表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
75/105

第2章 第22話(第68話) ~遺跡探索 その4・地下に隠されていた危険物~

今回はちょっと生みの苦しみを味わいました。

思うように登場人物が動いてくれない・・・というか、動かすことができない・・・(汗。


あと遺跡の地下構造が物語を書いている最中に何度も変更になってしまったことも、苦しんだ原因になっています。

ちゃんと内部構造のマップを書いてから、物語を書き始めれば良かったと後悔しました。

 遺跡の1階部分にあった住居スペースでマッタリしてから約1時間後・・・先行偵察に出していたドローンによって地下1階の安全確認ができたため、俺たちは遺跡の地下1階に降りていた。


 安全確認ができたとはいっても、ドローンで探査できたのは地下1階フロアの1/3くらい。

 そこから先のスペースに行くには通路を塞いでいる扉を、俺かアリシアの生体認証によって開ける必要があった。


 1階から地下1階に移動するための手段は全部で4つあった。

 一つ目は、1階部分を入り口から進むとすぐに出現するホールのような場所にあった、エレベーターと思われる箱状の移動設備を使う方法。

 二つ目は、そのエレベータの横に設置させていた、比較的道幅の広い階段を使う方法。

 三つ目と四つ目は、施設の左右の端に設置されていた非常階段と思われる移動スペースを使う方法だ。


 俺たちはエレベーター横の階段を使って地下1階まで降りてきたわけだが、エレベーターホール周辺の構造は先ほどまで探索していた1階部分とあまり大きな違いはなく、ここも俺たちがフロアに立つだけで人の気配を検知して天井の照明が自動的に点灯した。


「この階は・・・居住スペースが1/3くらいで、残りは倉庫とか資料室になっているようだな」


 エレベーターホールの壁にあったフロアマップと思しき図を見ながら、周囲の状況把握とフロア構造を頭に叩き込む。

 ちなみにこのエレベーターホールの周囲には、2LDKタイプの居住スペースが5部屋ほどある。

 各部屋にも行ってみたが、どの部屋も内部の構造や設備は1階の部屋と同じようなものだった。


 居住スペースと奥のスペースを隔てている扉の奥を、スマホで撮影したフロアマップの画像で再度確認すると、〝倉庫・貯蔵庫〟と記された大きな部屋が手前部分に10部屋ほどあることが分かった。

 そして、その奥には〝資料室〟と記された部屋が4部屋存在しているようだった。




 居住スペースに目新しいものが無いことを確認し、俺たちは問題の扉の前まで移動していた。


「お兄ちゃん・・・ずいぶん大きな扉だね・・・」


 住居の扉に比べると4倍ほどもある大きな扉を前にして、アリシアがその迫力に飲まれていた。

 

「どうやらこの扉は左右にスライドして壁の中に引っ込む構造みたいだな」


 まるで元の世界にあった自動ドアの大型版だ。

 扉の左側壁面に操作パネルと思われる装置があったので、そのパネルの上に自分の掌を乗せてみた。

 すると操作パネルが緑色に発光し、目の前の扉がゆっくりと動き開いていく。

 扉が開ききると、同時に内部の大型の通路に照明が灯った。

 通路が完全に明るくなったことを確認して、俺たちはその大きな通路へとゆっくりを足を踏み入れた。




「すごいのじゃ・・・太古の時代に納められた食料が全く傷んでいないのじゃ・・・」


 一番手前にあった倉庫に入った俺たちを出迎えたのは、巨大なスペースにぎっちりと詰め込まれた食料品の山だった。

 小麦や米といった穀物類のほか、肉や野菜、果物などの生鮮食料品も蓄えられているのだが、どの食材もつい先日収穫してここに納めたようなくらい新鮮な状態で保管されている。


「お兄ちゃん・・・このお野菜なんて、まるで今朝に収穫したみたいな感じだよ」


 アリシアが保管されていた野菜の一つ・・・トマトを持って俺のところに持ってきた。

 俺はそれを受け取り、トマトをじっくりと観察した後、おもむろに齧ってみた。


「うん、甘みがあって美味しいな・・・。

 数千年前にココに保管されたとは思えないくらいの新鮮さだ」


(あん)ちゃん、(あん)ちゃん。

 ここにあるお肉の塊も新鮮で美味しそうだにゃ!」


 ミャウは倉庫の奥に置かれていたハムと思われる加工肉に近づいて、その匂いを嗅いでいた。

 あれは・・・俺の世界の生ハムに近い製法で作られていたモノのようにも見える。

 この世界の加工肉は長期保存に特化した塩気の多いものが主流のはずだが、かつての天使族の食文化はかなり加工技術が発達していたんじゃないのか?


