第2章 第36話(第82話) ~新たなイベントリづくりとレベルアップ・その1~
前の2話分は多少余裕のペースで書き上げていたのですが、今回はまた執筆ペースがギリギリになってしまいました。
ちなみにこの前書きを書いているのが、投稿予定時間の約1時間前だったりもします(汗)。
レガ子のお話しは第2章がもうすぐ終了します。
これまでに執筆した文字数も、この第2章 第36話で50万文字を超えました。
このお話を書き始めた時には、まさかこんなにも長い作品になるとは思っていませんでした。
頭なので描いていた予想だと、50万文字も書けば半分以上は物語が進行していたはずなんですけどね・・・。
ええ・・・実はまだ構想全体の1/4ほどしか物語が進んでいなかったりもしています・・(滝汗)。
どうしてこうなったのやら・・・(苦笑)。
子供たちに支給した防具のテストを終えたその日の夜、俺はレガ子とリーゼを伴ってレガシィの前に集まっていた。
ちなみにその子供たちは、昼間の防具テストではしゃぎすぎて疲れていたようで、夕飯後に俺のベッドを占拠してすぐ寝てしまった。
各自に専用の個室を与えているというのに、なんで俺の部屋で寝るのかなぁ・・・。
ちび竜の奴はミャウの抱き枕になってしまい、がっちりとホールドされていたので、そのまま部屋に置いてきている。
俺たちが部屋を出る時に「助けて」と涙目で訴えていたようだが、ちび竜を抱えているミャウが寝ていた位置が3人のど真ん中だったため、救出には子供たちを起こしてしまうリスクがあったため「あきらめろ」と視線で伝えそのまま放置してきた。
「リーゼは以前、俺にもイベントリが作れるって言っていたよな?」
「私が薫さんに転移装置の重要部分を秘匿するようにお願いした時ですよね~。
たしかに言いましたよ~」
「俺の分だけでなく、子供たちに持たせる携帯用の小型のものも作りたいんだが、かまわないだろうか?」
「う~~ん・・・あまり量産されると困りますが、限られた人にだけ・・・あの子たちに渡す分くらいならかまいませんよ~」
ここまでは、ある程度予想できていた反応。
問題はこの先の提案を、彼女が許可してくれるかだ。
「あともう一人だけ、小型イベントリを渡したい相手がいるんだが・・・」
「ふぇっ? 誰ですか?」
「元の世界に残してきた、俺の家族だ」
「あ、あぁ・・・」
俺はリーゼに拉致されてこの世界に無理やり連れてこられたようなものだ。
なので、彼女にしてみればやはり俺の家族に対して後ろめたさがるようで、返事の歯切れが途端に悪くなった。
「リーゼから教えてもらったイベントリの製法を俺なりに検証してみた。
俺の推測が間違いないなら、この世界の物質とあちらの世界の物質は、イベントリを経由すればやり取りができるんじゃないのか?」
「そうですね・・・いったん世界樹の中でマナになって、取り出し時に再構築するだけの仕組みなので、この世界樹に繋がっている世界であれば、どんなに世界同士が離れていても受け渡しは可能です」
彼女の口調からいつもの間延びした感じが消え、急に真剣な表情へと切り替わった。
やはり異世界同士でモノのやり取りをイベントリなどで行うことは禁忌だったりするのだろうか?
「ですが、本来交流が無い世界同士が、アーティファクトの力だけを頼って交易を行うことは、互いの世界にとってあまり良い結果を生み出しません」
だよなぁ・・・
その世界の質量保存の法則とかもあるだろうし、勝手にモノを行き来させるのは問題なんだろうなぁ。
「が・・・」
「が?」
「薫さんのご家族くらいであれば、問題ないでしょ~う」
「えっ!?
