コレを作ったオリジナル様が〝強〟と〝弱〟を逆に設定していて、最初に使った時に死ぬような目にあいましたので」
薫「りぃ~~ぜぇ~~~」
リーゼ「やだなぁ~~たいじょうぶですよぉ~~・・・・・・・たぶん」
コリーゼ「オリジナル様はプログラムを組むのは早いのですが、気分屋特有の精度の波があるので、記述ミスが多い時はやたらと多いんです」
薫「このレベルアップシステムのプログラムや、レガシィの装備プログラムは、ちゃんと見直ししたんだろうな?」
レガ子「あっ、リーゼさまが猛ダッシュで逃げていくのっ!」
薫「ダメだこりゃ・・・」