「そのハムは、後でイベントリに保管している生ハムと食い比べてみたいな・・・」


 ふとリーゼに目を移すと、彼女は倉庫内の壁に設置されていたパネルと天井に取り付けられている箱状の装置を交互に見ながら、何かを考えている様子だった。

 そんなリーゼの様子が気になったので、俺は彼女に近づいて声をかけることにした。


「何か気になる事でもあったのか?」


「あっ薫さん~。

 おそらくこの倉庫施設ですが・・・たぶん倉庫ごとに扉を閉じると、その都度この部屋の中に保管のための高密度マナが散布される仕組みみたいです~」


「それって、今朝言っていた〝物体の時を停止させて保存する魔法〟ってやつか?

 俺たちがこの遺跡に入るの邪魔していた障害物の?」


「ええ、()()ですね~。

 倉庫内が無人の状態で扉が閉まると、天上にあるあの装置から高密度のマナが急速散布される仕組みになっていますね~」


「ということは・・・中に納めた食料の劣化が進むのは、今みたいに内部に人間がいる時だけということなのか?」


「そうなりますね~」


 マジか?

 これってもはや、元の世界の文明水準すらも抜いているぞ!


「なんというオーバーテクノロジー・・・」


 単なる倉庫の仕掛けそのものが凄すぎて、早くも頭が痛くなってきたよ・・・。


「薫さんの世界も・・・もし魔法を使える機能が人間に残っていたら、この仕組みに辿り着けていたかもしれませんね~」


 う~~ん、どうだろう。

 もし俺がいた世界の人間が魔法因子を体内に持ったままだったら、魔法が便利すぎて今のように科学が進んだとは思えないんだよな・・・。

 この世界にいた天使族がかなり特殊(変態)だっただけではないだろうか?


 とりあえず子供たちを呼び集めて、今リーゼが気が付いたこの倉庫の仕組みを伝えることにした。

 そのうえで、中にある食材への影響が最小限で済むように短時間で内部調査を進めていった方がいいだろう。


 ちびっ子らを呼び集めると、ミャウはソーセージと思われる腸詰め肉を手にして、アリシアとクリスはバナナと思われる果物を手にして、全員がなにかしらの食料を食いながら俺の所にやってきた。

