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第2章 第35話(第81話) ~小さな嫁(候補)たちへの贈り物~

今回のお話しは、予想以上に長くなってしまいました。

なんで8000文字を超えるような文章量になってしまったのやら・・・(汗。


クリスが着る金ピカ鎧を考えていた時に真っ先に思い浮かべたのが、某人気ゲーム&アニメに登場したギルガメシュさんだったりして・・・(苦笑。


クリス「ちょっとまてっ! 我はあそこまで態度が尊大でも、性格が悪くもないぞっ!!」


まだまだ先の展開になりますが、彼女達にも戦う力が必要になる予定なので、嫁候補たちの装備を今回登場させることにしました。

そのために設定を盛りすぎてしまったのが、文章量が多くなった原因でしょうね・・・。

(あん)ちゃ~~ん。

 ココから飛び降りてみるから見ててほしいのニャ~♪」


 翌日の昼頃、俺は建物の外で空を見上げるようにして、三階建て施設の屋根から飛び降りようとしているミャウを多少ハラハラしながら見守っていた。

 先に言っておくが、ミャウは飛び降り自殺とかをする為に屋根の上にいるわけではないからな。

 まぁ、あんなにも陽気な態度で飛び降り自殺をする奴などいないだろうが・・・。


 ミャウは昨晩俺が作った装備一式を身に付けており、その装備に付加した機能の確認のために屋根から飛び降りようとしているのだ。

 ちなみにその装備の色は薄緑色で統一されている。


「ミャウちゃん、大丈夫かな・・・」


 俺の隣で不安げに上を見上げているアリシアは、かなり心配そうな様子だ。

 ちなみにアリシアも俺が今朝方に作った防具一式を身につけていで、その装備の色は水色系で統一されいる。


「俺は2階のベランダからでもいいって言ったんだけどね・・・」


 そう・・・最初はガレージ部分の上にあるベランダから飛び降りてもらう予定だったのだ。

 ところが、「こんな(低い)高さじゃ、テーブルの上からジャンプするのと変わらないのにゃ」とミャウが言いだし、嫌がってしまった。

 どうやらネコ族は身軽で身体能力が高い為、3メートルくらいの高さなどは目を瞑っても普通に飛び降りることが出来るそうだ。

 なので「じゃぁ、どこら辺からなら飛び降りてみたい?」と聞き返したら、よりにもよって建物のてっぺんまで上がってしまった。

 その高さ、約9メートルオーバー。

 本当に大丈夫なんだろうか・・・。


「ネコ族なら、あれくらいの高さなら問題ないはずじゃ」


 アリシアとは反対側に立ち、同じように上を見つめていたクリスがそう言って、アリシアを安心させようとしていた。

 やはり彼女もその身体には俺が作った装備を身に付けているのだが、その色はなぜか金色だった。


「それよりもカオル殿、なぜ我の防具だけこのように金ピカで派手なのじゃ?

 風や水の魔法属性で二人の色を決めたのであれば、我の色は炎で赤とかになるのが普通じゃないのか?」


「うん・・・順当に考えればそうなんだけどね・・・」


 クリスの防具を赤色にしちゃうとね・・・


「たぶん薫さまは、クリスちゃんの装備色がジョニーさんとお揃いになるのが嫌だっただけだと思うのっ」


 こらっ、レガ子は余計なことを言うんじゃないっ。


「ほぅ・・・そうか、そうか・・・」


 レガ子の説明を聞いたクリスは表面こそ仏頂面を装ってはいるが、顔のあちこちが赤みを帯びており、実は照れているのが鈍い俺にすらまる分かりだった。

 本当は、『クリスの尊大な態度には〝金〟が似合いそうだ・・・』などと思って色を決めたのだが、このことは言わない方がよさそうだ。

 


