第2章 第32話(第78話) ~後始末とラッキースケベ~
今週もギリギリの執筆になってしまいました。
今週は、雑誌の締め切りが終わった直後に、東京ビッグサイトで開催された「第85回東京インターナショナル・ギフト・ショー春2018」を取材する仕事が金曜日まで続いたのが敗因ですね・・・。
この執筆パターンは早めになんとかして改善しないと、そのうちに投稿日が守れずに破綻しそうで怖いです(汗。
あ・・・
あと、そんな忙しい中をやりくりして作った余暇時間に、先月末に発売された短編ギャルゲー「グリザイア ファントムトリガー 第4巻」をプレイしてしまったのも、執筆が捗らなかった原因ですね(マテ。
ゲーム出てきたタイガ様と、自分のラノベに登場するクリスがいろいろダブって見えて、違う意味でも面白かったです(苦笑。
魔導帝国の竜騎兵部隊への逆奇襲作戦を終えた翌日の昼頃、レガシィの後部座席を畳んで作りだしたダブルベッドほどの広さのリアラゲッジルームで、俺は人目もはばからず神具に包まれて爆睡している最中だった。
ちなみに神具とは、ゲームキャラやアニメキャラが等身大でプリントされた、痛いベッドシーツや抱き枕カバーの事を指す隠語みたいなものだ。
なぜこれほどまでにお疲れなのかといえば、昨晩の戦闘の後始末が徹夜作業となってしまい、今しがたまで動き回っていたからに他ならない。
敵から鹵獲したワイバーンの拠点への輸送は、レガ子が操るドローンとワイヤーネットが大活躍。
一匹づつの輸送なので時間と手間がかかったのもあるのだが、それぞれが大なり小なりの怪我を負っていた為、運ばれてきた順番にリーゼの魔法による治療が行われたのも、仕事量が増えた理由の一つになっていた。
ちなみに一番重症だったのは、俺が右側の翼を切り落とした、デルバートが乗っていたワイバーンだったりもする。
そのワイバーンも今は、本来はレガシィの車庫にするために作られた拠点施設の大きな部屋の中で、治療でくっ付いたばかりの羽を休めて眠っているはずだ。
重症だったワイバーンのための病室としてビルトインガレージが接収されてしまったため、俺が寝床にしているレガシィは拠点施設の玄関前に移動していた。
昼間の車内は日差しが降り注ぐことで適度に温められ、今は睡眠にはもってこいの環境となっている。
運ばれてきた当初は暴れまくっていた敵のワイバーンも、リーゼが近づいて触れると借りてきた猫のように大人しくなった。
どうやらワイバーンにはリーゼが女神であることが、野生の勘か何かでわかるようだ。
あのポンコツ女神のどこからそのような高貴なオーラが出ているのか、まったくもって不明である。
リーゼによって治療と鎮静化が行われているタイミングを狙い、俺がワイバーンの首に取り付けられていた隷属の首輪を取り外して、あらかじめ〝アイテム複製〟で用意しておいた新しい首輪へと交換していく。
複製の元にしたのは、ハンスさんらが乗っている王国側のワイバーン用に以前作った俺製の隷属の首輪のオリジナルだ。
帝国の首輪に比べると隷属の拘束力を弱めており、意志剥奪の呪いの方はきれいさっぱりと消し去ってしまっているが、それでもハンスさんらが操るワイバーンを見る限り、大きな支障が出ているようには見えない。
また俺が作った首輪には水棲魔物の魔法核に加えて、魔銃用の氷魔力結晶を4つ埋め込んでいる。
そのため炎の属性が加わっていた帝国製の隷属の首輪を外したワイバーンは表面の色が赤から焦げ茶色へと変化し、その後に俺が作った首輪を取り付けると今度は表面の色が焦げ茶色から淡い青色へと属性色へ変化していった。
「なんど見ても、この色が変わる瞬間はキレなのにゃ♪」
俺たちが戦っている間ずっと拠点でお留守番をしていた子供たちは刺激に飢えていたようで、次々と運び込まれてくるワイバーンを見て、一喜一憂してはしゃいでいた。
特にお転婆な性格のミャウなどは、首輪を取り換えて大人しくなったワイバーンによじ登ったりしていて、見ているこっちがヒヤヒヤするほどだった。
治療魔法が使えるアリシアは、俺が重傷を負わせたワイバーンに近づいて心配そうに看病していた。
「えっと・・・俺はわるくないからな・・・」
そんな献身的なアリシアの姿を見ていたら、言いようのない罪悪感に囚われてしまい、独り言のようにそんな事を呟いたりもした。
俺やリーゼがワイバーンの処置に追われていた頃、マイクさんとトニーさんの騎士組の二人は、捕虜にした敵将デルバートと、敵拠点での生き残り兵の監視任務についていた。
