第2章 第31話(第77話) ~重徹のデルバート~
今回は久しぶりに主人公の戦闘シーンです。
なので、書き手の自分としても楽しくそれぞれのシーンを想像しながら書いていたのですが、思うように文章が組み立てられず苦労しました・・・。
結果として、これが書きあがったのが、更新日当日の午前6時ですからね・・・(汗)。
原因は、自分の力量不足もあるのですが、某業界向けの情報専門誌・編集長としての仕事が今週は忙しかったのが大きな要因でした。
仕事の方では、日本政策金融公庫が1月30日発表した1月の「中小企業景況調査」と、1月24日に東京都が発表した「中小企業景況調査」の両方を比較しながら、今年の某小売業向けの景況予想記事というかなり面倒な文章を、会社に泊まりこんで徹夜で書いていました(涙)。
リアル世界向けのお堅い経営アドバイス文章と、ファンタジーな世界観のラノベ文章を交互に書いていたせいで、頭の切り替えがうまくいかずに、予想以上に手間取ってしまいましたね(汗。
来週は東京ビッグサイトで開催中のギフトショーの取材が詰まっています。
来週も仕事との両立で、ラノベ書きに苦労しそうな予感がしています(涙。
「まさか王国に飛んでいるワイバーンを一撃で切り倒す騎士がいるとはな。
遺跡の強襲任務などつまらないと思っていたが、どうやら儂は面白い相手と巡り会えたようだ」
「残念だが、俺は騎士じゃないぞ」
「ほぅ、では何者だ?」
「しがない魔導器製作者だよっ!」
そう叫びながら敵に蹴りを入れて離れ、いったん距離を取る。
「わっはっはっははは、ただの魔導器製作者が儂の渾身の一撃を防いだという訳か?
面白い、面白いじゃないかぁ!
儂は魔導帝国第1飛竜師団所属、第3中隊隊長のデルバート・カルタ―だ。
貴様、名前はなんという?」
「薫・・・カオル・キサラギだ」
『デルバート・カルタ―って、あの〝重徹のデルバート〟ですか?』
デルバートと名乗った敵兵に俺が自分の名前を返すのとほぼ同じタイミングで、拠点の警備についていたマイクさんからの無線通話が飛び込んできた。
『なんです? その中二病のような二つ名は?』
俺は、対峙しているデルバートに隙を見せないように気を付けながらサバイバルベストに取り付けていた無線機用のPTTスイッチを押し、小声で返事をした。
このデルバートとかいう男の情報があるなら、今は少しでも集めておきたい。
『数年前まで帝国の第3騎士団の隊長を務めていた人です。
戦では常に部隊の先頭に立って敵の防御陣形に文字通り〝突貫〟して、たとえ相手が重装歩兵隊列だろうと必ずそれを食い破って突破口を開いていたことから、我々のような他国の兵がいつの間にかそう呼ぶようになっていました』
まさに歴戦の猛者というわけかよ。
厄介な相手とかち合ってしまったもんだ。
とりあえずデルバートの突貫による不意打ちを防ぐために、紅雨に魔力を注ぎ込んで、刀身が纏う火力を最大限にまで引き上げておく。
術者の俺は影響は受けないが、これで俺の周囲は灼熱の空気に覆われていることになる。
これなら、その〝重徹のデルバート〟さんとやらも、容易には突貫してこれないはずだ(と思いたい)。
『しかし、なんでそんな陸戦の猛者が竜騎兵に転身しているんだ?』
俺たちが先ほどまで戦っていた相手は、ワイバーンに乗った竜騎兵であって、その第3騎士団ではなかったはずだ。
『噂では、3年ほど前に帝国がエルフ領へ侵攻した際の戦で足に大怪我を負って引退したと聞いておりました。
我々も急いでそちらに向かいますので、婿殿だけでデルバートと戦おうなどと考えないでください』
どうやらマイクさんとトニーさんがココに向かってくれているらしい。
でも、騎士甲冑を着こんでいる二人がここまで来るには時間がかかる。
さすがにあの敵さんも、そんなにノンビリと待ってはくれないだろう。
しかし足に怪我か・・・それならば、ワイバーンに乗って戦うことが主体となる竜騎兵への転職もありえるか。
そう考えながら、10数メートル先で俺に向かって剣を構えているデルバートの脚を注視してみる。
デルバート脚部は防寒も兼ね備えた衣服と、その上に装着した防具によって肌の露出部が無い為、戦傷などを目視で確認することはできない。