(あん)ちゃ~~ん、飛ぶにゃ~~っ!」


「きゃっ」


 俺に声をかけてから勢い良く屋根から飛び降りたミャウを見て、アリシアが短い悲鳴を上げた。

 空中に飛び出したミャウは、身体を屈めて2回ほど回転をすると、着地に備えて身体を伸ばした。

 通常であれば、このまま地面に勢い良く着地するのだろうが、この時身に付けていた装備が発動しミャウの体勢が崩れた。


「みゃっ? みゃ、みゃみゃっ!?」


 彼女の身体には重力に逆らうような力が突然加わり、落下速度が急激に緩んだ。

 このことで体勢を崩してしまったミャウは、手足をバタバタさせて必死に()()()()()()いた。

 そんな不可思議な光景を目の当たりにして、俺の隣ではアリシアが目をパチクリさせている。


「お、お兄ちゃん、これは?」


「飛んでいるワイバーンから落ちた時に備えて、3人の装備には風魔法の加護を応用した浮遊魔法が発動するようになっているんだ。

 これは落下速度が一定値に達した時や、地面までの距離が設定値にまで近づいた時に自動発動するようになっているぞ」


「そういうことは、先に言っておいてほしかったにゃ・・・」


 アリシアとクリスに説明している俺の前まで空中を泳いできたミャウが、戸惑った表所を浮かべながら地面へとふわりと着地した。

 そしてその瞬間、彼女を包んでいた風魔法が消えた。


「イメージとしては、自分の身体が竜巻みたいな風の渦に包まれているような感じになっていると思ってほしい。

 それとその風に包まれている間は、弓矢などの弱い攻撃であれば風の膜が防いでくれるはずだ」


「いきなり落下速度が消えて、体勢のコントロールが出来なくなったから驚いたのにゃ~」


「ごめん、ごめん」


 ぐったりと手足を地面に付けながら愚痴を言うミャウを抱きかかえて立たせ、機嫌を取るために彼女の頭を撫でてあげる。


「むぅ・・・(あん)ちゃんはすぐにそうやって誤魔化そうとする・・・」


 文句を言いながらもミャウは満更でもないようで、背中側に見え隠れしている尻尾が元気に振られているのがみえた。



 ミャウの機嫌がある程度直ったところで、あたらめて彼女たちの武具について説明を再開する。


「浮遊魔法は地面に立っている状態でも、短時間ならば使うことが出来るはずだよ。

 足元に風を巻き起こして、空中に浮かぶようなイメージで魔力を流してごらん」


「こう・・・か?」


 チェレンジ精神旺盛なクリスが俺の説明どおりに魔法を発動させる。

 すると彼女の足元から風が巻き起こり、クリスの身体を包み込むようにしてその身体を空中に浮かばせた。

 その高さはだいたい1メートルくらいだろうか。


「移動は、行きたい方向とは逆側に風を吹き付けるようにイメージしてみて」


「おっ、おおっ!」


 原理としてはジェットエンジンと同じ〝作用・反作用〟の物理法則なんだけど、この世界の文明度からすると、それを説明するのはちょっと難しいかもしれないな。

 

 楽しそうに低空を滑空しているクリスの姿を見て、ミャウやアリシアも同じように浮遊魔法を発動させた。

 そして、いつの間にか3人の娘っ子たちは滑空した様態での鬼ごっこを始めてしまっていた。

 子供は物覚えが早いし、なによりも元気でいいなぁ・・・。

 30のおっさんには、鬼ごっこなんてハードな遊びをする元気はもうないよ。




「薫さん、ずいぶんと面白い発想の装備をクリエイトしましたね~」


 子供たちが遊ぶ姿を温かい目で見守っていると、傷を負ったワイバーンの定期検診を終えたリーゼが、子供たちがはしゃぐ姿を見ながらクスクスと笑って近づいてきた。


「最初はパラシュートみたいなものを考えていたんですけどね、どうにも上手く作れなくて」


 そう・・・当初はハンスさんら王国の竜騎士らの装備にも使えそうな、汎用のパラシュートみたいなものを考えていたのだ。

 しかしながら、実際のパラシュートなど使った事も無ければ、触ったこともない俺の知識では、再現することが難しかった。


「まぁ~、パラシュート(あれ)は操作も難しいですからねぇ~」


「リーゼはやったことがあるのか?」


「薫さんの世界の・・・グアムとかいう場所に遊びに行った時に、たぶん10回ほど飛びましたよ~」


 この女神様は、どれだけ俺の世界で遊びまわっていたんだ?


「で、悩んだ末に薫さまが思いついたのが、このエロゲなのっ!」


 リーゼとの会話に割り込んできたレガ子が、彼女にタブレットPCに表示されたエロゲの起動画面を見せていた。


「おいっ、こらっ!」


 慌ててレガ子を取り押さえてタブレットPCを取り上げようとしたものの、一足違いでタブレットPCはリーゼの手に渡ってしまっていた。


「あぁ、このエロゲですねぇ~。 

 私もアニメ版は毎週炬燵(こたつ)の中で見ていましたよぉ~」


 この女神様、本当にだらけた生活を送っていたんだな・・・。

 そんなだから自分が生み出した部下に下克上されて、世界樹を追い出されるんだよ。


 ちなみにリーゼが手にしたタブレットPCに映し出されていたのは、空を飛べるシューズを履いて空中で競い合う競技に青春をかける少女たちの姿を描いたエロゲの起動画面だ。


「最初はそのゲームの設定と同じように、ブーツだけで飛ばそうとシミュレーションしたんですけどね・・・どう設定しても空中でのバランスが取れずに墜落する結果しか出てこなくて」