拠点に連れてこられたデルバートと敵兵一人には、最低限の治療をリーゼが施している。
この二人は、物置にする予定だったビルトインガレージ奥にある納戸に両手を拘束した状態で閉じ込めることとなった。
ただこの納戸の扉には、監視のために必要な小窓や鍵が付いていなかったため、急きょそれらを俺が作ることになったことと、納戸の中に捕虜が眠るための二段ベッドを創って置くのが面倒な手間だった。
ハンスさんとジャックさんの竜騎兵組は、近くの雑木林から丸太を切り出して拠点施設脇まで運び、それを使って鹵獲したワイバーンをつなぎとめるための柵を作くる作業をしていた。
丸太の切り出しにはワイバーンの魔法技であるアクアカッターが大活躍したらしい。
細かな加工や組み立てには、遺跡の地下倉庫から持ってきた大工道具が役に立っていたようだ。
こんな感じでのワイバーン移送に関連したゴタゴタが全て片付いたのが、すぜに日付が変わってしまった後の深夜。
騎士の人たちは交代で捕虜の監視をするために交互に仮眠を取り始めていたのだが、俺は翌朝にみんなが食べるための朝食の作り置きを調理したり、眠そうだったリーゼの代わりに鹵獲した12匹のワイバーンの様子を見たりで、本格的に寝ることが出来たのは10時頃になってからだったのだ。
なお皆の昼飯用として、カップ麺を数種を寝る前に出しておいた。
粗食でものすごく申し訳ないが、今回はこれで勘弁してほしい。
俺が爆睡している最中、破廉恥な絵柄のシーツに包まれて眠る俺の様子をハンスさんが見に来て、その痛い寝姿が騎士の人たちの間で話題になっていたらしい。
まさに〝知らぬが仏〟とはこのことなのだろう。
そんな俺の至福の眠りも、こちらに向かっていた第6騎士団の到着を告げる知らせが入った午後3時ごろに終わる事となった。
「で・・・クリスはいったい何をしているんだ?」
周囲が騒がしくなったことで自然に目が覚めた俺は、覆いかぶさるようにして顔を近づけていたクリスと目が合い、そんなことを聞く羽目になっていた。
「むぅ・・・起きてしまったか。
せっかく我がエロゲとやらで仕入れた〝目覚めのキス〟とやらで起こそうと思っておったのに」
あなたはいったいナニを言っているのですか?
寝起きの朦朧とした思考で思い浮かんだのが、そんな疑問だった。
そういえばお留守番時の暇つぶし用として、複数のエロゲがインストールされたノートパソコンを非常用電源と一緒に子供たちへ与えていたことを思い出した。
「まさか、キス以外の事までしようとか考えていなかったよな?」
なにせ子供たちがエッチな知識の教科書代わりにしているのが、俺の貴重なコレクションらだ。
油断しているととんでもない事になりかねない。
「そ、そっちは・・・さすがに我もまだ恥ずかしくて出来んわっ!」
途中から逆切れ気味に変化したクリスの枕投げ攻撃を顔面で受けながら、クリスを乗せたまま身体を起こす。
俺の上に乗っかっていた格好のクリスは、俺の上半身が起き上がったことで後ろ向きにレガシィから転げ落ちそうになるが、寸前のところで俺が抱き寄せ、ラゲッジスペースの脇へとどかした。
「むぅ・・・」
色気もなにもない俺の反応に膨れた様子を見せるクリス。
本当は俺も内心では「わーぃ、美少女からの目覚めのキスキタぁー」と素直に喜びたいところではあるのだが、照れ隠しと子供の頃からのひねた性格が災いしてそっけない素振りを取ってしまっていた。
まぁこの性格のおかげで、元の世界では今までロリコンでありることを隠しながら、犯罪なども犯すことなく生きてこれたんだと思うけどね。
使っていた神具類をイベントリへと収納するため、クリスが抱えていた抱き枕を渡してもらうために彼女に向かって手を伸ばす。
「だいたい、このような紛い物など抱きしめずに、我を抱いて眠ればいいものを・・・」
抱き枕を手渡しながら顔を赤らめてそんな事を言うクリスが可愛くて、思わずクリスの手を掴んで引き寄せて抱きしめてしまった。
そして彼女の髪の毛をワシャワシャと撫でながら、無意識のうちのクリスの臭いをかぐという変態行為に及んでしまっていた。
「わっ、こらぁ・・・髪の毛のセットが崩れるっ・・・あと、鼻を押しけて匂いを嗅ごうとするなっ・・・」
うん。
甘いお菓子のような良い匂いがするする。
1分ほどクリスの臭いを堪能してから彼女を解放してあげると、そこには仏頂面を浮かべた彼女の顔があった。
