第2章 第33話(第79話) ~小さな竜騎士の誕生なのにゃっ!~
はぁ・・・
またしても本業の仕事に引っ張られてしまい、ギリギリの執筆になってしまいました。
ちなみに、この前書きを書いているのが、投稿日の午前3時47分くらいです(汗。
実は、かむっさんは最近本業の方で、本来の業界情報誌の編集長としての仕事とは他に、会社のエロい人(社長様を指す隠語です(マテwww))からWEB配信用のニュースサイトの構築を(予算ほぼなしで)命じられて、WordPressやGoogle Analyticsなどといった専門外のIT系知識を勉強する羽目に陥っています(涙。
元々は工業高校の電気科出身で、パソコンによる情報処理はNECのPC-9801VMの時代からかかわっていたので嫌いではないのですが、正直なところ50歳にもなって新しいIT系知識の勉強はかなりつらいデス(しくしくしく。
いまや、このラノベ執筆だけが唯一の息抜きといっても過言ではありません。
なので、たとえ時間が無くても~レガ子と旅する異世界ドライブ~の執筆は頑張って続けていくつもりです。
読者の方々の温かい応援(感想など)をお待ちしています。
「カオル殿、大変だ!
ミャウ殿が・・・・・・・・・え?」
俺とアリシアが仲良く並んで風呂に入っている姿を見て固まるクリス。
そしてその表情が、怒りが混じった笑いへと徐々に変わっていっていくのが見えた。
あ、これは俺もピンチかも・・・。
ミャウの非常事態の知らせと同じくらい、俺はこの後に襲い掛かってくるであろう自分の非常事態を心配するのだった。
「ほぅ・・寝床では我との同衾を拒否したくせに、アリシア殿とは裸の付き合いをするのだな・・・」
どうやらクリスは先ほどの件をまだ根に持っていたようだ。
俺を睨む表情が、かなりひくついているのが遠目にも見てとれた。
「いや・・・これはあれだ・・・。
俺が風呂に来たら、すでにアリシアが居てだな・・・」
10歳の少女相手に言い訳をしなくてはならない自分がかなり情けない。
が、この手の誤解は早いうちに解いておかないと、後々面倒なことになるのは知り合いらの修羅場を見てきて理解している。
「俺はすぐに出て行こうと思ったんだけどな・・・アリシアが髪の毛を洗うのに苦労していてだな・・・」
なんだろう・・・
何かを言えば言うほど、浮気の現場を押さえられた夫のような情けなさを感じてしまうのは・・・。
突然風呂場に乱入してきたクリスに俺が慌てていると、それを見かねたのかどうかは分からないが、アリシアが助け舟を出してくれた。
「クリスちゃん大丈夫だよ。
残念ながら髪の毛を洗ってくれた以外は、お兄ちゃんは何もしていないから」
ちょっと待ってください、アリシアさん・・・。
その言い方だと、まるで俺が何かをするのが前提だったみたいじゃないですかっ。
呆気にとられてアリシアの横顔を眺めていたら、それに気が付いた彼女が俺の方を見て微笑んだ。
「あれ? お兄ちゃん気が付いていなかった?
私これでも誘っていたんだよっ」
「ちょっ、おまっ・・・」
「う~ん・・・
レガ子ちゃんが言っていたとおり、お兄ちゃんは鈍感だから遠回しな誘い方じゃダメみたい」
おいレガ子、お前は子供たちに何を吹きこんでいるんだ?
とりあえず奴はあとでお仕置き決定だな。
「そんなことよりクリスちゃん、ミャウちゃんに何かあったんじゃないの?」
想像もしていなかったアリシアの大胆な言動に驚き、半ば放心状態に陥っている俺を横目に、悪びれもせずにクリスへと話しかけるアリシア。
うぅぅぅ・・・
純真だった俺の天使が、少しずつ小悪魔に変わってきているよ。
「おぉ、そうであった。
ミャウ殿が乗っていたワイバーンが、そのまま空に上がってしまったのじゃ!」
「なんだってっ!!」
「きゃっ」
「ほぅ・・・」
クリスから聞かされた非常事態に慌ててしまい、勢いよく湯船から立ち上がった俺を見て、アリシアとクリスが短い悲鳴を上げた。
情けない言い訳をしているうちに多少は治まってきていたとはいえ、俺のナニはまだ元気なままだったのだ。
いや・・・
クリスのアレは悲鳴じゃなかったな・・・。
「アリシア殿に手は出さずとも、カオル殿はしっかりと反応しておったのじゃな」
ジト目になって俺を睨むクリスの横をすり抜け、服を着るために脱衣所へと駆け込んだ俺の背中に、彼女のドスの効いた言葉が投げかけられた。
「後で我の入浴にも付き合って、洗髪を手伝うのじゃぞ」
「はい・・・」
脱衣所の隅で隠れながら服を着る俺には、クリスから提示された和睦提案を断ることができなかった。
服を着て身支度を整え直した俺は、騒ぎが起きているガレージ前へとクリスと一緒に駆けつけていた。
そこには、空を見上げてオロオロしているリーゼと、それをなだめるレガ子の姿があった。
そしてリーゼが見ている視線の先・・・上空に目を向けると、そこには屋敷の周囲を旋回するように飛んでいるワイバーンと、その背中に乗ってはしゃぐミャウの姿があった。
「いったい何があったんだ?」
とりあえず状況を把握するためにレガ子に近づき声をかける。
「ネコ娘が乗っていたワイバーンに取り付けていた首輪が突然光り出して、勝手に主従契約が成立しちゃったみたいなのっ」
「えっ?