 お前ら・・・あとで昼の弁当食えなくなっても知らないからな・・・。



「この倉庫の仕組みは今話したとおりなので、食材の劣化を最小限にするためにも迅速にここに貯蔵されているモノの種類と量をリスト化したい。

 なので二手に分かれて、それぞれが逆方向から貯蔵物をメモしていこうと思う」


「なるほど・・・で組み分けはどうするのじゃ?」


「俺とクリスの班と、リーゼ、アリシア、ミャウの班に分ける。

 倉庫はこの部屋のほかにもあと9部屋もあるから、さっさと調査するぞ」


 俺の提案に合わせて、それぞれの班が倉庫に納められている物品名とおおよその量をリスト化していく。

 そして10部屋もあった倉庫全てを調査し終えた俺たちは、かなり遅めの昼飯を取るために居住区で休憩することとなった。




「ふぅ・・・すごい量と種類だったの・・・」


 備え付けのソファーに座っているアリシアが、やや疲れた様子で愚痴を口にした。

 クリスやミャウも、ほとんど同じようた感じでソファーに身体を預けて身体を休めていた。


 俺たちが今いる場所は、地下1階のフロアにあった2LDKタイプの居住スペースの一室。

 そのリビングで各自が自由に休息をとっていた。

 ちなみに時間は午後2時をとっくに過ぎている。


 俺は部屋のキッチン設備を借りて、持ってきていた弁当を再加熱するなどして少しだけ手を加えている最中だ。


「ほら、先日村で分けてもらったビッグホーンの肉を使った肉野菜炒めだ。

 パンの方は、今表面を焼いているから、もうちょっと待っていてくれ」


 そういって、俺は先におかずの方をリビングのテーブルへと出した。

 ビッグホーンの肉は今朝の朝食時に焼いたものだったが、一度冷めてしまったにもかかわらずあまり固くなっていなかったことに、肉を食べた子供たちが驚いていた。


「兄ちゃん、なんでこのお肉は固くなっていにゃいんだ?」


「ああ、それは焼く前に肉を少しの時間ハチミツに漬けておいたからだな。

 肉の表面にハチミツを塗ると、肉の組織の凝固や凝集を防いでくれて、肉が柔らかくなるんだよ。

 焼きたてに比べると多少固くなるけれど、それでもこの手間をかけておくだけで冷めても美味しく食べられる肉になっていると思うぞ」


 そう説明しながら、俺もテーブルに出したビッグホーンの肉を一切れ摘まんで口の中へと入れる。

 うん、まあまあだな。


 続いて表面を軽く焼いたパンと一緒に、ジャムやバターといった塗り物をテーブルに並べる。

 当初は、パンは焼かずにそのままの状態でジャムなどを塗って食う予定だったので、ここの設備のおかげでかなり良い昼飯に改善することができたと思う。

 というか、こんな便利な設備があることが分かっていたら、食材と調理器具を持ってくればよかったよ。


「カオル殿、この物資の量と種類だけでも大発見じゃぞ」


 倉庫内に納められていた貯蔵物のメモを眺めながら、クリスがかなり興奮していた。

 今の世界には知られていない植物の食材がかなりの数あったそうで、しかも調べた倉庫の中にはそれらの種や苗が保管されている部屋もあった。

 倉庫内に納められていた貯蔵物を世の中に出しただけでも、大騒ぎになりそうなのは俺にも分かった。


「はぁ~、まさかこのお酒を今の時代に飲めるとは~」


 リーゼの奴は、お酒の保管場所で見つけた数千年前の高級酒を持ち出して幼竜と一緒に堪能していた。

 はぁ・・・頼むから酔っぱらうまで飲んだりしないでくれよ。


 それよりも、俺はこの施設の存在をこのまま王国に伝えてしまっていいかどうかに悩んでいた。

 世紀の大発見に喜んでいるクリスには悪いが、これをこのまま世に出してしまうと急激なテクノロジーの進化が起きてしまい、非常に危険なのではないだろうか?


 幸いなことに、倉庫エリアを含めて奥に入るためには、俺かアリシアの生体承認が必要だ。

 この奥にどれだけ危険なモノが隠されているかは知らないが、今後出てくるモノ次第によっては、この施設の制御を改変するか破壊するかして、他者が入れないようにしないといけないかもしれない。


 そんな事になったら、きっとクリスは怒るだろうなぁ・・・。


 目の前で喜ぶクリスの姿を見ながら、そんな万が一のことを考えると、少し胃が痛くなるのを感じるのだった。




 倉庫の奥にあった4部屋の〝資料室〟には、この世界の歴史や魔法学、魔法技術に関連する様々な書物が納められていた。

 面白かったのは、これだけテクノロジーが進歩していたにも関わらず、天使族は映像や記録メディアの技術をほとんど持っていなかったことだ。

 なので〝資料室〟にあったのは、そのすべてが書物の形式となっていた。


 とはいったものの、この書物の中身も、モノによってはかなり危険な知識があるようだ。 

 先ほどの悩みも含めてリーゼに相談したところ、少なくとも今(魔導帝国が野望を持って動いているうち)は外に出さない方がいい魔法学や魔法技術の記録書がかなりの数含まれていることを教えらえた。

 また悩みの種が増えてしまった・・・。


 


 そして俺が感じていた危惧は、地下2階に隠されていた〝研究室〟で見事に的中してしまった。


 地下2階には、資料室の奥にあったエレベータでしか行けないようになっており、その階には〝研究室〟と〝制御室〟が存在していた。

 そして、その〝研究室〟の中央には、かつての魔法王国でリーゼが置き忘れた〝道具〟のオリジナルが置かれていたのだ。



「か、薫さん!