反対とかしないの?」
「反対してほしいんですかぁ~」
「いやいやいや。
世界間の質量が変わっちゃうとか、そういう世界の維持に関する問題とかは無いわけ?」
あまりにも予想の斜め上をいく軽さでOKが出てしまったため、喜ぶどころか逆に心配になってしまう。
「薫さんが個人でやり取りする質量なんて、〝この世界の総量〟から見たら誤差の範囲ですよ。
それくらいならばこの世界とあちらの世界へのマナの供給量で自然調整されてしまいますよ~」
「そ、そうなのか?」
「薫さんが一度に銀河系規模の質量を移動させたりしたら、そりゃつじつま合わせが大変なことになりますけど~」
「それはいくら何でも無理だから・・・」
「あの~、もしかして薫さん・・・〝この世界〟と〝あちらの世界〟って人間が住んでいる世界だけで質量の総量を考えていませんか?」
「へっ?」
「世界樹の葉っぱ1枚が創造している〝世界〟というのは、あちらの世界で言えば宇宙そのものなんですよ~」
「あ・・・」
「それに、そもそもこの世界は~あちらの世界と大昔に交易していて、物品の受け渡しをすでにしていたのですから、それこそ無駄な心配というものですよ~」
「ああっ!
そういえばそうだった」
大昔にどれほどの物資が移動していたのかは知らないが、それこそ大きな貿易船に荷物を満載して何度も往復していたはずだ。
それに比べれば、俺がイベントリ経由で家族とやり取りできる量などたかが知れている。
「私が〝あまり良い結果を生み出さない〟と言ったのは、文化的な知識交流が無いままに技術水準の違う〝物体〟だけが世界間を移動するのが危険だというだけです。
時折、自然現象として世界間を〝物体〟だけが移動してしまう事があるんですけど、移動先の文明レベルがあまりにも低すぎると、その移動した物体が悲劇の原因になることも多いんですよ」
「たしかに・・・その悲劇はリーゼが大昔のこの世界で実証済みだったっけな」
「うぐぅ・・・やぶ蛇になってしまいましたぁ~」
世界の創造神が使う道具なんていう、まさにオーパーツ中のオーパーツをこの世界に出現させてしまい、それをこの世界の人間が手にして使おうとした結果が、伝説の大災害につながってしまったわけだしな。
「じゃぁ、俺の家族にイベントリを持たせるのは、神様であるリーゼの了承を得られたと思っていいんだよな?」
「使用者の限定を、薫さんのご家族だけに設定していただければ、かまわないと思います」
使用者限定っていうと、アレだよな・・・。
レガ子が紅雨や魔銃を作った時にやった、俺の血をクリエイト時に混ぜて登録した・・・。
「使用者を限定するのには、対象者の血が必要なんだよな?
俺は親父や母さん、久美の血液なんて持っていないぞ」
どうしよう・・・。
久美の奴に事情を書いたメールを送って、親父や母さんを含めた3人の血液サンプルでも用意してもらい、それをリーゼにでも取りに行ってもらうか?
その場合、問題はメールの文面を久美の奴が信じてくれるかだが・・・。
「ふっふっふっ、話は聞かせてもらいました」
俺やリーゼが親父たちの血液サンプルの入手方法で悩んでいると、俺の真後ろから突然声が聞こえ、俺の影の中から迫り出してきたソレが抱きついてきた。
「うわぁっ・・・って、コリーゼか!?」
「はい薫様、4日ぶりくらいでしょうか」
「あっ、2号ちゃんだぁ~~♪」
「オリジナル様居たのですか?
存在が薄すぎて気が付きませんでした」
コリーゼが冷ややかな視線を飛ばしてリーゼをいぢる。
そしていぢられたリーゼの方は、ものの見事に涙目になっていぢけていた。
「うぅぅ、今の無視はワザとだよね?
本当は私がいるのも知っていたよね?」
自分が創り出した創造物に泣かされる創造神って、どうんなんだろうか。
「だいたい私には、コリーゼという立派な名前があるのですから、2号などと下品な呼び方をしないでほしいのです」
もしかしてコリーゼがリーゼを無視した原因て、呼ばれ方が気に入らなかったからなのか?
そんなことを思いながら、後ろから腰に抱きついてきたコリーゼの頭に手を伸ばして撫でてやる。
そんな俺の行為をコリーゼは嫌がる様子もなく、目を細めて受け入れていた。
「はぁ・・・薫さまは小さい女の子を手なずけるのが、この世界に来てからやたらと上手になったのっ」
そんな俺の姿を見て、レガ子が実に失礼な感想を漏らした。
イロイロと反論したい点はあるが、とりあえずレガ子の発言は無視することを決めた。
「で、コリーゼはどうしてココに?」
この場に現れた理由を問うと、彼女は抱きついていた俺の腰から離れて前へと回り込み、微笑みながら「薫様が困っている波動を感じましたので」と言葉を返してきた。
もしかしたら俺、コリーゼにずっと監視されているのか?