しかし、そういった情報があるうえで改めてデルバートの剣の構えを観察してみると、右足へ体重をかけるのを避けているような不自然さを感じることが出来た。
俺は意を決してデルバートに話しかけることにした。
「おっさん、あんた〝重徹のデルバート〟なのか?」
「ほぅ、その通り名をただの魔導器製作者が知っておるとはな。
いかにも儂がそのデルバートだが、儂が築いた武勲を思い出して降参でもしてくれるのかな?」
俺の問いかけにデルバートは笑いながら左手で自身の顎髭をなでると、その手で被っていた鉄兜を外して投げ捨てた。
「だが、それでは儂がつまらんのでな。
カオルとか言ったな・・・貴様には最後まで戦いに付き合ってもらうぞ」
「たとえ邪魔でも防具は捨てない方がいいと思うぞ。
それとも・・・噂で聞いた怪我による足への負担軽減で、装備重量を減らしたかったのかな?」
「ふん・・・そんな事まで噂になって他国まで流れていようとはな・・・。
足の怪我など、実戦経験がほとんどないように見える貴様相手には軽いハンデくらいにかならんわい」
ちっ、この男・・・たった一度剣を切り結んだだけで、俺に実戦の経験があまりないことに気が付きやがった。
歴戦の猛者で、かつて騎士団の隊長にまでのし上がった実力は本物ということか。
『薫さんらがいる場所を狙撃できる場所に向かって移動中です。
あと10分でいいですから、なんとか時間を稼いでください』
無線にリーゼからの声が飛びこんできた。
この事態に彼女も慌てているのか、声にいつもの間延びした感じが一切なかった。
普通に話せるのであれば、普段からもそうしていればポンコツ感が軽減されるだろうに。
『さすがにこのおっさん相手に10分も粘るのは厳しそうだ。
リーゼのいる方に俺が翼を切ったワイバーンが落ちているはずなんだが、まだ息があって助けられるようなら頼む』
彼女なら、切った翼さえもくっ付けてしまいそうだしな。
『薫ささまが死んじゃったら、捕まえたワイバーンが1匹増えても無意味なのっ。
今そこに向けて、用済みになったドローンを全部向かわせているのっ。
だから、なんとか時間を稼いで欲しいのっ』
今度はレガ子の切羽詰まった声が無線に割り込んできた。
気持ちわからないでもないが、俺があのおっさんに負けることが前提の設定にちょっとイラッとしてしまった。
「あとで俺に負けたのを、足の怪我の所為にしないでくれよなっ」
余裕の表情を見せるデルバートにそう言って八つ当たりをしながら、紅雨の刀身が纏っていた炎を、散弾のように細かく分けて奴の方へと撃ち放った。
しかし、デルバートはそれを最小限の動きだけで回避し、避け切れない炎だけを〝剣で切って打ち消して〟いた。
「貴様が使うその炎の魔剣、なかなか面白いな。
たしか魔導器製作者と言っていたな、ソレは貴様の作品か?」
「俺と相棒との合作だよ。
そういうおっさんの剣も普通じゃないよな?」
普通の剣は、魔法を切って打ち消すなんて芸当できないはずだからな。
「ふん・・・魔物討伐用に作られた対炎属性用の魔剣がこんな形で役に立つとはな・・・」
なるほどね・・・。
どうやら帝国の連中は、以前からココの遺跡を狙って装備を整えていたということか。
「つまり、その剣は炎属性以外の魔法は打ち消せないわけだな。
貴重な情報ありがとうよ」
皮肉を言いながら、紅雨を横一文字に薙ぎ、刀身が纏っていた炎を横方向に伸びた炎の線にして飛ばす。
しかしデルバートはそれを真上にジャンプして躱し、隠し持ってい短剣を投擲してきた。
「その魔剣は炎しか生み出せんのだろう?
ならば知られたところでどうという事はない」
飛んで来た短剣を、左手に嵌めた魔力運用グローブが生み出す防御障壁で受け止める。
「それはどうかな・・・」
そして右手に持っていた紅雨を地面に突き立てると、その手で魔銃・H&K USPを抜いて構え、デルバートに向けて撃ち放った。
ちなみにH&K USPのマガジンに入れていた魔力結晶化BB弾の色は水色だ。
回避行動がとりにくい空中で、H&K USPから撃ち出された魔法弾を魔剣で迎撃したデルバートの顔が驚きの表情に変わった。
奴が手にしていた魔剣は、魔力弾を切った瞬間に刃に分厚い氷で覆われてしまい、剣として役に立たなくなっていた。
「氷の魔法を出す道具だとっ!?