 イベントリでのクリエイト機能の中には、これから創造しようとしているアイテムの性能を仮想空間の中でシミュレーションさせる便利な能力が備わっているのだが、ブーツだけで浮力を発生させると足への負担が大きく、姿勢制御もかなり難しいことが分かってしまた。


「で、いっそのこと身体全体で浮力を支えれば・・・という結論になって」


 結果として、ブーツだけでなく胸当てや籠手など、全身に取り付けた防具全体で身体を支えて、姿勢制御をさせることになったというわけだ。


「ところでカオルさん・・・」


「なんです?

 あの装備に何か問題点でもありましたか?」


 リーゼが真剣な表情で問いかけてきたので、自分が作った装備に何か見落としでもあったのかと焦ってしまった。


「このゲームの世界って、通学時間帯に空を見上げたら~、パンツ見放題ですよね・・・」


「ぶっ・・・。

 ゲホ、ゲホン・・・あなたは何を言いだすんですか?」


 予想の斜め上をいくリーゼの真剣な質問に、思わず唾液が気管に入ってしまい咳こんでしまった。

 まぁヒロインたちが通う学校の制服はスカート短いから、たしかにそう言われればあれで空を飛んだら確実に見えちゃうとは思うけど。


「さ、すがに学校指定のスパッツとかを履くことになっているんじゃありませんか?」


「履いていましたか?」


「え?」


「この起動画面を見ると、すでにセーブデータがありますよね~。

 という事はプレイ済みだと思うんですけど~、履いていましたか?」


 リーゼさんが顔を近づけ、とんでもない事を訊いてきた。

 あなた、このエロゲに興味があるんですか?


「えっと・・・プレイ途中で放置していたらアニメ版が始まっちゃたので、まだ個別ルートにすら入れていないので分かりません」


 相手がリーゼとはいえ、美人の女性を相手にエロゲの感想を話すのがこれほどまでに恥ずかしいものだったとは・・・。


「う~~ん、残念です~。

 アニメを見ている時からずっと気になっていたんですよねぇ~」


 当のご本人はまったく気にしていないようだがね。


「じゃぁ、そのタブレットはリーゼさまに貸すのっ。

 気になっているなら確かめるといいのっ」


「コラ、レガ子っ。

 勝手に貸し出すなっ!」


「タブレットはもう1台予備があるから問題ないのっ。

 それにレガ子と薫さまは一心同体で、レガ子のモノは薫さまのモノ、薫さまのモノはレガ子のモノなのっ♪」


 なんだ、そのジャイアニズムの変形みたいなのは・・・。

 まぁ、別に貸すのはいいけどね。

 俺のセーブデータさえ消されなければ・・・。




 しばらくすると追いかけっこに疲れ果てた子供たちが戻ってきて、皆が息を切らせてその場にしゃがみ込んでしまった。


「あ~お前ら、魔力を消費しすぎだ。

 その装備の別の機能も説明したかったんだが、これは一度休憩しないとダメだな」


 アリシアはクォーターとはいえエルフの血を引いているため、潜在的魔力量が大きくてまだ余裕がありそうなのだが、クリスとミャウはしばらく休ませないとダメだろう。

 というか、お前らはしゃぎすぎだ・・・。



 子供たちの魔力回復もかねての昼食タイム。

 俺たちはレガシィ横の広場に移動して、アウトドアテーブルを二つ並べてサンドウィッチを食べていた。

 テーブルに並べているサンドウィッチは、全て午前中に俺が作っておいたもの。

 ふんわり玉子を挟んだものや鶏肉の和風竜田揚げを挟んだもの、濃厚ソースを絡めた焼きそばを挟んだものなど、6種類ほどのサンドウィッチが並べられている。


 ちなみに騎士団の人たちは、周辺の地形確認と安全確保(ガレドラゴン対策)の柵をつくるために、この場の警護要員を除き出はらっている。

 なお、ハンスさんらは、新たに竜騎士に昇格(?)したマイクさんとトニーさんを鍛えるため、やや離れた場所で空中戦訓練の真っ最中だ。

 これまでは2騎しか竜騎兵がいなかったため単騎同士での模擬戦しかできなかったが、4騎に増えたことで今日からチーム連携を生かした訓練ができると張り切っていた。

 マイクさんとトニーさんにも、ハンスさんらが装備しているのと同じ風魔法の防御が展開できる防具を渡してあるので、上手く使いこなしてくれれば帝国の竜騎兵よりも連携戦術の幅が広がるはずだ。