「薫様のご家族の血液サンプルは、私が取ってきますね」
「えっ?
どうやって?」
いきなり12~13歳くらいの見知らぬ少女が訊ねてきて、「皆さんの血をください」とか言われたら親父たちパニックになるぞ。
「平和ボケした世界の人間ごときが相手なら、知られずに血を抜き取る方法などいくらでもありますが?」
うん・・・前から感じていたけど、コリーゼちゃんは毒舌系キャラで間違いないよな。
ダメな母親を持つと、子供がしっかりしてキツイ性格になるのと同じなのだろうか?
今もなおいぢけモード続行中の親を横目でいながら、そんなことを考えてしまった。
「極力、穏便な方法でお願いしたいんだけど・・・」
「では、薫様のご実家のゴミから、母君と妹君の血の付いた生理用品でも回収して・・・」
「うわぁぁぁ!
普通の方法でお願いします!」
とんでもない方法を提案してきたコリーゼの口を手で押さえて、彼女の発言を慌てて制止する。
もしもそんなモノをサンプルにしてイベントリを作ったりしたら、バレた時に俺が義妹に殺されるよっ。
「冗談ですよ。
皆さんに少しだけ寝ていただいて、その間に血液を少しもらってくるだけです」
コリーゼは、自分の口を覆っていた俺の手を甘噛みし、それに反応して俺が手をどかすと、少しだけ笑ってそう言った。
しかし、この声はあまり感情の起伏を感じさせない話し方のため、冗談に聞こえないのが怖いところだ。
やがてコリーゼは、「ではちょっと行ってきます」と言い残し、俺の影の中へと消えていった。
「なぁ・・・リーゼ、あの娘の出入りの仕方って、神様のやり方では一般的なのか?」
「いやぁ・・・
さすがにアレはユニークすぎますよぉ~~」
コリーゼが消えた自分の影を見つめながら、そうリーゼに問いかけると、彼女も困った表情をうかべて苦笑いを浮かべていた。
でもリーゼも以前、テレビ画面の中から出入りしていたよね?
あれはユニークじゃないのか?
コリーゼはリーゼを基にして生み出された存在だから、やはり行動が似てくるのだろうか?
まぁ、そんな感想をコリーゼに言ったら、「オリジナル様と一緒にされるなど心外です」とか言って、全力で否定してきそうだけどね・・・。
コリーゼが消えてから約30分後、俺は自分が作ろうとしている小型イベントリの仕様をリーゼに説明し終え、彼女からのアドバイスを待っていた。
俺が作る予定のモノは、中型のウエストバッグをベースにし、中身の取り出しや整理の制御端末に液晶画面付きのMP3プレイヤーを組み合すスタイルのものだ。
レガシィのイベントリに付与されているような、収納物の状態復元はもちろん付けない。
あくまでも、収納と取り出しに特化させたものだ。
素材となるウエストバッグやMP3プレイヤーは、レガシィに積んであったものを〝アイテム複製〟のスキルで必要数だけ作るつもりだ。
「う~ん・・・この仕様だと、薫さんはまずレベルアップ手続きをして、〝アイテム複製〟と〝アイテム強化〟のスキルをレベル2以上にあげてくださ~い」
「今のレベルのままだと難しいのか?」
「MP3プレイヤーのような高度な機器を複製するには、〝アイテム複製〟のレベルが1だとちょっと厳しいんですよ~。
実際、先日の戦いの準備でトランシーバーを複製した時、かなり苦労したのを忘れたのですか?」
そう言われ、あの時戦闘メンバー全員分の小型小電力トランシーバーを用意するために、足りない2セット分を〝アイテム複製〟で作ったのだが、複製中に何度か失敗しそうになり、複製にかなりの時間が掛かったのを思い出した。
「ちなみに高性能なCPUを内蔵したタブレットPCやスマホを複製するなら、複製スキルはレベル3に上げないと厳しいですよ~」
「そうだったのか・・・
どうりでトランシーバーの複製中に気分が悪くなったわけだ」
「あと、MP3プレイヤーのシステムを作り替えて、さらに制御装置として組み込むのですから、〝アイテム合成〟と〝アイテム創造〟のスキルも取ってくださいね~。
たしか、薫さんもレガ子ちゃんもレベル4つ分が使わずに溜まっていますよね?
