第2章 第23話(第69話) ~遺跡探索 その5・真実・・・そして提案~
遺跡内でのお話しが、まだ少しだけ続きそうです。
今回のお話しは、第1章の時に女神リーゼが主人公にお願い事として語った、過去の出来事の再確認と補足事項が中心になっています。
最初は、子供たち(ヒロインら)への過去の出来事の説明は数行の経過報告だけにして省いてしまおうとも思っていたのですが、再度の説明と確認の意味を含めて、改めて会話形式で展開させてみました。
俺に掴みかかり睨みつけた状態のまま、俺が言った言葉から何かを感じ取ったクリスが戸惑いの表情を浮かべて俺の瞳を覗き込んできた。
アリシアやミャウも驚いたようで、立ち止まって俺の方を見ている。
もうこうなってしまっては、俺の正体や本当の目的について彼女たちに話した方がいいだろう。
「リーゼ、俺たちの正体と目的をクリスだけでなくアリシアやミャウにも話すが、かまわないよな?」
「いいですよ~。
まぁ、この先も一緒に旅をするならば、いずれは打ち明けないといけない秘密でしたしね~」
俺が語ろうとしていた秘密にリーゼまでも関係している事が分かり、さらに混乱した様子になる子供たち。
俺の服を掴んだままのクリスの頭を優しく撫でて落ち着かせると、アリシアとミャウも呼んで、研究室内にあったソファーへと座らせた。
そして反対側のソファーに俺とリーゼが腰かける。
「3人には初めて明かすが、俺はこの世界の人間じゃない。
神様みたいな存在に、ある目的のためにこの世界に連れてこられた、全く別の世界・・・異世界の人間なんだ」
俺の突拍子もない告白に、3人の娘っ子が息をのむのが分かった。
「その、異世界・・・というのは、いったい何なのだ?
もしや、海の向こうにあるという魔族の世界の事で、カオル殿は魔族なのか?」
「俺は人間・・・人族だよ」
ああ・・・この世界の人たちには〝異世界〟とか〝多次元世界〟とかいう概念がないのか。
さて、どう説明したらいいのやら・・・。
「クリスちゃんは、この世界に大昔に栄えていた魔法王国のことは知っているよね?」
俺が異世界についてどう説明しようか悩んでいると、隣に座っていたリーゼが助け舟を出してくれた。
「むろん知っておるぞ。
もっとも、書物に記された伝承レベルではあるがな」
「その魔法王国の時代に、この世界には存在しない大陸の国と交流や貿易をしていた事があったんだけど~、そういった記録は残っていなかったかな?」
リーゼの質問にクリスが少し考え込む。
「たしかに一部の伝記には、そのようなこの世ではない場所に行っていたような記述はあるが・・・あれは御伽噺のようなものではないのか?」
どうやらこの世界に生き残った今の人たちには、大昔の文明が次元の壁を越えて異世界と交流していたことは御伽噺のような空想の産物だと思われているようだ。
まあ俺が居た元の世界だって、アトランティスやムーといった現存した形跡がない文明の話は、御伽噺扱いと大差なかったしなぁ・・・。
「アレは御伽噺とかじゃなくて、本当に違う世界の文明と交流していたの。
当時の魔法技術の粋を集めた転移装置を使ってね、海の上の空間に大きな歪みを作って、貿易船ごとその歪みに入ってココとは全く別の空間へと移動していたの」
「それは、迷宮の森で見つけた転送の魔導器みたいなものなのか?」
リーゼの説明を聞いてクリスが思い浮かべたモノは、ゴブリンやオークが大量発生した原因となったあの装置だったみたいだ。
ちなみに俺も同じ装置を思い浮かべていた。
「う~~ん・・・結果は似ているけど、概念がかなり違うかなぁ~」
しかしリーゼが言う〝転移装置〟というのは、全くの別物だったようだ。
「この世界ともう一つの世界はね、すぐ近くで向き合わせた鏡のように、大昔はお互いに影響し合えるようなとっても近い存在だったの。
森で見つけた転送装置は対象をマナに分解して運ぶものだけど、大昔にあった転移装置は対象をそのままの状態で別の空間に跳ばすものだったのよ~」
「そんな事が可能なのか?」
これはクリスではなく俺がリーゼにした質問だった。
クリスはリーゼが語ってくれた大昔の事実に関する報告を、自分の中にある知識と合わせて検証しながら、何かを考えている様子だった。
