第2章 第25話(第71話) ~遺跡探索 その7・リーゼさん帰還不能~
今回は懐かしいエロゲネタで少し遊びました(苦笑)。
お話し的には、第1章の最後に書いた番外編(第1章 第39.4話)の伏線回収もかねています。
これでようやく本編の方にシスターズの娘っ子たちを堂々と出すことができますね。
まさか、この遺跡探索のお話しが7回もの分割になるほど長くなるとは思ってもいませんでした。
でも次回からは、やっと遺跡の外に出てお話が進むことになりますね。
『話しは全部聞かせてもらったのっ!』
俺が異世界の婚姻制度の素晴らしさについて思いをはせていると、部屋の中でホバリングをしていたドローンからレガ子の声が突然響き渡った。
『レガ子も含めての合同結婚式をするのなら、なにも文句はないのっ。
というか、ほぼレガ子の目論見通りの展開なので大歓迎なのっ』
「おいっ」
『人間と同じサイズになれたとしても、肉体を持たないレガ子には薫さまの子供は生めないのっ。
だから薫さまの子孫を残すためにも、現地妻の必要性は感じていたのっ』
「マテこら」
俺の予想の斜め上をいく計画を立てていたレガ子の考えを聞いて、ちょっと頭が痛くなってきた。
そういえばこの手の話しに、あの焼きもち屋のレガ子が何も口を出してこなかったことを疑問に思うべきだった。
『そんな事よりも、あと1時間もすれば第5騎士団の新米竜騎兵が到着しそうなのっ。
ダンジョン探索が終わったなら、一度外に出てきてほしいのっ』
「了解だ。
ココにある危険物を回収したら、上に行くよ」
レガ子の声を発しているドローンに向かってそう答え、俺はリーゼにあの忘れ物の回収を指示するのだった。
「それでは私は、この道具を世界樹の保管庫に納めるために、一度神格体へと戻って管理領域へと帰りますね。
その間、だれかテェアちゃんを預かってくれませんか?」
「ちっちゃな竜さんは、私が面倒見ています」
アリシアがリーゼの元に歩み寄り、彼女の膝に乗っていたエメラルドドラゴンの幼体を受け取る。
「う~~ん、テェアちゃんかわいいなぁ~~」
アリシアは受け取ったちび竜を思いっきり抱きしめて、ぬいぐるみを愛でるように頬ずりしていた。
しかしそんな抱擁が鬱陶しいのか、ちび竜はアリシアの腕の中から逃げようと暴れている。
リーゼはそんな二人(?)の姿を微笑ましいものを見るように眺めた後、彼女が大昔にこの世界に忘れ物として置いていったピンク色の巨大ハンマーを手に取るために、研究室の中央スペースへと歩いて行った。
そして「よっこらしょっ!」と、やや婆くさい声をだしてハンマーを持ち上げると、そのまま肩の上に担ぎ上げた。
俺はその姿を見てある悪戯心が芽吹いてしまった。
「なぁリーゼ・・・ちょっとお願いがあるんだけどいいか?」
「なんですかぁ?」
「そのハンマーを両手で持って、刀を構えるように身体の前で構えてみてくれないか?」
「えっ?
こ・・・こうですか?」
俺に言われるまま、頭の上に疑問符を浮かべながらリーゼがハンマーを構えた。
「で、ハンマーを振り下ろしながら、『そ~れ、にゃう~ん』と言ってみてくれ」
「まったく・・・なんなんですか薫さん・・・『ピンプル、パンプル、ロリポップン、まじかるまじかる、るんららぁ~、そ~れ、にゃう~~ん』・・・って、なにをやらせるんですかぁ~~」
やっぱりこの女神様は、この元ネタを知っていたようだな。
しかも俺は要求していなかったのに、某魔法少女(もちろんエロゲの登場人物)が唱える呪文の全文をノリノリで再現してくれたよ。
「グッジョブ!
元ネタでお約束の破壊活動まで再現されると困るので、さっさとソレを片付けてきてくれ」
リーゼがたった今行った奇行を目にして、俺の両隣にいるクリスとミャウの表情が引きつっていた。
またリーゼのすぐそばにいたアリシアも、ちび竜を抱きしめながらなぜか後ろ足でゆっくりと後退し、リーゼとの距離を取ろうとしていた。
『薫さま・・・リーゼさまをいぢって遊ぶのは程々にした方がいいともうのっ』
俺の頭上でホバリング中のドローンから、レガ子の声でそんな注意を言われたが、俺はしっかりと見ていたからな。
ドローンのカメラがリーゼの奇行をしっかりと追っていたことを。
「そんなことを言うが、お前はさっきのアレを録画していただろう」
『当然なのっ。
あんな面白いモノ記録しない方がどうかしているのっ』
そんな周囲の状況や反応を目の当たりにして、リーゼの表情が徐々に泣き顔へと変化していく。
「う˝・・・」
リーゼは瞳にマジで涙を浮かべていた。
やばい、ちょっといぢめ過ぎたか?