スキル獲得に必要なポイントはちょうど足りるはずですし、合成と創造のスキルもレベル15から取得できたはずですよ~」
「合成は〝パーツ製造〟のスキルではダメなのか?
鎧などの装備を作る時には、そのスキルで魔石と素材を合成したんだが」
「単純な物質同士であれば、そっちのスキルでくっ付けて作れますけど~。
機械や高度なシステムは専用スキルが無いと無理ですよ~」
なるほどね・・・。
リーゼが改造したこの身体の進化システムは、思っていた以上に細かく設定されたもののようだ。
あんた神様をやっているより、ゲームクリエイターとかの方が、職業として向いているんじゃないか?
まぁリーゼにとっては、この世界を含めた世界樹にあるすべての世界が、進化ゲームみたいなものなのかもしれないけどな。
「では、〝アイテム創造〟というのは?」
「イベントリを作るには、世界樹のシステムの一部とリンクさせないといけないのは、以前お話ししましたよね?」
「あぁ、収納した物体をマナに分解して、世界樹の中にあるマナ貯蔵庫みたいな場所に送っているんだっけ?」
「そうですよ~。
それで取り出すときには、分解の時に作った物体の設計図を基にして、マナからもう一度組み立てなおすんです~」
「たしか・・・その分解・再組立てに必要な設計図の生成に、世界樹のシステムをつかっているんだったっけ?」
「そのために世界樹のシステムとリンクさせる回路を創るのに、〝アイテム創造〟のスキルは絶対に必要なんですよ~」
となると、アイテムづくりよりも先にレベルアップ作業が必要か・・・。
まぁ、おれがレベルアップで取得するスキルはもう決まったようなものだけど、レガ子やレガシィの取得スキルをどうするかを考える時間が必要だな。
「お~い、レガ子。
溜まっているレベルアップの処理をするから、ちょっと一緒に考えてくれ」
「待ってましたなのっ!
ポイントが魔導砲に届いていると嬉しいのっ♪」
レベルアップと聞いて、レガ子がものすごい勢いで俺たちの方へと飛んで来た。
しかも、もしレガ子の周囲にエフェクトが掛かっていたとしたら、たぶん能力ブーストがあってもおかしくないくらいに目が期待に輝いていただろうと思われるほどの喜びようだ。
「お前・・・本当にアレを取るつもりなのか?」
「最強そうな響きの名前にワクテカしてるのっ」
「俺は最凶になりそうで不安なんだけどな・・・」
俺たちの事をニヤニヤしながら横で眺めているリーゼなら、その魔導砲とやらの正体も知っているのだろうが・・・たぶん聞いても教えてくれないだろうしなぁ。
帝国じゃなくて、俺たちが破壊神とかにならないよう、これからの行動は十分に気を付けないと。
戦闘狂なところがあるレガ子の手綱をしっかり握っておくことを自分に言い聞かせながら、タブレットPCの画面に表示されたレベルアップ操作の画面をレガ子と一緒に覗き込むのだった。
レガ子「パンパカパ~~ン♪」
子供たち「50万文字通過おめでとう!」
作者「お、おぅ。ありがとう」
薫「で、俺はいつになったら落ち着いた暮らしができるようになるんだ?」
作者「このペースだとまだまだ先だねぇ~~。
それに・・・」
薫「それに?」
作者「薫君は住居が落ち着ても、一生あの子たちに振り回されて性活は落ち着かないと思うけどね」
薫「おい、こらマテ作者!
おまえ今、なにか変な当て字をして発言をしていなかったか!?」
作者「さぁ~~、言葉にしたら同じ発音だから、ボクわかんな~~いっ」
薫「くっ(イラッ)」