ちなみにアリアとミャウは、あまりにも突拍子もない話のため、完全に目が点になっていた。
「あの頃の二つの世界は霊脈の基部を同じにした双子みたいな関係だったからね~。
二つの世界の距離があまりにも近かったから、強引に点と点を伸ばしてくっ付けるみたいな感じで、もう一方の世界の同一座標に無理やり空間を繋げていたのよね~。
まぁ~、他の異世界とだと絶対に無理な移動方法だけどね~」
クスクスと笑いながらそんな説明を続けるリーゼの方を見ていたクリスが、その説明から何かを感じて俺の方を見た。
「もしや・・・カオル殿は、その大昔に交流があった世界とやらの住人なのか?」
「そうだよ。
俺はその世界にある〝日本〟という小さな島国からこっちに来たんだ」
クリスの問いに、俺はできる限りやさしい口調でそう答えた。
俺の出自を知って、クリスの隣に座っていたアリシアやミャウも驚いていた。
「じゃぁ、お兄ちゃんが使っているへ・・・変な魔導器は、その国のものなの?」
そっか・・・
やっぱり〝変〟だと思われていたんだ・・・
「それは、半分正解で、半分はずれかな」
「それはどういう意味じゃ?」
「俺が住んでいた世界には、魔法や魔導器は存在しないんだ」
「「「えっ!?」」」
魔法が存在しないという俺の説明を聞いて、驚きの表情を浮かべる3人の娘っ子たち。
この世界の住人にとっては、魔法は在って当たり前の存在だろうからな。
それが無い世界なんて想像もしていなかっただろう。
「ちなみに、普通の野生動物は居るけど、魔物なんて俺の世界には一匹もいないからな」
「魔物が居ないなんて・・・なんて安全な世界なんだ・・・」
「いやいやいや・・・魔物は居ないけど、人間を襲う野生の肉食獣とかは普通に居るからな。
まあ・・・たしかに炎を吐き出すようなオオトカゲは居ないし、ドラゴンやワイバーン、オークやゴブリンのような幻想獣系の生き物が居ないだけ、俺が居た世界の方が安全性は高いけどね」
俺が話す地球世界の情報に娘っ子たちは皆「ほぇ~~」と、しきりに関心した様子になっていた。
「魔法が無い世界だったから、その代わりに科学や化学という学問が進歩していてね。
みんなが乗ったあの移動用のクルマや、今みんなが手にしている明かりを発する道具は、そうした学問から生み出された生活用具なんだよ」
「でも、カオル殿は魔法を使っておるし、あのクルマという移動用の道具だって魔導的な要素を含んでおるではないか」
クリスの突込みを聞いて、俺は小さなため息を漏らしながらリーゼの方を睨んだ。
「あれはねぇ・・・
俺をこの世界に連れてきたお茶目で見栄っ張りの女神さまが、俺の肉体やクルマの仕組みをイロイロいじくり回してくれた結果なんだよ・・・」
俺のジト目から視線を逸らしたリーゼは、へたくそな口笛を吹いてあさっての方向を見た。
そんな俺の態度を見て、子供たちもリーゼの正体になんとなく気がついたようだった。
しかしながら、誰もがその真実を確かめる事を躊躇っている様子だった。
そして、その重い沈黙をアリシアが破って、遠慮気味に訪ねてきた。
「あの・・・おにいちゃん、リーゼお姉ちゃんってもしかして・・・」
「ああ、そのお茶目で見栄っ張りの女神さまだよ」
「「「ええっ!!」」」
俺の正体を聞いた時よりも、さらに大きなリアクションで驚く子供たち。
あ・・・やっぱ驚くよなぁ・・・。
「リーゼお姉ちゃんが神様・・・えっ、えっ??」
「これは・・・とてもじゃないが国の教会関係者には真実を話せんのじゃ・・・。
まさかこの世界の神様が、このような・・・(ドジっ娘だったなんて)」
「にゃははは、姉ちゃんはぜんぜん偉そうじゃないから、神様には見えないのニャ」
3人とも微妙にニュアンスは違うが、〝リーゼが神様としてふさわしくない〟という意見で一致していることだけは伝わってきたぞ。
その証拠にリーゼを見れば、床に〝のの字〟を指で書いてイジケていた。
「しくしくしくしく・・・しょんぼり」
そういう態度や仕草が神様的な威厳を一切感じさせない原因だと言うことを、このポンコツ女神さまは気がついているのだろうか?