しかし、氷結魔法は数発くらい直撃したところで動きが鈍くなるだけだ」
「その認識もどうかな?」
俺は氷の魔法弾を撃った次の瞬間にマガジンをリリースして排出し、代わりに黄色の魔力結晶化BB弾が詰まったマガジンを叩き込んでいた。
そしてデルバートが着地する瞬間を狙って撃つ。
「ぐがぁぁっ。
今度は雷撃魔法だとっ!」
俺の攻撃が地面に足を括りつけるための氷結魔法だと思い込んでいたデルバートは、着地した左足に雷撃弾をまともに受けてしまっていた。
とっさに無事な右足で踏ん張ろうとしたものの、古傷が癒えていない右足では着地の衝撃を受け止めきれず、体勢を崩してその場に膝をついてしまっていた。
俺は倒れかけているデルバートに対して、そのまま畳みかけるように雷撃弾を連射する。
しかしデルバートは、その体勢から手にしていた凍り付いた魔剣を投げつけて雷撃弾を空中で迎撃すると、残りの雷撃弾も不利な体勢であったにもかかわらず避けて直撃を防いでいた。
とはいうものの数発は掠っていたようで、肩や腕に雷撃が当たってくすぶった痕跡が付いていた。
「貴様・・・いったいいくつの属性が使える魔導武器を持っている」
悔しそうに地面に片手を付き、苦しそうに息を吐いて呟くデルバート。
「それほどの魔導武器が生み出せるのに、なぜ王国兵の装備に魔導武器が配備されていない?」
地面に突き立てていた紅雨を引き抜いた俺を見て、観念したデルバートがそんなことを聞いてきた。
「コレらは俺専用の武器なんだよ。
王国兵の装備は、まぁ・・・これから考えるさ」
意気消沈したデルバートを見て、勝負がついたと思い、紅雨を鞘に戻す。
しかし、その甘い判断が大きな間違いであったことを、俺は次の瞬間思い知ることになった。
「戦場で敵兵の命も取らずに刃を納めるとは、笑止っ!」
デルバートを捕虜にしようと近づいた俺に、奴は最後の力を振り絞って〝突貫〟を仕掛けてきた。
その手には、まだどこかに隠し持っていたのであろう短剣が握られており、その切っ先を俺の喉元に向けて突撃してきた。
「ぐっ!!」
とっさに魔力障壁を前面に展開してデルバートの〝突貫〟を見えない壁で受け止めるが、ぶつかってきた時の運動エネルギーを殺しきれずに後ろへと押されてしまっていた。
「その防御魔法も魔導武器の力だというのか?
しかし今この場で貴様を葬ることが出来れば、王国の魔導武器製造は頓挫すると確信した!」
ずるずると後ろに押されてしまった俺は、いつの間にか岩山を背にするようにして追い込まれていた。
デルバートの攻撃は魔力障壁によって阻まれているものの、想像以上に奴が押し込んでくる力が強く、魔力障壁を展開している掌を両腕で支えていないと厳しいほどだ。
このままでは片手防御に変えて武器を取ることもできず、まさにじり貧状態だ。
「貴様の命、帝国の為に儂の命と相殺してでもこの場で・・・」
すぐ目の前に迫っていた魔力障壁デルバートの表情から恐ろしほどの殺気を感じ、恐怖から思わず目をそらしてしまったその先に、見慣れた物体がこちらに向かって猛スピードで飛んでくるのが目に入った。
それはレガ子がココに向けて急行させていたF-35戦闘機によく似た形状のドローンたちだった。
もはや俺だけしか見ていなかったデルバートは、飛来してきたドローンの気配にまったく気が付いていなかった。
俺たちに向かって猛スピードで飛来したドローン2機の機首が、文字通りデルバートの肩やわき腹に突き刺さり、そのままデルバートを側方へを弾き飛ばしていく。
「なっ、こんな時に鉄の魔物だとっ!」
どうやらデルバートにはドローンが魔物の一種に見えているようだ。
まぁこの世界の住人は戦闘機や飛行機など見たこともないから仕方ないか。
『薫さまっ、電磁ネットをゼロ距離起爆するのっ』
そんなレガ子の声が聞こえ、ドローンと一緒に飛ばされたデルバートを見ると、奴に刺さったままのドロンの腹に噴進弾がくっついたままなのが分かった。
そして次の瞬間、それぞれのドローンが抱えていた2発の噴進弾が炸裂し、デルバートの全身に電磁ネットの網を二重に覆いかぶせていた。
電磁ネットが放つ強力な放電の下で、ぴくりとも動かなくなったデルバート。
つい今しがたまで殺し合いをしていた相手にもかかわらず、ショック死していないかが心配になってしまうほどの絵図らだった。
『上に待機させたドローンのスキャンだと、そのおっさんは死んでいないのっ。
きれいに気絶しているだけなのっ』
まるで俺の心の声を聞いていたかのようなタイミングで聞こえてきたレガ子の報告に、思わず笑いが出てしまった。
それから約15分後・・・息を切らせたマイクさんとトニーさんがこの場所に駆け込んできたので、気絶しているデルバートの捕縛をお願いすることにした。
ちなみにハンスさんとジャックさんの竜騎士チームが戦っていた最後の敵竜騎兵も、あの後は彼らの勝利で決着がついたそうだ。
「まさか婿殿おひとりで、あの〝重徹のデルバート〟を倒してしまうなんて・・・」
地面に倒れているデルバートの姿を見たトニーさんが、俺の顔とデルバートを交互に見ながら信じられないといった感じで捕縛作業をしていた。
「しかし、これほどの敵将の捕虜は貴重な戦果です」
マイクさんは、デルバートの捕縛は騎士団長に報告したら相当喜ぶのではないかと嬉しそうだった。
まぁ・・・こちらの通信用魔導器が傍受されているのが分かってしまった今、その報告をどうするかも頭が痛い問題なんだけれどね。
『薫さ~ん、ご無事でしたかぁ~~。
落ちていたワイバーンさんは、切れた翼も繋いで、きっちりと治療しましたのでご安心を~』
いつも通りの間延びした口調で、リーゼから保護を頼んでいたワイバーンの無事が知らされた。
うん、リーゼはあのポンコツ口調であってこそ癒しを感じることが出来るよな。
しかし、俺が切ったあの翼を本当にくっつけたのか?