「クリスを抱きしめて寝たりなんかしたら、こんなスキンシップじゃ済まなくなりそうだからな。
まっ、きちんとした籍を入れるまではお預けにしてくれると助かる」
「むぅ・・・」
納得しかねるといった感じのクリスの表情を眺めながら「顔を洗ってくるよ」と告げ、一人で建物の中へと移動して、1階の奥にある洗面所へと向かう。
目が覚めかけた時に聞こえてきた情報だと、第6騎士団がココに到着するまでにはまだ2時間ほどの余裕があるはずだ。
「ちと汗臭いからシャワーでも浴びるか?」
初めて会う第6騎士団の人たちを迎えるのに、昨晩の戦闘で汗や埃まみれになったままのこの状態では失礼にあたると思い、洗面所の隣に作られた風呂場へと足を運ぶことにした。
この風呂場には女神の力で建物をクリエイトしたリーゼの拘りが詰められているそうだ。
風呂場は約10畳ほどもあり、一度に10人は入れそうなほど広い。
湯量や湯温を自動的に管理する魔力ボイラーが取り付けられており、〇ーライオンのような彫像の口からろ過されたきれいなお湯(鉱泉)が湯舟へと常に注がれていたりもする。
またお湯と水が別々に出る蛇口やシャワー設備なども備え、この世界の文化水準に比べると、どう考えてもオーバースペック過ぎる機能が満載となっていた。
ちなみに水源は地下深くを流れている地下水脈で、魔力で動くポンプでくみ上げているそうだ。
リーゼは温泉を掘り当てたかったようなのだが、残念ながら鉱泉しかなくてションボリしていた。
俺からすれば、沸かしなおしたものとはいえ、異世界に来ても温泉に入れるのだから、これでも十分にありがたいのだけどね。
脱衣所にもなっている洗面所へと続く扉をくぐり、そこに置かれていたマッサージチェアもどき(これもリーゼのこだわりの逸品らしい)を横目に見ながら着ている衣服を脱いでいく。
着替えを持ってこなかったことを悔やみながら全裸になると、備え付けのタオルを1枚手に取って浴室への扉を開けた。
浴室に入ると湯気を伴った熱気が全身に当たり、眠気がまだ残っていた頭がハッキリとしてくる。
浴室の中にある無駄に存在感を発揮している〇ーライオン風の彫像が目に入り、その近くでは長い薄緑色の髪の毛を洗っている少女の姿が・・・・。
えっ?
「あ・・・アリシア?」
「きゃっ!
お、お兄ちゃんなの?」
ほぼ同時にお互いの存在に気がつき声を出す。
アリシアは最初こそ慌てて身体を隠そうとしたが、浴室に入ってきたのが俺だと分かると警戒を解いてリラックスした様子に戻った。
そのため、アリシアのいろいろなところが俺から丸見えになってしまっていた。
「わ、わるい。
まさかアリシアが入ってるとは知らなかったんだ。
すぐに出ていくから、アリシアはゆっくりと入っていてくれ」
逆に俺の方は緊張からギクシャクした動作で回れ右をして、浴室から出て行こうとしたが、それをアリシアが止めた。
「お兄ちゃんなら、私は平気だから一緒に入ろう。
あとね・・・髪の毛洗うの手伝ってくれると、嬉しいの・・・」
「いや、さすがに一緒に入るのは・・・」
そう言って振り返ると、こちらの世界で生まれ育ったアリシアは使い慣れていないシャンプーに悪戦苦闘しているようで、涙目になって助けを求めるようにこちらを見ていた。
そういえば、ココに置いてあるシャンプーやリンス、ボディソープなどの入浴用品もリーゼの力作だったっけ・・・。
さすがにあの状態のアリシアを見捨ててこの場から撤退するのは、ものすごい罪悪感を感じてしまうものがある。
俺は大きく深呼吸とため息をつくと、「相手は子供、相手は子供」と呪文を唱えて心を落ち着かせてから、アリシアの洗髪をサポートすることにした。
「こんなにも長いと、本当に洗うのが大変そうだよな・・・」
極力アリシアの裸体を見ないように気を付けながら、余計なことは考えずに、彼女のキレイな薄緑色の髪の毛を洗っていく。
昔、まだ幼かった妹の面倒を見ていた時に、女性の髪の毛の洗い方を従姉に教えてもらったことがあった。
なのでその時に教えられたことを思い出しながら、まずはアリシアが持参していた櫛を借りて、彼女の髪をブラッシングして、絡まっている毛を優しく梳きながらお湯の通り道を作っていく。
本来はこの後に頭皮と髪をよくすすいで、頭部に付いた汚れをシャンプー前によく落とすのだが、すでに彼女は一度我流で洗い始めてしまった後だったので、この工程は省くことにした。