「薫さんの馬鹿ぁ~~!!」
泣きながら元ネタでお約束の捨て台詞を叫んで部屋の出口へと駆け出したリーゼは、その出口に向かって掌を翳して呪文のようなものを唱え、その出口の手間に空間の裂け目のようなものを作り出した。
そういえばリーゼが女神っぽい力を使うのを実際に見たのは、これが初めてではないだろうか?
別に疑っていたわけではないのだが、その現象を目にして「本当に女神だったんだな・・・」などと思ってしまった事はナイショだ。
リーゼは走った勢いのまま、その空間の裂け目に飛び込んだ。
が・・・
なぜか次の瞬間には空間の裂け目から弾き飛ばされて、彼女は研究室の床を転がっていた。
「にゃ・・・にゃうん?」
リーゼは自分の身に起きた出来事が理解できずに、床の上に座り込んで空間の裂け目を見ながら茫然としている様子だった。
とりあえず俺はリーゼの様子が心配になったので、彼女のそばに駆け寄り、手を差し伸べて引き起こすことにした。
「怪我はないか?」
「ど・・・どうして霊脈に入れないのよ~?」
差し出された俺の手を握って起き上がったリーゼは、先ほど飛び込もうとしたものの入ることができなかった空間の裂け目をジッと見つめてていた。
その声は驚きのあまり、わずかながら震えているようだった。
「霊脈に入ることができないと、世界樹の管理領域に戻ることができないのに・・・。
このままじゃ私、帰る事ができないじゃないですか~。
困ったよぉ~」
そのまま頭を抱えて、近くにあった作業デスクにもたれかかってしまう。
すると次の瞬間、空間の裂け目の前方に12~13歳くらいの少女の立体映像が浮かび上がり、リーゼに向かって話しかけてきた。
「お困りですかぁ~、オリジナル様」
その少女は、さきほどの奇行の元ネタに登場するお約束のセリフをなぜか口にしていた。
「あっ、1号ちゃん。
そうなんだよ~、なぜかわからないけど、霊脈に入れなくなって困っているの~」
しかもその少女はどうやらリーゼの知り合いだったらしい。
というか・・・1号ちゃんってそれは名前なのか?
その1号ちゃんと呼ばれた少女は、情けない声で助けを求めるリーゼを見て大きなため息をついていた。
そういえばこの少女、なんとなく容姿がリーゼに似ていないか?
髪型こそおかっぱ風になっているが、リーゼの外見年齢を幼くするとちょうどこんな感じの少女になるような気がするぞ。
「はぁー、オリジナル様の帰還は、私たちがシステムに細工してブロックさせていただきました」
「えっ!? なんでそんなイヂワルをするのぉ!?」
「まだわずかな期間ですがオリジナル様の仕事を引き継いで代行させていただいて、そのいい加減な仕事ぶりに呆れさせていただきました」
「う、うぐっ・・・」
「なので他の姉妹たちと相談し、検討した結果、オリジナル様のなまけ癖が直るまで追い出す・・・もとい、そこの薫様にお預けして性根を叩き直してもらうことになりました。
これは姉妹たちの総意です」
「う˝~~」
なんだ・・・この展開は?
リーゼって、俺たちの世界が所属している世界樹を管理している一番偉い人なんだよな?
なんで、そのリーゼが世界樹から追い出されているんだ?
というか、この世界樹にリーゼ以外の管理者はいないはずじゃなかったのか?
そんなことを頭の中で考えていたら、おかっぱ頭の少女が俺の方を向いた。
「それについては私・・・1号からお答えしましょう」
「まて、俺は今何も口にしていなかったよな?」
「私は今、世界樹の霊脈と同調しながらこの場に映像を送っていますので、周囲にいる知的生命体の思考を読むことぐらい簡単なことです」
うわぁ・・・なんかリーゼよりもこの少女の方が神様っぽくないか。
「それ、言葉にするとたぶんオリジナル様がマジに泣くので口にしないようにお願いします」
あれ?
リーゼの事を気に掛けているぞ。
この少女はリーゼの事が嫌いになって追い出したわけじゃないのか?