イジケモードに入っていたリーゼが復活するのを待って、子供らへの説明を再開する。
「で・・・だ、この研究室の中央に保管されているピンクの巨大ハンマーみたいな道具だが・・・
実はアレ、リーゼが数千年前の魔法王国に置き忘れた神様が使う道具だそうだ」
「はい・・・その節はこの世界の皆様に多大なるご迷惑をおかけしました・・・」
リーゼも、今は当時の自分が犯した失態をしっかりと反省しているようだ。
俺と初めて会った時は、まったく反省の色が見えなかったことを考えれば、これはすごい進歩だろう。
「迷惑・・・とは、どういうことなのじゃ?」
ああ、やっぱクリスは賢いから、リーゼの反省の弁からソコが気になっちゃうよな。
「実は、私が置き忘れたアレを当時の魔法王国が手にいれて、どうやら天使族に解析を依頼しただけでなく、一部の機能を取り出したレプリカの製作も依頼したみたいで・・・」
問題点の核心が近づくにつれ、説明を口にしているリーゼの声がどんどん小さくさんていく。
「それで・・・そのレプリカが暴走して・・・
かつての魔法王国が滅亡して・・・しまいました・・・」
そして訪れる気まずい沈黙。
子供たちも、大昔に反映していたこの世界の文明が滅んだ原因の一端がリーゼの忘れ物にあった事を知り、何も言えなくなってしまったようだ。
「まぁ、事の発端はリーゼの忘れ物にあるのは確かだけど、一番の原因は、ソレが神の異物だと知りながら禁忌の知識や技術に手を出そうとした、当時の為政者たちの欲望だろうからリーゼだけを責めるのは間違いだと思う。
ただそういう理由もあって、アレを今また世に出すわけにはいかないんだよ」
俺はリーゼのうっかりミスを擁護しながら、研究室の中央に鎮座している神様の道具を指差した。
「あとな・・・この遺跡の中には、この世界の今の文明レベルを考えると表に出せない危険な技術や知識がかなり含まれている。
だからクリスには申し訳ないが、この遺跡をこのままの状態で王国に渡すわけにはいかないんだ」
俺の説明を聞いたクリスは、ほんの少しの間だけ俺の顔をジッと見つめると、そのあとは下を向いて何かを考えはじめた。
そして、たっぷりと間をおいてから顔を上げると、もう一度俺の顔を見た。
「ひとつ訊きたいのじゃが、カオル殿は何をしにこの世界にやってきたのじゃ?」
「大昔の大災害がまた起きる事を防ぐため・・・なんだと思う」
「なんじゃ、主がこっちに来た理由なのに、何でそんなに自信が無いのだ?」
「なにせ、事前相談や説明・・・しかも俺の承諾もなしに、ソコの女神様にイキナリこの世界につれてこられたからな。
事後説明で訊いた彼女の目的が〝忘れ物探し〟と〝帝国の発掘物の破壊〟だったから、たぶんリーゼが俺に期待している事はさっき言った事になるんだと思っている・・・といった感じかな」
俺がこちらの世界に来た時の状況を聞いて、クリスとアリシアが微妙な表情を浮かべて俺の隣に座るリーゼの方を見ていた。
「うわぁぁ・・・リーゼお姉ちゃん、いくらなんでもその方法はどうかと思うよ」
「うむ、無理やりさらってくるのは犯罪じゃぞ」
「はぅぅぅ・・・ごめんなさい・・・」
人間の幼女らに説教されて、首をすくめて小さくなる女神様・・・。
なかなか面白い図だな・・・。
「でも、姉ちゃんが兄ちゃんを連れてきてくれたから、ボクたちは兄ちゃんに出会えたのニャっ」
「そうだな・・・
まぁ、結果オーライだけれど、そのおかげでお前たちを助ける事もできたんだしな」
身を乗り出して、俺と出会えたことを素直に喜んでいるミャウの頭を撫でてあげる。
それを見て、アリシアが「私も」と頭を前に出し、少し送れてクリスまで身体を前に出してきたので、全員の頭を撫でて、それぞれと出会えて嬉しかった事を伝えた。
そして頭を撫でていた俺の手をクリスの手が取り、彼女の真剣なまなざしが俺の瞳を覗き込んだ。
「でも、カオル殿は元いた世界に帰りたくは無いのか?