あれって人間に例えるなら、切った手足を繋げるようなものだよな?
さすが女神様のチート治療術だな。
『カオル殿、お疲れさまじゃった。
一時は、我も、ここ居るアリシア殿やミャウ殿もヒヤヒヤして聞いておったのじゃぞ。
姿が見えずに、音声だけで状況が入ってくるというのは、場合によっては心臓に悪いのじゃ』
安全な拠点で待っているちびっ子を代表して、クリスからそんな労いと苦情が同時に届いた。
『心配させてしまい悪かった。
帰ったらみんなの要望を聞いてあげるから、それで勘弁してくれ』
『ほぅ・・・約束だから、違えるでないぞ』
楽しそうな笑いを残して消えたクリスからの通信を聞いて「はやまったかな?」と感じ、冷や汗が流れる。
『ともあれこれで敵のワイバーンは12匹全部の鹵獲が成功なのっ♪
野営陣地にいた敵兵も一人だけ生きていたから、今ハンスさんらが捕縛中なのっ』
『戦いは終わったけれど、捕虜の確保や鹵獲したワイバーンの移送、隷属の首輪の処理など、まだまだやらないといけないことは多いな。
みんな、あともうちょっとだけがんばろう』
仲間たちからの威勢の良い返事を聞きながら、この日の夜は徐々に更けていくのだった。
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今回の獲得ポイント(レガシィの経験値基準)
●移動走行距離ポイント:22ポイント
●撃破ポイント
〇帝国兵(竜騎士):840ポイント(140ポイント×6人)
〇ガレドラゴン:768ポイント(48ポイント×16匹)
〇ガレドラゴンの卵:144ポイント(12ポイント×12個)
●消費ポイント
〇ナパーム弾生成:-16ポイント(-1ポイント×16発)
〇電磁ネット弾生成:-32ポイント(-1ポイント×32発)
現時点での総ポイント数:3万5478ポイント
(3万2000ポイント到達でレベル17へ昇格達成)
(レベル14、15、16へ昇格済で権利未使用)
※レガ子の獲得ポイント:レガシィの経験値基準から-1ポイント
(武器クリエイトによる消費分など)
(3万2000ポイント到達でレベル17へ昇格達成)
(レベル14、15、16へ昇格済で権利未使用)
※主人公の獲得ポイント:レガシィの経験値基準から-44ポイント
(装備クリエイトによる消費分など)
(3万2000ポイント到達でレベル17へ昇格達成)
(レベル14、15、16へ昇格済で権利未使用)
レベルアップに必要な獲得経験値の数値。
(異世界での走行は1Kmに付き1ポイントが自動的に付与されます)
レベル17 32000ポイント
レベル18 40000ポイント
レベル19 48000ポイント
レベル20 56000ポイント
レベル21 65000ポイント
レベル22 74000ポイント
レベル23 81000ポイント
レベル24 90000ポイント
レガ子「おわったの~~っ♪ 思う存分暴れられたの~~っ♪」
薫「俺は死ぬかと思ったけどな・・・」
リーゼ「わたしはもう少し撃ちたかったです(しょんぼり)」
マイク、トニー「「我々は出番すら全くありませんでしたが・・・」」
ハンス、ジャック「「俺たちは活躍の場面があってよかったな・・・」」
作者「しかし、これで余剰ワイバーンが手に入ったから、マイクさんとトニーさんも竜騎士にジョブチェンジ決定だね」
マイク、トニー「「えっ?」」
マイク「自分・・・高いところが若干にがてなのですが・・・(汗)」
レガ子「怖いのは最初だけなのですよ~っ♪ す~ぐに、気持ちよくなるのですよ~~♪」
薫「そのモノマネネタをするのはやめなさいって・・・」
レガ子「¥e(えんい~)」