あれって正式な手続きを踏まないと契約できないはずじゃ・・・」
状況を聞いて思い浮かんだ疑問を口にする。
実際、今飛んでいるワイバーン以外は、係留柵の中にいる全てのワイバーンに取り付けている隷属の首輪は待機状態のままになっている。
そんな俺の問いに、慌てふためくだけだったリーゼが考えられる可能性を教えてくれた。
「隷属の首輪による主従契約には、基本的には正規の手順による手続きが必要ですが、ある条件を満たした時だけ例外があるんです~」
「それは?」
「主従、双方の好感度が一定水準を超えていて、互いが契約したいと心から願った時だけ、自動的に契約モードが発動しちゃう事があるんですよ~」
「つまりは・・・」
「あのワイバーンは、ご主人様になったネコ娘を喜ばせるために飛び回っているだけなのっ」
「ようするに、ミャウが攫われたとかじゃないわけだな?」
「そういうことになるのっ」
リーゼとは対照的に落ち着き払ったレガ子が、「だから事件とかじゃないのっ」と少々あきれ顔で答えてくれた。
とはいえ、事件ではなくても事故ではあるわけで・・・
しかもミャウの服装はいつものままの為、竜騎士が騎乗する時に付けているワイバーンに取り付けた鞍とを繋ぐ命綱を装着していない。
あの状態のまま、もしワイバーンの背中から落ちてしまったらと考えるとゾッとしてしまう。
とりあえず地上に降りるように指示を出すため、上空のミャウに向かって叫びながら手を振ってみる。
だが、ミャウは俺の指示には気が付くことなく、こちらに向かって両手を大きく振り回して合図を返してきた。
どうやらミャウは俺たちが喜んで手を振っていると勘違いしているようだ。
「ミャウ殿はバランス感覚がいいので、落ちることはないと思うが・・・これは傍で見ているとちょっと怖いな」
俺の横でクリスがそんなことを呟いていたが、俺はちょっとどころかかなり怖い。
「しかたがないの。
アレに向かって電磁ネット撃って捕獲するのっ」
「やめなさいっ!」
物騒なことを言って、レガシィの方へと移動しようとしたレガ子を、慌てて鷲掴みにして取り押さえる。
「ちょっとした冗談なのっ。
本当はドローンを近づけて、スピーカーから降りるように伝えるだけなのっ。
だからこの手を放してほしいのっ」
「こんな時に質の悪い冗談を言わない!」
レガ子の頭を軽く小突いてから解放する。
すると「てへっ」などと言ってお茶目なポーズで俺に向かってウィンクをしてから、レガシィの運転席へと飛び込んでいった。
『こらぁ~~っ!
そこのネコ娘~~っ!
いい加減下りてきなさ~~いっ!!』
ミャウが騎乗したワイバーンと同じ高さで飛んでいるドローンから、地上にまで聞こえる音量でレガ子の声が周囲に響き渡った。
さすがに今回はミャウにもこちらの意図がしっかりと伝わったようで、程なくして大空を自由に飛びまわっていたワイバーンは、ミャウを背中に乗せたままゆっくりと地上に降り立った。
「兄ちゃん、兄ちゃん。
ボク、あの竜さんとお話しができて、一緒にお空を飛べたよ~~♪」
地上で休息の体制に入ったワイバーンから飛び降りたミャウが、興奮した状態で俺に向かって駆け寄ってきた。
俺は、胸に飛び込んできたミャウを左手でガッシリと捕まえると、右手でミャウの頭上にチョップを入れた。
「ふみゃっ!