あっちには家族や友人とかもいるのじゃろ?」
「帰りたくない・・・と言ったら嘘になるけど、俺はこの世界を愛車やレガ子と一緒に旅する今の状況をそれなりに楽しんでいるしな。
それに、こちらの世界で今度大規模な魔力暴走が起きたら、俺のいた世界も危ないらしいからな。
あっちにいる家族や友達らを守るためこっちでがんばるってみのも、悪くないと思っているよ」
俺はそう言いながら、俺の右手を握っていたクリスの小さな手の上に、左の手でゆっくりと乗せた。
「だから元の世界に帰る気は、今の所は全然無いからな」
「そ、そうか。
うむ、カオル殿の事情は概ね分かったのじゃ」
クリスに顔を近づけながら笑い顔を向けてみると、彼女は顔を赤らめると慌てて俺から離れ、ソファーに深く座りなおした。
「今、お兄ちゃんの世界が危険になる・・・とか言っていたよね?
帝国の人たちがやろうとしている事って、そんなに危ない事なの?」
「かつての魔法王国は、あそこにある私が使っていた道具をベースにして、急激に高圧縮したマナを次元の外へと打ち出す魔導器を作り出ました。
それにより薫さんの故郷の世界を引き寄せて、恒久的にこの世界と繋ごうとしましたが大失敗したんです。
その衝撃で、この世界と薫さんの故郷の世界・・・この二つの世界の距離が大きく離れてしまい、〝転移装置〟では移動できなくなってしまいました。
それだけだったらまだ良かったのですが、その時に世界が大きく動くほどの負荷が世界を支える基部に掛かってしまい、二つの世界と世界樹・・・各世界にマナを供給している大元との繋がりに亀裂が入ってしまいました。
おそらく同じような衝撃があと数回加わったら二つの世界の基部は崩壊し、それぞれの世界へのマナ供給が止まってしまうでしょう」
「もし・・・もしもじゃ、マナの供給が止まってしまったらどうなるのじゃ?」
「その世界のマナが徐々に枯渇して、最初はゆっくりと、そして最後は急速に、その世界は崩壊して滅びる事になります」
リーゼが語った、自分らが住む世界が破滅してしまう可能性を聞き、子供たちは口を閉ざしてしまう。
俺たちの間に重い沈黙の時間が流れた。
「まぁ、だからだ。
俺はこの世界での旅を楽しみながら、そうした危険性の芽を摘んでいくことにしたわけだ。
俺の世界と一緒にお前たちが住むこの世界も救ってやるから、そう暗い顔をするな」
そう言って、不安の表情を浮かべていた子供たちに笑って見せ、それぞれの頭を軽く掌で叩いた。
すると、クリスはそんな俺を見て大きくため息をついた後、何かを決心したかのように顔を上げて俺を見据えた。
「カオル殿、交換条件じゃ。
この遺跡に関してカオル殿の意見を認める代わりに、我からの要求ものんでほしい」
俺はクリスが出した提案に頷き、彼女がどのような条件を口にするかを待つことにした。
「我の要求は・・・・・」
レガ子「は~や~く~~、で~て~こ~い~~~!(フシャー)」
クリス「カオル殿・・・なんか遺跡の外から呪詛のようなプレッシャーを感じるのだが・・・」
アリシア「お兄ちゃん・・・わたしも外から不気味な気配を感じるの」
薫「ふむ・・・いっそココに篭城しようか?
幸いにも、食料などの生活物資は潤沢にあるし」
ミャウ「あれ? 作者のおじちゃんがいないニャ?」
リーゼ「あの方なら、先ほどドローンから射出されたワイヤーで簀巻きにされて、外に連れて行かれましたよ」
全員「「「「惜しい人を亡くしたな・・・・(合掌)」」」」
作者「おまえらぁ~~、助けろぉ~~~!」