「別に私たちはオリジナル様の事を嫌ったりなどしていませんよ。
オリジナル様は、私たちの生みの親でもありますので、むしろあなた方の言う〝家族愛〟に似た親しみすら持っています」
「じゃぁ、なんでリーゼを追い出したりしたんだ?」
「それは先ほども申し上げたとおり、オリジナル様の怠け癖を直すためです。
いわば愛の鞭ですね」
そう言ってややドヤ顔っぽい表情を浮かべるおかっぱ頭の少女。
あっ、この娘・・・たぶんSの気質があるぞ。
「失礼ですね薫様は、私は別にオリジナル様の泣き顔を見て喜んだりなどこれっぽっちもしていませんよ」
「そんな愛はいらないよぉ~」
おかっぱ頭の少女が告げた真相に対して抗議の声を発するリーゼ。
しかしその抗議に対しておかっぱ頭の少女は、すぐ横の空間にSFに出てくるような空中スクリーンを出現させると、そこに明らかにこの世界の場所とは違う映像を映し出した。
「あのですねオリジナル様・・・私たちがオリジナル様の命に従って世界樹のあちこちに行ってメンテナンス業務をしましたが、各地の様相はそれはひどいモノでしたよ。
本当に必要最低限のメンテナンスだけで何万年という単位で放置してあった霊脈がどれだけあったと思っているんですか?」
「うっ・・・
れ、霊脈はマナが通りさえすれば、多少回路が汚れていたって・・・」
あっ、ダメだこの女神様は・・・。
それは掃除とかができない汚女の理屈だぞ・・・。
スクリーンに次々と映し出される、周囲が黒ずんだ状態の霊脈の内部と思しき映像を見て、リーゼの言葉が徐々に尻つぼみになっていく。
「もはやオリジナル様に創っていただいた10号までの姉妹では手が足りずに、今は新たに創った25号までが総出で世界樹の再メンテナンスを行っている状況です」
次にスクリーンに映し出されたのは、目の前にいるおかっぱ頭の少女と瓜二つの少女たちが、何かの装置らしきものを使って霊脈の周囲を清掃している映像だった。
少女たちの仕事能力が高いのか、それとも手にしている装置の性能が良いのか、黒ずんでいた霊脈の内部が見る見るうちに黄金の輝きを取り戻していく。
「オリジナル様はこいうった便利な道具を生み出す才能があるのに、どうしてきちんと活用するために働かないんですか?」
「だってぇ・・・
面倒なんだもん・・・」
リーゼが口にした小さい子供のような屁理屈を聞いて、この場にいる全員がため息をついたのが分かった。
しかも、アリシアが抱いているちび竜までもが溜息をついていたように見えたんだが・・・。
おかっぱ頭の少女は「ダメだこりゃ・・・」と小声で呟いた後、俺の方を向いて深々と頭を下げた。
「こういった状況ですので薫様には面倒をおかけすることになりますが、オリジナル様の根性を叩き直すためにご協力をお願いします」
「う˝うぅ・・・」
そしてリーゼは捨てられた子犬のような瞳で俺の事を見ていた。
「俺がリーゼを甘やかしてしまう可能性は考えないのか?」
「オリジナル様が一緒になってからの今までの行動を観察していましたが、アレでもこっちにいる時に比べればオリジナル様は働いています。
なので、基本は今までどおりに接していただければ十分です。
欲を言えば、少しずつでかまいませんので、オリジナル様へ与える仕事量を増やしていただけると嬉しいです」
「リーゼ・・・お前は今までどれだけダラけた生活をしていたんだ?」
「え・・・ええと・・・炬燵、ゲーム、お酒・・・最高!みたいな?」
あぁ・・・酔っぱらって炬燵に潜りながらゲーム機のコントローラーを握り締めたリーゼの姿が鮮明に思い浮かんだぞ。
しかも炬燵の周囲に謎の黄金水が入ったペットボトル付きで・・・。
俺らの世界・・・こんなダメ女神に長年管理されていて良く滅ばなかったと、神様以外の存在に感謝しないといけないかもしれない。
「そういえば、君たちは何で全員が同じ姿なんだ?
よく見れば容姿はリーゼにそっくりだし」
「それは私たちシスターズが、オリジナル様の神格情報を基にして作り出された複製体だからです。
薫様の知識に照らし合わせて分かりやすく言えば、クローンみたいなものでしょうか?」
「え?
神様のクローンて作れるのか?」
「管理者権限のランクはオリジナル様よりも低く、奇跡や神罰を起こすことができる霊力もかなり劣りますので、オリジナル様の完全な代わりにはなれません」
「そうなのか?