うぅぅ・・・兄ちゃんなんで怒っているのにゃ?」
「大人の許可を得ないで勝手に空に上がったら、みんなが心配するだろ。
実際、クリスが慌てて俺の所に報告に来たくらい、みんなビックリしたんだぞ」
そう・・・この騒動がなければ、俺が風呂場でクリスに怒られることも・・・なんていう八つ当たりの気持ちは無いからな。
たぶん・・・。
「ふみゅぅ・・・
ごめんなさいなのにゃ~」
叩かれた頭を両手でおさえながら、やや涙目になって反省の言葉を口にするミャウ。
「まさか、みんなが心配しているなんて、思ってもいなかったのにゃ・・・」
「それと、ハンスさんたちを見れば分かると思うけど、アレに乗って飛ぶときには、落ちた時の万が一に備えて鞍と身体を命綱で繋がないとダメなんだぞ」
「ごめんにゃさい・・・」
ミャウの表情が今にも泣きそうな感じに変わってきたので、説教はここまでにすることにした。
俺は自分の頭をおさえている彼女の手を優しく外すと、先ほど叩いた場所を撫でながら、笑顔で彼女の顔を覗き込んだ。
「でもまぁ・・・初めて乗ったにしては、上手に飛べていたと思うぞ」
ミャウと同じ目線の高さに屈んでそう話し掛けると、先ほどまでは泣きそうな様子だった表情が一気に笑顔になった。
「そうなのにゃ♪
あの子がボクに話しかけてくれて、空の散歩に連れていってくれたのにゃ♪」
ワイバーンがミャウに話しかかけた?
ハンスさんらの時には、そんな風にワイバーンと意思の疎通ができたという報告はなかったはずだ。
これは、ミャウが獣人族だから起こった現象なのか?
それともミャウ個人の才能なのか?
これは一度きちんと調べておいたほうがよさそうだな。
「ミャウは、あのワイバーンとお話ができるのか?」
「うん、できるにゃっ」
「他のワイバーンとは?」
「できにゃいのにゃ・・・」
ふむ・・・
どうやら今回が特殊なだけで、全部のワイバーンがミャウと意志疎通できるわけではないようだ。
「となると・・・あの個体が特殊なのか・・・」
少し離れたところで翼を休めている問題のワイバーンに目を向ける。
他の個体と比べても、特に変わっている特徴があるようにも見えない。
が、このワイバーンには別の問題が発生していることに、今になって気が付いてしまった。
「ミャウとの主従契約の件どうしようか・・・」
今回鹵獲したワイバーンは、竜騎兵部隊設立のために全て王国の騎士団に渡すつもりだったのだ。
しかし、このワイバーンとミャウが主従契約を確立させてしまったため、この個体を騎士団に渡しても運用させることが出来なくなってしまった。
「いっそ隷属の指輪をいったん解除して、新たに付けなおすか・・・」
すると、俺の呟きを聞いていたミャウが、俺のシャツの裾を掴んで顔を左右に振って嫌だという意思表示をした。
「せっかくお友達になったのにゃ・・・。
無かったことにされて、お別れするのは嫌だのにゃ・・・」
あぁ、これは困った事態になった。
ミャウが納得してくれていない状態で、下手に隷属の首輪のリセットを強行したら、確実にミャウが悲しむだろう。
もしかしたら、ミャウに嫌われてしまう可能性もある。
うん、それは俺が嫌だ。
きっと子供が拾ってきた捨て犬や捨て猫を、もう一度捨てに行かせるときの親の気持ちってこんな感じなのかもしれないなぁ。
「お姉ちゃんのチビの時は一緒のままでもよかったのに・・・なんでダメなのにゃ?」
俺がどうするべきか悩んで黙っていると、ミャウはリーゼの傍らをウロチョロしているちび竜に目を向けた。
アレはなぁ・・・。
あのサイズだから一緒にレガシィに乗せることが出来るけど、さすがに騎乗できるサイズの成竜はなぁ・・。
「あのちび竜は小さいから一緒にレガシィに乗って旅ができるけど、ワイバーンはどう考えても無理だろ。
かといって、ミャウだけをワイバーンに乗せて、別行動で旅をするのは安全面に問題があるから絶対にダメだ」
「みゃ?
ボクはずっとみんなと一緒にあのクルマに乗って旅をするつもりだにゃ」
「じゃぁ、ワイバーンはどうするつもりだったんだ?」
「一人で勝手に飛んで、付いてくるって言っているにゃ」
「へっ?」
そうなの?
隷属の首輪をしている状態のワイバーンって、騎乗者がいなくても単独行動できるの?