リーゼ特製のシャンプーを掌に取り、よく泡立ててから頭皮につけていく。
こうすることで、シャンプーを泡立てるために髪をゴシゴシこすることが少なくなり、結果として髪の毛のキューティクルを保護することに繋がるそうだ。
髪の毛全体に泡がいきわたったら、まずは手で頭を覆うようにして指の腹を動かし、頭皮を動かすようにマッサージしながら洗っていく。
頭皮を洗い終わったら、徐々に毛先の方へも泡を馴染ませていくのだが、毛先の方はダメージが簡単に入りやすい為、無理にこすったりはせずに泡を纏わせるようにするだけにしておくのがポイントらしい。
その後、時間とお湯をたっぷりと使ってシャンプーをしっかりと流してからトリートメントに入るのだが、ここで一度きっちりと水気を取っておくのが重要なのだ。
そういえば少し前だが美容室関係のコンサル仕事にかかわった時、業界用語としてリンス、トリートメント、コンディショナーは全て別物であることを教えてもらったことがある。
まったく興味が無かった俺にしてみれば全部同じだと思っていたのだが、毛髪の表面をコートするのがリンス、毛髪内部に修復成分を浸透させるのがトリートメント、その両方の効果があるのをコンディショナーと呼ぶのが正しいのだそうだ。
で、リーゼが作ったコレは、どうやらコンディショナーに分類されるらしい。
しかも女神パワーで成分が絶妙に配合された、無駄に高性能なコンディショナーらしい。
そのコンディショナーを掌に取り、アリシアの毛髪になじませるように付けていく。
粗目のクシで髪を梳かしながら、まんべんなくコンディショナーが行き渡るようにし、しばらく放置してから洗い流していく。
ここで俺はアリシアにこのまま少し待つように伝え、脱衣所から備え付けのタオルを大目に持ってくることにした。
実は長い髪の毛のケアで最も面倒なのが、濡れた毛髪の水分取りなのだ。
毛髪は濡れている時が最もダメージが入りやすい為、タオルでゴシゴシ拭かずに、タオルで優しく押さえるようにしてタオルドライをしていく必要があるのだ。
アリシアの髪の毛を洗いはじめてから約30分後、毛髪をタオルで押さえるようにして頭の上にまとめて上機嫌な彼女は、今度は俺の背中を洗ってくれていた。
「自分で洗えるから、アリシアは先に温まってくれていてもいいんだぞ」
「だめだよ、私もお兄ちゃんの手伝いをしたいんだからっ」
そう言いながら一生懸命俺の背中を洗ってくれているアリシアなのだが、時おりタオル以外の感触が背中に当たっているのは気の所為じゃないような気がする。
下手に尋ねると「当ててるんだよ」などという発言が返ってきそうなのであえて聞かないことにしているのだが、おかげで俺の前側はとんでもない事になりつつあったりもする。
なので、俺はひたすら素数を数えるという古典的な対処法でその場を乗り切るのだった。
さらに10分後。
俺とアリシアは仲良く並んで湯船につかっていた。
「えへへへへ・・・お兄ちゃんと一緒にお風呂~♪」
照れながらも、かなり上機嫌なアリシアを横目で見ながら、俺はこの湯船からどうやって上がろうかと頭を悩ませていた。
なにせ、どんなに気を付けていても、一緒に入浴していれば、アリシアの裸体のいろいろなところが目に入ってしまい、すでに俺のナニは収まりがつかなくなってしまっていた。
しかし、そんな悩みは浴室に飛び込んできたクリスによって吹き飛ばされてしまった。
「カオル殿、大変だ!
ミャウ殿が・・・・・・・・・え?」
俺とアリシアが仲良く並んで風呂に入っている姿を見て固まるクリス。
そしてその表情が、怒りが混じった笑いへと徐々に変わっていっていくのが見えた。
あ、これは俺もピンチかも・・・。
ミャウの非常事態の知らせと同じくらい、俺はこの後に襲い掛かってくるであろう自分の非常事態を心配するのだった。
クリス「ほぅ・・・我とのイチャラブは拒否したくせに、アリシア殿とは裸の付き合いをするのだな・・・(怒」
薫「裸の付き合いって・・・風呂場に行ったら、アリシアが先客でいただけなんだよ」
レガ子「あそこをオッキさせた状態で言っても、説得力がないのっ」
アリシア「じ~~~っ・・・・・(ぽっ」
ミャウ「そんな事より、ボクはいったいどうなっちゃったにゃ? 気になるにゃ~~」
作者「まぁ、ミャウが何をやらかしたのかは次号までのお楽しみだな」
ミャウ「ボク・・・怒られるような悪いことしてにゃいよね?」
作者「さぁ・・・・(ニヤニヤ」