 あ、アレは私が昔忘れ物にしてしまった害虫バグ退治の道具です!」


 研究室の中に入ったリーゼは、()()を見つけて驚くと、かなり慌てた口調で俺にそう報告してきた。


 はぁ・・・これはもう決定的だな・・・。

 今はこの施設をフローリアス王国を含めて、この大陸のどの国にも公開することはできない。


 俺はある決意をして、後ろにいたクリスと向き合った。

 そしてクリスに向かって頭を下げた。


「クリス、すまない! 

 この遺跡は王国に渡すことができなくなった・・・」


 突然の俺の言動に一瞬戸惑うクリス。


「カオル殿、それはどういう意味じゃ!

 まさか・・お主は、本当は他国の間者なのか!?」


 クリスの問いかけに、俺は何も言うことができないでいた。


 クリスは俺に裏切られたと思ったのか、激昂して俺に詰め寄ると俺の頬を引っ叩き、その勢いのまま俺の胸もとへと掴みかかってきた。

 俺の顔をまっすぐ見て睨んでいるクリスの瞳には涙が浮かんでいた。

 子供とはいえ、俺が初めてキスをした相手で、たぶん好きになりかけていた娘だ。

 その娘の信頼を裏切ってしまった事に、叩かれた頬よりも、胸の方が痛くなった。

 

 近くに居るアリシアやミャウは、一触即発状態となってしまった俺とクリスの周りをうろうろしながら、仲裁に入るタイミングを探っているようだった。


「それはない。

 そもそも俺は・・・()()()()()()()()()()()()()()()()()


「そ、それはどういう意味なのじゃ・・・?」


 俺に掴みかかり睨みつけた状態のまま、俺が言った言葉から何かを感じ取ったクリスが戸惑いの表情を浮かべて俺の瞳を覗き込んできた。

 アリシアやミャウも驚いたようで、立ち止まって俺の方を見ている。


 もうこうなってしまっては、俺の正体や本当の目的について彼女たちに話した方がいいだろう。


「リーゼ、俺たちの正体と目的をクリスだけでなくアリシアやミャウにも話すが、かまわないよな?」


「いいですよ~。

 まぁ、この先も一緒に旅をするならば、いずれは打ち明けないといけない秘密でしたしね~」


 俺が語ろうとしていた秘密にリーゼまでも関係している事が分かり、さらに混乱した様子になる子供たち。


 俺の服を掴んだままのクリスの頭を優しく撫でて落ち着かせると、アリシアとミャウも呼んで、研究室内にあったソファーへと座らせた。

 そして反対側のソファーに俺とリーゼが腰かける。


「3人には初めて明かすが、俺は()()()()()()()じゃない。

 神様みたいな存在に、ある目的のためにこの世界に連れてこられた、全く別の世界・・・()()()()()()なんだ」


 俺の突拍子もない告白に、3人の娘っ子が息をのむのが分かった。




レガ子「やっと異世界人だったことを暴露するところまできたのっ。作者さまの物語進行が遅すぎなのっ!」


作者「すみません・・・」


薫「レガ子はなんでそんなに怒っているんだ?」


レガ子「この遺跡内部でのお話しが長引くと、レガ子の出番がそれだけ減るのっ! 修羅場をやるなら表に出てからにしてほしいのっ!!」


全員「「「「・・・・・・・(苦笑)」」」」


リーゼ「でもレガ子ちゃ~ん。このお話しの初期プロットだと、レガ子ちゃんと私がかなり長い間出てこなくなる時期(章)があるよ~」


レガ子「その出来事が発生する前に、帝国の偉い人をぶっ殺せば問題ないのっ!」


作者「いやいやいや・・・それ無理だから・・・(汗)」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