俺が隷属の首輪がもつ効力についてどう判断したものか悩んでいると、ミャウの報告を聞いていたリーゼがアドバイスをくれた。
「薫さんの作った隷属の首輪は、意志剥奪の強制力を排除していて、なおかつ隷属の強制も少し弱めているじゃないですか~。
なので、主従契約に違反しない範囲でならワイバーンさんの自由意思がかなり効くのではないでしょうかぁ~」
クリスが付け加えてくれた説明によると、この世界で流通している隷属の首輪は、それを付けた奴隷に自由意思を許さないものがほとんどで、奴隷が自分の意志で動くことなどありえないのだという。
ところが俺が作った隷属の首輪は、リーゼのアドバイスもあって隷属させる強制力をかなり制限しているため、こういった事が起きてもおかしくないのだそうだ。
というか・・・俺はこの世界の奴隷制度がかなり怖いよっ。
「そもそも隷属の首輪は、重犯罪者に強制労働を科すために大昔に作られたものがベースになっておるからな。
それが改良さることがないまま、今のように奴隷全般や捕獲した魔物などに広く使われるようになってしまったのじゃ」
重犯罪者も軽犯罪者も、さらには経済的な理由で奴隷になるしかなかった者まで、1種類の隷属の首輪によって同じように扱われていたことに、クリスも疑問を感じていたそうだ。
しかし隷属の首輪そのものが今は無き古代魔法文明の遺物から作られていたものだっただけに、改良したくてもできなかったのが実情だったらしい。
申し訳なさそうな表情をしながらそんな説明をしたクリスは、俺の前に回り込むとこっちを向くと可愛らしいと笑顔を見せてくれた。
「何百年もの間、誰も改良することが出来なかった隷属の首輪の欠点を、カオル殿はいとも簡単に修正したのじゃ。
我が国においては今後、奴隷の種類や理由の内容によって、強制力を変えた隷属の首輪を使っていく事も考えられるはずじゃ」
隷属の首輪の改良は、リーゼが与えてくれたゲームのパラメータ操作チックなチートスキルがあったからこそできたものなんだけどね。
これが切っ掛けになって、この世界の奴隷制度が少しでも良い方向に変わっていくのであれば、それは俺としても嬉しい事だ。
まぁ奴隷制度などは無い方がいいのだろうが、それはこの世界の住人ではなかった俺がとやかく言う権利はないしな。
なによりも法制度の違いや、住人らの価値観の違いが大きすぎて、俺がいた世界の常識をこの世界の人たちに強要することはできない。
それに元いた世界のように、重犯罪者まで人権が手厚く保護される収監制度も個人的にはどうかとも感じているので、この世界の奴隷制度についてはあまり口出しをするつもりもない。
郷に入れば、郷に従え。
この世界にとっては俺の方が異物なのだ。
たとえ自分の価値観と異なっていても、ここで生きていくと決めた以上は、この世界の慣習や風俗にあった行動を基本的にはとるべきだと思っている。
「で、あの子とはこれからも一緒に居てもいいのかにゃ?」
隷属の首輪の件で話し込んでしまった俺たちにしびれを切らしたミャウが、俺の服の裾を引っ張って結論を聞いてきた。
ごめん・・・
その問題をすっかり忘れていたよ・・・。
「このワイバーンたちは騎士団のものだから、1匹分けてもらえるかどうか、後で掛け合ってみるよ」
ミャウ一人を別行動させる心配が無いのであれば、俺としてはワイバーンがお供として付いてくることには文句を言うつもりはない。
なので残った問題は、所有権を譲ってもらうだけだ。
「なぁカオル殿よ、その認識はちょっと違うと思うぞ」
「うん? 何がだ、クリス」
「このワイバーンの所有権を持っているのは、騎士団ではなく、捕獲したカオル殿だぞ。
我々王国側が、カオル殿からこれらのワイバーンを譲ってもらうのじゃぞ?」
「へっ? そうなのか?」
「当り前じゃ。
それが何処であろうと、魔物は倒した者が所有権を主張できるのと同じ扱いじゃ。
騎士団が所有権を主張できるのは、せいぜいハンスらが倒した2匹くらいじゃ」
あきれ顔で、この世界の常識を俺に説き始めたクリスを前にして、「俺・・・全然〝郷に従え〟ていないじゃん・・・」と、心の底から反省するのだった。
そしてクリスの説教がちょうど終わった頃、第6騎士団の人たちが到着したのだった。
ミャウ「お空の散歩は、と~~っても気持ちがよかったのにゃ♪」
アリシア「私も、お兄ちゃんと一緒のお風呂、と~~っても気持ちがよかったのっ♪」
クリス「ほぅ・・・どうやら我だけが気持ち良くなれていなかったようじゃのぅ・・・」
薫「ちょっ・・・(汗)」
レガ子「私とリーゼさまが一生懸命お仕事している時に、薫さまは何をしていたのですかなのっ!」
リーゼ「お詫びは、秘蔵のお酒でいいですよっ(ニッコリ)」
薫「冤罪だぁ~~~っ」