リーゼと比べると、仕事熱心で真面目そうに見えるから、君の方が神様っぽく見えるんだがな」
「それはオリジナル様が、私たちを創る時に〝理性〟と〝仕事に対する使命感〟を強化してくださった賜物ですね。
あとそのセリフは先ほど禁句だと申し上げたはずですが・・・」
なるほど、リーゼは自分の仕事を楽にするために召使みたいなものを作ったのはいいけど、倫理観を与えすぎて自滅したのか・・・。
「しょうがない・・・リーゼが居てくれないと困ることも多いからな、君の要求をのんでリーゼは俺のところで預からせてもらうよ」
「ありがとうございます、薫様」
「ただ、リーゼには元の世界に残してきた俺の家族との連絡役を仕事として頼みたかったので、彼女の能力があまり制限されてしまうと困るんだが・・・」
俺はあえて〝仕事を頼む〟というニュアンスを強調して、少しばかりリーゼに助け舟を出してあげることにした。
この駄女神さまには、それなりに助けられたりもしているからな・・・これくらいの事はやっておいてあげたい。
「ふむ・・・」
「あとリーゼの治癒魔法とか動物に好かれる能力にも助けられているので、その辺も考慮してもらえると助かるし、彼女が今手にしている物騒な道具をそっちに保管してもらう仕事もしてほしい」
おかっぱ頭の少女は少々長い時間何かを考えた後、「わかりました」と言って顔を上げた。
「他のシスターズ達と交信して協議した結果、オリジナル様が〝1028a〟と〝1028b〟の世界を行き来する時やどうしても世界樹の中に入らなければならない時には、この2号が同伴することになりました。
ちなみに〝1028a〟がこの世界、〝1028b〟が薫様がいた世界の管理番号になります」
おかっぱ頭の少女がそう言うと、その後ろにあった空間の裂け目が光り、おかっぱ頭の少女と瓜二つの少女がこの部屋に現れた。
最初に現れたおかっぱ頭の少女は立体映像だが、今度のおかっぱ頭の少女はリアルボディだ。
「初めまして薫様、私が今紹介のあった2号です」
「あっ、どうも・・・というか、君たちは個別の名前とかないのか?
女の子を番号で呼ぶのはどうにも・・・」
しかも〝2号〟だなんて、もし誰かに紹介しなきゃいけない場面に出くわした時に、とんでもない誤解を招きそうで怖いよ。
「そのような名称はありません。
なんなら薫様が名前を付けてくれますか?」
「あっ、だったら~生みの親である私がぁ~」
「オリジナル様は余計なことをしないでください。
いくら私たちでも、お酒の名前を付けられるのは我慢できません」
「しょぼ~~ん」
幼竜への名付けで味を占めたリーゼがシスターズへの名付けを買って出たものの、速攻で拒否されてしまい、落ち込んでしまった。
とはいえ・・・俺も名前を付けるセンスは皆無だからなぁ・・・。
新たに表れた2号と呼ばれている少女を見ると、名前を貰えることを期待しているようで、とても断れる雰囲気ではない。
「う~ん・・・リーゼの子供みたいなものだから、コリーゼ・・・じゃダメか?」
我ながら酷いセンスだとは思う。
「わかりました。
それでは今後私が皆さんの前に現れた時には、コリーゼとお呼びください」
あれ?
もしかしてこんな名前でも喜んでくれている?
コリーゼの表情が若干柔らかくなって、しかも頬が赤くなっているようにも見えるぞ。
「さて、オリジナル様にはシスターズ全員からお説教・・・もといお話がありますので、いったん私と一緒に世界樹の中まで来てください」
「はぅん・・・」
「では薫様、いったん失礼します。
オリジナル様は1時間ほどお借りしていきます」
そう言い残してコリーゼはリーゼの腕を引っ張ると、二人一緒に空間の裂け目へと消えていった。
気が付けば1号と呼ばれていた少女の立体映像も消えており、空間の裂け目そのものもいつの間にか消滅している。
この場からリーゼの姿とピンク色のハンマーが無くなった事以外は、騒ぎが起こる前と同じ静かな状態に戻っていた。
「と・・・とりあえず外に出ておくか?」
突然通り過ぎた嵐のような出来事に一切声を発することができずにいた子供たちに声をかけ、俺たちは当初の予定通り遺跡の外に向かって歩き出すのだった。
コリーゼ「これで私たちもハーレム要員に正式参加開始ですね」
レガ子「ちょっと待つのっ!
ちびっこどもは外見が10歳児だから薫さまの倫理観が邪魔をして、そう簡単に喰われないと安心しているけど、あなたの外見年齢はかなり危険なのっ!」
薫「ちょっ・・・」
コリーゼ「私たちの身体はおねえ様と一緒で疑似生命体だから、もし喰われても妊娠の心配はないから問題なしです」
リーゼ「むしろ薫さんにはご褒美のような存在ですよね~」
薫「ごくり・・・」
久美「もしもし、警察ですか? 異世界にいる義兄が・・・」