「カオル殿、先ほど別の機能とか言っておったが、他にはどんなことが出来るのじゃ?」


 全員がサンドウィッチを食べ終えて、食後のティータイムを楽しんでいると、紅茶を飲みほしたクリスが訊ねてきた。


「ハンスさんらのと同じ風魔法の盾と、お前たちのそれぞれの魔力適性に合わせた攻撃魔法を一つ付与してある」


「お兄ちゃん、私たちの適性って?」


「昨晩、風呂場でリーゼに鑑定してもらっただろ?」


「リーゼ姉ちゃんがボクたちのお胸をペタペタ触った後に、なぜか落ち込んでいたアレかにゃ?」


 リーゼが触っていたのは、お前たちの体内にある魔法因子を調べていたからなんだけどな・・・。

 あと、落ち込んだのは・・・たぶんお前らのサイズと大差が無い事を再確認しちゃったからだとおもうぞ。

 というか、風呂場の件はほじくり返すと俺まで地雷を踏みそうなのでスルーすることにする。

 なので涙目になってこちらをじーっと見ているリーゼには悪いが、今のミャウの発言で落ち込んでいても助け舟は出さないからな・・・。


「あの検査で、ミャウは風属性特化型、アリシアは風と水・氷属性、クリスは風と雷属性であることが分かったんだよ」


「あっ、それで鎧がこの色なんだね」


 アリシアの指摘で、クリスが自分の金ピカ鎧を見てぶぜんとした表情になったが、まぁ・・・無視しよう。


「なので、ミャウの籠手からはエアニードルが、アリシアの籠手からはアイスアローが、クリスの籠手からはプラズマアローが撃てるようになっている」


「ふぇ~~っ」


 俺の説明を聞いて、ミャウとアリシアが腕に取り付けているそれぞれの籠手をマジマジと見つめた。

 ただクリスだけが、微妙な表情をうかべて俺の方を見つめていた。


「どうした?」


「カオル殿は、本当はこの世界の住人は強力な装備は渡したくないのではなかったのか?

 なのに、我らがこのような魔導器を貰っていいのか・・・と思ってしまっての」


「たしかに俺はこの世界のパワーバランスを極端に崩すような武器を量産する気はない。

 極端な話し、レガシィ(これ)やレガ子のセットみたいなものが大量にできたら、この世界は破滅しかねないしな」


「ひどい言われようなのっ!」


 すかさずレガ子が抗議してくるが、ボタン一つでミサイルを撃ちあうようになったら終わりだろ? 

 それに・・・国同士の戦争は職業軍人の兵士たちだけで基本的には戦うこの世界の戦争スタイルが、俺は好ましいとも思っているしな。


「だけど、お前らは俺の嫁になるんだろ?

 俺も、この世界で所帯をもつ腹をくくったしな。

 だったら、自分の嫁たちくらいは全力で守りたいからな」


「カオル殿・・・」

「お兄ちゃん・・・」

(あん)ちゃん・・・」


 嫁(候補)たちが感動してくれている中、リーゼが遠慮気味に手を挙げた。


「あのぉ~、私も守っていただけるんですよねぇ~。

 私も装備、欲しいなぁ~~」


 えっ?

 神様を守らないといけないの?

 それにリーゼも嫁の仲間入りする気なのか?


「えっと・・・リーゼさんは女神様で、自分よりも万能なのではないかと・・・」


「しくしくしく・・・

 嫁差別は悲しいよぉ~~」


 なんか泣き方が芝居ががっているようにも見えるが、俺を見ている嫁(候補)の子供たちの視線が冷たいものなってきているのを感じ、慌ててリーゼの機嫌を取りに行く。


「で、リーゼはどんな装備が欲しいんだ?」


「トリガーハッピーなやつなのぉ~~♪」


 ですよね・・・。

 なんとなく予想はしていました。


「ガバメント系とかお好きで?」


「2丁拳銃のロングマガジンでお願いしま~~す♪」


「承りました・・・」


 


 リーゼの装備製作を約束させらた後、俺たちはアウトドアテーブルから少しばかり離れた場所に移動して、嫁(候補)たちの装備に付与した防御と攻撃魔法のテストを行っていた。


「まずは防御魔法だが、3人でこっちに向かって横一列に並んで、風の防壁をイメージした魔法を展開してみてくれ」


「こう・・か?」


 子供たちの前方に圧縮した空気の壁が構築され、その奥に見える子供たちの姿がややぼやけた。

 おそらくは空気の壁を通り抜ける光の透過率や屈折率が変化したのだろう。


「強度を確認するために、レガ子に緩い火炎弾攻撃をさせるから、少しだけ踏ん張れよ」


「ふっふっふっふっ、

 わたしの愛の鞭を向けてみろなのっ!」


「レガ子ちゃんの目が怖いよ・・・」

「アレは狩人が獲物を狙う目なのにゃ・・・」

「お、お手柔らかに頼むのじゃ・・・」


 怯えさせてどうするんだよ・・・。


「ファイヤーボール!なのっ」


 間抜けなレガ子の掛け声で、火炎弾が数発子供たちに向かって飛んでいく。

 が、いずれもその手前に展開された防壁に阻まれ爆散してしまった。

 もちろん、その向こう側にいる子供たちは無傷だ。


「どうだ?」


 俺の横でドローンのカメラが捉えた分析映像を見ていたリーゼに防壁の強度について問いかける。


「レガ子ちゃんが本気で無かったとはいえ、ビクともしていませんねぇ~。

 爆発の衝撃も、間にある空気の層で完全に吸収しています。

 アレなら帝国兵が持つ使い捨て魔導器の攻撃を連続で受けても大丈夫なんじゃないでしょうか~」


「これは驚いたのじゃ。

 爆発の振動すら感じなかったぞ」


 防壁を解いて駆け寄ってきたクリスが興奮気味にはしゃいでいた。


「ただ俺が使う防御壁に比べると脆いからな、無茶は厳禁だぞ」


 俺が作る障壁は空間断層だが、子供たちのは圧縮された空気の壁だからな。

 どうしても強度的には劣ってしまうのは仕方がないところではある。


(あん)ちゃん、(あん)ちゃん、攻撃魔法はどうやったら使えるんだにゃ?」


 ミャウは早く次のテストを試したくて仕方がない様子だ。


「どちらの腕でもいいから、籠手をはめた腕を目標に向かって突き出して、自分の攻撃魔法をイメージしてごらん」


「こうかにゃ?」


 ミャウが腕を前に突き出すと、籠手の手首側部分のカバーが開いて、その中から銃身らしき円筒形のパーツが2門現れた。


「後は、発射するイメージさえ送れば魔法が発動するんだけど、最初は何か掛け声を発した方がやり易いかもしれないな」


「むぅぅ・・・ファイにゃー!」


 ミャウの可愛らしい掛け声が発動キーとなり、籠手の銃身からエアニードルの魔法弾が2発発射された。

 魔法弾は的となった岩に当たると、その一部をキレイに吹き飛ばした。

 その威力にミャウは最初こそ喜んでいたが、「でもボクはやっぱり、斧や短剣の方が好きだにゃ」と言われてしまった。

 仕方がない、後でハンドアックスか短剣に魔法を付与した装備を作ってあげよう・・・。


 ミャウの動きを見て、クリスやアリシアも自分の装備の魔法弾を試射し始めた。

 クリスはノリノリでプラズマアローをぶっ放していたが、アリシアはかなり遠慮気味にアイスアローを撃っていたのが見ていて面白かった。


「それらの武器は、自衛のための最終手段にしてくれ。

 お前たちにはできるだけ人殺しはさせたくないから・・・。」


 そんな俺の気遣いに、ミャウが首をひねった。


(あん)ちゃんは気にしすぎだにゃ。

 村でも、悪人に襲われたら『殺される前に殺せ』と教わっているにゃ」


「そうですね・・・私も人間はあまり殺したくありませんが、村では『盗賊に襲われたら躊躇うな』と教えられましたし・・・」


「我などは率先して騎士の訓練にも参加しているからな。

 今更敵を目の前に戸惑うような鍛え方はされておらんぞ」


 い、異世界の子供への・・・教育方針が怖いよ・・・。


 この世界では、相手が子供だからと言って甘く見ない方がいいことを、この時俺は再認識したのだった。

クリス「前書きでは酷い言われようじゃったのじゃ!」


ジョニー「いえいえ、クリス様は10歳とは思えないほど、態度がでかい姫様でございますよ」


クリス「ジョニー・・・お主、本当は我の事が嫌いのではないか?」


ジョニー「滅相もございません」


クリス「アリエットとの結婚が我の所為で伸びていることを恨んでいるのではないのか?」


ジョニー「・・・・多少は」


クリス「おいっ!」


ジョニー「そういえば、今回は他の方々はいらっしゃらないのですか?」


作者「この険悪な空気の中に入るの嫌がって、みんな出て行ったよ・・・(汗)」


クリス「ぐぬぬぬ・・・」

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